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18世紀スコットランドの哲学者ヒュームの主著『人間本性論』は、これまで認識論的な側面のみ注目されてきたが、むしろ全体的テーマは人間論にあり、その根幹には倫理学がある。ヒュームの倫理思想は功利主義にもカント的な義務論にも属さない「徳(virtue)の倫理学」であることを示しながら、その現代的な意義を明らかにする。
『イギリス哲学研究』第39号(2016年)、97-98頁、評者:島内明文氏
林 誓雄(はやし せいゆう)
1979年京都府生まれ。
2009年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。
2012年京都大学博士(文学)。
専攻、哲学・倫理学。
現在、大谷大学任期制助教。
研究論文
「ヒューム道徳哲学における一般的観点と一般的規則」(『倫理学研究』第38号)、「ヒュームにおける道徳感情と道徳的な行為の動機づけ」(『倫理学年報』第58号)、「ヒュームにおける社交・会話と人間性の増幅——自然的徳論に関する一考察」(『イギリス哲学研究』第33号)、「ヒューム正義論における利益、効用、そして社会」(『哲学』第63号)、「ヒューム道徳哲学における「人々の意見」」(『倫理学研究』第43号)、他。
1979年京都府生まれ。
2009年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。
2012年京都大学博士(文学)。
専攻、哲学・倫理学。
現在、大谷大学任期制助教。
研究論文
「ヒューム道徳哲学における一般的観点と一般的規則」(『倫理学研究』第38号)、「ヒュームにおける道徳感情と道徳的な行為の動機づけ」(『倫理学年報』第58号)、「ヒュームにおける社交・会話と人間性の増幅——自然的徳論に関する一考察」(『イギリス哲学研究』第33号)、「ヒューム正義論における利益、効用、そして社会」(『哲学』第63号)、「ヒューム道徳哲学における「人々の意見」」(『倫理学研究』第43号)、他。
凡例
はじめに
一 問題の所在と本書の目標
二 ヒュームの位置、魅力と独創性
三 テクストに関する方針
四 本書の構成
第一部 認識論的な基礎
第 一 章 ヒュームの信念論
一 認識論をおさえておくべき理由
二 ヒュームの知覚論
三 「信念」の特徴
四 信念のもう一つの特徴 ——「心の作用」
五 「心の作用」が果たす役割
六 「真なる信念」と「偽なる信念」の区別
第 二 章 一般的規則と事実判断
一 「一般的規則」の一般的な特徴
二 想像力の一般的規則
三 陥る錯誤
四 知性の一般的規則
五 反省による信念の活気の減少
六 反省と「心の強さ」
七 極めて危険なディレンマ
第二部 道徳的評価と行為の動機づけ
第 三 章 ヒュームの「道徳的評価」論
一 一般的観点とその導入の背景
二 一般的観点は「道徳的観点」か?
三 「身近な人々の観点」としての一般的観点
四 道徳的評価の説明に見られる間隙
五 道徳的評価と一般的規則
(1)一般的規則 再考
(2)「習慣」と「反省」による一般的規則の区別
(3)道徳的評価の第一の体系 ——個人内部における評価の仕組み
(4)道徳的評価の第二の体系 ——社交や会話を通じた評価の仕組み
六 襤褸を纏った徳
七 徳の区分と一般的観点の関与
八 「人間」を見つめるということ
第 四 章 道徳的な行為の動機づけ
一 内在主義と外在主義 ——メタ倫理学とヒューム研究
二 道徳感情の正体? ——伝統的な二つの解釈
三 義務感による行為の動機づけ
四 道徳感情と行為の動機づけ
(1)「内在主義—間接情念」説
(2)「内在主義—直接情念」説
五 判断の「動機外在主義」解釈
(1)道徳感情・共感・欲求
(2)行為の動機づけと共感 ——徳倫理学的な動機づけのメカニズム
補 章 「欲求」の捉え方 ——「ヒューム主義」に関する一考察
一 欲求の命題主義的な捉え方とその問題点
(1)マイケル・スミスによるヒューム主義的信念—欲求モデル
(2)「適合の向き」の難点
二 ヒューミッシュモデル ——欲求の快楽主義的な捉え方
三 ヒューミッシュモデルの検討
第三部 徳の区分 ——人為と自然
第 五 章 人為的徳論
一 ヒュームのコンヴェンション論と「利益」の問題
二 コンヴェンションの形成とその背景
三 〈自己利益〉および〈共通する利益〉とは何か?
(1)〈自己利益〉と〈共通する利益〉
(2)〈共通する利益〉の内実
四 〈共通する利益〉と〈公共的な利益〉
(1)〈共通する利益〉と〈公共的な利益〉は同じものか?
(2)公共的な利益〉の内実
五 本解釈の検討
(1)〈公共的な利益〉と二つの社会
(2)〈公共的な効用〉とは何であったのか?
第 六 章 自然的徳と共感
一 自然的徳の特徴
二 共感と自然的徳の及ぶ範囲の拡張
(1)二種類の共感
(2)制限された共感と拡張された共感
第四部 「社交・会話」と「時間軸」
第 七 章 道徳と「社交・会話」
一 一般的観点の採用と社交・会話
二 ヒュームにおける「文明社会論」
(1)『人間本性論』における「文明社会論」
(2)社交・会話と「文明社会論」
三 社交・会話と人間性の増幅
(1)『道徳・政治・文芸論集』における社交・会話
(2)『道徳原理の探求』における「人間性」と「他者への関心」
四 社交・会話と自然的徳の涵養
第 八 章 「道徳」と「人々の意見」、そして「時間」
一 異なる「信念」の取り扱い
二 ヒュームの道徳論における「信念」に関する問題
(1)信念と道徳的行為の動機づけ
(2)人々の意見の「権威」と「不可謬性」
三 ヒュームの信念論 ふたたび
(1)信念の構成要素
(2)「心の作用」に対する一般的規則と反省の影響
四 人々の意見がもつ権威
(1)信念と意見、習慣と風習
(2)家庭での教育における習慣と風習の一致
(3)人々の意見が権威をもつとはいかなることか
五 人々の意見の不可謬性
(1)「完全な不可謬性」という問題
(2)信念の真偽と一般的規則
(3)人々の意見が不可謬であるとはいかなることか
(4)道徳の一般的規則と「時間軸」
終 章 社交と時間の倫理学
あとがき
参考文献
索引(人名/事項)
はじめに
一 問題の所在と本書の目標
二 ヒュームの位置、魅力と独創性
三 テクストに関する方針
四 本書の構成
第一部 認識論的な基礎
第 一 章 ヒュームの信念論
一 認識論をおさえておくべき理由
二 ヒュームの知覚論
三 「信念」の特徴
四 信念のもう一つの特徴 ——「心の作用」
五 「心の作用」が果たす役割
六 「真なる信念」と「偽なる信念」の区別
第 二 章 一般的規則と事実判断
一 「一般的規則」の一般的な特徴
二 想像力の一般的規則
三 陥る錯誤
四 知性の一般的規則
五 反省による信念の活気の減少
六 反省と「心の強さ」
七 極めて危険なディレンマ
第二部 道徳的評価と行為の動機づけ
第 三 章 ヒュームの「道徳的評価」論
一 一般的観点とその導入の背景
二 一般的観点は「道徳的観点」か?
三 「身近な人々の観点」としての一般的観点
四 道徳的評価の説明に見られる間隙
五 道徳的評価と一般的規則
(1)一般的規則 再考
(2)「習慣」と「反省」による一般的規則の区別
(3)道徳的評価の第一の体系 ——個人内部における評価の仕組み
(4)道徳的評価の第二の体系 ——社交や会話を通じた評価の仕組み
六 襤褸を纏った徳
七 徳の区分と一般的観点の関与
八 「人間」を見つめるということ
第 四 章 道徳的な行為の動機づけ
一 内在主義と外在主義 ——メタ倫理学とヒューム研究
二 道徳感情の正体? ——伝統的な二つの解釈
三 義務感による行為の動機づけ
四 道徳感情と行為の動機づけ
(1)「内在主義—間接情念」説
(2)「内在主義—直接情念」説
五 判断の「動機外在主義」解釈
(1)道徳感情・共感・欲求
(2)行為の動機づけと共感 ——徳倫理学的な動機づけのメカニズム
補 章 「欲求」の捉え方 ——「ヒューム主義」に関する一考察
一 欲求の命題主義的な捉え方とその問題点
(1)マイケル・スミスによるヒューム主義的信念—欲求モデル
(2)「適合の向き」の難点
二 ヒューミッシュモデル ——欲求の快楽主義的な捉え方
三 ヒューミッシュモデルの検討
第三部 徳の区分 ——人為と自然
第 五 章 人為的徳論
一 ヒュームのコンヴェンション論と「利益」の問題
二 コンヴェンションの形成とその背景
三 〈自己利益〉および〈共通する利益〉とは何か?
(1)〈自己利益〉と〈共通する利益〉
(2)〈共通する利益〉の内実
四 〈共通する利益〉と〈公共的な利益〉
(1)〈共通する利益〉と〈公共的な利益〉は同じものか?
(2)公共的な利益〉の内実
五 本解釈の検討
(1)〈公共的な利益〉と二つの社会
(2)〈公共的な効用〉とは何であったのか?
第 六 章 自然的徳と共感
一 自然的徳の特徴
二 共感と自然的徳の及ぶ範囲の拡張
(1)二種類の共感
(2)制限された共感と拡張された共感
第四部 「社交・会話」と「時間軸」
第 七 章 道徳と「社交・会話」
一 一般的観点の採用と社交・会話
二 ヒュームにおける「文明社会論」
(1)『人間本性論』における「文明社会論」
(2)社交・会話と「文明社会論」
三 社交・会話と人間性の増幅
(1)『道徳・政治・文芸論集』における社交・会話
(2)『道徳原理の探求』における「人間性」と「他者への関心」
四 社交・会話と自然的徳の涵養
第 八 章 「道徳」と「人々の意見」、そして「時間」
一 異なる「信念」の取り扱い
二 ヒュームの道徳論における「信念」に関する問題
(1)信念と道徳的行為の動機づけ
(2)人々の意見の「権威」と「不可謬性」
三 ヒュームの信念論 ふたたび
(1)信念の構成要素
(2)「心の作用」に対する一般的規則と反省の影響
四 人々の意見がもつ権威
(1)信念と意見、習慣と風習
(2)家庭での教育における習慣と風習の一致
(3)人々の意見が権威をもつとはいかなることか
五 人々の意見の不可謬性
(1)「完全な不可謬性」という問題
(2)信念の真偽と一般的規則
(3)人々の意見が不可謬であるとはいかなることか
(4)道徳の一般的規則と「時間軸」
終 章 社交と時間の倫理学
あとがき
参考文献
索引(人名/事項)