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持たざるものに分ける行為はチンパンジーやボノボにも見られる。だがヒトは日々の分かち合いから喜びを見出し生存基盤に組み入れた。妬みを避け饗宴の喜びを得る分配には,自由と義務,優劣と平等そして「家族」の根源が潜む。なぜヒトは平等を求め,そして現代なぜ不平等な時代を再び生き始めているのか。共に生きる喜びが芽生えるときをいまいちど振り返りたい。食べ物をめぐる根源的行為からみえる,人間社会の網の目。
『アフリカ研究』Vol. 102 (2022),31-34頁,評者:松井梓氏
寺嶋秀明 (てらしま ひであき 編者)
神戸学院大学名誉教授.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,博士(理学).主な著作に,『講座・生態人類学7 エスノ・サイエンス』(共編,京都大学学術出版会,2002年),『平等論―霊長類と人間社会における平等性の進化』(ナカニシヤ出版,2011年)などがある.
黒田末寿 (くろだ すえひさ)
滋賀県立大学名誉教授.京都大学大学院理学研究科満期退学,博士(理学).主な著作に,『人類進化再考―社会生成の考古学』(以文社,1999年),『アフェクトゥス(情動)―生の外側に触れる』(共著,京都大学学術出版会,2020年)などがある.
今村 薫 (いまむら かおる)
名古屋学院大学現代社会学部教授.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,博士(理学).主な著作に,『砂漠に生きる女たち―カラハリ狩猟採集民の日常と儀礼』(どうぶつ社,2010年),『「世界史」の世界史』(共著,ミネルヴァ書房,2016年)などがある.
戸田美佳子 (とだ みかこ)
上智大学総合グローバル学部准教授.京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科一貫制博士課程修了,博士(地域研究).主な著作に,『越境する障害者―アフリカ熱帯林に暮らす障害者の民族誌』(明石書店,2015年),"No Longer Oppose or Coexist: 40 Years of Trans-Border Business and the State in the Republic of the Congo," In Takehiko Ochiai and Misa Hirano-Nomoto (eds.) People, Predicaments and Potentials in Africa, Langaa RPCID. 2021.などがある.
関野文子 (せきの あやこ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程.主な著作に,「狩猟採集社会における植物性食物分配―カメルーン東南部のバカの事例から」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士予備論文,2016年),「カメルーン・バカにおける食物分配をめぐる時間と空間の共有―開放性と境界に着目して」(『生態人類学会ニュースレター』23,2017年,11-13頁)などがある.
木下靖子 (きのした やすこ)
金沢大学先端科学・社会共創推進機構 能登里山里海寄附研究部門特任助教.北九州市立大学社会システム研究科博士後期課程修了,博士(学術).主な著作に,「共生の社会交渉を可能にする資源の所有と分配―バヌアツ共和国メリック島の事例から」(『アジアの未来へ 私の提案 Toward the Future of Asia: My Proposal』3,2017年,229-235頁),「環太平洋域里海文化の相互理解と次世代継承:琉球弧アダンサミット2019」(『金沢大学国際機構紀要』2,2020年,45-59頁)などがある.
砂野 唯 (すなの ゆい)
広島女学院大学人間生活学部生活デザイン学科専任講師.京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了,博士(地域研究).主な著作に,『酒を食べる―エチオピア・デラシャを事例として』(昭和堂,2019年),“Traditional Storage Pit, Polota, for Storing Sorghum as a Long-Term Survival Strategy in Dirashe Special Woreda, Southern Ethiopia,” Agroecology and Sustainable Food Systems 44(4): 536-559. 2020.などがある.
飯田 卓 (いいだ たく)
国立民族学博物館/総合研究大学院大学教授.京都大学大学院人間・環境学研究科研究指導認定退学,博士(人間・環境学).主な著作に,『海を生きる技術と知識の民族誌―マダガスカル漁撈社会の生態人類学』(世界思想社,2008年),『文化遺産と生きる』(編著,臨川書店,2017年)などがある.
高倉浩樹 (たかくら ひろき)
東北大学東北アジア研究センター教授.東京都立大学大学院社会科学研究科単位取得退学,博士(社会人類学).主な著作に,『震災復興の公共人類学―福島原発事故被災者と津波被災者との協働』(共編著,東京大学出版会,2019年),『総合人類学としてのヒト学』(編著,放送大学教育振興会,2018年)などがある.
神戸学院大学名誉教授.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,博士(理学).主な著作に,『講座・生態人類学7 エスノ・サイエンス』(共編,京都大学学術出版会,2002年),『平等論―霊長類と人間社会における平等性の進化』(ナカニシヤ出版,2011年)などがある.
黒田末寿 (くろだ すえひさ)
滋賀県立大学名誉教授.京都大学大学院理学研究科満期退学,博士(理学).主な著作に,『人類進化再考―社会生成の考古学』(以文社,1999年),『アフェクトゥス(情動)―生の外側に触れる』(共著,京都大学学術出版会,2020年)などがある.
今村 薫 (いまむら かおる)
名古屋学院大学現代社会学部教授.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,博士(理学).主な著作に,『砂漠に生きる女たち―カラハリ狩猟採集民の日常と儀礼』(どうぶつ社,2010年),『「世界史」の世界史』(共著,ミネルヴァ書房,2016年)などがある.
戸田美佳子 (とだ みかこ)
上智大学総合グローバル学部准教授.京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科一貫制博士課程修了,博士(地域研究).主な著作に,『越境する障害者―アフリカ熱帯林に暮らす障害者の民族誌』(明石書店,2015年),"No Longer Oppose or Coexist: 40 Years of Trans-Border Business and the State in the Republic of the Congo," In Takehiko Ochiai and Misa Hirano-Nomoto (eds.) People, Predicaments and Potentials in Africa, Langaa RPCID. 2021.などがある.
関野文子 (せきの あやこ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程.主な著作に,「狩猟採集社会における植物性食物分配―カメルーン東南部のバカの事例から」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士予備論文,2016年),「カメルーン・バカにおける食物分配をめぐる時間と空間の共有―開放性と境界に着目して」(『生態人類学会ニュースレター』23,2017年,11-13頁)などがある.
木下靖子 (きのした やすこ)
金沢大学先端科学・社会共創推進機構 能登里山里海寄附研究部門特任助教.北九州市立大学社会システム研究科博士後期課程修了,博士(学術).主な著作に,「共生の社会交渉を可能にする資源の所有と分配―バヌアツ共和国メリック島の事例から」(『アジアの未来へ 私の提案 Toward the Future of Asia: My Proposal』3,2017年,229-235頁),「環太平洋域里海文化の相互理解と次世代継承:琉球弧アダンサミット2019」(『金沢大学国際機構紀要』2,2020年,45-59頁)などがある.
砂野 唯 (すなの ゆい)
広島女学院大学人間生活学部生活デザイン学科専任講師.京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了,博士(地域研究).主な著作に,『酒を食べる―エチオピア・デラシャを事例として』(昭和堂,2019年),“Traditional Storage Pit, Polota, for Storing Sorghum as a Long-Term Survival Strategy in Dirashe Special Woreda, Southern Ethiopia,” Agroecology and Sustainable Food Systems 44(4): 536-559. 2020.などがある.
飯田 卓 (いいだ たく)
国立民族学博物館/総合研究大学院大学教授.京都大学大学院人間・環境学研究科研究指導認定退学,博士(人間・環境学).主な著作に,『海を生きる技術と知識の民族誌―マダガスカル漁撈社会の生態人類学』(世界思想社,2008年),『文化遺産と生きる』(編著,臨川書店,2017年)などがある.
高倉浩樹 (たかくら ひろき)
東北大学東北アジア研究センター教授.東京都立大学大学院社会科学研究科単位取得退学,博士(社会人類学).主な著作に,『震災復興の公共人類学―福島原発事故被災者と津波被災者との協働』(共編著,東京大学出版会,2019年),『総合人類学としてのヒト学』(編著,放送大学教育振興会,2018年)などがある.
序 寺嶋秀明
第Ⅰ部 霊長類と人をつなぐ分配と平等
第1章 食物分配の進化と平等原則—チンパンジーとボノボの世界から[黒田末寿]
1 蓄えると分ける
2 チンパンジー属の食物分配を見る視座
3 かかわりの手段としての食物分配
第2章 分かち合う人間—狩猟採集民サンのシェアリングと現代社会[今村 薫]
はじめに
1 自然資源の共有
2 身体資源の共有
3 狩猟採集民の土地利用
4 シェアリングはいつからはじまったか
5 農耕社会におけるシェアリング
6 資本主義社会とシェアリング
おわりに
第3章 分配に与る者—目の不自由な狩猟採集民ジェマの一生[戸田美佳子]
はじめに
1 ジェマとの出会い―狩猟採集民と農耕民の社会関係
2 ジェマの日常―村と森の生活実践
3 障害のある狩猟採集民の生活基盤―シェアリングとインター・エスニック関係
4 分配に与る者からみたシェアリングの作法
おわりに
第Ⅱ部 分配のエスノグラフィー
第4章 狩猟採集民バカの食物分配—過剰な分配とひそやかな交渉[関野文子]
はじめに
1 調査地とバカの食生活の概要
2 誰に分配するのか
3 分配をめぐる相互行為
おわりに
第5章 よろこびを分かち合う島—バヌアツ共和国の共食文化[木下靖子]
はじめに
1 調査地概要
2 饗宴における分配
3 共同作業における分配
4 生業活動にともなう分配と子どもの分配
5 考察
第6章 富を蓄えつつ分配する人びと—エチオピア農耕民の地下貯蔵庫[砂野 唯]
はじめに
1 貯蔵庫を公開して富を蓄えるデラシャ
2 貯蔵庫を隠して富を蓄えるオロモ
3 考察―富を蓄える社会での分配のあり方
第Ⅲ部 せめぎあう平等と不平等
第7章 国家を受けいれた社会の平等性—マダガスカル漁民の生業戦略と社会関係[飯田 卓]
1 生態人類学的平等論の展開
2 マダガスカルの「平等主義」
3 四半世紀における物価変動 1 1969~1994年
4 四半世紀における物価変動 2 1994~2019年
5 四半世紀における人口移動
6 経済発展と階層化—結びにかえて
第8章 狩猟採集と不平等—不平等社会確立の条件に関する試論[高倉浩樹]
はじめに
1 先史考古学における不平等
2 ドメスティケイションの経路
3 環北太平洋の狩猟採集民
4 農耕牧畜と狩猟採集の狭間
おわりに
終 章 「わける・ためる」から見る人の進化史—最終共通祖先から家族の登場まで[寺嶋秀明]
1 最終共通祖先(LCA)の遺産
2 チンパンジー/ボノボ,そして人の食物分与
3 シェアリングと人の社会進化史
索 引
執筆者紹介
第Ⅰ部 霊長類と人をつなぐ分配と平等
第1章 食物分配の進化と平等原則—チンパンジーとボノボの世界から[黒田末寿]
1 蓄えると分ける
2 チンパンジー属の食物分配を見る視座
3 かかわりの手段としての食物分配
第2章 分かち合う人間—狩猟採集民サンのシェアリングと現代社会[今村 薫]
はじめに
1 自然資源の共有
2 身体資源の共有
3 狩猟採集民の土地利用
4 シェアリングはいつからはじまったか
5 農耕社会におけるシェアリング
6 資本主義社会とシェアリング
おわりに
第3章 分配に与る者—目の不自由な狩猟採集民ジェマの一生[戸田美佳子]
はじめに
1 ジェマとの出会い―狩猟採集民と農耕民の社会関係
2 ジェマの日常―村と森の生活実践
3 障害のある狩猟採集民の生活基盤―シェアリングとインター・エスニック関係
4 分配に与る者からみたシェアリングの作法
おわりに
第Ⅱ部 分配のエスノグラフィー
第4章 狩猟採集民バカの食物分配—過剰な分配とひそやかな交渉[関野文子]
はじめに
1 調査地とバカの食生活の概要
2 誰に分配するのか
3 分配をめぐる相互行為
おわりに
第5章 よろこびを分かち合う島—バヌアツ共和国の共食文化[木下靖子]
はじめに
1 調査地概要
2 饗宴における分配
3 共同作業における分配
4 生業活動にともなう分配と子どもの分配
5 考察
第6章 富を蓄えつつ分配する人びと—エチオピア農耕民の地下貯蔵庫[砂野 唯]
はじめに
1 貯蔵庫を公開して富を蓄えるデラシャ
2 貯蔵庫を隠して富を蓄えるオロモ
3 考察―富を蓄える社会での分配のあり方
第Ⅲ部 せめぎあう平等と不平等
第7章 国家を受けいれた社会の平等性—マダガスカル漁民の生業戦略と社会関係[飯田 卓]
1 生態人類学的平等論の展開
2 マダガスカルの「平等主義」
3 四半世紀における物価変動 1 1969~1994年
4 四半世紀における物価変動 2 1994~2019年
5 四半世紀における人口移動
6 経済発展と階層化—結びにかえて
第8章 狩猟採集と不平等—不平等社会確立の条件に関する試論[高倉浩樹]
はじめに
1 先史考古学における不平等
2 ドメスティケイションの経路
3 環北太平洋の狩猟採集民
4 農耕牧畜と狩猟採集の狭間
おわりに
終 章 「わける・ためる」から見る人の進化史—最終共通祖先から家族の登場まで[寺嶋秀明]
1 最終共通祖先(LCA)の遺産
2 チンパンジー/ボノボ,そして人の食物分与
3 シェアリングと人の社会進化史
索 引
執筆者紹介