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有人宇宙学

宇宙移住のための3つのコアコンセプト

山敷 庸亮 編

A5並製・358頁

ISBN: 9784814004942

発行年月: 2023/07

  • 本体: 2,900円(税込 3,190円
  • 在庫あり

“地球に生まれた生命がついに宇宙に進出する時が来た!それは、地球生命の偉大な功績である。宇宙に生まれた生命の果たすべき役割は何か。それは、宇宙に生命を広げることではないのか。人類の宇宙展開には、すべての生命の期待が込められている!”
——宇宙飛行士・土井隆雄 (Part 1 Chapter 2 執筆)

“宇宙に移住環境を構築するためには、あらゆる叡智を結びつける必要があり、その果敢な挑戦に挑んだのが本著である。その試みは、「宇宙船地球号」の概念をも掘り下げ、かけがえのない地球を持続可能にしていく示唆にもなるだろう。”
——宇宙飛行士・山崎直子 (Part 4 Chapter 3 執筆)

 
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内容

2022年にアルテミス号の打ち上げが成功し、月面社会実現への期待が高まる昨今だが、現実に地球外での生活を考えたとき、喫緊の課題は何だろうか。閉鎖空間で人類を支える自然資本[コアバイオーム]の確保、それを宇宙に持参し維持する技術[コアテクノロジー]、そして宇宙での社会[コアソサエティ]の在り方——3つのコア概念に基づき、研究の最先端を紹介する。

プロフィール

【編者】
山敷 庸亮(やましき ようすけ) → Introduction,Part1 Chapter1,Part2 Chapter1,
Part3 Chapter1 BOX
京都大学大学院総合生存学館SIC 有人宇宙学研究センター長・教授
1990 年京都大学工学部卒業。1991年京都大学工学研究科環境地球工学専攻修士課程時に日本ブラジル交流協会を通じてサンパウロ大学で研修。1994 年サンパウロ大学工科大学院(EPUSP)修士課程修了。1999年京都大学博士(工学・環境地球工学)。2004~2008年日本大学理工学部講師・准教授。2007年東京大学非常勤講師。2008~2013年京都大学防災研究所准教授などを経て現職。2011年原発事故による河川海洋放射線環境調査に加わる。2015年より宇宙における水の研究を推進し,系外惑星の複数のハビタブル・ゾーンと恒星高エネルギー粒子による系外惑星放射線環境を比較可能な太陽系外惑星データベースExoKyoto を開発,公開。2019年より土井隆雄宇宙飛行士,寺田昌弘准教授らとともに,アリゾナ大学人工隔離生態系Biosphere 2 を用いたスペースキャンプ(SCB2)を企画,実践。以降,宇宙居住研究に本腰を入れ,「コアバイオームコンセプト」そして「宇宙移住のための3 つのコアコンセプト」を提唱。
編集補佐:冨田キアナ,新原有紗,白樫聖夢

【執筆者(五十音順)】
青木 節子(あおき せつこ) → Part4 Chapter1
慶應義塾大学大学院法務研究科教授
カナダのマッギル大学法学部附属航空宇宙法研究所博士課程修了。防衛大学校社会科学教室,慶應義塾大学総合政策学部を経て現職。国際法,宇宙法等を担当。現在,慶應義塾大学宇宙法研究センター副所長。

青野 郁也(あおの ふみや) → Part3 Chapter1 BOX
京都大学工学部物理工学科宇宙基礎工学コース4回生
日本宇宙エレベーター協会の主催するSPECに参加するなど,学外で宇宙エレベーターに関する活動をする。専門は制御工学。

縣 秀彦(あがた ひでひこ) → Part4 Chapter3
大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台准教授,国際天文学連合(IAU)国際普及室(OAO)スーパーバイジングダイレクター,一般社団法人宙ツーリズム推進協議会代表
東京学芸大学大学院修了,博士(教育学)。『日本の星空ツーリズム』(緑書房),『ビ
ジュアル天文学史』(緑書房)など多数の著作物を発表。

秋山 演亮(あきやま ひろあき) → Part4 Chapter3
和歌山大学教授・学長補佐
京都大学農学部卒業後株式会社西松建設勤務。社会人枠で東京大学理学部地球惑星科学専攻博士課程卒,理学博士。秋田大学を経て和歌山大学教授,千葉工業大学クロスアポイントメント。内閣府宇宙開発政策委員会専門委員。

荒井 誠(あらい まこと) → Part4 Chapter3
一般社団法人宙ツーリズム推進協議会理事・事務局長
スタンフォード大学経営大学院修士。株式会社電通在籍時,2015年日本マーケティング学会で「宇宙マーケティング」を提唱。以降,ニュースペース国際戦略研究所のスペースカルチャーBZWG リーダーとして,宙グルメや宙スポーツなど「宙文化」の啓発にも従事。

池田 武文(いけだ たけふみ) → Part2 Chapter2
京都府立大学大学院生命環境科学研究科特任教授・名誉教授,京都大学SIC有人宇宙学研究センター宇宙木材研究室研究員
九州大学大学院農学研究科博士課程修了。九州大学農学部助手,森林総合研究所研究室長,京都府立大学大学院生命環境科学研究科教授を経て現職。専門は樹木生理生態学。

市村 周一(いちむら しゅういち) → Part3 Chapter2
京都大学大学院総合生存学館博士課程
KDDI 株式会社技術統括本部技術戦略本部担当部長(宇宙事業・技術戦略)東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学修了。月面基地に係る研究や国際宇宙ステーション「きぼう」JAXAフライトディレクタ等を経て,KDDIで宇宙事業・技術戦略策定および京都大学大学院で有人宇宙活動の循環型社会に係る研究に従事。

稲富 裕光(いなとみ ゆうこう) → Part1 Chapter4
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所教授
東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了後,宇宙科学研究所にて,1992年から現在まで,宇宙環境利用科学の研究に従事。2014 年より現職。専門は材料科学。宇宙惑星居住科学連合幹事。

遠藤 雅人(えんどう まさと) → Part2 Chapter1
東京海洋大学学術研究院海洋生物資源学部門准教授
東京水産大学大学院水産学研究科博士課程修了後,日本学術振興会特別研究員PDを経て,東京海洋大学助手,同助教を経て2019年より現職を務める。専門は水族養殖学,特に循環式養殖システムの効率化と応用に関する研究に従事。

大野 琢也(おおの たくや) → Part3 Chapter1
鹿島建設株式会社イノベーション推進室担当部長(宇宙担当),京都大学大学院総合生存学館SIC 有人宇宙学研究センターSIC 特任准教授
神戸大学大学院工学研究科を修了後,鹿島建設株式会社建築設計本部にて生産・物流施設の建築設計を担当。関西支店建築設計部,技術研究所研究管理グループ(兼)を経て,2023年5月より現職。京都大学大学院総合生存学館非常勤講師を務める。

小原 輝久(おはら てるひさ) → Project Report3
IHI エアロスペース宇宙開発利用技術部
京都大学大学院工学研究科を修了後,宇宙利用関連機器の機構設計業務に従事。学部時代は,無重力空間や閉鎖環境の被験体兼研究員としても活動。第12回京大変人講座登壇。

菊川 祐樹(きくかわ ゆうき) → Part2 Chapter2 BOX
京都大学工学部電気電子工学科4回生,木造人工衛星LignoSat学生リーダー,株式会社Kampher 代表取締役社長
平成12年(2000)8月24日生まれ。令和2年,京都大学電気電子工学科に入学。令和6年木造人工衛星プロジェクト学生リーダーを担当する傍ら,株式会社Kampher を創業し新規事業の開発に取り組む。

後藤 琢也(ごとう たくや) → Part3 Chapter3
同志社大学理工学部教授
京都大学大学院工学研究科博士認定退学後,慶應義塾大学理工学部,京都大学エネルギー科学研究科を経て,2015年より現職。資源とエネルギーのその場利用に関連する研究に従事。専門は資源エネルギー学。現在,同志社大学学長補佐。

小林 和也(こばやし かずや) → Part2 Chapter4
京都大学フィールド科学教育研究センター准教授
北海道大学大学院農学院環境資源学専攻を修了後,京都大学農学研究科昆虫生態学分野において研究員等としてシロアリの研究に従事。2017年から京都大学フィールド科学教育研究センターの北海道研究林にて昆虫に限らず様々な動植物の研究を行っている。

桜井 誠人(さくらい まさと) → Part2 Chapter3
宇宙航空研究開発機構研究開発部門研究領域主幹
早稲田大学理工学研究科博士課程修了。日本学術振興会海外特別研究員(ブレーメン大学),東京女子医科大学助手を経て,2001年航空宇宙技術研究所(現JAXA)入所,生命維持技術(ECLSS)の研究に従事。専門は化学工学。日本航空宇宙学会フェロー。

佐々木 貴教(ささき たかのり) → Part1 Chapter3
京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室助教
2008年3月東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。博士(理学)。東京工業大学GCOE特任助教および特任准教授などを経て,2014年より現職。専門は,惑星と生命の起源と進化についての理論研究。

檀浦 正子(だんのうら まさこ) → Part2 Chapter2
京都大学大学院農学研究科准教授
2006年3月神戸大学大学院自然科学研究科にて博士号取得。森林総合研究所非常勤研究員,JSPS 特別研究員(PD)として京都大学・フランス国立農業研究所でのポスドクを経て2009年9月より京都大学農学研究科に採用される。専門は森林生態系炭素循環。

寺田 昌弘(てらだ まさひろ) → Part4 Chapter2
京都大学宇宙総合学研究ユニット特定准教授
大阪大学大学院生命機能研究科修了。専門は,宇宙医学,宇宙生物学。2009年にJAXA宇宙医学生物学研究室(向井千秋研究室)に入社し,宇宙飛行士の健康管理技術の研究に従事。2014年10月から3年間,NASA Ames Research Center へ研究留学し,宇宙滞在中の健康評価手法の開発に向けた研究に従事。その後,東京慈恵会医科大学に移り,2018年4月より現職。

土井 隆雄(どい たかお) → Part1 Chapter2
京都大学大学院総合生存学館SIC有人宇宙学研究センター
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後,宇宙航空研究開発機構にて有人宇宙開発に携わる。1997年と2008年にスペースシャトルに搭乗する。2009年より2016年まで国連宇宙応用専門官として勤務。2016年より京都大学勤務。専門は有人宇宙学。

冨田 キアナ(とみた きあな) → Project Report 4
京都大学大学院総合生存学館博士課程
2019年エジンバラ大学にて修士号を取得。2020年ケンブリッジ大学にて修士号を取得。2021年京都大学博士課程に入学,在学中。2023 年よりケンブリッジ大学にて気候変動による自然災害研究に従事。

新原 有紗(にいはら ありさ) → Project Report 1
京都大学大学院総合生存学館博士課程
2018年NASA が主催するNASA Space Apps Osaka にて最優秀賞を受賞。KOBE STARTUP AFRICA in Rwanda1 期生。現在は,月での管轄権に関する研究を行っている。

二川 健(にかわ たけし) → Part3 Chapter4
徳島大学大学院医歯薬学研究部生体栄養学分野・徳島大学宇宙栄養研究センター
1991年徳島大学大学院医学研究科にて博士号を取得。1993年から2年間ドイツ デュッセルドルフ大学への留学。その後,現研究室にて無重力による筋萎縮や機能性宇宙食の研究に取り組む。2018年第3回宇宙開発利用大賞(文部科学大臣賞)を受賞。

平嶺 和佳菜(ひらみね わかな) → Project Report 2
東京理科大学薬学部5年
京都大学主催Space Camp at Biosphere 2 の4 期生として参加。第15回京都大学宇宙シンポジウムで宇宙飛行士賞を受賞。2023年に国連主催のSpace4Women のMentorship program のMentee に選出。現在は放射線障害の防護を研究。

益田 玲爾(ますだ れいじ) → Part2 Chapter1
京都大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所教授
1995年東京大学農学系研究科博士課程修了。専門は魚類心理学。魚の行動を水槽で観察し,また潜水調査により海の生態系の謎に迫る研究を展開。環境DNAも調査ツールとする。著書に『魚の心をさぐる:魚の心理と行動』(成山堂書店,2007年)がある。

村田 功二(むらた こうじ) → Part2 Chapter2,同BOX
京都大学大学院農学研究科准教授
1994年3月京都大学大学院農学研究科林産工学専攻修士課程修了。大建工業株式会社を経て,1997年4月より京都大学大学院農学研究科助手に採用され,以降,助教・講師を経て現職。専門は,木材の物性と利用技術開発。

山崎 直子(やまざき なおこ) → Part4 Chapter3
一般社団法人宙ツーリズム推進協議会理事,一般社団法人Space Port Japan 代表理事
東京大学大学院工学研究科を修了後,現・宇宙航空研究開発機構(JAXA)で国際宇宙ステーション(ISS)開発に従事。1999 年に宇宙飛行士候補者に選抜され,2010年にISS滞在。アースショット賞評議員,京都大学大学院総合生存学館特任准教授なども務める。

目次

Introduction[山敷庸亮]

Part 1 宇宙移住に向けての序論

Chapter 1 宇宙移住と3つのコアコンセプト[山敷庸亮]
1 コアバイオーム
2 コアテクノロジー
3 コアソサエティ
4 移転先環境の社会実現にむけて
5 コアバイオームの例,Biosphere 2
6 コアバイオーム・コアテクノロジー・コアソサエティの課題
7 コアバイオームコンセプトの可能性

Chapter 2 有人宇宙学[土井隆雄]
1 有人宇宙活動
2 世界の有人宇宙活動の変遷
3 有人宇宙学の創出
4 宇宙における「人間社会の存在可能条件」の探究
5 有人宇宙学と宇宙社会
6 有人宇宙学の教育的側面
7 有人宇宙学の展望

Chapter 3 地球の特殊性から考える宇宙移住の条件[佐々木貴教]
1 水惑星の条件
2 ハビタブルゾーン
3 惑星表面の水量
4 磁場と炭素循環
5 酸素大気
6 安定な地球環境
7 地球が「生命の惑星」となった理由
8 宇宙に広がる多様な可能性

Chapter 4 宇宙での居住可能性を探究する科学[稲富裕光]

PROJECT REPORT 1 アフリカの宇宙開発熱[新原有紗]

Part 2 コアバイオーム

Chapter 1 宇宙海洋と宇宙養殖[遠藤雅人,益田玲爾,山敷庸亮]
1 地球海洋を宇宙へ
2 宇宙海洋
3 宇宙養殖
4 コアバイオームとしての宇宙海洋と宇宙養殖

Chapter 2 宇宙森林学[村田功二,檀浦正子,池田武文]
1 生物相と物質循環
2 地球環境と光合成
3 宇宙森林と宇宙木材学
4 宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)

BOX 宇宙ステーション(ISS)での木材の宇宙暴露実験[村田功二]
BOX 超小型木造人工衛星(LignoSat)開発学生チーム[菊川祐樹]

Chapter 3 空気再生・水再生・廃棄物処理[桜井誠人]
1 宇宙船内の空気
2 酸素の供給
3 清浄な空気に保つ
4 二酸化炭素から水を作る
5 除湿装置
6 水再生
7 廃棄物処理
8 生命維持システムの質量算出,ESM
9 月周回有人拠点(Gateway)計画

Chapter 4 宇宙空間に生態系を創造する[小林和也]
1 生態系を創造するには
2 進化と系の安定性
3 課題と展望

PROJECT REPORT 2 Space Camp at Biosphere 2 実習[平嶺和佳菜]

Part 3 コアテクノロジー

Chapter 1 人工重力と月面・火星での居住施設[大野琢也]
1 低重力という課題
2 人工重力施設
3 無重力下での人工重力
4 天体上での人工重力
5 グラス建築間の交通機関
6 UZUME でのグラス建築
7 都市型グラス建築
8 加速移動中の人工重力施設
9 超重力天体での重力調整施設

BOX 夢の宇宙輸送システム“宇宙エレベーター”[青野郁也]
BOX ヘキサトラック宇宙特急システムコンセプト[山敷庸亮]

Chapter 2 宇宙での循環システム構築[市村周一]
1 宇宙開発における循環型社会の実現に向けた現状
2 循環型社会実現に向けた取り組み

Chapter 3 資源・エネルギーその場利用[後藤琢也]
1 資源その場利用の必要性
2 月レゴリスに含まれる元素
3 分離回収方法
4 今後の展望

Chapter 4 宇宙食[二川健]
1 各国の宇宙食の現状
2 宇宙食の条件
3 宇宙レトルト食品と宇宙缶詰食品の特徴
4 代替肉

PROJECT REPORT 3 無重力体験[小原輝久]

Part 4 コアソサエティ

Chapter 1 宇宙法[青木節子]
1 国際宇宙法形成の中心としての国連
2 宇宙は誰のものか
3 宇宙資源は誰のものか
4 天体活動に対する国家管轄権の行使
5 新たなルールが必要とされる事項

Chapter 2 宇宙医療[寺田昌弘]
1 宇宙医学とは?
2 宇宙環境で生じる体への影響
3 宇宙で生じる人体影響に対する対応策
4 新たな取り組み
5 他惑星滞在へ向けての宇宙医学

Chapter 3 宇宙観光[山崎直子,縣秀彦,秋山演亮,荒井誠]
1 宇宙観光の動向
2 宙ツーリズム® とは
3 持続可能な社会に向けた関わり
4 宙ツーリズムのマーケティング調査
5 宙ツーリズム推進協議会の事業
6 他のツーリズムとの連携
7 Space Experience Industry
8 文化としての宇宙観光

PROJECT REPORT 4 宇宙飛行士とリーダーシップ[冨田キアナ]

謝 辞
刊行によせて[森雅彦]
索 引
著者紹介
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