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新・動物記

白黒つけないベニガオザル

やられたらやり返すサルの「平和」の秘訣

豊田 有

四六並製・262頁

ISBN: 9784814004515

発行年月: 2023/01

  • 本体: 2,200円(税込 2,420円
  • 在庫あり
 
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内容

微笑みの国タイの岩山に住むベニガオザル.明確な順位関係のない「平等」な社会をもつ彼らだが,そこは各々がマイペースに振る舞い,衝突が絶えない世界だ.そんなやられたらやり返す社会の中で,なぜバラバラにならずにいられるのか? 和解のための様々な手段,仲間に見せる気遣い,特殊な性行動など,400頭のサルを見分け追い続けてきた著者がみた彼らの「平和」の秘訣.2022年度日本霊長類学会髙島賞受賞研究.

書評

『山陰中央新報』2023年3月18日付 読書面
『琉球新報』2023年3月19日付 読書面
『京都新聞』2023年3月25日付 読書面
『神戸新聞』2023年3月25日付 読書面
『宮崎日日新聞』2023年3月25日付 読書面
『岩手日報』2023年3月26日付 読書面
『新潟日報』2023年3月26日付 読書面
『神奈川新聞』2023年3月26日付 読書面
『山陽新聞』2023年3月26日付 読書面
『大分合同新聞』2023年3月26日付 読書面
『中国新聞』2023年4月2日付 読書面
『高知新聞』2023年4月8日付 読書面
『岐阜新聞』2023年4月16日付 読書面
『東奥日報』2023年4月29日付 読書面

プロフィール

豊田 有(とよだ ある)
岐阜県出身。1990年生まれ。物心ついたときから生き物に囲まれて育つ。京都大学大学院理学研究科生物科学専攻(京都大学霊長類研究所)博士後期課程修了、博士(理学)。現在、日本学術振興会特別研究員CPD(国際競争力強化研究員)。2015年にタイ王国に野生ベニガオザルの長期調査拠点を構築、以後継続的に調査を実施。研究テーマはマカク属の社会進化、オスの繁殖戦略、協力行動や社会行動など。
医者の家系に生まれながら医学部受験の重圧に挫折し、高校時代は引きこもり生活を送る。そこで出会った生物の先生に日本爬虫両棲類学会に連れて行ってもらったことがきっかけで生物学の世界に足を踏み入れ、気がつけば霊長類学者に。
2021年笹川科学研究奨励賞、2022年日本霊長類学会高島賞受賞。noteで「タイでサル調査!研究奮闘記」、日本モンキーセンター発行の雑誌『モンキー』で「タイ王国を巡る」を連載中。

目次

巻頭口絵
プロローグ

1章 微笑みの国へ
1 奇妙な世界からの手招き
  ベニガオザルとはどういうサルか
  「奇妙な」性行動
  ベニガオザルに引き寄せられて——転進のきっかけ
  師との出会い
2 マイペースなベニガオザルたち
  初めての予備調杏
  幻のサルとの対面
  予備調森の収穫
3 ベニガオザル研究への通行手形
  調査許可と研究者用査証の取得
  研究喪獲得への道のり

2章 暗中模索のベニガオザル研究
1 ベニガオザル研究、始動
  水と住居——生活甚盤の確保
  調査地のサルたちの歴史
  岩山を登るサル
  調究時の装備品
  一日のルーティン
  犬たちの存在
2 四〇〇頭のサルに挑む
  写真撮彩という記録方法
  撮影で気をつけること
  のっぺらぼうの悪夢——個体識別の苦悩
  原石を拾い集める

3章 「平和なサル」のウラの顔——平等社会を維持する努力
1 食べものいろいろ
  サルが好む植物
  サルたちの昆虫食
  食物分配の発見
  ノウサギ捕食の衝撃
  ノウサギ捕食事例のその後
2 白黒つけない社会のルール
  やられたらやり返す
  和解行動
  仲間への気遣い
  森の中を進む隊列
3 平和を守る白い赤ちゃん
  出産育児
  もみくちゃにされるアカンボウ
  ベニガオザルの「ママ友会」
  アカンボウがもつ緩衝作用
  我が子の亡骸を抱えて
4 群れの出会いと別れ
  群間関係
  群れはどうやって分かれるのか
  あるオスの死――順位転落の顛末

4章 メスをめぐる奇妙な協力――順番に交尾するオスたちの狙い
1 ベニガオザル特有の交尾行動の謎
  「交尾の記録」の難しさ
  交尾のときに起きること
  「連続多数回交尾」の謎
  オスはなぜ射精時に声を出すのか
  協力してメスを囲うオス
  連合を組むメリットとデメリット
2 難関に挑む――父子判定への道
  野生動物で〝父親を特定する〟ということ
  遺伝解析手法の確立
  DNA 採取の苦労
3 白黒つかない繁殖競争
  交尾に成功したオスが子どもを残せるわけではない
  弱いオスたちの戦略
  なぜ連続多数回交尾をしなければならないのか
4 赤の他人どうしが協力する不思議
  協力するオスたちの関係
  オスの生活史を見通す
  「顔見知り関係」は協力を促進するか

5章 ベニガオザル研究に未来はあるか
1 研究におけるマイナー種ゆえの壁
  悔しさをバネに
  マカク属研究の意義を再認識する
2 冒険的研究の限界
3 はじめから〝いい研究〟をしようとしない

Column 1 「自称写真家」としての夢
Column 2 タイの季節「雨季 乾季 暑季」
Column 3 黒いベニガオザルの話
Column 4 オスの犬歯とオス間競合

エピローグ
著者のおすすめ読書案内
参考文献
索引
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