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プリミエ・コレクション 125

ベトナム語北部方言の音節論

音声から音韻へのアプローチ

山岡 翔

A5上製・328頁

ISBN: 9784814004720

発行年月: 2023/03

  • 本体: 7,000円(税込 7,700円
  • 在庫あり
 
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内容

混沌とした「孤立語の音節」、その音韻的解釈を実証的に議論することは不可能なのか? ベトナム語の音節の解釈は、その複雑さゆえにゆらいできた。本書は、音節の時間的構造を数量的データに沿って仮定することで、この言語の音節の新たな捉え方を提案した。音節を基調とする孤立語に幅広く適用しうる、新アプローチ!

プロフィール

山岡 翔(やまおか しょう)
京都大学大学院博士課程修了(博士(文学))。現在,日本学術振興会特別研究員PD(大阪大学大学院人文学研究科ベトナム語専攻)。主な著作に「ベトナム語北部方言の音節内部構造の実験的研究」(博士論文,京都大学,2022年)などがある。

目次

まえがき
目次
図版一覧
表一覧
略号一覧

第1章 序論
1.1. 問題の所在
1.2. 解決方策
 1.2.1. 問題の生じる原因
 1.2.2. 音声表記の厳密化に必要な基準
 1.2.3. 音節基調の孤立語の特質
 1.2.4. 客観的な音声観察
 1.2.5. 時間的基準と質的基準の担保
1.3. 対象方言
1.4. 本研究の構成
コラム 1 方言差

第2章 音節の時間的構造
2.1. 音節正規化データ
 2.1.1. 音声の収録
 2.1.2. アノテーション
 2.1.3. 音響パラメータの抽出
 2.1.4. フォルマント値・fo値の修正
 2.1.5. 正規化
 2.1.6. 方言ごとのデータ統合
2.2. 頭子音と韻の時間的性質
 2.2.1. ベトナム語北部方言の頭子音と韻
 2.2.2. 頭子音・韻の時間的独立性
 2.2.3. 韻の等時的傾向
 2.2.4. 韻の時間的分割
 2.2.5. 韻の時間的単位
2.3. 音節の時間的構造の仮定と時間的基準の担保
コラム 2 音声の観察方法

第3章 頭子音
3.1. ベトナム語北部方言の頭子音の概観
 3.1.1. 調音方法
 3.1.2. 調音位置・調音者
 3.1.3. 発声と気流
 3.1.4. ハノイ内外での目録の違い
 3.1.5. 頭子音l-, n-の調音のゆれ
 3.1.6. 頭子音音素認定における問題点
3.2. 現象の概要とその発生機序に関する仮説
 3.2.1. 農村部において見られるゆれ
 3.2.2. 都市部において見られるゆれ
 3.2.3. 現象の一般化
 3.2.4. 現象の発生機序に関する仮説
3.3. 仮説成立の必要条件の検討
 3.3.1. ゆれの産出データ
 3.3.2. ゆれのタイプの判別
 3.3.3. オトガイ舌筋前部・茎突舌筋の活動に関わる環境
 3.3.4. 口蓋帆挙筋の活動が要求される環境
 3.3.5. 必要条件についての小結
3.4. 仮説成立の十分条件の検討
 3.4.1. ゆれの有無によるスペクトル特性の比較データ
 3.4.2. 分析方法
 3.4.3. ゆれの有無による摩擦音スペクトルの違い
 3.4.4. 摩擦スペクトルの違いをもたらす要因
 3.4.5. ゆれの有無による母音スペクトルの違い
 3.4.6. 口蓋帆挙筋の挙動の違いに関する生理的データ
 3.4.7. 十分条件についての小結
3.5. 頭子音l-, n-のゆれについての総括
3.6. 本章のまとめ
コラム 3 はじめてのベトナムで聞いた音

第4章 韻
4.1. 韻の概観と基本的な韻の実現
 4.1.1. 末尾の表記をもたない基本的な韻の音色
 4.1.2. 子音字-m, -p, -n, -t, -ng, -cで終わる基本的な韻の音色
 4.1.3. 母音字-i, -y, -u, -oで終わる基本的な韻の音色
 4.1.4. 残りの基本的な韻の音色
 4.1.5. 基本的な韻の時間情報
 4.1.6. 基本的な韻の音韻的解釈
4.2. 二重母音の音韻的解釈
 4.2.1. 二重母音を含む韻の音色
 4.2.2. 先行研究における二重母音を含む韻の解釈
 4.2.3. 二重母音の音色の特性
 4.2.4. 二重母音の時間的特性
4.3. 短母音舌背韻の音韻的解釈
 4.3.1. 短母音舌背韻の音声的特徴
 4.3.2. 各先行研究における短母音舌背韻の音韻的解釈
 4.3.3. 短母音舌背韻の産出情報の検討
 4.3.4. 短母音舌背韻の知覚情報の検討
 4.3.5. 短母音舌背韻の議論の小括
4.4. 介音の音韻的解釈
 4.4.1. 各先行研究における介音の解釈
 4.4.2. 介音が韻に含まれる根拠
 4.4.3. 介音が上昇二重母音の前部要素である根拠
4.5. 周辺的な韻
 4.5.1. 韻-oong, -oocの音韻的解釈
 4.5.2. 韻-eng, -ec, -eo, -oeoの主母音の音韻的解釈
 4.5.3. 韻-ươu, -ưu, -uơ, -uyu, -oeoにみられる話者間のゆれ
4.6. ハノイ内外での韻体系の差異
 4.6.1. ハノイ方言の半広母音/ɛ/, /ɔ/ の対応
 4.6.2. 中段母音の開口度
4.7. 本章のまとめ
コラム 4 留学当初の苦いエピソード

第5章 声調
5.1. 声調音素の数
 5.1.1. 北部方言の韻の声帯振動様式
 5.1.2. 声帯振動様式の分類
 5.1.3. 先行研究の声調の分析の違い
 5.1.4. 8声調体系とする分析の根拠
 5.1.5. 声調体系とする分析の利点
5.2. 声調の時間的マッピング
 5.2.1. 声調音素と分節音素のターゲットの違い
 5.2.2. 声調ターゲットの時間的マッピング
 5.2.3. 音調・発声ターゲットのマッピング方策の違い
5.3. 本章のまとめ
コラム 5 ベトナム語北部方言話者の日本語の発音

第6章 音素の内部構造
6.1. 要素理論
 6.1.1. 理論の概要
 6.1.2. 要素をもちいる利点
 6.1.3. ベトナム語音韻研究における本章の位置づけ
 6.1.4. 要素の構造的位置づけ
6.2. ハノイ方言の音素内部構造
 6.2.1. 頭子音の要素構造
 6.2.2. 母音の要素構造
 6.2.3. 末子音・介音の要素構造
 6.2.4. 声調音素の要素構造
6.3. 音節内部における音素間のつながり
 6.3.1. 音素配列制限
 6.3.2. 複数の音にまたがる調音特性
6.4. 本章のまとめ
コラム 6 つづり字

第7章 おわりに
7.1. 本研究のまとめとその意義
7.2. 残された課題
7.3. 今後の展望
コラム 7 ベトナム北部民謡Quan Họ Bắc Ninh

あとがき
参考文献
索引
英文要旨
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