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学術選書 107

ホメロスと色彩

西塔 由貴子

四六並製・288頁

ISBN: 9784814004522

発行年月: 2022/12

  • 本体: 2,000円(税込 2,200円
  • 在庫あり
 
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内容

ホメロスからよむ豊かな色彩世界——古代ギリシアの色彩研究の先駆者の一人はイギリス首相だった。首相のグラッドストンは,ホメロスの色彩感覚はきわめて貧困だったと断じている。これに対して本書はホメロスの叙事詩世界を手がかりにして,白は甘い? アキレウスの髪は何色か? 紫が海を越える? 虹は何色か? 葡萄酒色の海とは? など、様々な問いを投げかけながら,古代人の豊かな色彩世界を描き出す。

書評

『秋田魁新報』2023年2月25日付 読書面
『産経新聞』2023年2月26日付 産経書房
『下野新聞』2023年2月26日付 読書面
『岩手日報』2023年3月5日付 読書面
『愛媛新聞』2023年3月5日付 読書面
『宮崎日日新聞』2023年3月5日付 読書面
『佐賀新聞』2023年3月5日付 読書面
『京都新聞』2023年3月11日付 読書面
『大分合同新聞』2023年3月12日付 読書面

プロフィール

西塔 由貴子(さいとう ゆきこ)
京都精華大学特別研究員、英国リヴァプール大学オナラリーフェロー(Honorary Fellow, School of Archaeology, Classics and Egyptology, University of Liverpool, UK)、同志社女子大学大学院ほか非常勤講師
専門は西洋古典学、古代ギリシア文学

主要業績
“Πορφύρεος: Aspects of the Transformative Role of Bright Colour-Hues in Interior Space in Homer”(Brepolsより刊行予定); “Viewing the Sparkling Scenery of the Sea with Marmareos” (Epica Marina I, 2, Università degli Studi di Milano: Dipartimento di Studi letterari, filologici e linguistici, 2020); “A Fast-flash Shining Aspect of Homeric Colour Expressions” (Ricerche a Confronto. Dialoghi di Antichità; Classiche e del Vicino Oriente, Edizioni Saecula 2020);「Μαρμάρεος; 『イリアス』の中の輝く世界の一局面を探る」(『文芸学研究』 2020); “Some Remarks on Brightness in Homer’s Iliad,” (HARTS & Minds: The Journal of Humanities and Art 4: Chromatography Special Issue, 2018) など。翻訳は『オリュンポスの神々の歴史』(共訳、白水社2017)。

目次

凡例
はじめに―夜空に浮かぶ花火を眺めながら
  色を扱うということ
  多彩な感覚とともに

第1章 「色」とは―飛び出す色
 はじめに―葡萄酒色に輝く海へ
 1 視覚とイメージ、操られる識別
   春もいろいろ
   緑色のワイン
 2 純粋な(単純な)色?
   光は「色」なのか
   アリストテレスの基本色?
   プリニウスの絵の具
 3 感性の間で知覚される色
   共感覚(Synaesthesia)
   白は甘いのか
   なめらかなのは白、あらいのは黒?
   「みること」は、「知ること」である
 おわりに―ガラスのような言語をとおして

第2章 センスとセンシビリティ―魔法のような色
 はじめに―「色」の Basic Colours という幻
   色彩基本色の移行過程の普遍性
 1 人間と切っても切れない「色」―パストゥローの研究から
   古代ギリシアの色彩研究の先駆者の一人は英国首相
   プラトナウアーによる区別
 2 配色と調和―学際的研究への幕開け
   ポリュクロミー(Polychromy)
 3 「色たち」に要注意!
 おわりに―秘伝の色彩たち
   賢者の石をもとめて
   金と銀の品格
   魔法のように

第3章 文字と記憶―劇場ホメロス叙事詩を翔けめぐる色
 はじめに―記憶するという認識
   口承叙事詩
   繰り返されることの意味
   記憶力の喪失
   文字の使用によって
 1 ホメロスの色と音、動き
   想いのごとく
   夜の闇のなかで
   苦悩する心は逆巻く波のように
 2 文字と色
 3 モノをみる楽しみ
 おわりに―炎の光に揺れて

第4章 言語変換の壁―黄色はブロンドか
 はじめに―葡萄酒色の海を前に
   亜麻色の髪、ブロンド、そして xanthos
 1 アキレウスの髪は何色だった?
   ブロンドというグラデーション
 2 黄色も光にあたれば
   ホメロスに編み込まれるクサントス(xanthos)
   輝くクリュソス(chrusos)
 3 神話や歴史のなかに
   言語変換という操作
 おわりに―「黄金」という区別、階級化(?)
   金属と黄金と―ヘシオドスとオウィディウス
   時代の波にのる「黄金」

第5章 大空と大地を舞う色―虹と自然の緑
 はじめに―虹(iris)の色は
   七色の虹
 1 空の架け橋―伝令使イリス
   虹色が表象するもの
 2 多彩に輝く緑のグラデーション
   自然界に差し込む光とともに
 3 ホメロスが操る多彩な緑
   新鮮なクロロス(chlōros)
   緑色の恐怖
 おわりに―揺れ動く緑

第6章 海を越える色―巻貝と紫
 はじめに―海からの贈り物
   巻貝とヘラクレスの犬、そして紫
   紫の染料生産
 1 テュリアン・パープル(Tyrian Purple)
   ミュレクス(Murex)から紫へ
   区別する色——紫色に産まれる
   抗争と終焉、そして移行
 2 ホメロスの光景を彩るポルピュレオス(porphureos)
   人間の心は波(の色)のように
 3 ホメロスの紫にある高貴な輝き
 おわりに——ホメロスには青い空、青い海はなかった?

第7章 暁の光に織り込まれる色―クロッカス、バラ、etc.
 はじめに―「暁」の光
   色とりどりのクロッカスとバラに投影される暁
 1 戦う女たち
   ヘラの勝負服
 2 女の敵は女―銀色の足のテティス
 3 白と輝き、そして美
 おわりに―織るということ

第8章 水面を彩る色―たくさんの青
 はじめに―海は何色?
 1 葡萄酒色の海
 2 心に響く海の色たち
 3 白と黒の狭間で
 おわりに―銀色に渦巻く波にのって

おわりに―色の旅は終わらない
  色彩と文化、社会
  輝くカラー(個性)


あとがき―葡萄酒色に輝く海の上を漂いながら
参考文献一覧
索引(固有名詞・事項・書名・Alphabet)
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