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よく使われている「集権体制」あるいは「中華帝国」——こうした言葉に我々は、上から下まで完全に統制された社会像をイメージする。しかし中国社会の状況は必ずしもそうではない。基層すなわち末端のコミュニティに暮らす人々にとって、多くの場合、国家は象徴的な存在に過ぎず、彼らの実際の生活は、郷、鎮や村といった基層社会の独自の民間規範/制度のもとで暮らしているのだ。その特徴は、数千年の古代以来変わらない。徴「税」の実態、団体紛争、幹部の人事変更及び村民の上訴事件等々……実際の事例に基づいた政治社会学的分析で、中国基層社会の政治経済構造に迫った名著が日本語に!
著者紹介
張静(Zhang Jing)
中国北京大学社会学科教授。1957年生まれ。香港中文大学社会学博士課程終了。博士(社会学),専門は政治社会学。社会ガバナンス,政府行為に関する調査・研究に従事してきた。主な著作に,《基层政权:乡村制度诸问题》(『基層政権:農村制度の諸問題』 社会科学文献出版社,2019年),《利益组织化单位:企业职代会案例研究》(『利益組織化単位:企業職代会のケーススタディ』 中国社会科学出版社,2001年),《社会冲突的结构性来源》(『社会的衝突の構造的な発生源』 社会科学文献出版社,2012年),《国家与社会》(『国と社会』 編著,1998年),《转型中国:社会公正观研究》(『転換する中国:社会公正観研究』 編著,中国人民大学出版社,2008年)など。
訳者紹介
金山(Jin Shan)
中国海南大学外国語学院教授。1966年生まれ。九州大学比較社会文化研究科卒業。博士(比較社会文化),専門は社会学。海南島における民族問題,海南島に関する日本文献の調査・研究・翻訳などに従事してきた。主な著作に,《海南岛黎族的社会组织和经济组织》(訳書,海南出版社,2016年 原著:岡田譲,尾高邦雄著『海南島黎族の社會組織並に經濟組織』海南海軍特務部,1944年),《黎族藏书(日文卷)》(『黎族蔵書(日本語の巻)』 編著,海南出版社,2012年),《浮云》(訳書,中央編訳出版社,2012年 原著:林芙美子『浮雲』)など。主な論文に《海南黎族社会阶层分布及社会流动状况调查》(『海南黎族の社会階層分布と社会流動状況調査』 海南大学学報,2014年),《社会转型期的黎族传统文化》(『社会転換期の黎族伝統文化』 海南大学学報,2009年)など多数。本書では,序章,第1,2,3,6,9,10章を翻訳。
韓艶麗(Han Yanli)
長江大学外国語学院講師。1983年生まれ。鹿児島大学人文社会研究科法文学部地域学研究科博士後期課程修了。博士(社会学),専門は文化人類学。著作に『内モンゴル農耕地域における「伝統文化」の形成と変容:通遼市における婚姻習俗を事例として』(櫂歌書房,2022年)。主な論文に「日元関係研究:南九州地域を中心に」『東アジア経済研究』2020(78),「20世紀前半期の内モンゴル農耕社会について:興安四省実態調査に見られる移住関係を中心に」『東アジア経済研究』,2019(77)など。本書では,第5,7,8章を翻訳。
王艶珍(Wang Yanzhen)
海南大学外国語学院講師。1979年生まれ。名古屋大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了。博士(文学),専門は比較文学。近代中日詩歌の発展史について整理し,中日近代詩の受容過程を明らかににする。主な著作に,『夢と詩を織り成す開拓者:『嘗試集』,『新体詩抄』を中心に』(博士論文,2012年),《汉・英・俄・法・日・韩 旅行用语手册》(共訳,中央編訳出版社,2014年)など。本書では,第4章を翻訳。
張静(Zhang Jing)
中国北京大学社会学科教授。1957年生まれ。香港中文大学社会学博士課程終了。博士(社会学),専門は政治社会学。社会ガバナンス,政府行為に関する調査・研究に従事してきた。主な著作に,《基层政权:乡村制度诸问题》(『基層政権:農村制度の諸問題』 社会科学文献出版社,2019年),《利益组织化单位:企业职代会案例研究》(『利益組織化単位:企業職代会のケーススタディ』 中国社会科学出版社,2001年),《社会冲突的结构性来源》(『社会的衝突の構造的な発生源』 社会科学文献出版社,2012年),《国家与社会》(『国と社会』 編著,1998年),《转型中国:社会公正观研究》(『転換する中国:社会公正観研究』 編著,中国人民大学出版社,2008年)など。
訳者紹介
金山(Jin Shan)
中国海南大学外国語学院教授。1966年生まれ。九州大学比較社会文化研究科卒業。博士(比較社会文化),専門は社会学。海南島における民族問題,海南島に関する日本文献の調査・研究・翻訳などに従事してきた。主な著作に,《海南岛黎族的社会组织和经济组织》(訳書,海南出版社,2016年 原著:岡田譲,尾高邦雄著『海南島黎族の社會組織並に經濟組織』海南海軍特務部,1944年),《黎族藏书(日文卷)》(『黎族蔵書(日本語の巻)』 編著,海南出版社,2012年),《浮云》(訳書,中央編訳出版社,2012年 原著:林芙美子『浮雲』)など。主な論文に《海南黎族社会阶层分布及社会流动状况调查》(『海南黎族の社会階層分布と社会流動状況調査』 海南大学学報,2014年),《社会转型期的黎族传统文化》(『社会転換期の黎族伝統文化』 海南大学学報,2009年)など多数。本書では,序章,第1,2,3,6,9,10章を翻訳。
韓艶麗(Han Yanli)
長江大学外国語学院講師。1983年生まれ。鹿児島大学人文社会研究科法文学部地域学研究科博士後期課程修了。博士(社会学),専門は文化人類学。著作に『内モンゴル農耕地域における「伝統文化」の形成と変容:通遼市における婚姻習俗を事例として』(櫂歌書房,2022年)。主な論文に「日元関係研究:南九州地域を中心に」『東アジア経済研究』2020(78),「20世紀前半期の内モンゴル農耕社会について:興安四省実態調査に見られる移住関係を中心に」『東アジア経済研究』,2019(77)など。本書では,第5,7,8章を翻訳。
王艶珍(Wang Yanzhen)
海南大学外国語学院講師。1979年生まれ。名古屋大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了。博士(文学),専門は比較文学。近代中日詩歌の発展史について整理し,中日近代詩の受容過程を明らかににする。主な著作に,『夢と詩を織り成す開拓者:『嘗試集』,『新体詩抄』を中心に』(博士論文,2012年),《汉・英・俄・法・日・韩 旅行用语手册》(共訳,中央編訳出版社,2014年)など。本書では,第4章を翻訳。
初版の序論
2006年版への序文
2018年版への序文
第1章 歴史:地方権威の授権源
1 官制以外の地方管理
2 公的地位の取得と制度的支援
3 権力基盤:地方共通の利益の構築
4 地方権威の官制授権体系への侵入
5 地方体の解体:地方権威と地方社会の分離
6 利益分離構造の継続
7 授権源と国家政権建設
第2章 役割の競合:公共サービスと独占経営
1 新しい役割:公共資源の独占経営集団
2 公的職位の功利化
3 村レベルの土地財産の「共有」と「独占」
4 独占権の拡大:資産の貨幣化と「流動可能化」
5 利益,資本と税金費用の混合徴収と使用
6 人事制度:独占権の支援体系
7 安定度の低い基礎構造
第3章 郷規民約に見られる村の管理権
1 村の「構成員」資格
2 村民が権利を享受する条件
3 個人と全体の関係の調節
4 郷規民約の基本的性質
第4章 基層財政・税務制度及びその政治的結果
1 歴史的遺産
2 「集団蓄積」の策定と徴収
3 郷と村における実効課税権
4 制御システムの不備
5 自分で自分を監督すること
第5章 人事異動及び組織化協力
1 行政と政治の共生
2 基層組織の人事異動
3 郷村の二つのレベルにおける幹部ネットワーク
4 内部支持獲得に向けた選挙戦の方法
5 郷村選挙:社会的利益の組織化
6 代表制自治と権威主義的自治
第6章 農村政治の観察
1 問題の背景
2 四つの事例とその分析
3 議論その一:農村政治の特徴
4 議論その二:農村政治と国家政治
第7章 個人と公共―2種類の関係の混在と変形
1 個人関係と公共関係
2 理念と行為の矛盾と統一
3 個人関係による公共事務の運営
4 個人的関係の公共性への伸展
5 パブリック・リレーションズの変容:新しい庇護関係
6 潜在性問題の議論
第8章 分割的な管轄権
1 財政地域請負制:暗黙の租税権
2 土地請負:暗黙に認められていた資源の支配権
3 集合所有権の役割
4 ディスカッション:分断された構造と国家の役割
第9章 村民と国家
1 問題
2 成員権と公民権との矛盾
3 国家の役割の現代的転換
4 結語
第10章 農村制度に関する諸問題
1 いくつかの特徴
2 政治社会学的意義
3 若干の関連問題
索引
2006年版への序文
2018年版への序文
第1章 歴史:地方権威の授権源
1 官制以外の地方管理
2 公的地位の取得と制度的支援
3 権力基盤:地方共通の利益の構築
4 地方権威の官制授権体系への侵入
5 地方体の解体:地方権威と地方社会の分離
6 利益分離構造の継続
7 授権源と国家政権建設
第2章 役割の競合:公共サービスと独占経営
1 新しい役割:公共資源の独占経営集団
2 公的職位の功利化
3 村レベルの土地財産の「共有」と「独占」
4 独占権の拡大:資産の貨幣化と「流動可能化」
5 利益,資本と税金費用の混合徴収と使用
6 人事制度:独占権の支援体系
7 安定度の低い基礎構造
第3章 郷規民約に見られる村の管理権
1 村の「構成員」資格
2 村民が権利を享受する条件
3 個人と全体の関係の調節
4 郷規民約の基本的性質
第4章 基層財政・税務制度及びその政治的結果
1 歴史的遺産
2 「集団蓄積」の策定と徴収
3 郷と村における実効課税権
4 制御システムの不備
5 自分で自分を監督すること
第5章 人事異動及び組織化協力
1 行政と政治の共生
2 基層組織の人事異動
3 郷村の二つのレベルにおける幹部ネットワーク
4 内部支持獲得に向けた選挙戦の方法
5 郷村選挙:社会的利益の組織化
6 代表制自治と権威主義的自治
第6章 農村政治の観察
1 問題の背景
2 四つの事例とその分析
3 議論その一:農村政治の特徴
4 議論その二:農村政治と国家政治
第7章 個人と公共―2種類の関係の混在と変形
1 個人関係と公共関係
2 理念と行為の矛盾と統一
3 個人関係による公共事務の運営
4 個人的関係の公共性への伸展
5 パブリック・リレーションズの変容:新しい庇護関係
6 潜在性問題の議論
第8章 分割的な管轄権
1 財政地域請負制:暗黙の租税権
2 土地請負:暗黙に認められていた資源の支配権
3 集合所有権の役割
4 ディスカッション:分断された構造と国家の役割
第9章 村民と国家
1 問題
2 成員権と公民権との矛盾
3 国家の役割の現代的転換
4 結語
第10章 農村制度に関する諸問題
1 いくつかの特徴
2 政治社会学的意義
3 若干の関連問題
索引