西洋古典学事典
A4判上製函入, 1712 pages
ISBN: 9784876989256 第一刷 正誤表(2010.11.19更新)PDF
pub. date: 06/10
★百年の快著★
[推薦]中務 哲郎(京都大学名誉教授 西洋古典学・西洋古典叢書編集委員)
松原國師氏に『西洋古典学事典』編述の志ありと聞いたのは凡そ二十年の昔、新年の賀状に「今年こそ出します」の文字を見て十年、この間松原氏は凝りに凝り蘊蓄の限りを傾けて執筆の事に従ってきた。氏は学会にも属さぬ孤往の学究であるが、海外の研究事情に通じ、わが国西洋古典学百年の成果を摂取するにも敏である。江湖にもて囃される和書の中には、発想・結構において欧米名著の糟粕を嘗める体のものも少なくないが、この事典には松原氏の個性が横溢している。読者あるいは、記述が時として残虐卑陋の方面に偏するのを怪しむかもしれぬが、それもギリシア・ローマ社会の現実であった。西洋古典学における真に独創的な書物の出現を喜びたい。
★心にゆとりを与える事典、西洋古典への導きの糸★
[推薦]山内 昌之(東京大学大学院教授 国際関係史・イスラム史)
西洋の古典は、古代ギリシアやローマの神話伝説を通して日本人の心の一部にもなっている。それは欧米の文学や歴史の理解を助けるだけでなく、日本人が世界の政治経済の動きを理解しながら生きる上でも心にゆとりを与えてくれる。松原國師氏の『西洋古典学事典』は、古代人の文筆や生活風俗だけでなく、芸術から建築や科学技術に及ぶ広範囲の項目を一冊の本に収めており、学術的に驚異の労作である。また、挿絵はもとより王家や名家の系図は見ているだけでも想像力が刺激される。読むだけでなく見るだけでも楽しい事典なのだ。アラビア語やペルシア語などの表記を載せ東洋への眼差しを忘れないのも素晴らしい。プロメテウスの火やエラトステネスの篩といった言葉の由来を懐かしく探るのも楽しいだろう。松原氏の新著は、私の好きな西洋古典叢書を読む時にもこよなき導きの糸になりそうだ。
【本書の特長】
● 本事典が扱う範囲は、エーゲ海文明から、西ヨーロッパでは西ローマ帝国滅亡(476年)、東ヨーロッパではユースティーニアーヌス1世の死去(565年)まで、紀元前6世紀から紀元後6世紀までのおよそ1200年間、すなわち、現在の西洋文明全般のルーツが成立する時期・地域全体を扱った。
● 見出し語を幅広く収録するだけでなく、同名の人名、地名についてもその違いが一目でわかるように配慮した。例えば、「アレクサンドリア」という地名だけでも8つ、「プトレマイオス」という人名だけでも、30人が収録されている。
● 見出し項目が登場するギリシア・ローマの古典書を説明文の後に掲げている。これによって、例えば「オイディプス王」の伝説について、ホメロス『オデュッセイア』(11巻271行)など16の古典文献のどの箇所に記載されているかが一目でわかり、さらなる調査に資するように配慮されている。
● 各見出しには、ギリシア語、ラテン語はもとより、英仏独伊西露など現代のヨーロッパ諸語形、時にはアラビア語、古ペルシア語、トルコ語、コプト語、ヘブライ語、前ギリシア語である線文字B、漢語、等々の表記を掲載。西欧・イスラム世界で、ギリシャ・ラテンの諸文明がどのように受容されたかが分かる。
● 項目のみ解説した古典学事典は、オクスフォード出版局等からも出されているが、本書には、世界的に類をみない膨大な系図535点(本文中の小系図418点、巻末の大系図117点)、年表、地図を収載している。特に、ローマの共和政期、帝政期の主要な人物の入り組んだ婚姻関係が詳細に示され、古典学研究のみならず、文学や演劇など他の芸術諸分野の創造活動にも、非常に役立つものとなっている。
● 読者の便宜をはかり、和文索引、欧文索引も巻末に配し、和文索引には、見出し項目以外に、本事典に登場するさまざまな人名、地名もすべて収録した。
第6回 ゲスナー賞 銀賞
『読売新聞』'10.6.28朝刊 文化面
『京都新聞』'10.7.1夕刊
『中日新聞』『東京新聞』'10.7.4 朝刊 読書面
『京都新聞』'10.7.25朝刊1面、松岡正剛「本の大路小路」
『日本経済新聞』'10.8.4朝刊 文化面
『西洋古典学研究』LIX、131-133頁、評者:橋本隆夫氏
西洋古典学研究者。
昭和27年(1952年)京都市生まれ。
東京大学大学院修士課程修了。
専攻 西洋古典学、比較神話学、美術史学。
主な翻訳書として、『古代ギリシア・ローマの都市』(国文社)、『図解 古代ローマ』(東京書籍)、『図解 古代ギリシア』(東京書籍)、 『図解 古代エジプト』(東京書籍)などがある。
本 文
巻末付録
A.巻末系図
B.年 表
C.度量衡
D.地 図
索 引
あとがき