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体系性を完備した専門分野としての考古学の確立を告げた本書には、この学問がたどることになる軌跡と、その道程で出会う困難と克服へのヒントが既に予告されていた。しかし、そのことを十分に読み込み感得することは、この書物を生涯の「プロジェクト」とした知の巨人ヴィア・ゴードン・チャイルドの、過去と同時代と未来との対峙の構えの全体的な把握なしには困難である。この翻訳事業は、各改版時の変更とその含意の検討を手がかりに「プロジェクト」としての本書の性格を浮き彫りにすることにより、その含意の確実な定位と、その可能性の核心へと読者がそれぞれに接近することを可能にした。
名声高くも謎(エニグマ)的であった『ヨーロッパ文明の黎明』が、真の意味でのアクチュアリティをもって今、わたくしたちの前に再び現れることとなったことを、本当にうれしく思う。
溝口孝司(九州大学教授・World Archaeological Congress(世界考古学会議)第6代会長)
名声高くも謎(エニグマ)的であった『ヨーロッパ文明の黎明』が、真の意味でのアクチュアリティをもって今、わたくしたちの前に再び現れることとなったことを、本当にうれしく思う。
溝口孝司(九州大学教授・World Archaeological Congress(世界考古学会議)第6代会長)
現在も世界中で読まれる20世紀最高峰の考古学者チャイルド。その哲学的歴史叙述は常に新たな研究視点をもたらす源泉であり、決して忘れ去られない。ヨーロッパ人類史を解明し、ビッグ・ヒストリー考古学の元祖と言われ、ポップカルチャーの考古学者像にも影響を与えたこの傑物の若き日の代表作、本邦初訳。詳細な用語説明・解説を付す。
■著者
ヴィア・ゴードン・チャイルド
Vere Gordon Childe(1892~1957)
オーストラリア・シドニー生まれ。オックスフォード大学に留学し考古学研究の道に入る。一時期は社会主義団体に入会して労働運動の研究書も出したが,その後考古学の世界に戻り,25年に『ヨーロッパ文明の黎明』でデビュー。エディンバラ大学の考古学講座教授,ロンドン大学の先史ヨーロッパ考古学教授および考古学研究所長兼教授を歴任。56年に早期退職してシドニーに帰郷し,翌年自ら命を閉じる。生涯独身であった。
間違っていると思えば直ちに自説を見直す真摯さ,類まれな言語能力と意志。華やかなジャーナリズムとは無縁で,孤高ともいえるその生涯と学究の姿勢に,多くの人が今も惹きつけられている。
■訳者
近藤 義郎(こんどう・よしろう)
1925―2009 京都大学文学部卒業。岡山大学名誉教授。文学博士(九州大学)。
〔主要著書〕『前方後円墳の時代』(岩波書店、1983年)、『土器製塩の研究』(青木書店、1984年)、『日本考古学研究序説』(岩波書店、1985年)
下垣 仁志(しもがき・ひとし)
1975年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、京都大学大学院文学研究科教授。文学博士(京都大学)。
〔主要著書〕『古墳時代の国家形成』(吉川弘文館、2018年)、『世界の初期文明』(訳書、同成社、2019年)
〔専門研究〕古墳時代、正史/偽史の考古学
■解説者(掲載順)
クリストファー〈クリス〉・スカー
Christopher Scarre
1954年生まれ。ケンブリッジ大学考古学科大学院博士課程修了。現在、ダーラム大学名誉教授。博士(Ph.D.)。
〔主要著書〕Landscape of Neolithic Brittany (Oxford University Press, 2011); Ancient Civilizations(Co-author, Pearson Prentice Hall, 2021); The Human Past (the author and editor, Thames and Hudson, 2024)
〔専門研究〕ヨーロッパ大西洋岸地域の先史時代後期
冨井 眞(とみい・まこと)
1968年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、大正大学文学部教授。先史考古学修士(英国ダーラム大学)、文学博士(京都大学)。
〔主要著書〕『先史土器の型式学的編年の理論的前提と現実的活用』(京都大学博士論文、2013年)、『先史の観念』(訳書、京都大学、2001年)
〔専門研究〕先史学、考古学における論理と方法
佐々木 憲一(ささき・けんいち)
1962年生まれ。ハーヴァード大学人類学研究科大学院博士課程修了。現在、明治大学文学部教授。博士(Ph.D.)。
〔主要著書〕『常陸の古墳群』(正続、共編著、六一書房、2010、2020年)、『霞ヶ浦の前方後円墳――古墳文化における中央と周縁』(編著、六一書房、2018年)
〔専門研究〕国家形成期の考古学(古墳時代)
岡村 勝行(おかむら・かつゆき)
1961年生まれ。大阪大学文学部史学科卒業。現在、(一財)大阪市文化財協会東淀川調査事務所長。文学士。
〔主要著書〕『入門パブリック・アーケオロジー』(共著、同成社、2012年)、New Perspectives in Global Public Archaeology(Co-edited author, Springer、2011)
〔専門研究〕パブリック・アーケオロジー、考古遺産マネジメント
澤田 秀実(さわだ・ひでみ)
1963年生まれ。法政大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、くらしき作陽大学音楽学部教授。博士(歴史学・専修大学大学院)。
〔主要著書〕『前方後円墳秩序の成立と展開』(同成社、2017年)、「耳環の生産体制と副葬の意義――使用された金属原材料の検討から」(『人・墓・社会』雄山閣、2022年所収)
〔専門研究〕古墳時代政治史
ヴィア・ゴードン・チャイルド
Vere Gordon Childe(1892~1957)
オーストラリア・シドニー生まれ。オックスフォード大学に留学し考古学研究の道に入る。一時期は社会主義団体に入会して労働運動の研究書も出したが,その後考古学の世界に戻り,25年に『ヨーロッパ文明の黎明』でデビュー。エディンバラ大学の考古学講座教授,ロンドン大学の先史ヨーロッパ考古学教授および考古学研究所長兼教授を歴任。56年に早期退職してシドニーに帰郷し,翌年自ら命を閉じる。生涯独身であった。
間違っていると思えば直ちに自説を見直す真摯さ,類まれな言語能力と意志。華やかなジャーナリズムとは無縁で,孤高ともいえるその生涯と学究の姿勢に,多くの人が今も惹きつけられている。
■訳者
近藤 義郎(こんどう・よしろう)
1925―2009 京都大学文学部卒業。岡山大学名誉教授。文学博士(九州大学)。
〔主要著書〕『前方後円墳の時代』(岩波書店、1983年)、『土器製塩の研究』(青木書店、1984年)、『日本考古学研究序説』(岩波書店、1985年)
下垣 仁志(しもがき・ひとし)
1975年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、京都大学大学院文学研究科教授。文学博士(京都大学)。
〔主要著書〕『古墳時代の国家形成』(吉川弘文館、2018年)、『世界の初期文明』(訳書、同成社、2019年)
〔専門研究〕古墳時代、正史/偽史の考古学
■解説者(掲載順)
クリストファー〈クリス〉・スカー
Christopher Scarre
1954年生まれ。ケンブリッジ大学考古学科大学院博士課程修了。現在、ダーラム大学名誉教授。博士(Ph.D.)。
〔主要著書〕Landscape of Neolithic Brittany (Oxford University Press, 2011); Ancient Civilizations(Co-author, Pearson Prentice Hall, 2021); The Human Past (the author and editor, Thames and Hudson, 2024)
〔専門研究〕ヨーロッパ大西洋岸地域の先史時代後期
冨井 眞(とみい・まこと)
1968年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、大正大学文学部教授。先史考古学修士(英国ダーラム大学)、文学博士(京都大学)。
〔主要著書〕『先史土器の型式学的編年の理論的前提と現実的活用』(京都大学博士論文、2013年)、『先史の観念』(訳書、京都大学、2001年)
〔専門研究〕先史学、考古学における論理と方法
佐々木 憲一(ささき・けんいち)
1962年生まれ。ハーヴァード大学人類学研究科大学院博士課程修了。現在、明治大学文学部教授。博士(Ph.D.)。
〔主要著書〕『常陸の古墳群』(正続、共編著、六一書房、2010、2020年)、『霞ヶ浦の前方後円墳――古墳文化における中央と周縁』(編著、六一書房、2018年)
〔専門研究〕国家形成期の考古学(古墳時代)
岡村 勝行(おかむら・かつゆき)
1961年生まれ。大阪大学文学部史学科卒業。現在、(一財)大阪市文化財協会東淀川調査事務所長。文学士。
〔主要著書〕『入門パブリック・アーケオロジー』(共著、同成社、2012年)、New Perspectives in Global Public Archaeology(Co-edited author, Springer、2011)
〔専門研究〕パブリック・アーケオロジー、考古遺産マネジメント
澤田 秀実(さわだ・ひでみ)
1963年生まれ。法政大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、くらしき作陽大学音楽学部教授。博士(歴史学・専修大学大学院)。
〔主要著書〕『前方後円墳秩序の成立と展開』(同成社、2017年)、「耳環の生産体制と副葬の意義――使用された金属原材料の検討から」(『人・墓・社会』雄山閣、2022年所収)
〔専門研究〕古墳時代政治史
凡 例
挿図目次
第六版の序文
初版の序文
第三版の序文
第四版の序文
第1章 食糧採集民の残存
第2章 オリエントとクレタ島
第3章 アナトリア―エーゲ海への王の道
第4章 キクラデス諸島の海洋文明
第5章 ギリシア―村落から都市へ
第6章 バルカンの農村
第7章 ドナウ文明
第8章 黒土地帯の農民
第9章 文化はユーラシア平原を越えたのか?
第10章 北方の諸文化
第11章 森林文化の残存
第12章 巨石建造者とビーカー族
第13章 イタリアとシチリア島の農民と交易民
第14章 西地中海の島嶼文明
第15章 イベリア半島
第16章 アルプス地帯の西方文化
第17章 大西洋岸の巨石建造者
第18章 ブリテン諸島
第19章 本書の回顧―ヨーロッパ社会の先史時代
註(原註)
用語説明(原著者による)
参考図書・参考文献
用語解説・重要用語解説(訳者による)
解 説
『ヨーロッパ文明の黎明』とチャイルド [下垣仁志]
『ヨーロッパ文明の黎明』と今日のヨーロッパ先史学 [クリス・スカー(佐々木憲一訳)]
『ヨーロッパ文明の黎明』の昭和初期日本における受容 [冨井 眞]
チャイルド考古学のアメリカ合衆国考古学界における受容の一側面 [佐々木憲一]
チャイルド・スティル・アライヴ─この百年で最も読まれた考古学者 [岡村勝行]
チャイルドの考古学と近藤義郎 [澤田秀実]
付録一 「回顧」 [ゴードン・チャイルド(下垣仁志訳)]
付録二 チャイルドの著書および各国翻訳 一九二三―二〇二三 [岡村勝行]
付録三 年譜 チャイルドと考古学、世界のあゆみ [下垣仁志]
あとがき [佐々木憲一・澤田秀実]
索 引
挿図目次
第六版の序文
初版の序文
第三版の序文
第四版の序文
第1章 食糧採集民の残存
第2章 オリエントとクレタ島
第3章 アナトリア―エーゲ海への王の道
第4章 キクラデス諸島の海洋文明
第5章 ギリシア―村落から都市へ
第6章 バルカンの農村
第7章 ドナウ文明
第8章 黒土地帯の農民
第9章 文化はユーラシア平原を越えたのか?
第10章 北方の諸文化
第11章 森林文化の残存
第12章 巨石建造者とビーカー族
第13章 イタリアとシチリア島の農民と交易民
第14章 西地中海の島嶼文明
第15章 イベリア半島
第16章 アルプス地帯の西方文化
第17章 大西洋岸の巨石建造者
第18章 ブリテン諸島
第19章 本書の回顧―ヨーロッパ社会の先史時代
註(原註)
用語説明(原著者による)
参考図書・参考文献
用語解説・重要用語解説(訳者による)
解 説
『ヨーロッパ文明の黎明』とチャイルド [下垣仁志]
『ヨーロッパ文明の黎明』と今日のヨーロッパ先史学 [クリス・スカー(佐々木憲一訳)]
『ヨーロッパ文明の黎明』の昭和初期日本における受容 [冨井 眞]
チャイルド考古学のアメリカ合衆国考古学界における受容の一側面 [佐々木憲一]
チャイルド・スティル・アライヴ─この百年で最も読まれた考古学者 [岡村勝行]
チャイルドの考古学と近藤義郎 [澤田秀実]
付録一 「回顧」 [ゴードン・チャイルド(下垣仁志訳)]
付録二 チャイルドの著書および各国翻訳 一九二三―二〇二三 [岡村勝行]
付録三 年譜 チャイルドと考古学、世界のあゆみ [下垣仁志]
あとがき [佐々木憲一・澤田秀実]
索 引