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学術選書 048

王国の鉄路

タイ鉄道の歴史

柿崎 一郎

四六並製, 410 pages

ISBN: 9784876988488

pub. date: 04/10

  • Price : JPY 1,800 (with tax: JPY 1,980)
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内容

文字通り権力の象徴であり,産業化の中軸だった鉄道.強力な王権を維持しながら,列強の植民地となることなく,したたかに工業化・近代化を遂げたタイこそ,鉄道と近現代の関わりを知る最高の舞台である.自らタイの鉄道網を乗り尽くした研究者が,豊富な資料を駆使しながら描く鉄道の歴史と今後の展望.歴史ファン、鉄道ファン必見の東南アジア紀行としても楽しい好著.

プロフィール

柿崎 一郎(かきざき いちろう)
横浜市立大学国際総合科学部准教授
1971年生まれ。1999年、東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。
横浜市立大学国際文化学部専任講師、同助教授を経て、2005年より現職。博士(学術)。
『タイ経済と鉄道 1885〜1935年』(下記)で、第17回大平正芳記念賞を受賞。

主要著書
『タイ経済と鉄道 1885〜1935年』(日本経済評論社、2000年)、Laying the Tracks: The Thai Economy and its Railways, 1885-1935(Kyoto University Press (京都大学学術出版会)、2005年)、『物語 タイの歴史』(中公新書、2007年)、『鉄道と道路の政治経済学 —タイの交通政策と商品流通 1935〜1975年—』(京都大学学術出版会、2009年)など。

目次

口絵
はじめに──タイ鉄道史への誘い
第1章 繋明期の鉄道──一八八〇〜一九一0年代
1 鉄道導入前夜
   伝統的な交通手段──水運と陸上輸送
   東南アジアでの鉄道の出現
   タイと鉄道との関わり
   英仏の鉄道計画
   ホー征伐
2 鉄道建設の推進
   パンチャード調査とベートゲ調査
   コーラート線の建設
   チャオプラヤー川流域への鉄道
   マレー半島縦貫線
   急速な鉄道網の拡大
3 官営鉄道主義の確定
   官営鉄道と民営鉄道
   初期の民営鉄道
   民営鉄道への警戒
   民営鉄道の制限
   鉄道建設計画の策定
4 「政治鉄道」の意義
   「政治鉄道」のレッテル
   鉄道建設の目的
   輸送条件の改善
   新たな商品流通の発生
   変わらぬ伝統的な輸送
コラム01 バンコクの中央駅フアラムポーン
  
第2章 「政治鉄道」からの脱却──一九二〇〜一九三0年代
1 鉄道網の統一と拡張
   カムペーンペット親王の総裁就任
   東方への路線拡大
   軌聞の統一とラーマ六世橋建設
   道路との連携
   肩を並べた鉄道網
2 国際鉄道網構想の出現
   カムペーンペット親王の「掌」
   マラヤ連絡鉄道の役割
   バンコク〜サイゴン間鉄道の推進
   ラオスへの鉄道計画
   ビルマとの連絡鉄道
3 立憲革命と鉄道
   鉄道輸送の停滞──世界恐慌と自動車との競合
   鉄道優先政策の終駕
   全国道路整備計画の策定
   冷遇される鉄道
   鉄道の復活
4 鉄道輸送の役割
   旅客輸送の特徴──短距離の手荷物輸送
   都市鉄道化の模索と限界
   貨物輸送の特徴──外港への農産物輸送
   東南アジア各国の輸送品目
   外港〜後背地関係の再編
コラム02 ワーコーのディーゼル機関車

第3章 戦争と復興──一九四〇〜一九五〇年代
1 国際鉄道網の構築
   「失地回復」と鉄道
   日本の軍用列車
   深刻化する車両不足
   泰緬鉄道とクラ地峡横断鉄道
   つかの間の国際鉄道網
2 戦争の傷跡
   寸断された路線網
   車両や施設の疲弊
   輸送量の変化
   米による復興
   鉄道局から国鉄へ
3 輸送力の増強
   車両の増備
   牽引力の向上
   レールの交換
   急増する輸送量
   輸送品目の多様化
4 鉄道網の拡張と限界
   道路整備の状況
   泰緬鉄道のその後
   新線建設の再開
   軍事鉄道計画の浮上
   停滞する新線建設
コラム03 旧泰緬鉄道の観光列車

第4章 鉄道の転換期──一九六〇〜一九八〇年代
1 フレンドシップ・ハイウェーのインパクト
   高規格道路の時代の到来
   急速なモータリゼーション
   自動車輸送への転移
   バンコク市内の鉄道廃止
   バンコクターミナルの移設問題
2 鉄道側の対応
   ディーゼル化の推進
   旅客輸送のスピードアップ
   長距離夜行列車の強化
   貨物輸送の競争力拡大
   専用車両による輸送の奨励
3 停滞する新線建設
   量的拡大から質的向上へ
   新線建設の続行
   新線建設の中止
   工業開発のための鉄道
4 鉄道輸送の変化
   増加する輸送量
   伝統的な「旅客」輸送の終焉
   長距離旅客の出現
   貨物輸送品目の変化
   貨物輸送の長距離化
コラム04 乗りにくいローカル線

第5章 鉄道の復権──新たな役割を担って 一九九〇年代〜
1 在来線の状況
   苦戦する旅客輸送
   好調な貨物輸送
   進まぬ新線建設
   悪化する経営状況
   中古車両の導入
2 都市鉄道の登場
   在来線の都市鉄道化
   先行する都市
   バンコクの都市鉄道計画の始まり
   三つの都市鉄道計画の出現
   混迷する都市鉄道拡張計画
3 国際鉄道網の構築
   東南アジア縦貫鉄道構想の出現
   カンボジアのミッシングリンク
   ラオス初の鉄道開通
   中国との連絡鉄道構想
   泰緬鉄道の復活?
4 「新たな鉄道」を目指して
   都市交通の主役
   高速鉄道への期待
   「ロジスティックス」の追い風
   標準軌とメートル軌
   変わる鉄道・変わらぬ鉄道
コラム05 メコン川を渡る国際列車

あとがき
参考資料・文献
索引
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