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津波被災と再定住

コミュニティのレジリエンスを支える

前田 昌弘

A5上製, 400 pages

ISBN: 9784876988969

pub. date: 02/16

  • Price : JPY 4,300 (with tax: JPY 4,730)
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内容

自然災害などによって「再定住」を余儀なくされた人びとが直面する生活再建上の問題について、理論的な検討と具体的な事例をもとに論じる。2004年インド洋津波後の継続的調査にもとづいて再定住の論点と方法を体系化した本書は、東日本大震災における再定住のハード面の計画の見直しやソフト面での被災者支援のあり方を検討する上でも有益である。

受賞

都市住宅学会 2017年度学会賞・著作賞

書評

『地理科学』72-1(2017.1)、34-36頁、評者:河本大地氏
『アジア経済』Vol.58 No.2(2017年6月)、168-172頁、評者:日下部尚徳氏

プロフィール

前田 昌弘(まえだ まさひろ)
1980年 奈良県生まれ
2004年 京都大学工学部卒業
京都大学大学院工学研究科修士課程,同・博士後期課程,日本学術振興会特別研究員(DC2),京都大学グローバルリーダー養成ユニット研究員,日本学術振興会特別研究員(PD)を経て
2013年 京都大学大学院工学研究科建築学専攻助教(現在に至る)
2012年 京都大学博士(工学)
研究テーマ 住宅計画,地域まちづくり,コミュニティ・デザイン

主要著書 
『世界住居誌』(2005年 共著)昭和堂,『自然災害と復興支援』(2010年 共著)明石書店,『Rural and Urban Sustainability Governance』(2014年 共著)United Nations University Press

目次

はじめに

第1章 序論――地域のレジリエンスを支える居住地計画
1.居住地計画の基本概念と再定住の課題――研究の背景
  1.1 社会関係の視点からみた居住地計画
  1.2 災害復興におけるレジリエンスと社会関係
  1.3 津波災害と再定住の問題への応用
2.本書の目的と課題
  2.1 被災者の生活再建を支える――本書の目的
  2.2 4つの研究課題
3.研究の対象と方法
  3.1 インド洋津波とスリランカ海村社会――研究の対象
  3.2 被災者支援の実務家との連携――調査の体制
  3.3 一事例のフィールド実験――研究の方法
4.先行研究と本書の位置づけ
  4.1 社会関係の視点からみた居住地計画に関連する先行研究
     ――社会諸科学を含めた整理
  4.2 平時―非常時の関係からみた居住地計画に関連する先行研究
     ――建築・都市計画学を中心とした整理
  4.3 本書の位置づけ
5.本書の構成
6.用語の定義

topics-1 非常時の適正技術―仮設住宅の住環境改善における支援と技術―

第2章 危機的移行としての再定住――“第二の津波”と呼ばれた復興の弊害
1.はじめに
2.資料収集と実地調査――調査について
  2.1 再定住地の計画資料の収集
  2.2 被災者の移住記録の閲覧
  2.3 再定住地の現地実態調査
3.未曾有の津波災害,そして復興
  3.1 スリランカを襲った大津波
  3.2 援助の受け入れと復興事業の開始
4.再建,あるいは移住――線引きされる被災地
  4.1 住宅再建支援の内容
  4.2 住宅再建支援をめぐる議論
5.再定住地の計画内容の分析
  5.1 住宅立地
  5.2 住宅地規模
  5.3 住宅形式
  5.4 街路形状
  5.5 生活施設
6.再定住地に移り住む人々
  6.1 再定住地への世帯移動の量的分析
  6.2 再定住地における生活の実態
7.小結
  7.1 津波被災と再定住に起因した環境変化
  7.2 生活・仕事に影響する物的環境の要素
  7.3 住宅復興における被災者の居住地選択

topics-2 原発事故からの避難と住情報支援

第3章 暮らしの再建をはかるフレームの構築
1.はじめに
  1.1 社会関係から暮らしの再建をはかる――本章の目的
  1.2 災害等に起因する居住地移転への対応に関する既往研究
  1.3 社会関係の抽出と分析――研究の方法
2.スリランカ海村社会における社会関係の諸相
  2.1 地縁(ガマ,ワッタ)
  2.2 血縁(ゲー,ゲダラ,パウラ,ワーサガマ)
  2.3 地縁・血縁以外
3.3つの社会関係
  3.1 地縁
  3.2 血縁
  3.3 マイクロクレジットの関係
4.住宅敷地の所有・利用関係――権利関係
5.結合原理について
  5.1 「空間を介した関係」と「人を介した関係」
  5.2 「選択的関係」と「非選択的関係」
6.暮らしの再建をはかるフレーム
  6.1 社会関係の継承・再編状況の把握
  6.2 社会関係相互の規定性の検証
  6.3 社会関係が果たす役割の解明
7.小結
  7.1 生活・仕事の継続に関わる社会関係の抽出
  7.2 社会関係の変化を記述する方法の提示
  7.3 社会関係相互の規定性を検証する方法の構築

topics-3 支援と“信頼”構築―“よそ者”による支援が成り立つとき―

第4章 レジリエントな再定住は可能か
    ――もとの社会関係を起点として考える
1.はじめに
2.社会関係の起点を探る――調査と分析の方法について
  2.1 南部州ウェリガマ郡の津波被災集落――調査対象
  2.2 社会関係と権利関係の実態把握――調査内容
  2.3 社会関係を継承する再定住の検討――分析方法
3.被災集落における社会関係の実態
  3.1 被災集落・ペラナ村ワッタCの概要
  3.2 社会関係と住宅敷地所有・利用関係の実態
  3.3 住宅敷地所有・利用関係の事例
4.社会関係を継承する再定住のパタン
  4.1 完結型1:従前居住地完結型
  4.2 完結型2:再定住地完結型
  4.3 補完型:従前居住地――再定住地補完型
5.小結
  5.1 既存の社会関係および権利関係の実態
  5.2 社会関係および権利関係の再編可能性

topics-4 縮退化時代の再定住地計画―東日本大震災と災害公営住宅―

第5章 コミュニティにおける結合の原理と実際
1.はじめに
  1.1 社会関係の継承・再編をとらえる――本章の目的
  1.2 災害復興におけるコミュニティ維持の取り組み
  1.3 本章の構成
2.対象社会の特徴と再定住の概要――調査について
  2.1 シンハラ人社会の家族構造
  2.2 調査対象の概要
  2.3 社会関係の実態調査と分析
3.コミュニティの継承・再編の実態
4.社会関係は組み換え可能か――相互規定性の分析
  4.1 社会関係の組み合わせパタン
  4.2 パタンの変化と相互規定性
  4.3 その他の要素との関連性
5.小結
  5.1 社会関係および権利関係の継承・再編の実態
  5.2 マイクロクレジットの関係に対する規定性

topics-5 原子力災害被災者の再定住とコミュニティ・デザイン

第6章 暮らしの再建を支える社会関係
    ――マイクロクレジットを活かす仕組みと空間
1.はじめに
  1.1 マイクロクレジットを活かす――本章の目的
  1.2 既往研究と本章の位置づけ
  1.3 本章の構成
2.再定住地における課題と調査方法
  2.1 再定住地における暮らしの課題
  2.2 調査の概要
3.再定住地における支援活動
  3.1 マイクロクレジット等の活動プロセス
  3.2 貯蓄・融資の仕組み
4.暮らしの再建に活かされるマイクロクレジット
  4.1 融資の借入・返済と貯蓄の実績
  4.2 GMSL融資――NGOによる融資
  4.3 貯蓄グループ融資――住民間の融資
  4.4 融資の活用事例の分析
5.コミュニティ形成を促すマイクロクレジット
  5.1 住民の参加の動機および負担
  5.2 社会関係の継承・再編への影響
6.小結
  6.1 事例Gのマイクロクレジットの特色
  6.2 被災者の生活再建に対する効果
  6.3 コミュニティ形成に対する効果
  6.4 効果が発揮される環境条件

topics-6 建築とアイデンティティ―旧紅茶農園における長屋再生の実践―

補章1 分断される被災集落――移転ありきの復興計画の弊害
1.はじめに
2.調査と分析の視点
  2.1 南西岸の2つの被災集落――調査対象
  2.2 津波被災前後の居住環境の比較――分析の視点
3.“迅速な復興”の功罪――ヒッカドゥワにおける集落の分断
  3.1 瓦礫の山の中からの復興
  3.2 外部者主導による住宅再建の実際
  3.3 復興計画がもたらした格差と分断
4.復興から取り残される人々
  ――モラトゥワにおける不法占拠居住者の孤立
  4.1 看過されてきた都市問題
  4.2 住民による自力住宅再建の実際
  4.3 積み残された居住環境問題
5.小結
  5.1 政府・ドナー主導の住宅再建の成果と問題
  5.2 居住者主導の住宅再建の可能性と限界
  5.3 居住地移転を前提とする復興計画の問題

補章2 ジャングルへと還る再定住地
    ――津波から約9年が経過した再定住地の変化
1.はじめに
2.2時点の比較検討――調査の概票
3.再定住地は住み続けられているか
  3.1 再定住地再訪――ウェリガマ郡における計画と結果
  3.2 インフォーマルな取引による居住者の入れ替わり
  3.3 漁家世帯の存続における生活・仕事の場の分離
  3.4 行政・支援者の撤退に伴う共用空間の管理の放棄
4.“成功”事例・再定住地Gのその後
  4.1 再定住地Gにおける暮らしと居住環境の変遷
  4.2 時間経過を踏まえた再定住地計画の評価
5.小結

第7章 結論――レジリエントな再定住にむけた可能性と課題
1.本書のまとめ
  1.1 危機的移行としての再定住――“第二の津波”と呼ばれた復興
  1.2 フレームの構築――社会関係の視点からみた再定住地計画
  1.3 レジリエントな再定住の可能性
     ――コミュニティの結合原理と実際から探る
  1.4 生活・仕事を支える社会関係と空間
     ――マイクロクレジットの効果が発揮される機構を通じて
2.本書の結論
  2.1 居住地移転の“失敗”と“成功”の意味について
  2.2 再定住地の“成功”事例が備えていた環境条件
  2.3 復興の選択肢として再定住地の計画が考慮すべき条件
3.提言と研究成果の応用
  ――東日本大震災および将来の災害からの復興を見据えて
  3.1 提言――自然災害後の再定住計画の原則
  3.2 研究成果の応用――今後の研究課題

あとがき
参考文献一覧
索引
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