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フィールド研究における動画利用が急速に進んでいる。確かに映像には文字では記録しきれない,社会関係の多様さとその背景にある文化を映し込む力がある。一方で,例えばカメラの前では人々が晴れ着に着替えるといったように,映像には,社会関係自体に介入してしまう強い浸透力があり,撮影者(調査者)による映像選択の恣意性の入り込む余地も大きい。映像作家として,エイズ発症の恐怖や差別と闘いながら生きるHIV陽性者の日常に寄り添う中から地域研究の道に進んだ筆者が,自らの変容も語りながら,映像地域研究の方法論的確立を模索する。QRコードによる参照動画付き。
『東南アジア研究』58巻1号、116-118頁、評者:飯田淳子氏
『アジア経済』第62巻第1号(2021年3月)、83-86頁、評者:西井凉子氏
『アジア・アフリカ地域研究』2020年 第20-2号、273-276頁、評者:南出和余氏
『アジア経済』第62巻第1号(2021年3月)、83-86頁、評者:西井凉子氏
『アジア・アフリカ地域研究』2020年 第20-2号、273-276頁、評者:南出和余氏
直井里予(なおい りよ)
京都大学東南アジア地域研究研究所連携研究員,早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員,龍谷大学非常勤講師他。
1970年生まれ,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士後期課程修了,博士(地域研究)。
主な著書に,『アンナの道――HIVとともにタイに生きる』(岩波書店,2010年),分担執筆に『東南アジアにおけるケアの潜在力――生のつながりの実践』(速水洋子編,京都大学学術出版会,2019年),『越境する平和学――アジアにおける共生と和解』(金敬黙編著,法律文化社,2019年)など。
ドキュメンタリー映画作品に,『昨日 今日 そして明日へ…』(2005年,山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波正式招待作品),『アンナの道――私からあなたへ…』(2009年,釜山国際映画祭正式招待作品),『OUR LIFE――僕らの難民キャンプの日々』(2010年,UNHCR難民映画祭正式招待作品)など。
作品公式サイト http://www.riporipo.com/
京都大学東南アジア地域研究研究所連携研究員,早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員,龍谷大学非常勤講師他。
1970年生まれ,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士後期課程修了,博士(地域研究)。
主な著書に,『アンナの道――HIVとともにタイに生きる』(岩波書店,2010年),分担執筆に『東南アジアにおけるケアの潜在力――生のつながりの実践』(速水洋子編,京都大学学術出版会,2019年),『越境する平和学――アジアにおける共生と和解』(金敬黙編著,法律文化社,2019年)など。
ドキュメンタリー映画作品に,『昨日 今日 そして明日へ…』(2005年,山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波正式招待作品),『アンナの道――私からあなたへ…』(2009年,釜山国際映画祭正式招待作品),『OUR LIFE――僕らの難民キャンプの日々』(2010年,UNHCR難民映画祭正式招待作品)など。
作品公式サイト http://www.riporipo.com/
序論
1 映像を用いた社会研究の確立のために――はじめに
2 病縁と動画による映像分析――本書の基本概念と方法
(1) 病縁論――HIVをめぐる関係性
(2) 映像地域研究――共振のドキュメンタリー制作による地域研究
3 本書の舞台
4 本書の構成
5 二つのドキュメンタリー映画の企画意図と調査・制作手法
(1) 『いのちを紡ぐ――北タイ・HIV陽性者の12年』
(2) 『アンナの道――私からあなたへ…(完全版)』
(3) 調査手法と映画制作手法
第Ⅰ部 HIVをめぐる関係のダイナミクス ――ドキュメンタリー映画制作からの考察――
第1章 HIV/AIDS表象
1 タイのHIV/AIDS概況とメディア戦略
(1) タイのHIV/AIDS概況
(2) タイのメディアにおけるHIV/AIDS予防キャンペーン
2 ドキュメンタリー映画におけるHIV/AIDS表象の変遷
(1) 一九八〇~一九九〇年代
(2) 二〇〇〇~二〇〇四年
(3) 二〇〇五~二〇一〇年代
3 HIV/AIDS表象に関する先行研究
第2章 共同性の生成――『いのちを紡ぐ――北タイ・HIV陽性者の12年』制作からの考察
1 映画の舞台
(1) 背景(所得格差と移動労働)
(2) 内容:『いのちを紡ぐ』
(3) 主人公のライフヒストリー
2 チュン郡における自助グループ(国立病院の管轄下)
(1) エイズデイケアセンター「幸せの家」(DCC)の活動内容
(2) 看護師とHIV陽性者間、及びHIV陽性者同士の関係性の生成
(3) 村における啓蒙活動を通した関係性の構築
(4) エイズデイケアセンターの変容
3 プサン郡における自助グループ(独立系)
(1) 「ハクプサン」の活動
(2) 郡レベルの会議から全国会議の展開へ
(3) 協働による営み(日常生活実践の変容)
4 民間自助グループの意味と、それを可能にする条件
第3章 日常生活におけるHIVをめぐる関係性
――『アンナの道――私からあなたへ…(完全版)』制作からの考察
1 映画の舞台
(1) 内容:『アンナの道』
(2) 背景
2 日常生活の場におけるHIV陽性者間の関係性の展開
(1) 薬をめぐる関係性
(2) 親子と母親同士の関係性
3 エイズ孤児との関係性の構築
(1) エイズ孤児のケア
(2) エイズ孤児施設「思いやりの家」
(3) 思春期を迎えたエイズ孤児Nとの関係性
4 病縁を通して経験を共有し気遣いあう
第Ⅱ部 映像表現の可能性と限界 ――「共振のドキュメンタリー制作」におけるリアリティ生成と制作者の視点――
第4章 リアリティ表象における映画制作者の視点
1 社会的現実を捉える視点
2 ドキュメンタリー映画における関係性
3 日常生活批判
4 デジタル時代のリアリティ表象
5 映画分析手法と理論
(1) 撮影段階
(2) 編集段階
(3) 上映段階
第5章 撮影論――撮影者と撮影対象者の共振
1 言語相互行為と身体的コミュニケーション
2 他者の「生と死」を撮る――カメラの外の日常
3 映画制作者の視点と関係
(1) 「視点」と「関係」の定義
(2) 視点と関係の変容
第6章 編集論――映像と文章の往還
1 編集過程の実例――学術論文と映像の往還
(1) 『アンナの道』
(2) 『いのちを紡ぐ』
(3) 映像と文章の往還
2 メタファー
3 編集効果
第7章 上映論――公共空間の生成
1 観客の受容
2 アゴラにおける(共振と)リアリティの生成
3 映像と公共空間
4 映像の撮影・利用と許可について
結語
1 本書の視座
2 映像が捉えた「病縁」を介する新しいコミュニケーション、新しい「家族」
3 参与観察ドキュメンタリー映画制作における映画制作者の視点
4 地域研究における映像の位置づけ
5 映像という方法論への思い――おわりに
参考文献
付録
あとがき
1 映像を用いた社会研究の確立のために――はじめに
2 病縁と動画による映像分析――本書の基本概念と方法
(1) 病縁論――HIVをめぐる関係性
(2) 映像地域研究――共振のドキュメンタリー制作による地域研究
3 本書の舞台
4 本書の構成
5 二つのドキュメンタリー映画の企画意図と調査・制作手法
(1) 『いのちを紡ぐ――北タイ・HIV陽性者の12年』
(2) 『アンナの道――私からあなたへ…(完全版)』
(3) 調査手法と映画制作手法
第Ⅰ部 HIVをめぐる関係のダイナミクス ――ドキュメンタリー映画制作からの考察――
第1章 HIV/AIDS表象
1 タイのHIV/AIDS概況とメディア戦略
(1) タイのHIV/AIDS概況
(2) タイのメディアにおけるHIV/AIDS予防キャンペーン
2 ドキュメンタリー映画におけるHIV/AIDS表象の変遷
(1) 一九八〇~一九九〇年代
(2) 二〇〇〇~二〇〇四年
(3) 二〇〇五~二〇一〇年代
3 HIV/AIDS表象に関する先行研究
第2章 共同性の生成――『いのちを紡ぐ――北タイ・HIV陽性者の12年』制作からの考察
1 映画の舞台
(1) 背景(所得格差と移動労働)
(2) 内容:『いのちを紡ぐ』
(3) 主人公のライフヒストリー
2 チュン郡における自助グループ(国立病院の管轄下)
(1) エイズデイケアセンター「幸せの家」(DCC)の活動内容
(2) 看護師とHIV陽性者間、及びHIV陽性者同士の関係性の生成
(3) 村における啓蒙活動を通した関係性の構築
(4) エイズデイケアセンターの変容
3 プサン郡における自助グループ(独立系)
(1) 「ハクプサン」の活動
(2) 郡レベルの会議から全国会議の展開へ
(3) 協働による営み(日常生活実践の変容)
4 民間自助グループの意味と、それを可能にする条件
第3章 日常生活におけるHIVをめぐる関係性
――『アンナの道――私からあなたへ…(完全版)』制作からの考察
1 映画の舞台
(1) 内容:『アンナの道』
(2) 背景
2 日常生活の場におけるHIV陽性者間の関係性の展開
(1) 薬をめぐる関係性
(2) 親子と母親同士の関係性
3 エイズ孤児との関係性の構築
(1) エイズ孤児のケア
(2) エイズ孤児施設「思いやりの家」
(3) 思春期を迎えたエイズ孤児Nとの関係性
4 病縁を通して経験を共有し気遣いあう
第Ⅱ部 映像表現の可能性と限界 ――「共振のドキュメンタリー制作」におけるリアリティ生成と制作者の視点――
第4章 リアリティ表象における映画制作者の視点
1 社会的現実を捉える視点
2 ドキュメンタリー映画における関係性
3 日常生活批判
4 デジタル時代のリアリティ表象
5 映画分析手法と理論
(1) 撮影段階
(2) 編集段階
(3) 上映段階
第5章 撮影論――撮影者と撮影対象者の共振
1 言語相互行為と身体的コミュニケーション
2 他者の「生と死」を撮る――カメラの外の日常
3 映画制作者の視点と関係
(1) 「視点」と「関係」の定義
(2) 視点と関係の変容
第6章 編集論――映像と文章の往還
1 編集過程の実例――学術論文と映像の往還
(1) 『アンナの道』
(2) 『いのちを紡ぐ』
(3) 映像と文章の往還
2 メタファー
3 編集効果
第7章 上映論――公共空間の生成
1 観客の受容
2 アゴラにおける(共振と)リアリティの生成
3 映像と公共空間
4 映像の撮影・利用と許可について
結語
1 本書の視座
2 映像が捉えた「病縁」を介する新しいコミュニケーション、新しい「家族」
3 参与観察ドキュメンタリー映画制作における映画制作者の視点
4 地域研究における映像の位置づけ
5 映像という方法論への思い――おわりに
参考文献
付録
あとがき