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シリーズ群集生態学 2

進化生物学からせまる

大串 隆之・近藤 倫生・吉田 丈人 編

A5並製, 327 pages

ISBN: 9784876983445

pub. date: 03/09

  • Price : JPY 2,900 (with tax: JPY 3,190)
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内容

生物間相互作用からみた進化とは? 遺伝情報は環境との相互作用の中で発現する.遺伝子型が同じでも環境が変化すれば違った姿形になり,環境が戻れば姿形も戻る「表現型可塑性」や、環境の変化が長く続いた場合にそれが遺伝子型へ及ぼす影響など,遺伝学と生態学の新たな連携によって,さまざまな謎が解き明かされる.

書評

『日本生態学会ニュースレター』'10年5月号

プロフィール

(50音順,*は編者)

石原 道博(いしはら みちひろ) 大阪府立大学大学院理学系研究科・講師
専門分野:進化生態学,個体群生態学,昆虫生態学
主著:『休眠の昆虫学』東海大学出版会(分担執筆),『これからの進化生態学』共立出版(共訳)
http://www.b.s.osakafu-u.ac.jp/~mishiha/

市野 隆雄(いちの たかお) 信州大学理学部・教授
専門分野:進化生物学,生物多様性科学,群集生態学
主著:『Pollination Ecology and the Rain Forest』Springer(分担執筆), 『Genes, Behaviors and Evolution of Social Insects』 Hokkaido University Press(分担執筆),『共進化の生態学』文一総合出版(分担執筆),『生物多様性とその保全』岩波書店(分担執筆),『群集生態学の現在』京都大学学術出版会(分担執筆),『花に引き寄せられる動物』平凡社(分担執筆),『ハチとアリの自然史』北海道大学図書刊行会(分担執筆),『昆虫個体群生態学の展開』京都大学学術出版会(分担執筆)
http://science.shinshu-u.ac.jp/~bios/Evo/itino/itinotakao.html

*大串 隆之(おおぐし たかゆき) 京都大学生態学研究センター・教授
専門分野:進化生態学,個体群生態学,群集生態学,生態系生態学,生物多様性科学
主著:『 Effects of Resource Distribution on Animal-Plant Interactions』 Academic Press(編著),『Ecological Communities: Plant Mediation in Indirect Interaction Webs』Cambridge University Press(編著),『Galling Arthropods and Their Associates: Ecology and Evolution』Springer(編著),『生物多様性科学のすすめ』丸善(編著),『さまざまな共生』平凡社(編著),『動物と植物の利用しあう関係』平凡社(編著),『生態系と群集をむすぶ』[シリーズ群集生態学4]京都大学学術出版会(編著),『メタ群集と空間スケール』[シリーズ群集生態学5]京都大学学術出版会(編著)
http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~ohgushi/index.html

河田 雅圭(かわた まさかど) 東北大学大学院生命科学研究科・教授
専門分野:生態学,進化生物学
主著:『 はじめての進化論』 講談社,『進化論の見方』紀伊国屋書店,『講座進化 第一巻』東京大学出版会(分担執筆)『?Macroecology: Concept and Consequences』Blackwell(分担執筆),『シリーズ進化学6 行動・生態の進化』岩波書店(分担執筆)
http://meme.biology.tohoku.ac.jp/kawata/index.html

岸田 治(きしだ おさむ) 京都大学生態学研究センター・日本学術振興会特別研究員
専門分野:群集生態学,進化生態学

*近藤 倫生(こんどう みちお) 龍谷大学理工学部・准教授,科学技術振興機構・さきがけ研究員
専門分野:理論生態学,群集生態学,進化生態学
主著:『Dynamic Food Webs: Multispecies Assemblages, Ecosystem Development, and Environmental Change』Academic Press(分担執筆),『Aquatic Food Webs: an Ecosystem Approach』Oxford University Press(分担執筆),『生態系と群集をむすぶ』[シリーズ群集生態学4]京都大学学術出版会(編著),『メタ群集と空間スケール』[シリーズ群集生態学5]京都大学学術出版会(編著)


佐々木 顕(ささき あきら) 総合研究大学院大学・教授
専門分野:理論生態学・集団遺伝学・進化生物学
主著:『感染症の数理モデル』培風館(2008)(分担執筆),『Disease evolution: Models, concepts, and data analyses』American Mathematical Society (2006)(分担執筆),『生態・行動の進化学』 岩波書店(2006)(分担執筆),?『Adaptive Dynamics of Infectious Diseases: In pursuit of?virulence management』 Cambridge University Press (2002)(分担執筆),『数理生態学』共立出版(1997)(分担執筆)

清水 健太郎(しみず けんたろう) チューリヒ大学理学部・准教授
専門分野:進化生態ゲノミクス,分子遺伝学
主著:『植物の進化』[植物細胞工学シリーズ23] 秀潤社(編著),『Evolutionary Genetics』Oxford University Press(分担執筆),「生物の形の多様性と進化」 裳華房(分担執筆),「花:性と生殖の分子生物学」学会出版センター(分担執筆)
http://botserv1.uzh.ch/home/shimizu/index.html

曽田 貞滋(そた ていじ) 京都大学大学院理学研究科・教授
専門分野:進化生態学,群集生態学
主著:『オサムシの春夏秋冬:生活史の進化と種多様性』京都大学学術出版会,『動物の多様性』[シリーズ21世紀の動物科学2]培風館(分担執筆),『群集生態学の現在』京都大学学術出版会(分担執筆)
http://ecol.zool.kyoto-u.ac.jp/homepage/sota/index.html

竹内 やよい(たけうち やよい) 京都大学農学研究科・特別研究員
専門分野:植物生態学,分子生態学

千葉 聡(ちば さとし) 東北大学大学院生命科学研究科・准教授
専門分野:進化生物学,個体群生態学,群集生態学,古生物学
主著:『生態学入門』東京化学同人(分担執筆),『古生物の進化 』朝倉書店 (分担執筆),『脱環境ホルモンの社会 』三学出版(分担執筆)
http://www12.ocn.ne.jp/~mand/labJ.html

東樹 宏和(とうじゅ ひろかず) 日本学術振興会特別研究員(SPD)
専門分野:進化生物学,生態学
主著:『共進化の生態学:生物間相互作用が織りなす多様性』(分担執筆)
http://mywiki.jp/curculio/Hirokazu%20TOJU/

西村 欣也(にしむら きんや) 北海道大学大学院水産科学研究院・准教授
専門分野:進化生態学,行動生態学
主著:『水生生物の卵サイズ』海游社(分担執筆)
http://aleph.fish.hokudai.ac.jp

*吉田 丈人(よしだ たけひと) 東京大学大学院総合文化研究科・准教授
専門分野:湖沼生態学,個体群生態学
主著:『 Population Dynamics and Laboratory Ecology』Elsevier(分担執筆),『陸水の事典』講談社(分担執筆)
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/yoshidalab

目次

口絵
はじめに

第1章 適応による形質の変化が個体群と群集の動態に影響する(吉田丈人・近藤倫生)
1 適応による形質変化が生物間相互作用に影響する
(1)適応とは
(2)適応のメカニズムと形質変化
(3)形質変化による相互作用の改変
2 形質変化が個体群動態に影響する—単純な系の場合
(1)可塑性が引き起こす個体群動態
(2)学習が引き起こす個体群動態
(3)進化が引き起こす個体群動態
(4)個体群動態への影響は形質変化のメカニズムに依存するか?
3 複雑な生物群集における形質変化の役割
(1)群集における適応
(2)食物網における適応
(3)適応的捕食と食物網の構造
(4)適応的な形質の変化と栄養モジュールの動態
(5)食物網の動態と適応
4 今後の展望
(1)形質変化の群集内不均一性
(2)形質変化の時空間スケールと個体群や群集への影響
(3)トレードオフの重要性
(4)まとめ

第2章 適応と生物群集をむすぶ間接相互作用(石原道博・大串隆之)
1 はじめに
2 間接相互作用とは何か?
3 形質介在型の間接相互作用はなぜ普遍的か?
(1)陸域生態系における間接相互作用
(2)水域生態系における間接相互作用
(3)密度介在型と形質介在型の相対的な重要性
4 間接相互作用と進化
(1)間接相互作用が生み出す共進化
(2)間接相互作用が進化の方向を変える
5 今後の展望
(1)個体の形質から生物多様性の維持創出機構を解明する
(2)進化的な観点から生物群集を理解する
(3)生物の適応が間接相互作用を通して生物群集を変える

第3章 生物群集を形作る進化の歴史(河田雅圭・千葉 聡)
1 群集構造と系統的・進化的な制約
(1)進化プロセスと群集形成
(2)群集の構成と系統関系
(3)ニッチ形質の保守性(niche conservatism)とニッチの分化
(4)系統関係とニッチ形質の進化はどのように群集に影響するか?
(5)種分化・絶滅・移動分散と種多様性
(6)種分化率に影響する要因
2 大規模イベントの生物群集への影響
(1)大量絶滅
(2)絶滅の選択性
(3)群集の復帰過程
(4)現代における絶滅とその生物群集への影響
3 将来の研究への展望

第4章 多種系における表現型可塑性(西村欣也・岸田 治)
1 はじめに
2 食物網における捕食者—被食者の攻防
(1)オタマジャクシの池
(2)エゾサンショウウオ幼生の捕食危機に対処するオタマジャクシ
(3)ヤゴの捕食危機に対処するオタマジャクシ
(4)オタマジャクシの誘導防御形態の臨機応変性
(5)エゾサンショウウオ幼生の誘導捕食形態
(6)防御—攻撃の共進化
(7)サンショウウオのジレンマ—攻撃か防御か?
3 生態学における表現型可塑性研究の方向性
(1)誘導防御形質の遺伝的基盤
(2)エコゲノミクスの発展と可塑性研究
(3)表現型可塑性の個体群動態・群集構造への波及
(4)生物群集の中の表現型可塑性

第5章 共進化の地理的モザイクと生物群集(東樹宏和・曽田貞滋)
1 共進化の地理的変異
(1)種レベルでの共進化と個体群レベルでの共進化
(2)共進化の地理的モザイク仮説
(3)ツバキとゾウムシの軍拡競走
2 自然淘汰の地理的モザイクとその形成要因
(1)「遺伝子型×遺伝子型×環境」の相互作用
(2)軍拡競走の生産性勾配—細菌と溶菌性ファージの実験
(3)軍拡競走の生産性勾配—ツバキとシギゾウムシの野外研究
3 適応進化と群集構造
(1)群集の種構成が適応進化を左右する
(2)適応進化から群集構造へのフィードバック
4 移動分散とメタ群集レベルでみた共進化
(1)遺伝子流動や遺伝的浮動と局所適応
(2)移動・分散能力が異なる種で構成されるメタ群集
(3)遺伝子流動が共進化を加速する
5 地理的モザイクの視点による異分野の統合
(1)群集生態学・進化生物学・遺伝学における空間構造の解明
(2)群集生態学と共進化研究の共同—拡散共進化への展開
(3)群集生態学への分子遺伝学的手法の導入(群集遺伝学)
(4)共進化研究と遺伝学の融合(共進化遺伝学)
6 さいごに

第6章 生物群集の進化—系統学的アプローチ(市野隆雄)
1 はじめに
2 系統レベルではたらく進化のプロセス
(1)系統進化と小進化
(2)系統淘汰と自然淘汰
(3)なぜ系統淘汰が重要か?
3 系統淘汰を検出するための手法—姉妹群比較法
4 群集の進化的遷移
(1)ダーウィンの分岐の原理
(2)群集の進化的遷移とは何か?
(3)群集の進化的遷移の証拠
(4)進化的遷移の方向—姉妹群比較からの示唆
(5)どのような群集でどのような種間関係が進化するか?—熱帯における相利関係の進化
5 群集が多様化していくプロセスの解明に向けて
(1)種間系統樹からの研究方向
(2)種内の分子地理系統樹からの研究方向—共進化の影響

コラム1 生態ゲノミクス—適応・群集研究への新たなアプローチ(清水健太郎・竹内やよい)
1 はじめに
2 ゲノミクスと分子遺伝学の手法
(1)QTLマッピング(量的形質遺伝子座マッピング,Quantitative Trait Locus Mapping)
(2)ポジショナルクローニング
(3)連鎖不平衡マッピング
(4)トランスジェニック技術(形質転換技術)
(5)マイクロアレイ(DNAチップ)解析
(6)次世代の塩基配列決定装置(次世代シークエンサー)
3 ゲノミクスを用いた自然淘汰の解析—シロイヌナズナの適応を例に
(1)集団のDNA変異を用いた自然淘汰の検出法
(2)シロイヌナズナを用いた統合的研究例
4 群集遺伝学—ポプラを例に
(1)集団内の遺伝的多様性が群集に与える影響
(2)生物・生態系と相互作用をもつ遺伝子の特定
5 群集ゲノミクス—群集構造と機能の把握
6 展望—ゲノミクスのインパクト

コラム2 群集生態モデルと進化動態—資源分割理論を例に(佐々木 顕)
1 はじめに
2 連続ニッチ空間の競争方程式
(1)侵入可能性
(2)1種群集への侵入可能性と限界類似度
(3)Adaptive Dynamics入門
3 資源競争による群集の構築とAdaptive Dynamics
(1)進化的安定性
(2)到達可能性と進化的安定性は違う
(3)進化的分岐
(4)離散原理
(5)PIP
(6)分断淘汰と生殖隔離による種分化
4 MacArthurの群集理論と最小原理
5 群集の進化の理論化にむけて

終 章 群集生態学と進化生物学の融合から見えてくるもの(吉田丈人・近藤倫生・大串隆之)
1 生物群集に対する適応の影響
2 適応に対する生物群集の影響
3 新たな課題
(1)さまざまな相互作用への適応の影響
(2)多種系の動態への適応の影響
(3)系統的・生物地理的な制約と生態的・局所的な制約の相対的な重要性
(4)多種系における適応
(5)大進化をもたらした生物群集
4 あらためて適応とは?
(1)変異—適応をもたらす源
(2)適応と不適応
(3)広義の適応
5 おわりに

引用文献
索引
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