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新・動物記

夜のイチジクの木の上で

フルーツ好きの食肉類シベット

中林 雅 著

四六並製・250頁

ISBN: 9784814003563

発行年月: 2021/10

  • 本体: 2,200円(税込 2,420円
  • 在庫あり
 
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内容

夜の熱帯雨林、樹上数十メートルの枝でイチジクを貪り食うシベット。胴長短足の体に長い尾をもつ彼らは、地上と樹上を自在に往来し、食肉目なのになぜか果物をよく食べ、毎日下痢をしているらしい。なぜ果実にこだわるのか? 熱帯雨林の生態系を支えるイチジクとの関係は? 8年間に及ぶ怒濤の追跡から見えてきた、不器用で中途半端、だからこそ強い彼らの生き様。

プロフィール

中林 雅(なかばやし みやび)
2015年、京都大学大学院理学研究科博士課程修了(博士(理学))。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現在は広島大学大学院先進理工系科学研究科助教。幼少期から人よりも動物と接することを好んだ。高校2年生時に参加したボルネオジャングル体験スクールをきっかけにシベットの研究者を志し、現在に至る。今ではシベットに近づくとアレルギー反応によりくしゃみがとまらず、姿を思い浮かべると脳内でにおいが再現され、吐き気を催すようになった。シベット研究のあとはイチジクを経て、人と野生動物の軋轢に研究テーマが移行しつつある。2020年、「半着生イチジクの種子散布機構」に関する研究で第24回日本熱帯生態学会吉良賞奨励賞を受賞。

目次

巻頭口絵
はじめに

1章 おもしろそうな動物、シベット
 1 篠山の野山で
 2 目覚めよ、ブタ
 3 シベットとの出会い
 4 祖母との約束

2章 夜の森へ―シベットを追いかけろ
 1 万全を期して調査地に入る
   修士研究テーマの決定
   調査方法の検討
   タビンへ
 2 タビンの強者たち
   つると棘
   アリ
 3 はじめての追跡、そして撃沈
   調査路の作成
   シベットの居場所の推定
 4 熱帯雨林の洗礼
   作戦の練り直し
   ヤミスズメバチに刺される
   シベット研究の難しさ
 5 パームシベットが好む環境
   森林内部と道路沿い
   パイオニア植物の果実
 6 悩みの日々

3章 大きなイチジクの木の下で―共存の秘密に迫る
 1 原点の森、ダナンバレーへ
   博士研究テーマの決定
   シベットを待ち伏せる
   罠とプレゼント
 2 怒涛の55徹
   夜間張り込みの装備
   夜も昼も見逃せない
 3 シベットの採食行動の特徴
   シベットの苦労
   果実食に向いていない?!
 4 あっという間の7徹
   イチジクの饗宴
   夜に長居するシベット
 5 不器用なシベットのびっくり技
   肥えろ
   採食果実の特徴
   パンダに負けるな
 6 シベットの個体間関係
   パームシベットの個体間関係
   ミスジパームシベットの個体間関係
   シベットの異種間関係
 7 雲の上に手が届いた
   大中小ビントロングとの再会
   大ビントロングの追跡
 8 ダナンバレーとの別れ
 9 シベット3種の共存機構
   利用環境と食物の差異
   イチジクの魅惑

4章 森を育むシベット、シベットを育む森
   ―種子散布者の正体を追う
 1 スーパーヒーロー・イチジク
   新たな研究テーマ
   イチジクとコバチの契約書
   イチジクでつながる生態系
   半着生イチジクの種子散布
 2 新たにマリアウの森へ
   苦しかった7か月
   新たな調査地
   マリアウでもっとも過酷なアクティビティ
 3 樹上60メートルの糞探し
   本題に取り掛かる
   決死のテナガザル尾行
   サイチョウを追ってジャングルを爆走する
 4 有効な種子散布者とは
   研究の背景
   量と質
   ビントロングは一日13万個の種を撒く?!
   動物に食べられることの利点
   半着生イチジクの運命を決定する散布環境
   距離より場所
 5 巷で流行りの総合的な有効性
   ビントロングは引っ張りだこ
   大型種子散布者の役割
 6 ここまでわかったビントロングの生態
   異端児ビントロングとイチジク
   謎の答え合わせ

5章 中途半端の強み
 1 食性を暴く
   約束の動物博士
   雑食とイチジク食
 2 改めて共存機構を考える
   競合を避ける方法
   中途半端が最適
 3 森と生き物と私
   森とお化け
   日本人と絵本
   町での短所が森での長所に
 4 おもしろさ

Column 1 ボルネオ島の棘植物たち
Column 2 イチジクの森へようこそ
Column 3 ビントロングの捕まえ方

おわりに
参考文献
索引
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