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18-19世紀のビルマ王朝社会,人々の間で取り交わされた様々な契約証文。テッガイッと呼ばれるこれらの証文,特に借金証文は,当時の社会経済状況を示す貴重な資料であると同時に,歴史の中に埋もれがちな庶民の具体的な姿や生きる知恵を生き生きと映し出す。“絶対的君主”対“無権利の民”の二層社会を前提としてきた従来の歴史観を覆す,新しいビルマ近世像。
『東南アジア研究』57巻2号、192-195頁、評者:岸本美緒氏
斎藤 照子(さいとう てるこ)
1944年生まれ。津田塾大学国際関係学科卒,東京大学経済学部卒業後,アジア経済研究所調査研究部勤務,東京外国語大学東南アジア課程,講師〜教授を経て,現在同大学名誉教授。専攻はビルマ社会経済史。
主要著作
『講座東南アジア史5 東南アジア世界の再編』(編著 岩波書店2001)
『東南アジアの農村社会』世界史リブレット(山川出版社2008)
Statistics on the Burmese Economy; the 19th and 20th centuries.(共編著 ISEAS 1999)
Enriching the Past: Preservation, Conservation and Study of Myanmar Manuscripts. (共編著 東京外国語大学大学院C-DATS研究叢書2006)など。
1944年生まれ。津田塾大学国際関係学科卒,東京大学経済学部卒業後,アジア経済研究所調査研究部勤務,東京外国語大学東南アジア課程,講師〜教授を経て,現在同大学名誉教授。専攻はビルマ社会経済史。
主要著作
『講座東南アジア史5 東南アジア世界の再編』(編著 岩波書店2001)
『東南アジアの農村社会』世界史リブレット(山川出版社2008)
Statistics on the Burmese Economy; the 19th and 20th centuries.(共編著 ISEAS 1999)
Enriching the Past: Preservation, Conservation and Study of Myanmar Manuscripts. (共編著 東京外国語大学大学院C-DATS研究叢書2006)など。
序章 テッガイッから見えてくる近世ビルマ社会
1 テッガイッという資料
2 テッガイッに依拠した研究の歩みと本書の狙い
第I部 借金証文とその背景
第1章 借金証文の背景——中央平野部の風土と社会経済変動
1 ビルマ中央平野部の風土
——サヴァンナ平原に刻まれた灌漑システム
2 コンバウン時代の人口動態
3 乾燥地域の脅威——飢饉,火事
4 対外関係の変化とその社会経済への影響
第2章 ビルマ貨幣史の中のコンバウン時代
——貨幣私鋳の伝統と改革の試み
1 前史
2 物品貨幣,地金そして物々交換——パガンの貨幣事情
3 銅本位の金属貨幣——「交易の時代のタウングー」
4 銀本位の確立——コンバウン時代の通貨事情
5 通貨統一のこころみ
第II部 借金担保としての人
第3章 18世紀末〜19世紀の人身抵当証文——債務奴隷契約
1 人身抵当証文(コゥネイ・テッガイッ)とは?
2 債務奴隷契約の地域的特色——都市的空間
3 農業的空間における債務奴隷
4 人身抵当の形を取った様々な契約
5 歴史の中の債務奴隷
第4章 サリン地方の人身抵当証文3
1 サリン地方とサリンダガウン一族
2 サリンダガウンの人身抵当証文
3 証文に登場する人々
4 人身抵当証文の意味するもの,どのような契約だったか
5 累積借金と債務奴隷の連鎖
6 債務奴隷からの解放——債務の返済・証文の破棄
第III部 借金担保としての土地
第5章 借金証文と農地の流動化——ビャンヂャ村の事例
1 ビャンヂャ村のテッガイッ
2 流動する農地
3 農地の流動と大土地所有の形成
4 こうした変化の意味するもの
第6章 農地抵当証文と農地の流動
1 借金証文の中で農地抵当証文の占める位置
2 農地抵当証文の地域分布
3 農地抵当と農地売買
4 農地抵当証文の解釈をめぐる問題
5 借金証文なのか,小作証文なのか?
第IV部 ビルマ近世はどのような社会であったか
第7章 契約社会としてのビルマ近世社会
——借金証文の実効性を支える社会システム
1 契約社会としてのコンバウン・ビルマ社会
2 テッガイッによる契約の実効性を保障するもの
3 私人の契約と王権あるいは地方権力
4 在地支配者と借金証文
第8章 質入れ地をめぐる紛争の調停
——地方社会における紛争解決メカニズム
1 レイッチャードオの水田をめぐる訴訟
2 パウッインドオの水田訴訟
3 共同相続人の間で起こる紛争
4 訴訟の経済的側面
補章 歩いて作った村の境界
——19世紀中部ビルマにおける村落境界紛争とその調停
1 前近代東南アジア社会と領域・境界に関する議論
2 村落境界紛争の事例
3 村の領域・境界
4 境界紛争の解決と調停
附1 タウンヂャー村の45年シッターン
附2 ミンサダー村の45年シッターン
結論
謝辞
参考文献
索引
1 テッガイッという資料
2 テッガイッに依拠した研究の歩みと本書の狙い
第I部 借金証文とその背景
第1章 借金証文の背景——中央平野部の風土と社会経済変動
1 ビルマ中央平野部の風土
——サヴァンナ平原に刻まれた灌漑システム
2 コンバウン時代の人口動態
3 乾燥地域の脅威——飢饉,火事
4 対外関係の変化とその社会経済への影響
第2章 ビルマ貨幣史の中のコンバウン時代
——貨幣私鋳の伝統と改革の試み
1 前史
2 物品貨幣,地金そして物々交換——パガンの貨幣事情
3 銅本位の金属貨幣——「交易の時代のタウングー」
4 銀本位の確立——コンバウン時代の通貨事情
5 通貨統一のこころみ
第II部 借金担保としての人
第3章 18世紀末〜19世紀の人身抵当証文——債務奴隷契約
1 人身抵当証文(コゥネイ・テッガイッ)とは?
2 債務奴隷契約の地域的特色——都市的空間
3 農業的空間における債務奴隷
4 人身抵当の形を取った様々な契約
5 歴史の中の債務奴隷
第4章 サリン地方の人身抵当証文3
1 サリン地方とサリンダガウン一族
2 サリンダガウンの人身抵当証文
3 証文に登場する人々
4 人身抵当証文の意味するもの,どのような契約だったか
5 累積借金と債務奴隷の連鎖
6 債務奴隷からの解放——債務の返済・証文の破棄
第III部 借金担保としての土地
第5章 借金証文と農地の流動化——ビャンヂャ村の事例
1 ビャンヂャ村のテッガイッ
2 流動する農地
3 農地の流動と大土地所有の形成
4 こうした変化の意味するもの
第6章 農地抵当証文と農地の流動
1 借金証文の中で農地抵当証文の占める位置
2 農地抵当証文の地域分布
3 農地抵当と農地売買
4 農地抵当証文の解釈をめぐる問題
5 借金証文なのか,小作証文なのか?
第IV部 ビルマ近世はどのような社会であったか
第7章 契約社会としてのビルマ近世社会
——借金証文の実効性を支える社会システム
1 契約社会としてのコンバウン・ビルマ社会
2 テッガイッによる契約の実効性を保障するもの
3 私人の契約と王権あるいは地方権力
4 在地支配者と借金証文
第8章 質入れ地をめぐる紛争の調停
——地方社会における紛争解決メカニズム
1 レイッチャードオの水田をめぐる訴訟
2 パウッインドオの水田訴訟
3 共同相続人の間で起こる紛争
4 訴訟の経済的側面
補章 歩いて作った村の境界
——19世紀中部ビルマにおける村落境界紛争とその調停
1 前近代東南アジア社会と領域・境界に関する議論
2 村落境界紛争の事例
3 村の領域・境界
4 境界紛争の解決と調停
附1 タウンヂャー村の45年シッターン
附2 ミンサダー村の45年シッターン
結論
謝辞
参考文献
索引