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1991年、フィリピン・ルソン島のピナトゥボ山が20世紀最大の大噴火を起こし、その山麓奥深くに暮らしてきた先住民アエタ族は甚大な被害を受けた。70年代からアエタの調査を続けた著者はその大噴火に遭遇し、否応なく彼らの苦難に巻き込まれていく。人類学者としてNGOのワーカーとしてアエタと伴走する中で、著者は先住民の強靱な復興力を目の当たりにする。移動焼畑と狩猟採集で培われた柔軟な生業多様性を活かしたアエタは、国や世界をも動かしながら「新しい人間、新しい社会になった」と呼ぶべき創造的復興を遂げたのである。「コミットする人類学」の実践で学士院賞に輝いた著者が、40年にわたって参与したダイナミックな民族誌を多数の貴重な写真で報告する。
『アジア・アフリカ地域研究』第24-1号、111-114頁、評者:木村周平氏
清水 展(しみず ひろむ)
京都大学名誉教授、専門は文化人類学、東南アジア研究。
1951年、横須賀市生まれ。東京大学助手、九州大学助教授・教授、京都大学教授、関西大学特任教授として奉職する一方、京都大学東南アジア研究所長(2010-2014)、日本文化人類学会長( 2018-2020)を歴任。
『噴火のこだま』( 九州大学出版会 2003/2021年)、『草の根グローバリゼーション』( 京都大学学術出版会、2013年、日本文化人類学会賞、日本学士院賞)など、コミットメントする人類学、「応答する」人類学の実践を報告した著書多数。最新刊の本書によって、同時代を生きるための人類学・民族誌の新しいあり方を模索する。
京都大学名誉教授、専門は文化人類学、東南アジア研究。
1951年、横須賀市生まれ。東京大学助手、九州大学助教授・教授、京都大学教授、関西大学特任教授として奉職する一方、京都大学東南アジア研究所長(2010-2014)、日本文化人類学会長( 2018-2020)を歴任。
『噴火のこだま』( 九州大学出版会 2003/2021年)、『草の根グローバリゼーション』( 京都大学学術出版会、2013年、日本文化人類学会賞、日本学士院賞)など、コミットメントする人類学、「応答する」人類学の実践を報告した著書多数。最新刊の本書によって、同時代を生きるための人類学・民族誌の新しいあり方を模索する。
序―カキリガン村アエタと私の長く深い関わり
第Ⅰ部 先住民社会のレジリエンス
Chapter 1 噴火前の暮らし
1 移動焼畑農耕
2 弓矢猟、魚取り、採集―補助的だが緊急時には重要な採集狩猟
3 ピナトゥボ・アエタの歴史人類学―平定・包摂・支配の介入との対峙
4 外世界との関わり―開発や定住化政策への対応
5 「緩い社会」が育んだ自律/自立した生活
コラム(1) 食物資源利用の多様性
コラム(2) 二〇世紀初め頃の狩猟の様子
コラム(3) 一九世紀末のアエタへの融和策
Chapter 2 噴火の衝撃
1 噴火
2 被災から復興へ―産みの苦しみ
3 巻き込まれてゆく人類学の始まり
Chapter 3 創造的復興へ
1 暮らしを取り戻す奮闘
2 カナイナヤン再定住地の建設
3 復興に関わる日本人
4 海外青年協力隊
5 日本の葛を使った緑化プロジェクト
6 再びアエタ・レジリエンス―重層的並存による生存戦略
Chapter 4 カルメリータの人生行路 コミットメントする人類学者
1 成り行きでフィリピンへ
2 北ルソン・コルディリエラ山地での予備調査
3 カキリガン村へ
4 「成り行きの人類学者」の負い目
5 マニラへの「修学旅行」
6 アモック事件―サヤウの夜の騒動
7 カルメリータを日本へ
8 相互性原則なき人類学への自己批判
第II部 人類学と私たちの生き方の新しい転回/展開
Chapter 5 変化と持続 被災からの創造的復興
1 サイード『オリエンタリズム』の衝撃余波を受けた私
2 被災と転地転生―国民=先住民の誕生
1 多様性の拡大と貧富の格差
2 EFMDによる準備
3 再定住地での組織づくりとエンパワーメント
4 新しい人間の誕生―文化の意識化と先住民の自覚
5 生きる時空間の爆発的拡張
3 危機を生き延びる―多角的生業によるリスク分散と最悪事態の回避
4 創造的復興の途―レジリエンスからトランスフォーマビリティーへ
5 変化と持続
コラム(4) 米軍を訓練したアエタたち
Chapter 6 人類史への示唆 ジェームズ・スコットの仕事を手がかりにして
1 東西冷戦とベトナム戦争の影
2 ピナトゥボ噴火とフィリピン人アイデンティティー、ナショナリズムの変化
3 ジェームズ・スコットの仕事から
4 アエタの生き方
コラム(5) スコットの『ゾミア』と『実践、日々のアナキズム』
Chapter 7 いま、ここ、の物語から人類の未来へ 「鈍感な凡人」が運良く人類学者となれた意味
1 愛着と離接、あるいは根を持つことと翼を持つこと―フィールドワークと民族誌
2 「マリノフスキーの孫」の自己変容―応答する人類学へ
3 「鈍感な凡人」でも気づいた考えた―外部感覚・思考器官としての異文化
4 長く続く応答の持つ意味
5 中村哲医師に導かれて―人類学者でなければできないこととは何か
想定外の外部世界との出会いと伴走で得たこと―結びに代えて
参考文献
謝 辞
索 引
第Ⅰ部 先住民社会のレジリエンス
Chapter 1 噴火前の暮らし
1 移動焼畑農耕
2 弓矢猟、魚取り、採集―補助的だが緊急時には重要な採集狩猟
3 ピナトゥボ・アエタの歴史人類学―平定・包摂・支配の介入との対峙
4 外世界との関わり―開発や定住化政策への対応
5 「緩い社会」が育んだ自律/自立した生活
コラム(1) 食物資源利用の多様性
コラム(2) 二〇世紀初め頃の狩猟の様子
コラム(3) 一九世紀末のアエタへの融和策
Chapter 2 噴火の衝撃
1 噴火
2 被災から復興へ―産みの苦しみ
3 巻き込まれてゆく人類学の始まり
Chapter 3 創造的復興へ
1 暮らしを取り戻す奮闘
2 カナイナヤン再定住地の建設
3 復興に関わる日本人
4 海外青年協力隊
5 日本の葛を使った緑化プロジェクト
6 再びアエタ・レジリエンス―重層的並存による生存戦略
Chapter 4 カルメリータの人生行路 コミットメントする人類学者
1 成り行きでフィリピンへ
2 北ルソン・コルディリエラ山地での予備調査
3 カキリガン村へ
4 「成り行きの人類学者」の負い目
5 マニラへの「修学旅行」
6 アモック事件―サヤウの夜の騒動
7 カルメリータを日本へ
8 相互性原則なき人類学への自己批判
第II部 人類学と私たちの生き方の新しい転回/展開
Chapter 5 変化と持続 被災からの創造的復興
1 サイード『オリエンタリズム』の衝撃余波を受けた私
2 被災と転地転生―国民=先住民の誕生
1 多様性の拡大と貧富の格差
2 EFMDによる準備
3 再定住地での組織づくりとエンパワーメント
4 新しい人間の誕生―文化の意識化と先住民の自覚
5 生きる時空間の爆発的拡張
3 危機を生き延びる―多角的生業によるリスク分散と最悪事態の回避
4 創造的復興の途―レジリエンスからトランスフォーマビリティーへ
5 変化と持続
コラム(4) 米軍を訓練したアエタたち
Chapter 6 人類史への示唆 ジェームズ・スコットの仕事を手がかりにして
1 東西冷戦とベトナム戦争の影
2 ピナトゥボ噴火とフィリピン人アイデンティティー、ナショナリズムの変化
3 ジェームズ・スコットの仕事から
4 アエタの生き方
コラム(5) スコットの『ゾミア』と『実践、日々のアナキズム』
Chapter 7 いま、ここ、の物語から人類の未来へ 「鈍感な凡人」が運良く人類学者となれた意味
1 愛着と離接、あるいは根を持つことと翼を持つこと―フィールドワークと民族誌
2 「マリノフスキーの孫」の自己変容―応答する人類学へ
3 「鈍感な凡人」でも気づいた考えた―外部感覚・思考器官としての異文化
4 長く続く応答の持つ意味
5 中村哲医師に導かれて―人類学者でなければできないこととは何か
想定外の外部世界との出会いと伴走で得たこと―結びに代えて
参考文献
謝 辞
索 引