Home > Book Detail Page
江戸時代後期、社会が成熟し「開国」への胎動を感じる時期にあって、風景は大きく変わろうとしていた。現代にも通じるその時代に、北斎や広重といった風景画家が活躍したのは偶然ではない。中でも歌川広重は、絵だけでなく、自身の言葉を付した作品を残した。その『絵本江戸土産』に記された広重の言葉から、彼独特の風景観を炙り出す。広重が絵本を通じて訴えたかったことは何なのか?——そこには明るい江戸での生活だけではなく、日々の暮らしの中で見過ごされ、社会変動の中で急速に人々の手からこぼれ落ちる、「風景」をめぐる現実があった。
第19回人文地理学会学会賞(学術図書部門奨励賞)
『ランドスケープデザイン』No.120(2018年6月号)
『朝日新聞』2018年5月12日付朝刊 読書面、評者:山室恭子氏
『歴史地理学』第60巻4号(2018)、評者:米家泰作氏
『人文地理』第71巻 第1号(2019)、評者:渡邊秀一氏
『総人・人環フォーラム』第37号(2019)、評者:中嶋節子氏
『史林』第102巻第6号(2019)、評者:長谷川奨悟氏
『朝日新聞』2018年5月12日付朝刊 読書面、評者:山室恭子氏
『歴史地理学』第60巻4号(2018)、評者:米家泰作氏
『人文地理』第71巻 第1号(2019)、評者:渡邊秀一氏
『総人・人環フォーラム』第37号(2019)、評者:中嶋節子氏
『史林』第102巻第6号(2019)、評者:長谷川奨悟氏
阿部 美香(あべ みか)
専修大学文学部助教 博士(人間・環境学)
1981年イタリア・ミラノ市生まれ。札幌市出身。京都大学大学院人間・環境学研究科 博士課程修了後,英国レスター大学研究員,同志社大学・京都三大学教養教育研究・推進機構 非常勤講師を経て,2017年より現職。歴史地理学・風景論を専門とする。主要著作・論文に『近現代の空間を読み解く』(共著翻訳書 古今書院,2017)「歌川広重『絵本江戸土産』における風景描写の特徴——『江戸名所図会』との比較を通して」(歴史地理学54-2,2012年)などがある。
専修大学文学部助教 博士(人間・環境学)
1981年イタリア・ミラノ市生まれ。札幌市出身。京都大学大学院人間・環境学研究科 博士課程修了後,英国レスター大学研究員,同志社大学・京都三大学教養教育研究・推進機構 非常勤講師を経て,2017年より現職。歴史地理学・風景論を専門とする。主要著作・論文に『近現代の空間を読み解く』(共著翻訳書 古今書院,2017)「歌川広重『絵本江戸土産』における風景描写の特徴——『江戸名所図会』との比較を通して」(歴史地理学54-2,2012年)などがある。
広重の風景観から何を学べるか―はじめに
1 広重の作品が放つ風景のイメージと、その先への一歩
2 「風景」が意味するもの
3 『絵本江戸土産』から広重の思いを汲み取っていく
第Ⅰ部 大都市江戸と絵師広重
第1章 空前の大都市─広重の生きた江戸のまち
1 江戸という都市の規模と内実
(1)首都「江戸」の成立
(2)明暦の大火と「江戸」の拡大
(3)人と物が集まる江戸とその賑わい
(4)「異国」にも触れられた江戸
(5)季節の行事を楽しむ人々
(6)江戸の一大歓楽地―吉原と歌舞伎町
(7)旅と出版文化の隆盛
2 江戸時代後期とはどんな時代だったか
(1)江戸の都市問題
(2)「外国」が押し寄せる
コラム:過去と今を往き来する1 過去を探すと出会っていくもの
第2章 庶民の娯楽 浮世絵版画
1 生み出された浮世絵版画―「浮世」の絵と錦絵の誕生
2 役者絵・美人画から風景画へ
3 名所絵の流行と広重
第3章 成熟・変動の時代と絵師 歌川広重
1 広重誕生前夜(一七七八~一七九六頃)
2 幼少期(一七九七~一八〇九)
3 思春期・青年期(一八一〇~一八三〇)
4 駆け出しの頃(一八三一~一八三八)―出世作「東海道五拾三次」
5 円熟期・集大成期(一八三九~一八五八)―『絵本江戸土産』、「名所江戸百景」創出
第Ⅱ部 広重の風景観を言葉から探る
第4章 『絵本江戸土産』と分析の視角
1 『絵本江戸土産』について
2 名所案内記に関する既往研究と第Ⅱ部の分析視座
3 〈広重自身〉の風景観に迫る
第5章 『絵本江戸土産』挿絵の構図を読む
1 江戸の名所案内記の類型と『江戸名所図会』の位置づけ
(1)『都名所図会』の影響
(2)江戸に関する名所案内記の類型
2 『絵本江戸土産』に描かれた場所―『江戸名所図会』との相違
構図からみた五類型
3 『絵本江戸土産』における構図の特徴
第6章 広重による「風景」とその類義語の使われ方
1 風景と類義語の抽出
2 広重が風景を表す際に用いた語と使用特徴
3 広重は「風景」をどのような意味で捉えていたか
第7章 『絵本江戸土産』の文章にあらわれた広重の風景観
1 由緒由来以外の記述に注目して考える
2 『絵本江戸土産』で風景を評価する時、着目している点は何か
3 場所ごとの風景評価
(1)『土産』と『図会』で場所ごとの着目点が共通する場合
(2)『土産』と『図会』で場所ごとの着目点に違いがある場合
4 江戸を見つめる広重の眼
コラム:過去と今を往き来する2 「形」を残す名所のそれぞれ
第8章 『絵本江戸土産』における耕地・広野
1 『遊歴雑記』に記される「耕地」「畑」「田園」
(1)『遊歴雑記』とは
(2)『遊歴雑記』における耕地・広野表現
2 『絵本江戸土産』と『遊歴雑記』との比較
3 広重の耕地観
第Ⅲ部 歌川広重の思いを掬い取る
第9章 広重が託した思い─『絵本江戸土産』の絵と言葉を合わせてみると
1 「風景評価の着目点」を絵とともに解く
(1)耕地・耕作する農夫への風流心
(2)眺望の賞賛
(3)遊観するに良い場所
(4)山水美
(5)特徴的な事物・名物
(6)「賑わい」の風景─5つの場合
①行楽の場 ②遊興空間・多くの参詣者
③繁昌する店々 ④人々の労働の場
⑤流通の拠点や起点となる場所
2 水辺の風景
(1)描かれ続ける隅田川と江戸湾
(2)『土産』構成上の工夫
3 日常生活の中に見出す風景美
4 「気がついてほしい」風景の美しさ
5 「失ってはならない」風景
第10章 「名所江戸百景」を広重の「思い」とともに読み直す
1 「名所江戸百景」における構図の特徴
2 「名所江戸百景」へ『絵本江戸土産』に表された「思い」を重ねてみる
(1)「百景」と『土産』に共通して描かれた場所
(2)「百景」のみに描かれた場所
3 北斎との対比、そして「堀江ねこざね」の謎
(1)北斎の風景画との相違
(2)「堀江ねこざね」はなぜ描かれたか
歌川広重の風景観と現代の私たち―おわりに
あとがき
初出一覧
図版一覧
索引
1 広重の作品が放つ風景のイメージと、その先への一歩
2 「風景」が意味するもの
3 『絵本江戸土産』から広重の思いを汲み取っていく
第Ⅰ部 大都市江戸と絵師広重
第1章 空前の大都市─広重の生きた江戸のまち
1 江戸という都市の規模と内実
(1)首都「江戸」の成立
(2)明暦の大火と「江戸」の拡大
(3)人と物が集まる江戸とその賑わい
(4)「異国」にも触れられた江戸
(5)季節の行事を楽しむ人々
(6)江戸の一大歓楽地―吉原と歌舞伎町
(7)旅と出版文化の隆盛
2 江戸時代後期とはどんな時代だったか
(1)江戸の都市問題
(2)「外国」が押し寄せる
コラム:過去と今を往き来する1 過去を探すと出会っていくもの
第2章 庶民の娯楽 浮世絵版画
1 生み出された浮世絵版画―「浮世」の絵と錦絵の誕生
2 役者絵・美人画から風景画へ
3 名所絵の流行と広重
第3章 成熟・変動の時代と絵師 歌川広重
1 広重誕生前夜(一七七八~一七九六頃)
2 幼少期(一七九七~一八〇九)
3 思春期・青年期(一八一〇~一八三〇)
4 駆け出しの頃(一八三一~一八三八)―出世作「東海道五拾三次」
5 円熟期・集大成期(一八三九~一八五八)―『絵本江戸土産』、「名所江戸百景」創出
第Ⅱ部 広重の風景観を言葉から探る
第4章 『絵本江戸土産』と分析の視角
1 『絵本江戸土産』について
2 名所案内記に関する既往研究と第Ⅱ部の分析視座
3 〈広重自身〉の風景観に迫る
第5章 『絵本江戸土産』挿絵の構図を読む
1 江戸の名所案内記の類型と『江戸名所図会』の位置づけ
(1)『都名所図会』の影響
(2)江戸に関する名所案内記の類型
2 『絵本江戸土産』に描かれた場所―『江戸名所図会』との相違
構図からみた五類型
3 『絵本江戸土産』における構図の特徴
第6章 広重による「風景」とその類義語の使われ方
1 風景と類義語の抽出
2 広重が風景を表す際に用いた語と使用特徴
3 広重は「風景」をどのような意味で捉えていたか
第7章 『絵本江戸土産』の文章にあらわれた広重の風景観
1 由緒由来以外の記述に注目して考える
2 『絵本江戸土産』で風景を評価する時、着目している点は何か
3 場所ごとの風景評価
(1)『土産』と『図会』で場所ごとの着目点が共通する場合
(2)『土産』と『図会』で場所ごとの着目点に違いがある場合
4 江戸を見つめる広重の眼
コラム:過去と今を往き来する2 「形」を残す名所のそれぞれ
第8章 『絵本江戸土産』における耕地・広野
1 『遊歴雑記』に記される「耕地」「畑」「田園」
(1)『遊歴雑記』とは
(2)『遊歴雑記』における耕地・広野表現
2 『絵本江戸土産』と『遊歴雑記』との比較
3 広重の耕地観
第Ⅲ部 歌川広重の思いを掬い取る
第9章 広重が託した思い─『絵本江戸土産』の絵と言葉を合わせてみると
1 「風景評価の着目点」を絵とともに解く
(1)耕地・耕作する農夫への風流心
(2)眺望の賞賛
(3)遊観するに良い場所
(4)山水美
(5)特徴的な事物・名物
(6)「賑わい」の風景─5つの場合
①行楽の場 ②遊興空間・多くの参詣者
③繁昌する店々 ④人々の労働の場
⑤流通の拠点や起点となる場所
2 水辺の風景
(1)描かれ続ける隅田川と江戸湾
(2)『土産』構成上の工夫
3 日常生活の中に見出す風景美
4 「気がついてほしい」風景の美しさ
5 「失ってはならない」風景
第10章 「名所江戸百景」を広重の「思い」とともに読み直す
1 「名所江戸百景」における構図の特徴
2 「名所江戸百景」へ『絵本江戸土産』に表された「思い」を重ねてみる
(1)「百景」と『土産』に共通して描かれた場所
(2)「百景」のみに描かれた場所
3 北斎との対比、そして「堀江ねこざね」の謎
(1)北斎の風景画との相違
(2)「堀江ねこざね」はなぜ描かれたか
歌川広重の風景観と現代の私たち―おわりに
あとがき
初出一覧
図版一覧
索引