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環境人間学と地域

インダス 南アジア基層世界を探る

長田 俊樹 編著

A5上製, 476 pages

ISBN: 9784876983001

pub. date: 10/13

  • Price : JPY 5,500 (with tax: JPY 6,050)
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内容

強大な国家権力を持たず、大河にも依存しなかった異色の古代文明、インダス。その衰退の原因は、劇的な天災でも戦争でもなく、ネットワークの崩壊だった──文理融合による学際的アプローチで、インダス文明衰退の謎に迫る。
日本隊初のインダス文明遺跡発掘調査(カーンメール遺跡、ファルマーナー遺跡)の成果も収録。

書評

『日本経済新聞』2013年11月16日、文化面記事
『朝日新聞』2013年12月4日夕刊コラム「テーブルトーク」

プロフィール

[編者]
長田 俊樹(おさだ としき) 序章、コラム5、第14章、終章
総合地球環境学研究所 名誉教授および客員教授
専門分野:言語学、南アジア研究、インダス文明
主著:A Reference Grammar of Mundari(東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所、1992年)、『ムンダ人の農耕文化と食事文化:民族言語学的考察』(国際日本文化研究センター、1995年)、『新インド学』(角川叢書、2002年)、『インダス文明研究の回顧と展望および文献目録』(総合地球環境学研究所、2005年)、Indus Civilization: Text and Context(編著、マノハル出版社、2006年)など多数

[執筆者]
宇野 隆夫(うの たかお) 第5章
帝塚山大学人文学部 教授
専門分野:時空間情報科学、考古学GIS
主著:『ユーラシア古代都市・集落の歴史空間を読む』(編著、勉成出版、2010年)、『実践 考古学GIS―先端技術で歴史空間を読む』(編著、NTT出版、2006年)、『世界の歴史空間を読む―GISを用いた文化・文明研究』(編著、国際日本文化研究センター、2006年)

遠藤 仁(えんどう ひとし) 第6章
総合地球環境学研究所・プロジェクト 研究員
専門分野:考古学(民族考古学、石器製作技術)
主著:「デカン金石併用諸文化における石器生産の様相」『インド考古研究』23(2002年)。「インド共和国グジャラート州カンバートにおける紅玉髄製ビーズ生産:研究序説」『東洋文化研究所紀要』第160冊(共著、2011年)。「赤い石がつくる道―カーネリアン・ロードをたどって」『季刊民族学』140(共著、2012年)。

大島 智靖(おおしま ちせい) 第8章8―2節
東京大学大学院人文社会系研究科・死生学・応用倫理センター 特任研究員
専門分野:ヴェーダ祭式学、インド学・仏教学
主著:『GAV―古インド・アーリヤ語文献における牛(中洋言語・考古・人類・民族叢書3)』(分担執筆、総合地球環境学研究所インダス・プロジェクト、2012年)、「儀礼の中の死と再生―潔斎祭主を巡るヴェーダの解釈学」『伊藤瑞叡博士古希記念論文集 法華仏教と関係諸文化の研究』所収(山喜房佛書林、2013年、pp. 611―623)、“nis-krayi: On the Concept of buying-off of the self in Vedic Rituals” Journal of Indian and Buddhist Studies(『印度學佛教學研究』)Vol. LX, No. 3(2012), pp. 1125―1131(1―7), “Dīks ā in the Agnistoma: Some Symbolic Aspects of the Sacricer’s Role” Journal of Indological Studies, Nos. 22 & 23(2010―2011), pp. 61―86.

大西 正幸(おおにし まさゆき) 第13章
総合地球環境学研究所 客員教授
専門分野:記述言語学、言語類型論、言語教育、文学
主著:A Grammar of Motuna(単著, Lincom Europa, 2011年)、Language Atlas of South Asia(共編共著, Harvard University, 2012年)、Non-canonical Marking of Subjects and Objects(共編共著, John Benjamins, 2001年)、『危機言語:言語の消滅でわれわれは何を失うのか(地球研ライブラリー)』(ニコラス・エヴァンズ著、共訳、京都大学学術出版会、2013年)

大田 正次(おおた しょうじ) 第11章
福井県立大学生物資源学部 教授
専門分野:植物生態遺伝学、民族植物学
主著:『品種改良の世界史―作物編―』(分担執筆、悠書館、2010年)、『麦の自然史』(分担執筆、北海道大学出版会、2010年)

岡村 眞(おかむら まこと) 第4章
高知大学 総合研究センター 特任教授
専門分野:地震地質学

奥野 淳一(おくの じゅんいち) 第3章
情報・システム研究機構 国立極地研究所 特任研究員
専門分野:固体地球物理学
主著:Ice Sheets, Sea Level and the Dynamic Earth(分担執筆, American Geophysical Union, 2002年)

木村 李花子(きむら りかこ) 第8章8―1節
東京農業大学学術情報課程 嘱託教授、馬事文化研究所(インド)所長
専門分野:動物行動学、博物館学、民族生態学
主著:『野生馬を追う―ウマのフィールド・サイエンス』(東京大学出版会、2007年)、『ウマ社会のコミュニケーション―雌はハレムに隠されたか、縄張りに呼ばれたか』(神奈川新聞社、2002年)、『耕す―鍬と犂』(分担執筆、東京農業大学出版会、2013年)

熊原 康博(くまはら やすひろ) コラム1
群馬大学教育学部 准教授
専門分野:自然地理学、地形学
主著:Active faults in the epicentral area of the 2005 Pakistan earthquake(分担執筆、広島大学地誌研叢書)、『上州中山道の地形散歩』(上毛新聞社)

児玉 望(こだま のぞみ) 第9章
熊本大学文学部 教授
専門分野:言語学
主著:Language Atlas of South Asia(分担執筆, Department of South Asian Studies. Harvard University)

後藤 敏文(ごとう としふみ) 第10章
東北大学 名誉教授、Dr. phil.
専門分野:インド学、インド・イラン学、インド・ヨーロッパ語比較言語学
著書:Die “I. Präsensklasse” im Vedischen. Untersuchung der vollstufigen thematischen Wurzelpräsentia(ヴェーダ語における所謂第一類現在動詞、Österreichische Akademie der Wissenschaften, 1987年, 第2版1996年); Rig-Veda. Das heilige Wissen. Erster und zweiter Liederkreis. Aus dem vedischen Sanskrit übersetzt und herausgegeben von Michael Witzel und Toshifumi Gotō unter Mitarbeit von Eijirō Dōyama und Mislav Ježić(『リグヴェーダ』ドイツ語訳、注、Verlag der Weltreligionen, 2007年);『GAV―古インド・アーリヤ語文献における牛』(中洋言語・考古・人類・民族叢書3、分担執筆、総合地球環境学研究所インダス・プロジェクト、2012年)

斎藤 成也(さいとう なるや) 第12章、コラム8
国立遺伝学研究所 集団遺伝研究部門 教授、総合研究大学院大学遺伝学専攻 教授(兼任)、東京大学生物科学専攻・教授(兼任)
専門分野:人類学、ゲノム進化学
主著:Introduction to Evolutionary Genomics(Springer, 2013年)、『ダーウィン入門』(ちくま新書、2011年)、『ゲノム進化学入門』(共立出版、2007年)、『自然淘汰論から中立進化論へ』(NTT出版、2009年)、『DNAから見た日本人』(ちくま新書、2005年)、『遺伝子は35億年の夢を見る』(大和書房、1997年)、『ゲノムと進化』(新曜社、2004年)、『ゲノム進化を考える』(サイエンス社、2007年)

スティーヴン・A・ウェーバー(Steven A. Weber) 第7章
ワシントン州立大学・准教授
専門分野:植物考古学
主著:Indus Ethnobiology(共著, Lexington Books), Plants and Harappan Subsistence(Westview)

千葉 一(ちば はじめ) コラム6
東北学院大学 非常勤講師
専門分野:南インド地域文化研究
主著:『社会福祉論:人間の共生と格差を考える―多文化共生とは何か』(分担執筆、東北学院大学社会福祉研究所、2011年)、「コットゥーレーシュワラ山車祭りに見るマーディガ救済の痕跡」『市場史研究』23(2003年)

堤 浩之(つつみ ひろゆき) コラム1
京都大学大学院理学研究科 准教授
専門分野:地形学
主著:『活断層詳細デジタルマップ』(分担執筆、東京大学出版会、2002年)

寺村 裕史(てらむら ひろふみ) 第5章
国際日本文化研究センター 文化資料研究企画室 特任准教授
専門分野:考古学、文化情報学
主著:『実践 考古学GIS―先端技術で歴史空間を読む―』(第2章第2節第3項・分担執筆、NTT出版、2006年)、『古代ユーラシア都市・集落の歴史空間を読む』(第4章・分担執筆、勉誠出版、2010年)、“Spatial Analyses of Harappan Urban Settlements” Ancient Asia Vol. 1(分担執筆, Society of South Asian Archaeology and Reesha Books International, 2006年)、EXCAVATION AT KANMER 2005―06―2008―09(Chapter 5分担執筆, Research Institute for Humanity and Nature, 2012年)

長友 恒人(ながとも つねと) 第2章
奈良教育大学 学長
専門分野:文化財科学、年代学
主著:『考古学のための年代測定学入門』(編著、古今書院、1999年)、『文化財を探る科学の眼』(分担執筆、国土社、1998年)、『考古学と化学を結ぶ』(分担執筆、東京大学出版会、2000年)

中村 淳路(なかむら あつのり) 第4章4―3節
大気海洋研究所海洋底科学部門、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 博士課程
専門分野:地球化学、古気候学
主要論文:“Late Holocene Asian monsoon variations recorded in Lake Rara sediment, western Nepal” Journal of Quaternary Science, 27, 125―128.(共著)

西村 直子(にしむら なおこ) 第8章8―3節
東北大学 非常勤講師
専門分野:インド学
主著:『放牧と敷き草刈り―Yajurveda-Samhitā冒頭のmantra集成とそのbrāhmanaの研究』(単著、東北大学出版会、2006年)、『GAV―古インド・アーリヤ語文献における牛(中洋言語・考古・人類・民俗叢書3)』(分担執筆、総合地球環境学研究所インダス・プロジェクト、2012年)

前杢 英明(まえもく ひであき) 第1章、第2章
法政大学文学部地理学科 教授
専門分野:自然地理学、地形学、第四紀学
主著:Climates, Landscapes, and Civilizations(分担執筆, AGU, 2012年)、『九州の活構造』(分担執筆、東京大学出版会、1989年)、『近畿・中国・四国(日本の地形6)』(分担執筆、東京大学出版会、2009年)、『地形学のフロンティア』(分担執筆、大明堂、1996年)

松岡 裕美(まつおか ひろみ) 第4章4―2節
高知大学理学部 准教授
専門分野:地質学、自然災害科学

三浦 励一(みうら れいいち) 第7章(訳)
京都大学農学研究科 講師
専門分野:雑草学
主著:『雑穀の自然史』(分担執筆、北海道大学図書刊行会、2003年)、『農業と雑草の生態学』(分担執筆、文一総合出版、2007年)

宮内 崇裕(みやうち たかひろ) 第3章
千葉大学大学院理学研究科 教授
専門分野:変動地形学、第四紀地質学
主著:『新編日本の活断層―分布図と資料』(分担執筆、東京大学出版会、1991年)、『世界の地形』(分担執筆、東京大学出版会、1997年)、『活断層詳細デジタルマップ』(分担執筆、東京大学出版会、2002年)、『第四紀逆断層アトラス』(編者および分担執筆、東京大学出版会、2002年)、『日本の海成段丘アトラス』(分担執筆、東京大学出版会、2001年)

森 直樹(もり なおき) 第11章、コラム7
神戸大学大学院農学研究科 准教授
専門分野:植物遺伝学
主著:『麦の自然史』(分担執筆、北海道大学出版会、2010年)

森 若葉(もり わかは) コラム3
国士舘大学イラク古代文化研究所 研究員
専門分野:シュメール学、楔形文字学、言語学
主著(訳書):エヴァンズ著『危機言語』(分担翻訳、京都大学学術出版会、2013年)、ベルウッド著『農耕起源の人類史』(分担翻訳、京都大学学術出版会、2008年)

八木 浩司(やぎ ひろし) 第4章4―1節、コラム4
山形大学地域教育文化学部 教授
専門分野:変動地形学、ヒマラヤ地域の防災地形学
主著:『白神の意味』(共著、自湧社)、Landslide Hazard Mitigation in the Hindu Kush-Himalayas(分担執筆, ICIMOD)

山田 智輝(やまだ ともき) コラム2
日本学術振興会 特別研究員PD(大阪大学)
専門分野:ヴェーダ文献学

横山 祐典(よこやま ゆうすけ) 第4章4―3節
東京大学大気海洋研究所/大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻および大学院総合文化研究科附属 国際環境学教育機構 准教授、海洋研究開発機構 招聘主任研究員(兼)
専門分野:地球化学、古気候古海洋学、年代測定学
主著:Hand book of Sea-Level Research(分担執筆, John Willey)、Encyclopedia of Modern Coral Reefs(分担執筆, Spinger)、『大地と森の中で(縄文時代の考古学3)』(分担執筆、同成社)、『地球史が語る近未来の環境』(分担執筆、東大出版会)、『進化する地球惑星システム』(分担執筆、東京大学出版会)、『地球と宇宙の科学事典』(分担執筆、共立出版)ほか

目次

序章 南アジア基層世界とは[長田俊樹]
1 インダス文明―その特徴と遺跡分布および年代
2 インダス文明研究小史
3 インダス・プロジェクト―研究目的と研究体制
4 インダス文明の衰退原因をめぐって
(1)アーリヤ人侵入破壊説
(2)メソポタミアの貿易停止説
(3)社会的文化的変容説
(4)森林破壊大洪水説
(5)インダス川の河流変化説
(6)インダス川自然ダム水没説
(7)サラスヴァティー川消滅原因説
(8)気候変動説
5 本書の構成

第1部 自然環境を復元する

第1章 南アジアの自然環境[前杢英明]
1―1 生活の舞台としての多様な大地
(1)ヒマラヤおよびその周辺山脈
(2)ヒンドスタン平原
(3)インド半島
1―2 独特な文化を生む多様な気候
1―3 農業を支える多様な土壌
1―4 南アジアの自然環境とインダス文明
◉コラム1 インド・パキスタン周辺の活断層と歴史地震 [熊原康博・堤 浩之]

第2章 消えた大河とインダス文明の謎[前杢英明・長友恒人]
2―1 消えた大河サラスヴァティー
2―2 サラスヴァティー川をめぐる議論
2―3 消えたサラスヴァティーの謎に迫る
(1)タール砂漠と河川地形
(2)ガッガル川の氾濫原は大河の化石地形か?
(3)砂丘の年代を測る
(4)サラスヴァティーは滔々と流れる大河だったのか?
2―4 文明の盛衰と自然環境
◉コラム2 文献から見たサラスヴァティー川 [山田智輝]

第3章 海岸線環境の変化と湾岸都市の盛衰 [宮内崇裕・奥野淳一]
3―1 考古学的背景と課題
3―2 グジャラート州周辺の地学的背景
3―3 研究対象としたインダス文明期湾岸遺跡の概要
(1)ロータル遺跡(紀元前2500~1900年)
(2)カーンメール遺跡(紀元前2600~1900年)
3―4 地形発達・相対的海水準変動と港湾都市の盛衰
(1)地形発達史の復元手法
(2)地形発達からみたインダス文明期港湾都市の盛衰
3―5 相対的海水準変動の原因を探る
  ―ハイドロアイソスタシーによる地殻変動
(1)グレイシオハイドロアイソスタシーの背景と現れ方
(2)ハイドロアイソスタシーに基づく完新世の海水準変化モデリング
(3)インド北西部グジャラート付近の海水準変動復元
3―6 古代都市の運命を支配した地球規模の変動
◉コラム3 メソポタミアとの交流 [森 若葉]

第4章 南アジアのモンスーン変動をとらえる
4―1 ララ湖堆積物調査までの道 [八木浩司]
(1)実施のための許可書類の準備
(2)資材輸送のための準備
(3)ララ湖への資材人員輸送
4―2 ララ湖ピストンコアリング [松岡裕美・岡村 眞]
(1)湖沼堆積物の採取
(2)ララ湖の堆積物
4―3 湖沼堆積物の分析 [中村淳路・横山祐典]
(1)アジアモンスーンの変動
(2)湖沼堆積物の年代を測る
(3)泥から過去の気候を読み解く
(4)インダス文明の衰退原因としての夏モンスーン
◉コラム4 ララ湖はいかにしてできたのか [八木浩司]

第2部 人々の暮らしを復元する

第5章 発掘とGIS分析でインダス文明都市を探る [寺村裕史・宇野隆夫]
5―1 インダス文明遺跡の特徴と調査手法
5―2 インダス文明遺跡の地理的分布
(1)分析の目的と準備作業
(2)資料と分析方法
(3)インダス文明遺跡の分布の変遷
(4)各ステージの特色
5―3 カーンメール遺跡の発掘調査
(1)発掘調査の概要
(2)出土遺物
(3)カーンメール遣跡の性格
5―4 ファルマーナー遺跡の発掘調査
(1)居住地区の発掘調査
(2)墓地の発掘調査
(3)出土品
(4)ファルマーナー遺跡の性格
5―5 インダス文明をどのように理解するか
(1)インダス文明は南アジアの基層文化か?
(2)インダス文明の特質
(3)インダス文明の衰退とは何か?
◉コラム5 カーンメールの印章 [長田俊樹]

第6章 工芸品からみたインダス文明期の流通[遠藤 仁]
6―1 工芸品の種類と素材
(1)工芸品の種類
(2)工芸品の素材
6―2 工芸品の生産
6―3 工芸品の流通からみたインダス文明の流通システム
6―4 南アジアにおけるカーネリアン・ロード

第7章 インダス文明の衰退と農耕の役割 [スティーヴン・A・ウェーバー(訳:三浦励一)]
7―1 農耕とインダス文明
7―2 インダス文明の衰退
7―3 農耕とインダス文明期後期の人々
7―4 地域別アプローチの意義
◉コラム6 クワ科植物が結ぶインダスと南インド [千葉 一]

第8章 インダス文明の牧畜
8―1 カッチ湿原が生んだ幻のロバ―古代における野の育種 [木村李花子]
(1)湿原のからくりと移牧民―水に閉ざされた放牧場
(2)インダスへの回廊
(3)メソポタミアへの回廊
(4)異種と野生の導入
8―2 コブウシ考 [大島智靖]
(1)インド亜大陸とウシ
(2)インダス文明とコブウシ
(3)インド・アーリヤ人とコブウシ
(4)牧畜史の変化と連続―テキストとレリックを超えて
8―3 牛を伴侶とした人々―古代インドの牧畜と乳製品 [西村直子]
(1)古代インドの牧畜
(2)古代インドの乳加工
(3)土器の穴から世界を透かし見る―むすびにかえて

第9章 インダス文明に文字文化はあったのか[児玉 望]
9―1 音声言語の視覚記号化としての「文字」
9―2 ドラヴィダ語による「当て字」仮説
9―3 文字化テクストがありえたのか
9―4 南アジアの口承言語文化
9―5 インダス文字論争のゆくえ

第10章 アーリヤ諸部族の侵入と南アジア基層世界 [後藤敏文]
10―1 インド・アーリヤ語文献の資料的価値
10―2 アーリヤ諸部族の侵入とその背景
(1)インド・ヨーロッパ語族
(2)インド・イラン語派、「アリヤ」と「アーリヤ」
(3)アーリヤ諸部族のインド侵入
10―3『リグ・ヴェーダ』とアーリヤ諸部族
10―4 ヴェーダ文献群とアーリヤ諸部族東進の記録
10―5 ヴェーダ文献における借用語の問題
10―6 アーリヤ諸部族の侵出と先住諸部族

第3部 現代へのつながりを辿る

第11章 インド冬作穀類の起源と変遷[大田正次・森 直樹]
11―1 栽培コムギの成立とインド亜大陸への伝播
11―2 インドにおけるエンマーコムギとインド矮性コムギの栽培と利用の現状
(1)エンマーコムギ
(2)インド矮性コムギ
11―3 コムギの早晩性と南アジアの栽培体系
  ―インド亜大陸のエンマーコムギとインド矮性コムギはどこから来たか
11―4 作物の品種多様性と伝統的栽培
◉コラム7 「それなら知っているよ。グンドゥゴーディだよ。」
  ―インド矮性コムギ再発見の日― [森 直樹]

第12章 DNAからたどる南アジア人の系統 [斎藤成也・神澤秀明]
12―1 古代DNAの研究
(1)インダス文明のファルマーナー遺跡へ
(2)ウシとコブウシ
(3)古代DNA研究の実際
(4)ウシからヒトへ
(5)試料が悪いのか、実験の腕が悪いのか
12―2 現代南アジア人の遺伝的近縁関係
(1)現代人のDNAを比較して過去の移動を推定する
(2)インドにおける人間の遺伝的多様性
(3)古典的遺伝マーカーによる解析
(4)ゲノム規模での膨大なDNA変異の解析
◉コラム8 ファルマーナーの人骨 [斎藤成也]

第13章 多言語多文化の世界―現代南アジアから見る [大西正幸]
13―1 南アジアの言語の地理的分布
(1)インド・アーリヤ語族とイラン語族
(2)ドラヴィダ語族
(3)ムンダ語族とモン・クメール語族
(4)チベット・ビルマ語族
13―2 多言語と多文化の共存
(1)多言語共存ベルト
(2)大都市での多言語共存
(3)異言語・異文化の融合

第14章 南アジアにカースト・ネットワークを見る [長田俊樹]
14―1 わたしのインド体験
14―2 インド社会論―基本概念とその限界
14―3 サンスクリット文献とインド古代社会
14―4 多様性の指標としての言語
14―5 カースト社会と多様性

終章 新しいインダス文明像を求めて[長田俊樹]
1 アーリヤ人侵入破壊説
2 穀物倉
3 はたしてインダス文明は大河文明か
4 海上交通とインダス文明
5 ネットワーク共同体としてのインダス文明
6 インダス文明社会

あとがき
図表出典一覧
索引
執筆者紹介
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