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生態人類学は挑む MONOGRAPH 1

交渉に生を賭ける

東アフリカ牧畜民の生活世界

太田 至

A5並製・306頁

ISBN: 9784814003167

発行年月: 2021/02

  • 本体: 3,000円(税込 3,300円
  • 在庫あり
 
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内容

ケニア北西部に住むトゥルカナ人は、日本人なら規則や組織の論理に従って決める問題を、すべて「対面的な交渉」によって解決する。私たちの「贈与」「互酬」「恥」の感覚をくつがえす、彼らの強烈な交渉と「ねだり」の攻勢には、「こちらの事情も察してくれ」という甘えは通用しない。ともに納得できる決着を実現することに、誰もが全身全霊で打ち込む社会。彼らの誇り高い生き方は、自分に自信が持てない私たちをゆさぶる。

書評

『アフリカ研究』101号(2022)、86-89頁、評者:石田慎一郎氏
『図書新聞』2022年11月19日付、評者:松田素二氏

プロフィール

太田 至(おおた いたる)
京都大学名誉教授。京都大学大学院理学研究科修了、理学博士。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授、京都大学アフリカ地域研究資料センター長などを歴任。
主な著書に、『遊牧の思想——人類学がみる激動のアフリカ』(共編著、昭和堂、2019年)、African Virtues in the Pursuit of Conviviality: Exploring Local Solutions in Light of Global Prescriptions (共編著、Langaa RPCIG、2017年)、『アフリカ潜在力(全5巻)』(総編集、京都大学学術出版会、2016年)などがある。

目次

序 章
1 家畜の放牧と個体識別——牧畜社会の生態人類学
2 牧畜社会の魅カ——「ねだり」と相互交渉の人類学
3 トゥルカナの人びとから学んだこと——彼らが教えてくれたこと
4 本書の構成

第1章 トゥルカナの社会と歴史
1 牧畜生活と社会のしくみ
2 トゥルカナの歴史

第2章 家畜の分類と個体識別
1 人びとは家畜をどのように認知し管理しているのか
2 家畜群の構造的な把握法
3 家畜に名前をつける
4 家畜の個体識別
5 家畜が「独自な個体」として扱われることの意味——歴史の結節点

第3章 家畜の贈与と交換
1 市場経済と貨幣の浸透
2 家畜とモノの交換
3 「消費するための家畜交換」とは
4 「消費するための家畜交換」における支払いの交渉
5 「消費するための家畜交換」をめぐる語彙
6 「消費するための家畜交換」にかかわる当事者の人格的な要素
7 「家畜群を増殖させるための交換」とは
8 家畜交換の動機や目的の具体性

第4章 家畜に対する権利
1 所有とはどのような事態か
2 財としての家畜——牧畜社会における諸権利に関する従来の研究
3 「基本家族」における家畜に対する権利——「主管者」の女性
4 息子の成長と家畜に対する権利
5 家畜に対する「権利の束」
6 「持ち駒」を駆使した折衝
7 ラクダの信託と所有——レンディーレとガブラの社会
8 「権利の束」再考

第5章 婚資の交渉
1 婚資の支払いと婚姻の成立
2 婚姻の機会に授受される家畜の種類と頭数、調達方法
3 婚資交渉の事例
4 婚資の交渉をする人びとのふるまい——真剣勝負と気前のよさ

第6章 「ねだり」と対面的な相互交渉
1 「ねだり」というテーマ
2 トゥルカナの人の「ねだり」に魅せられ、悩まされた研究者たち
3 「ねだり」の事例
4 「ねだり」をどのように理解すべきか

終 章
1 対面的な相互行為に賭ける人びと
2 「他者」と〈わたし〉の「かけがえのなさ」

謝 辞
参考文献
索 引
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