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天然資源を誰が管理するのか 権威的支配が崩壊し,社会的亀裂を抑えてきた圧力が解かれた今,インドネシアは,新たな不安定要因を抱えている。しかし,対立が暴力に及ぶ地域もあれば,そうでない地域もある。インドネシアの中でも最も資源豊かでかつ多民族・多宗教社会であるカリマンタンを舞台に,暴力政治を回避する途を探る。
『アジア・アフリカ地域研究』2015年 第15-1号、評者:見市建氏
『東南アジア研究』53巻第2号(2016年1月)、289-292頁、評者:今村祥子氏
『東南アジア研究』53巻第2号(2016年1月)、289-292頁、評者:今村祥子氏
森下 明子(もりした あきこ)
1977年 和歌山県生まれ。2006年,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(東南アジア地域研究専攻)修了。日本財団アジア・フェロー,日本学術振興会特別研究員(PD),在マレーシア日本国大使館専門調査員,京都大学東南アジア研究所特定研究員などを経て,2014年より京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター。博士(地域研究)。主なフィールドはインドネシア及びマレーシア政治研究。専門は資源・環境政治。
主な著作,論文に「インドネシアの天然資源と政治」(『月刊インドネシア』6月号,2013),「サラワクの森林開発をめぐる利権構造」(昭和堂『ボルネオの〈里〉の環境学』,2013),「2009年国会議員にみるインドネシアの政党政治家と政党の変化」(アジア経済研究所『2009年インドネシアの総選挙』,2010),Prosperous in the Provinces (Inside Indonesia 104, 2011),Contesting Power in Indonesia’s Resource-Rich Regions in the Era of Decentralization: New Strategy for the Central Control over the Regions (Indonesia 86, 2008)など。
1977年 和歌山県生まれ。2006年,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(東南アジア地域研究専攻)修了。日本財団アジア・フェロー,日本学術振興会特別研究員(PD),在マレーシア日本国大使館専門調査員,京都大学東南アジア研究所特定研究員などを経て,2014年より京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター。博士(地域研究)。主なフィールドはインドネシア及びマレーシア政治研究。専門は資源・環境政治。
主な著作,論文に「インドネシアの天然資源と政治」(『月刊インドネシア』6月号,2013),「サラワクの森林開発をめぐる利権構造」(昭和堂『ボルネオの〈里〉の環境学』,2013),「2009年国会議員にみるインドネシアの政党政治家と政党の変化」(アジア経済研究所『2009年インドネシアの総選挙』,2010),Prosperous in the Provinces (Inside Indonesia 104, 2011),Contesting Power in Indonesia’s Resource-Rich Regions in the Era of Decentralization: New Strategy for the Central Control over the Regions (Indonesia 86, 2008)など。
序 章 資源国における天然資源と暴力
第1章 暴力・天然資源・地方政治
1.1 「紛争」,「民族」,「暴力」
1.2 天然資源と暴力的紛争の結びつき
1.3 インドネシア政治研究にみる政治と暴力(1)―スハルト体制
(1) アチェ州の分離独立運動
(2) スハルト体制下における政治的安定
1.4 インドネシア政治研究にみる政治と暴力(2)―民主化・地方分権化後
(1) 政治的競争パターンの変化―政治的手段としての暴力の使用
(2) 地方権力アクターの連続性
(3) 中央・地方関係の変化―中央政府の影響力の低下
1.5 政治と暴力の結びつきに関するもう一つの視点―エスニック・ポリティクス
第2章 カリマンタンの民族紛争
2.1 カリマンタンの地理・生態・経済・社会
(1) カリマンタンの自然的特徴
(2) カリマンタンの社会・経済的特徴
2.2 民族紛争とその背景
(1) 西カリマンタン州の民族紛争
(2) 中カリマンタン州の民族紛争
2.3 西・中カリマンタン州の民族紛争の特殊性
第3章 スハルト時代における権力と資源の分配
3.1 地方首長ポストの分配
(1) スハルト時代の地方行政制度
(2) 東カリマンタン州における地方首長の変遷
(3) 中カリマンタン州における地方首長の変遷
(4) 西カリマンタン州における地方首長の変遷
3.2 天然資源開発をめぐる利権の分配
(1) 石油・天然ガス
(2) 石油・天然ガス以外の鉱物資源
(3) 森林資源
第4章 民主化・地方分権化後の地方首長の変化
4.1 スハルト体制崩壊から民主化・地方分権化へ
(1) 地方政府の新たな行政権限と経済的利権
(2) 民主的地方首長選挙の導入
4.2 カリマンタンの地方権力アクターたちとその特徴
(1) 東カリマンタン州の地方首長たち
(2) 中カリマンタン州の地方首長と地方ボス
(3) 西カリマンタン州の地方首長たち
4.3 地方分権化後の地方政治構造と地方経済構造の関係
第5章 東カリマンタン州の地方政治・経済構造―中央政治に翻弄される州政治エリートたち
5.1 東カリマンタン州の社会的特徴とスハルト時代の政治構造
(1) 民族・宗教的多様性
(2) 地方分権化以前の政治構造
5.2 東カリマンタン州の経済構造
5.3 2003年州知事選挙
5.4 スワルナ州知事による政財界人脈の構築
(1) スハルト時代のスワルナ
(2) スワルナ州知事第一期目(1998~2003)
5.5 2003年州知事選挙におけるスワルナの協力者たち
5.6 ダヤック人政治エリートたちの台頭過程
5.7 中央政界の再編と地方権力エリートの盛衰
(1) スワルナの政治的衰退とシャウカニの台頭
(2) シャウカニの政治的衰退
(3) アワン・ファルク・イシャの政治的台頭と2008年州知事選挙
5.8 2013年州知事選挙と今後の見通し
第6章 中カリマンタン州の地方政治・経済構造―地元実業家の政治的台頭
6.1 中カリマンタン州の社会的特徴とスハルト時代の政治構造
(1) ダヤック人の多様性
(2) 地方分権化以前の政治構造
6.2 中カリマンタン州の経済構造
6.3 2000年州知事選挙
6.4 ハスヌル・グループ会長スライマン
(1) 小売業者から企業グループ会長へ
(2) 地方政界への進出
(3) 地方首長の擁立
(4) さらなる政治・経済的利権を求めて―自治体新設運動の推進
6.5 タンジュン・リンガ・グループ会長アブドゥル・ラシッド
(1) コタワリンギン地方の木材マフィア
(2) ラシッド・ファミリーの政界進出
(3) 地方首長の擁立
(4) 違法木材ビジネスの保護政策
6.6 キリスト教徒のダヤック人政治エリート
(1) ウソップの社会的台頭
(2) LMMDD-KT の政治的限界
6.7 直接選挙制導入後の政治的展開
(1) 2005年州知事選挙におけるキリスト教徒のダヤック人州知事の誕生
(2) テラス・ナランの支持基盤の拡大と2010年州知事選挙
(3) キリスト教徒のダヤック人政治エリートの政治的限界
第7章 西カリマンタン州の地方政治・経済構造―群雄割拠する中小規模の地方有力者たち
7.1 西カリマンタン州の社会的特徴とスハルト時代の政治構造
(1) ダヤック人の民族的流動性
(2) 地方分権化以前の政治構造
7.2 西カリマンタン州の経済構造
(1) 木材産業を担う華人業者たち
(2) 新たな産業の発展とその担い手
(3) 跋扈する労働者ボスたち
7.3 2008年州知事選挙
7.4 カリスマ的民族指導者の不在
(1) ダヤック人指導者ウファーン・ウライの死
(2) ダヤック人組織の設立
(3) マレー人組織の設立
7.5 コーネリスの台頭過程
(1) スハルト時代のコーネリス
(2) 県議会議事堂焼き討ち事件
(3) ランダック県知事選挙での当選
(4) 県知事から州知事へ
(5) 経済的影響力の拡大
7.6 2012年州知事選挙―県政治エリートたちの権力争い
7.7 西カリマンタン州の政治的特徴
(1) 暴力の使用
(2) 県知事の地方ボス化
終 章 資源産出地域における政治と暴力
第1章 暴力・天然資源・地方政治
1.1 「紛争」,「民族」,「暴力」
1.2 天然資源と暴力的紛争の結びつき
1.3 インドネシア政治研究にみる政治と暴力(1)―スハルト体制
(1) アチェ州の分離独立運動
(2) スハルト体制下における政治的安定
1.4 インドネシア政治研究にみる政治と暴力(2)―民主化・地方分権化後
(1) 政治的競争パターンの変化―政治的手段としての暴力の使用
(2) 地方権力アクターの連続性
(3) 中央・地方関係の変化―中央政府の影響力の低下
1.5 政治と暴力の結びつきに関するもう一つの視点―エスニック・ポリティクス
第2章 カリマンタンの民族紛争
2.1 カリマンタンの地理・生態・経済・社会
(1) カリマンタンの自然的特徴
(2) カリマンタンの社会・経済的特徴
2.2 民族紛争とその背景
(1) 西カリマンタン州の民族紛争
(2) 中カリマンタン州の民族紛争
2.3 西・中カリマンタン州の民族紛争の特殊性
第3章 スハルト時代における権力と資源の分配
3.1 地方首長ポストの分配
(1) スハルト時代の地方行政制度
(2) 東カリマンタン州における地方首長の変遷
(3) 中カリマンタン州における地方首長の変遷
(4) 西カリマンタン州における地方首長の変遷
3.2 天然資源開発をめぐる利権の分配
(1) 石油・天然ガス
(2) 石油・天然ガス以外の鉱物資源
(3) 森林資源
第4章 民主化・地方分権化後の地方首長の変化
4.1 スハルト体制崩壊から民主化・地方分権化へ
(1) 地方政府の新たな行政権限と経済的利権
(2) 民主的地方首長選挙の導入
4.2 カリマンタンの地方権力アクターたちとその特徴
(1) 東カリマンタン州の地方首長たち
(2) 中カリマンタン州の地方首長と地方ボス
(3) 西カリマンタン州の地方首長たち
4.3 地方分権化後の地方政治構造と地方経済構造の関係
第5章 東カリマンタン州の地方政治・経済構造―中央政治に翻弄される州政治エリートたち
5.1 東カリマンタン州の社会的特徴とスハルト時代の政治構造
(1) 民族・宗教的多様性
(2) 地方分権化以前の政治構造
5.2 東カリマンタン州の経済構造
5.3 2003年州知事選挙
5.4 スワルナ州知事による政財界人脈の構築
(1) スハルト時代のスワルナ
(2) スワルナ州知事第一期目(1998~2003)
5.5 2003年州知事選挙におけるスワルナの協力者たち
5.6 ダヤック人政治エリートたちの台頭過程
5.7 中央政界の再編と地方権力エリートの盛衰
(1) スワルナの政治的衰退とシャウカニの台頭
(2) シャウカニの政治的衰退
(3) アワン・ファルク・イシャの政治的台頭と2008年州知事選挙
5.8 2013年州知事選挙と今後の見通し
第6章 中カリマンタン州の地方政治・経済構造―地元実業家の政治的台頭
6.1 中カリマンタン州の社会的特徴とスハルト時代の政治構造
(1) ダヤック人の多様性
(2) 地方分権化以前の政治構造
6.2 中カリマンタン州の経済構造
6.3 2000年州知事選挙
6.4 ハスヌル・グループ会長スライマン
(1) 小売業者から企業グループ会長へ
(2) 地方政界への進出
(3) 地方首長の擁立
(4) さらなる政治・経済的利権を求めて―自治体新設運動の推進
6.5 タンジュン・リンガ・グループ会長アブドゥル・ラシッド
(1) コタワリンギン地方の木材マフィア
(2) ラシッド・ファミリーの政界進出
(3) 地方首長の擁立
(4) 違法木材ビジネスの保護政策
6.6 キリスト教徒のダヤック人政治エリート
(1) ウソップの社会的台頭
(2) LMMDD-KT の政治的限界
6.7 直接選挙制導入後の政治的展開
(1) 2005年州知事選挙におけるキリスト教徒のダヤック人州知事の誕生
(2) テラス・ナランの支持基盤の拡大と2010年州知事選挙
(3) キリスト教徒のダヤック人政治エリートの政治的限界
第7章 西カリマンタン州の地方政治・経済構造―群雄割拠する中小規模の地方有力者たち
7.1 西カリマンタン州の社会的特徴とスハルト時代の政治構造
(1) ダヤック人の民族的流動性
(2) 地方分権化以前の政治構造
7.2 西カリマンタン州の経済構造
(1) 木材産業を担う華人業者たち
(2) 新たな産業の発展とその担い手
(3) 跋扈する労働者ボスたち
7.3 2008年州知事選挙
7.4 カリスマ的民族指導者の不在
(1) ダヤック人指導者ウファーン・ウライの死
(2) ダヤック人組織の設立
(3) マレー人組織の設立
7.5 コーネリスの台頭過程
(1) スハルト時代のコーネリス
(2) 県議会議事堂焼き討ち事件
(3) ランダック県知事選挙での当選
(4) 県知事から州知事へ
(5) 経済的影響力の拡大
7.6 2012年州知事選挙―県政治エリートたちの権力争い
7.7 西カリマンタン州の政治的特徴
(1) 暴力の使用
(2) 県知事の地方ボス化
終 章 資源産出地域における政治と暴力