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◉ジュリアン・サヴァレスキュ氏
(オックスフォード大学教授・ウエヒロ応用倫理研究センター長)
生命科学の最前線,iPS細胞研究において,日本は世界をリードしている。しかし,そうした研究は数多くの重大な倫理的問題を抱えている。例えば,人−動物キメラのような新しい生命体を創り出してよいのか,そのような生命体をどのように道徳的に位置づければよいのか,生殖の在り方はどうなるのか,そもそも自然への干渉はどの程度許されるのかなどである。本書は,そうした全ての倫理的問題を網羅的に論じた待望の著作であり,喫緊の課題に対して世界的に貢献する研究である。精緻な文献研究に基づく本書は,広く科学政策全般にとっても重要な意味を持つ,画期的な業績であると言えよう。
(オックスフォード大学教授・ウエヒロ応用倫理研究センター長)
生命科学の最前線,iPS細胞研究において,日本は世界をリードしている。しかし,そうした研究は数多くの重大な倫理的問題を抱えている。例えば,人−動物キメラのような新しい生命体を創り出してよいのか,そのような生命体をどのように道徳的に位置づければよいのか,生殖の在り方はどうなるのか,そもそも自然への干渉はどの程度許されるのかなどである。本書は,そうした全ての倫理的問題を網羅的に論じた待望の著作であり,喫緊の課題に対して世界的に貢献する研究である。精緻な文献研究に基づく本書は,広く科学政策全般にとっても重要な意味を持つ,画期的な業績であると言えよう。
iPS細胞研究は胚破壊を回避した点で,生命倫理の問題を乗り越えたと言われる。しかしそれは本当ではない。iPS細胞研究は胚破壊を伴うES細胞を今後益々必要とするというのは,専門家の一致した見解だ。倫理や安全性,費用/効果に関わる国民的な一貫性ある議論を起こすためのシステムと,それを支える倫理枠組みを,現場から提案する意欲作。
『京都新聞』2017年5月13日付朝刊社会面、著者インタビュー記事
『信濃毎日新聞』2017年6月2日付、くらし面
『北海道新聞』2017年6月5日付夕刊、科学面
『朝日新聞』2017年6月15日付夕刊(大阪本社版)4面「テーブルトーク」
『信濃毎日新聞』2017年6月2日付、くらし面
『北海道新聞』2017年6月5日付夕刊、科学面
『朝日新聞』2017年6月15日付夕刊(大阪本社版)4面「テーブルトーク」
澤井 努(さわい つとむ)
1986年,奈良県生まれ。
天理大学国際文化学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。博士後期課程在学中にオックスフォード大学哲学科ウエヒロ応用倫理研究センターに留学。現在,京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門特定研究員。
専攻は,生命倫理学・哲学・宗教学。
主な論文に,“The Moral Value of induced Pluripotent Stem Cells: A Japanese Bioethics Perspective on Human Embryo Research”(Journal of Medical Ethics, 2014),「Risk of Tumorigenesis and Patient Hope」(共著,AJOB Neuroethics, 2015),「ヒトiPS細胞研究の道徳的共犯論——日本のヒトiPS細胞研究への含意の検討」(『いのちの未来』,2016),“The Problem of Dual Use in Relation to Decoded Neurofeedback”(共著,AJOB Neuroethics, 2016),“Public Attitudes in Japan towards Human-Animal Chimeric Embryo Research using Human Induced Pluripotent Stem Cells”(共著,Regenerative Medicine, 2017),など。
1986年,奈良県生まれ。
天理大学国際文化学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。博士後期課程在学中にオックスフォード大学哲学科ウエヒロ応用倫理研究センターに留学。現在,京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門特定研究員。
専攻は,生命倫理学・哲学・宗教学。
主な論文に,“The Moral Value of induced Pluripotent Stem Cells: A Japanese Bioethics Perspective on Human Embryo Research”(Journal of Medical Ethics, 2014),「Risk of Tumorigenesis and Patient Hope」(共著,AJOB Neuroethics, 2015),「ヒトiPS細胞研究の道徳的共犯論——日本のヒトiPS細胞研究への含意の検討」(『いのちの未来』,2016),“The Problem of Dual Use in Relation to Decoded Neurofeedback”(共著,AJOB Neuroethics, 2016),“Public Attitudes in Japan towards Human-Animal Chimeric Embryo Research using Human Induced Pluripotent Stem Cells”(共著,Regenerative Medicine, 2017),など。
序論 生命科学・技術と生命倫理
基礎解説
第1章 ヒトiPS細胞研究における道徳的共犯性の検討
1.1 ヒト胚の道徳的地位とヒトES細胞研究への含意
1.1.1 ヒト胚は道徳的地位を持つ
1.1.2 ヒト胚は道徳的地位を持たない
1.1.3 ヒト胚は道徳的価値を持つ(道徳的地位は持たない)
1.2 ヒトiPS細胞研究の道徳的共犯性
1.2.1 道徳的に不正な行為を助長する
1.2.2 道徳的に不正な行為から恩恵を受ける
1.3 日本におけるヒトiPS細胞研究の道徳的共犯性
1.3.1 ヒト胚の取扱いに対する考え方
1.3.2 日本のヒトiPS細胞研究への含意
第2章 ヒトiPS細胞の道徳的価値の検討
2.1 ヒトES細胞の道徳的位置づけ
2.1.1 「目的」におけるヒトES細胞に関する記述
2.1.2 「定義」から見るヒトES細胞
2.1.3 ヒトES細胞に対する具体的な配慮
2.2 ヒトiPS細胞の道徳的位置づけ
2.2.1 四倍体胚補完法という技術
2.2.2 ヒトiPS細胞の道徳的価値
第3章 人-動物キメラ胚の作製・利用に伴う倫理的問題の検討
3.1 人-動物キメラ胚研究の技術的背景
3.2 人-動物キメラ胚の作製・利用に伴う倫理的問題
3.2.1 自然さをめぐる問題
3.2.2 道徳的混乱をめぐる問題
3.2.3 人間の尊厳をめぐる問題
3.2.4 道徳的地位をめぐる問題
3.2.5 動物のヒト化をめぐる問題
3.2.6 動物倫理・研究倫理をめぐる問題
3.2.7 人-動物キメラ胚研究をめぐる倫理的問題の特徴
3.3 日本における人-動物キメラ胚の作製・利用の在り方
第4章 ヒトiPS細胞由来の配偶子の作製・利用に伴う倫理的問題の検討
4.1 iPS細胞由来の配偶子作製の技術的背景
4.2 ヒトiPS細胞由来の配偶子の作製・利用に伴う倫理的問題
4.2.1 SCDG由来の胚の道徳的地位をめぐる問題
4.2.2 遺伝的な親であることをめぐる問題
4.2.3 安全性・リスクをめぐる問題
4.2.4 SCDGの生殖利用の範囲をめぐる問題
4.2.5 エンハンスメントをめぐる問題
4.2.6 SCDG研究への資源配分をめぐる問題
4.2.7 iPS細胞由来の配偶子の利用をめぐる倫理的問題の特徴
4.3 日本におけるiPS細胞由来の配偶子の作製・利用の在り方
第5章 iPS細胞研究における優先順位の設定
5.1 iPS細胞を用いた再生医療研究
5.2 疾患特異的iPS細胞を活用した研究
5.3 iPS細胞研究における優先順位の設定
5.3.1 今後の優先順位の設定の在り方
5.3.2 国際動向という観点
5.3.3 功利主義の観点
5.3.4 自由平等主義の観点
結 論
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引
基礎解説
第1章 ヒトiPS細胞研究における道徳的共犯性の検討
1.1 ヒト胚の道徳的地位とヒトES細胞研究への含意
1.1.1 ヒト胚は道徳的地位を持つ
1.1.2 ヒト胚は道徳的地位を持たない
1.1.3 ヒト胚は道徳的価値を持つ(道徳的地位は持たない)
1.2 ヒトiPS細胞研究の道徳的共犯性
1.2.1 道徳的に不正な行為を助長する
1.2.2 道徳的に不正な行為から恩恵を受ける
1.3 日本におけるヒトiPS細胞研究の道徳的共犯性
1.3.1 ヒト胚の取扱いに対する考え方
1.3.2 日本のヒトiPS細胞研究への含意
第2章 ヒトiPS細胞の道徳的価値の検討
2.1 ヒトES細胞の道徳的位置づけ
2.1.1 「目的」におけるヒトES細胞に関する記述
2.1.2 「定義」から見るヒトES細胞
2.1.3 ヒトES細胞に対する具体的な配慮
2.2 ヒトiPS細胞の道徳的位置づけ
2.2.1 四倍体胚補完法という技術
2.2.2 ヒトiPS細胞の道徳的価値
第3章 人-動物キメラ胚の作製・利用に伴う倫理的問題の検討
3.1 人-動物キメラ胚研究の技術的背景
3.2 人-動物キメラ胚の作製・利用に伴う倫理的問題
3.2.1 自然さをめぐる問題
3.2.2 道徳的混乱をめぐる問題
3.2.3 人間の尊厳をめぐる問題
3.2.4 道徳的地位をめぐる問題
3.2.5 動物のヒト化をめぐる問題
3.2.6 動物倫理・研究倫理をめぐる問題
3.2.7 人-動物キメラ胚研究をめぐる倫理的問題の特徴
3.3 日本における人-動物キメラ胚の作製・利用の在り方
第4章 ヒトiPS細胞由来の配偶子の作製・利用に伴う倫理的問題の検討
4.1 iPS細胞由来の配偶子作製の技術的背景
4.2 ヒトiPS細胞由来の配偶子の作製・利用に伴う倫理的問題
4.2.1 SCDG由来の胚の道徳的地位をめぐる問題
4.2.2 遺伝的な親であることをめぐる問題
4.2.3 安全性・リスクをめぐる問題
4.2.4 SCDGの生殖利用の範囲をめぐる問題
4.2.5 エンハンスメントをめぐる問題
4.2.6 SCDG研究への資源配分をめぐる問題
4.2.7 iPS細胞由来の配偶子の利用をめぐる倫理的問題の特徴
4.3 日本におけるiPS細胞由来の配偶子の作製・利用の在り方
第5章 iPS細胞研究における優先順位の設定
5.1 iPS細胞を用いた再生医療研究
5.2 疾患特異的iPS細胞を活用した研究
5.3 iPS細胞研究における優先順位の設定
5.3.1 今後の優先順位の設定の在り方
5.3.2 国際動向という観点
5.3.3 功利主義の観点
5.3.4 自由平等主義の観点
結 論
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引