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プリミエ・コレクション 97

暗黒舞踏の身体経験

アフェクトと生成の人類学

ケイトリン・コーカー 著

A5上製・296頁

ISBN: 9784814001934     正誤表(2019.7.29)PDF

発行年月: 2019/03

  • 本体: 3,200円(税込 3,520円
  • 在庫あり
 
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内容

著者はダンサーでもあるアメリカ人人類学者である。彼女は何故はるばる海を渡り暗黒舞踏の何を明らかにしようというのか? それはまさに,土方巽が言う「「光栄ある肉体の反乱」,すなわち脆弱な「社会化され秩序化」されたものではない,文字通り物質としての肉体そのものからあふれ出るパワーが,舞踏家と舞踏家,舞踏家と観客,観客とその周囲の何かと作用し合いあらたな身体の地平を拓く,その相互作用(アフェクト)の秘密を解き明かしたい,というパッションからである。自ら暗黒舞踏の稽古を受けながら,稽古の現場で作用し合うもの,生成されるものを身体経験として受け止め言語化し分析する──他ならぬ自らの身体の奥底にフィールドを見いだした,新しい人類学。

書評

『図書新聞』2019年7月27日付、評者:志賀信夫氏

プロフィール

ケイトリン・コーカー(Caitlin Coker)

1985年,カリフォルニア生まれ。2006年,サウスカロライナ大学卒業。2006年,日本で暗黒舞踏の研究を開始。2014年,立命館大学社会学研究科修士課程修了。2017年,京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了(文化人類学博士)。2018年,立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員を経て,2019年より京都大学国際高等教育院特定講師。
主要著作
「舞踏の肉体──現代日本における舞踏家たちの日常実践と共同生活」『人文学報』第107号,2015年。
「危うい肉体に出会う──舞踏とショー・ダンスとの関係をめぐって」『日本オーラル・ヒストリー研究』第11号,2015年。
"The Daily Practices of Hijikata Tatsumi's Apprentices from 1969 to 1978", Routledge Companion to Butoh Performance. B. Baird and R. Candelario(eds.) Routledge Publishing, 2018年。など

目次

はじめに

第1部 アフェクト──暗黒舞踏を捉える鍵

序 章
1 身体と身体、あるいはモノと身体の不可視な繋がりを解く──本書の問題意識と目的
2 暗黒舞踏の人類学の問題点
3 舞踏人類学批判
4 暗黒舞踏の先行研究
5 アフェクト論の先行研究
6 アフェクト論の諸問題をめぐって
7 本研究の対象への哲学的な切り口──暗黒舞踏と生成変化
8 本書の構成

第2章 調査の概要──暗黒舞踏とその実践
1 暗黒舞踏の誕生
2 舞踏家
3 参加者たち
4 暗黒舞踏ワークショップの企画

第3章 暗黒舞踏ワークショップの場所と人々
1 ワークショップの場所
2 参加者の視点──実践の場に身を置くことから
3 参加者の姿
4 舞踏家のアプローチ

第2部 暗黒舞踏の形成

第4章 舞踏家たちの共同生活、肉体への意識
1 暗黒舞踏の〈暗黒〉と肉体
2 土方巽との生活形態
3 肉体観
4 舞踏家たちの弟子入り
5 舞踏家たちと社会

第5章 暗黒舞踏とショー・ダンス
1 ショーへの派遣
2 ショー・ダンス
3 ショーの場所
4 ショーの種類
5 ショーと暗黒舞踏との関係

第3部 身体性とアフェクト

第6章 身体間のアフェクト
1 「硬いものになる」
2 「シギになる」
3 「棒になる」

第7章 身体間の「なること」
1 舞踏家が土方巽による「なること」を語る
2 舞踏家が芦川羊子による「なること」を語る
3 私が土方の孫弟子による「なること」を目撃したとき
4 私と不思議な教授との出会い──紅茶がコーヒーになったとき

第4部 言語とアフェクト

第8章 一つの言語的イメージに「なる」
1 「何を持っていますか」
2 「花粉になる」
3 身体中に目を付ける
4 二つの事例の比較

第9章 複数の言語的イメージに「なる」
1 暗黒舞踏における「なること」の軌道
2 「環境になる」
3 「ベルメールの球体関節人形になる」
4 二項対立から二重性へ、複数の「なること」からアフェクトの多重性へ

終 章
1 身体経験の言語化
2 ドゥルーズとガタリの生成変化に対して
3 アフェクト論への意義──文化と身体

あとがき──私自身の生成変化

謝  辞

参照文献
索  引
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