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レジリエンスは動詞である

アフリカ遊牧社会からの関係/脈絡論アプローチ

湖中 真哉、グレタ・センプリチェ、ピーター・D・リトル 編著

A5並製, 484 pages

ISBN: 9784814005376

pub. date: 03/24

  • Price : JPY 5,000 (with tax: JPY 5,500)
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内容

今日、「レジリエンス」は「SDGs」とともに、人新世の地球を救う鍵のように言われる。しかしそのいずれもが根本的な疑念を抱えている。すなわち誰のための何のためのレジリエンスであり持続可能な開発なのかということだ。外部からは脆弱でレジリエンス強化の対象と眼差され続けてきたアフリカ遊牧民の側から、揺らぐ生の脈絡に応じた日々のダイナミックな実践——すなわち動詞——こそがレジリエンスに他ならぬことを明らかにし、政策と実践の転換を促す画期的な国際共同研究。

プロフィール

榎本珠良(えのもと たまら)
明治学院大学国際学部准教授
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了,博士(国際貢献)。専門は国際関係論,批判的安全保障研究,アフリカ地域研究。
主な著作に――『武器貿易条約――人間・国家主権・武器移転規制』(晃洋書房,2020)Bouncing Back: Critical Reflections on the Resilience Concept in Japan and South Africa(Langaa RPCIG, 2022 共編著,African Politics of Survival Extraversion and Informality in the Contemporary World (Langaa RPCIG. 2021分担執筆)など。
 
小川さやか(おがわ さやか)
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科一貫制博士課程指導認定退学。博士(地域研究)。専門は文化人類学。
主な著作に,『都市を生きぬくための狡知――タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(世界思想社,2011),『「その日暮らし」の人類学――もう一つの資本主義経済』(光文社,2016),『チョンキンマンションのボスは知っている――アングラ経済の人類学』(春秋社,2019)など。
 
湖中真哉(こなか しんや)*
静岡県立大学国際関係学部教授
筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程単位取得退学。京都大学博士(地域研究)。専門は人類学・地域研究。
主な著作に,Reconsidering Resilience in African Pastoralism: Towards a Relational and Contextual Approach(Trans Pacific Press + Kyoto University Press, 2023 共編著),『地域研究からみた人道支援――アフリカ遊牧民の現場から問い直す』(昭和堂,2018 共編著),『「人新世」時代の文化人類学』(放送大学教育振興会,2020 共編著)など。
 
ゴンザレス,ジュリア(Giulia Gonzales)
欧州大学院マックス・ヴェーバー特別研究員
トロント大学大学院博士課程修了,PhD。専門は人類学。
主な著作に,External Interventions, Local Realities : What Can We Learn from Lessons (not) Learned. EUI Policy Brief(European University Institute, 2023 分担執筆),Niglá: Methodology of Discontinuous (Im)Mobilities among Malian Kel Tamasheq in Bamako. (Nomadic Peoples 24-2, 2020),Displacement and Belonging: Musical Consumption and production among Malian Kel Tamasheq Refugees in Burkina Faso(St Antony's International Review 12-2, 2017)など。
 
佐川徹(さがわ とおる)
慶應義塾大学文学部准教授
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了,博士(地域研究)。専門はアフリカ地域研究,文化人類学。
主な著作に,『負債と信用の人類学――人間経済の現在』(以文社,2023 分担執筆),『ようこそアフリカ世界へ』(昭和堂,2022 分担執筆),『シリーズ戦争と社会1「戦争と社会」という問い』(岩波書店,2021 分担執筆)など
 
島田剛(しまだ ごう)
明治大学情報コミュニケーション学部教授
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程修了。博士(学術)。専門は開発経済学。関心分野は災害復興,原子力と地域経済,経済成長と不平等,途上国のグリーン産業政策。
主な著作に,『ミクロ経済学への招待(ライブラリ経済学 2)』(新世社,2023),Workers, Managers, Productivity -Kaizen in Developing Countries(Palgrave Macmillan, 2020 共編著),Efficiency, Finance, and Varieties of Industrial Policy(Colombia University Press, 2017 分担執筆)など。
 
スクーンズ,イアン(Ian Scoones)
サセックス大学開発学研究所教授, ESRC STEPSセンター所長。
インペリアル・カレッジ・ロンドン大学院博士課程修了,PhD。専門は開発学,農業生態学。
主な著作に, Pastoralism, Uncertainty and Development (Practical Action Pub, 2023 共編著),また邦訳書に『持続可能な暮らしと農村開発――アプローチの展開と新たな挑戦』(明石書店,2018),『土を持続させるアフリカ農民――土・水保全のための在来技術』(松香堂書店,2011 共編著)など。
 
センプリチェ,グレタ(Greta Semplici)*
欧州大学院ロバート・シューマン高等研究センターPASTRES研究員。
オックスフォード大学学院博士課程修了,PhD。専門は国際開発研究。
主な著作に,The Revival of the Drylands: Re-learning Resilience to Climate Change from Pastoral Livelihoods in East Africa. Climate and Development(Climate and Development 15-9, 2023 共著),Resilience and the Mobility of Identity: Belonging and Change among Turkana Herders in Northern Kenya(Nomadic Peoples 25, 2021)など。
 
波佐間逸博(はざま いつひろ)
東洋大学社会学部教授。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程単位取得退学,京都大学博士(地域研究)。専門は人類学・地域研究。
主な著作に,『牧畜世界の共生論理――カリモジョンとドドスの民族誌』(京都大学学術出版会,2015), Citizenship in Motion(Langaa RPCIG, 2019 共編著),『目でみる牧畜世界』(風響社,2022 分担執筆)など。
 
ハッサン,ラーマ(Rahma Hassan)
ナイロビ大学開発学研究所およびコペンハーゲン大学PhDフェロー。
ナイロビ大学大学院修士課程修了。専門は社会開発研究。
主な著作に,Will Community Rights Secure Pastoralists' Access to Land? The Community Land Act in Kenya and its Implications for Samburu Pastoralists(The Journal of Peasant Studies 50 (5), 2023 共著),No Option but to Settle! The Community Land Act, Devolution and Pastoralism in Samburu County, Kenya(Nomadic Peoples 27, 2023 共著)など。
 
村尾るみこ(むらお るみこ)
総合地球環境学研究所研究員
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科単位認定退学,博士(地域研究)。専門は地域研究・人類学。
主な著作に,Reconsidering Resilience in African Pastoralism: Towards a Relational and Contextual Approach(Trans Pacific Press + Kyoto University Press, 2023 分担執筆),『創造するアフリカ農民――紛争国周辺農村を生きる生計戦略』(昭和堂,2012),The Endogenous Reintegration of Post-Conflict Angola Society(African Study Monographs 42, 2022),「アンゴラ東部農村における難民の帰還と伝統的首長の復権―土地の分配に注目して」『アフリカレポート61,2023)など。
 
リトル,ピーター・D(Peter D. Little)*
エモリー大学サミュエル・キャンドラー・ドブス記念教授,グローバル開発研究プログラム長
インディアナ大学大学院博士課程修了,PhD。専門は経済人類学。
主な著作に,Economic and Political Reform in Africa: Anthropological Perspectives (Indiana University Press, 2013),The Elusive Granary: Herder, Farmer, and State in Northern Kenya (Cambridge University Press, 1999),Somalia: Economy without State(Indiana University Press/James Currey, 2003)など。

目次

序章 東アフリカ遊牧社会の脈絡からレジリエンスを再考する[湖中真哉、ピーター・D・リトル、グレタ・センプリチェ]
1 いま、レジリエンスを再考することの意味
2 レジリエンス理論とその適用例の展開史
3 レジリエンス研究の新展開に向けた提案
4 遊牧社会の脈絡におけるレジリエンス
5 各章の概略

第Ⅰ部 レジリエンスの政治経済学

第1章 援助でアフリカはレジリエントになるか?――気候変動による災害が経済成長、農業、紛争に与える影響[島田 剛]
1 アフリカにおける気候変動と自然災害
2 研究の方法とデータ
3 推計結果
4 対策と政策立案への三つの要点
 
第2章 開発・人道支援分野におけるレジリエンスの系譜学――可能性と問題点[榎本珠良]
1 開発・人道支援分野におけるレジリエンス概念
2 開発・人道支援分野における言説の変遷
3 レジリエンス概念の普及と批判
4 レジリエンス概念を用いる可能性と問題点

第Ⅱ部 生業多様化とレジリエンス

第3章 レジリエンスと多様化の政治経済学――ケニア・バリンゴ県のイルチャムスの事例(一九八〇~二〇一八年)[ピーター・D・リトル]
1 時間性からレジリエンスを照射する
2 調査対象地の脈絡
3 一九八〇~二〇一八年の遊牧と生計の動向
4 遊牧以外の事業活動と多様化戦略
5 現金送金
6 ジェンダーに基づく多様化と格差
7 生計多様化と遊牧社会のゆくえ
 
第4章 東アフリカ牧畜社会における生業多様化とレジリエンス[佐川 徹]
1 牧畜民のように世界をみる
2 牧畜社会における生業多様化と漁労
3 ダサネッチの慣習的な漁労と魚食への評価
4 漁労の開始と評価の推移
5 変化する能力と他者への態度

第Ⅲ部 レジリエンスとアイデンティティ

第5章 移動するアイデンティティ――ケニア北部トゥルカナの牧畜民のレジリエンス、帰属、変化[グレタ・センプリチェ]
1 レジリエンスの要素としてのアイデンティティ
2 ライヤ――トゥルカナの集団アイデンティティ
3 異なる社会的世界
4 味の記憶
5 豊かな年
6 恥の年
7 移動するアイデンティティ
8 移動的であること、レジリエントであること
 
第6章 土地法の改正とサンブル遊牧民女性のレジリエンス[ラーマ・ハッサン]
1 土地へのアクセスと女性のレジリエンス
2 遊牧とレジリエンス思考
3 サンブル県の土地と人々
4 コミュニティの土地権の変化と遊牧民女性のレジリエンス
5 代理を利用した女性のレジリエンス
6 交渉を利用した女性のレジリエンス
7 資金を利用した女性のレジリエンス
8 減少する移動性、家事労働の変化、レジリエンス
9 再構成されるレジリエンスと女性の役割

第Ⅳ部 難民化した遊牧民のレジリエンス

第7章 関係性と脈絡から遊牧民のレジリエンスを考え直す――サンブル・ポコット間の紛争(二〇〇四/二〇〇九年)の事例研究[湖中真哉]
1 遊牧民のレジリエンスとは何か
2 信頼性プロフェッショナルとしての遊牧民
3 紛争と調査の概要
4 ナラティブを剥ぎ取って紛争の主因を見出す
5 武器の拡散に対するレジリエンス
6 情報の氾濫に対するレジリエンス
7 「遊牧民のレジリエンス」を再考する
 
第8章 避難の物質文化――東アフリカ遊牧社会の国内避難民に関する存在論的考察[湖中真哉]
1 レジリエンス概念を物質文化に脈絡化する
2 紛争と国内避難民についての概要
3 避難の物質文化
4 調査方法と調査の概観
5 避難時に持ち出された物品
6 最低限のもののセット
7 人とものの関係性のネットワーク
8 身体としての最低限の所有物
9 人間身体の拡張としての最低限のもののセット
10 南アメリカ先住民と東アフリカ遊牧民のパースペクティヴに関する存在論的比較
11 自己と他者の関係性
12 人道支援の再考のために
 
第9章 セカンド・シティズンの幸福[波佐間逸博]
1 たいしたことじゃなくていい
2 セカンド・シティズン
3 グローバル・ガバナンス
4 生きるという営みに対する自然な共感
5 遊牧世界
6 群衆(アトゥコット)
7 現代世界

第Ⅴ部 レジリエンスと移動性を比較する―農耕民・都市居住民・遊牧民

第10章 (非)移動と忍耐力を通じたレジリエンス――バマコのケル・タマシェク[ジュリア・ゴンザレス]
1 ケル・タマシェクの文化と実践にみるレジリエンス
2 情勢の変化――サハラ・サヘル地域における往来と定住のパターン
3 ザイナボとの旅――訪問による(非)移動の考察
4 tazidert――忍耐力を通じたレジリエンス
5 変化を受け入れる忍耐力とレジリエンス
 
第11章 待機と賭け――タンザニアのインフォーマル経済のレジリエンスをめぐって[小川さやか]
1 「待つ」ことの不確実性とレジリエンス
2 インフォーマル経済の変容
3 賭けと待ち
4 新天地への移動と「希望」の調整
5 加速化と規範化に抗して
6 「賭けて待つ」力のレジリエンス
 
第12章 ザンビア農村部における元難民のレジリエンス[村尾るみこ]
1 難民である農民のレジリエンス
2 ンブンダとザンビア西部のマユクワユクワ難民定住地
3 マユクワユクワ再定住地における生活
4 分散化された土地利用
5 難民間の関係を通じて発達したレジリエンス
 
エピローグ 乾燥地におけるレジリエンス――意味をめぐる論争[イアン・スクーンズ]
1 「レジリエンス」は何を意味する概念か
2 多様な遊牧――問題なのは脈絡である
3 レジリエンスとは何か
4 プロセスとしてのレジリエンス
5 動詞としてのレジリエンス
 
あとがき
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