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新・動物記 10

密かにヒメイカ

最小イカが教える恋と墨の秘密

佐藤 成祥

四六並製・224頁

ISBN: 9784814005574

発行年月: 2024/10

  • 本体: 2,200円(税込 2,420円

10月下旬発売予定

 
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内容

浅場に繁茂するアマモの森に身を隠し、ひっそりと生きる世界で一番小さなイカ、ヒメイカ。全長2センチほどというその小ささゆえに認知されることが少なく、ほとんど研究されてこなかった謎多きイカの、密かな恋のセオリーと墨を使った騙しの秘密を解き明かす。憧れと挫折、絶望と救い、情熱とジレンマが交錯する赤裸々な研究記。

プロフィール

佐藤成祥(さとう のりよし)
北海道札幌市出身。1980年生まれ。2010年に北海道大学大学院環境科学院博士課程修了(博士(環境科学))。その後は、日本学術振興会特別研究員(PD)、島根大学特任准教授などを経て、2019年4月より東海大学海洋学部水産学科講師。ヒメイカをきっかけにはじまった頭足類の行動生態研究だが、その興味の矛先は沿岸性から深海性の様々な場所に生息する多様なイカ類に広がり、現在はタコにも熱い視線を送っている。一つのことに精通するような専門性には欠けるが、その分、目的達成の手段にはこだわらず、何にでも手を出す腰の軽さが武器だと信じている。信じてはいるが、さすがに最近は手を広げすぎたようで少々混乱状態である。2017年、「ヒメイカの交尾後精子排除によるCryptic Female Choice」で第8回日本動物行動学会賞を受賞。

目次

巻頭口絵
はじめに

1章 世界最小のイカ、ヒメイカ
1 ヒメイカとの出会い
  学歴コンプレックスと大学院進学
  立ちはだかる大学院の門
  やりたいこととできること
  たどり着いた漁村の実験所
2 ヒメイカを捕まえろ! 
  そもそもイカとは何ですか?
  世界最小イカのいろは
  異なる二つのライフスタイル
  採れないヒメイカ
  北国ダイビング
  ヒメイカゲットだぜ!
3 ヒメイカの分布と生活史を探る
  急に立ち込める暗雲
  消えたヒメイカ
  北国ヒメイカは死滅回遊
  研究テーマの見直し
  成長を記録する石
  ヒメイカの寿命を探れ
  たどり着いた修論発表

2章 密かに燃えるヒメイカの恋
1 念願の行動観察
  イカの繁殖は面白い
  交尾の後に行われる雄選び
  ヒメイカの恋の謎
  やって気づいた行動観察の難しさ
2 ついばみ行動の謎を追え!
  口の周りの精子貯蔵器官
  精子は貯蔵されているか?
  精莢の構造と精莢反応
  ありのまま観察すること
3 雄選びは交接のあとで
  精子塊の貯蔵能力はいかほどか
  ついばみ行動のルール
  嫌な雄の精子は捨ててしまえ
  モテるのはどんな雄?
  自信と裏腹の散々な反応
  ヒメイカ研究としばしの別れ

3章 密かな恋を支える精子のやりとり
1 異なる二本の交接腕の謎
  未練か、やりがいか
  研究ネットワークに助けられ
  驚愕すべきプロの撮影技術
  交接腕の使い方
  狭き門、学振特別研究員
2 密かな恋の証拠を掴め!
  受精成功を決めるルール
  苦手の遺伝子解析
  新フィールド、大村湾
  精子の数をめぐる戦い
  水槽実験開始!
  精子の量で決まるんです
3 自然環境でのヒメイカの繁殖生態
  高まる野外調査熱
  繁殖期間中の変化
  世代間の戦略
  明らかになった本来の繁殖生態
4 恋路を邪魔する捕食者の存在
ついばみ行動はなぜ進化した?
アナハゼ天国、隠岐の島
捕食リスクの調べ方
捕食者に隠れて?

4章 イカ墨の不思議
1 墨を使って餌を捕る?
  ポスドクのジレンマ
  やってみようか共同研究
  墨吐き行動の特殊性
  三種のエビをどう襲う
  再現が難しい墨吐き攻撃
  幻のタイトル
2 墨による防御方法
  さようならヒメイカ研究
  やっぱりヒメイカしかない
  本来の墨の使い方
  アナハゼvsヒメイカ
  騙しのテクニック

5章 世界に広がるヒメイカの仲間
1 見つかりだした新種ヒメイカ
  遠のく行動研究
  沖縄に潜む新種ヒメイカ
  生きている姿を見てみたい
  ヒメイカとは異なる交接行動
  分類の専門家を頼って
  DNAから迫る系統関係
  名前をつける難しさ
2 繋がりだしたヒメイカの輪
  世界のヒメイカ
  比較して楽しいヒメイカ
  ハラミよりはじめよ
  ヒメイカは異端?

Column1 ウェットスーツとドライスーツ
Column2 水産無脊椎動物の命の扱い
Column3 タイムリミットが厳しい潜水調査

おわりに
著者のおすすめ読書案内 
参考文献
索 引
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