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生態人類学は挑む MONOGRAPH 7

サバンナの林を豊かに生きる

母系社会の人類学

杉山 祐子

A5並製, 362 pages

ISBN: 9784814004201

pub. date: 07/22

  • Price : JPY 3,300 (with tax: JPY 3,630)
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内容

ミオンボ林があればどこへでも――。ザンビア北部、林の恵みで生きる焼畑農耕民ベンバ。女性のネットワークが基盤となる母系社会は世帯の垣根をこえ、離村や分裂も織り込んで林を自在に移動する。貨幣経済の侵入や農業の商業化政策、それらの変化をすべて組み入れてなお、樹上伐採と焼畑農耕を選びつづける彼らの「食物の道」。

プロフィール

杉山 祐子 (すぎやま ゆうこ)
弘前大学人文社会科学部教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士後期課程修了、京都大学博士(地域研究)。主な著作に、『極限―人類社会の進化』(共著、京都大学学術出版会、2020年)、『地方都市とローカリティ―弘前・仕事・近代化』(弘前大学出版会、2016年)などがある。

目次

序 章 ミオンボ林の焼畑農耕民
 1 焼畑農耕民ベンバに出会う
 2 本書の構成
第1章 村入り―調査地概要
 1 ベンバの人びととベンバランド
 2 歴史と政治社会構造
 3 ベンバの村と王国
 4 村への住み込みがはじまる
 5 入り口は「ミリモ・ヤ・サイエンス(サイエンスの仕事)」
 6 年長女性たちのレッスン
第2章 生計活動と平準化機構
 1 チテメネ・イバラ・ミオンボ林
 2 環境利用のジェネラリストとしての生計活動
 3 生計の単位としての世帯と生計戦略
 4 格差を均す平準化機構
第3章 女性たちの集まりと調理加工の共同・消費の共同
 1 調理加工作業の共同と女性の集まり
 2 調理加工作業の共同と共食・食物の分かち合い
 3 女性の集まりと子どもたちの食
 4 足りない調理道具を求めて―女性たちはなぜ集まるのか
 5 ライフステージの上昇と物をもつことの意味
 6 道具の貸借をめぐる女性たちの動き―社会的地位をふまえたポリティクス
 7 親和的関係は日々の蓄積で更新される―生活に内包された移動性
 8 消費の共同体としての女性の集まり
第4章 人びとの移動と村の発達サイクル
 1 人びとの移動と「世帯の失敗」
 2 「世帯の失敗」の様態
 3 変動する世帯構成と「世帯の必要」の確保
 4 生計維持の困難を支える母系親族と年長女性の社会的地位
 5 男性の伐採地選択と開墾ゾーン
 6 集落の創設と開墾ゾーン
 7 世代交代とML村の分裂
 8 祖霊祭祀と村長の権威
 9 再生の縁となる祖霊祭祀と秘匿される知識の継承
第5章 チテメネ農法の秘密と村長の権威
 1 農法の説明になぜ「秘密」のにおいがするのか
 2 マーレ氏は語る―チテメネ・システムの理論的背景
 3 世界観との連動―「焼くこと」と祖霊への作法
 4 「焼くこと」と生殖論
 5 「見ればわかる」知識と見るだけではわからない知識
 6 村長の権威のありか
第6章 農業政策の変化に揺れる母系社会
 1 農業の商業化政策と換金用トウモロコシ栽培の進展
 2 苦境に陥る女性世帯―世帯間の格差は広がる
 3 女性世帯の連帯、世帯を越えた消費のネットワーク
 4 生計における現金の位置づけは変わったか―食物の道・敬意の道・お金の道
 5 変化の様相と変化を生み出す連続性
第7章 チテメネ耕作と人びとのイノベーション・ヒストリー
 1 農民の技術と在来知へのまなざし
 2 タカムラ・チテメネが開く村びとの試行の歴史
 3 チテメネ耕作錬成の歴史における三つのイノベーション
 4 生計戦略と技術の選択の基準、経験知としてのプロジェクトの失敗
 5 異質な技術の取り込みと技術の指向性の変換
 6 個別多発的試行から村全体のイノベーションへ
 7 ベンバにおけるフォークイノベーション・ヒストリー(FIH)
終 章 小さな村からの生態人類学
 1 小さな村から何を考えるか
 2 生計にあらわれる消費と分与の様態
 3 誰かのモノを「食べてしまう」こと=消費の力と社会的な広がりとしての世帯
 4 生業複合における生産から見た自給レベルの維持
 5 ベンバの生活から私たちの社会を考える―食べることを前提にした共同と食物分与
 6 生態人類学の可能性

謝 辞
参考文献
索 引
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