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プリミエ・コレクション 78

〈犠牲者〉のポリティクス

済州4・3/沖縄/台湾2・28 歴史清算をめぐる苦悩

高 誠晩

A5上製, 274 pages

ISBN: 9784814000760

pub. date: 03/17

  • Price : JPY 3,200 (with tax: JPY 3,520)
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内容

済州島4・3事件―3万人もの島民が軍や右翼に虐殺され,反共体制下の韓国で語ることもタブーとされた事件に,ようやく国家が謝罪し,真相究明と補償がなされた。しかしそこで生じたのは,誰を慰霊するかを巡る新しい差別であった。沖縄戦や台湾での事件にも触れながら,国家による大量死の「犠牲者」が国家によって認定されるポリティクスに迫る。

書評

『図書新聞』2017年7月22日付2017年上半期読書アンケート、選:川村邦光氏
『琉球新報』2017年9月10日付朝刊、評者:北村毅氏
『沖縄タイムス』2017年10月21日付朝刊 読書面、評者:納富香織氏
『ソシオロジ』第63巻1号(2018年6月)、104-105頁、評者:板垣竜太氏

プロフィール

高 誠晩(コ ソンマン)
立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。
1979年済州島生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学,博士(文学)。済州4・3研究所,大阪市立大学人権問題研究センター,立命館大学生存学研究センター等を経て,現職。専攻は歴史社会学,文化人類学,東アジア研究。

目次

はじめに「犠牲者」の創出と研究者の責務

序章「移行期正義」と「大量死」の意味づけ
 1 「移行期正義」論を越えて
 2 「死者の犠牲者化」をめぐる議論
 3 本書の対象と方法
   3.1 過去克服のダイナミズム
   3.2 済州・沖縄・台湾における紛争以後
     3.2.1 国家暴力と民間人の「大量死」
     3.2.2 「犠牲」と「非犠牲」の境界線上で
     3.2.3 調査の概要
   3.3 本書の構成

第1部 済州4・3事件

第1章 死者から「犠牲者」へ
 1 民主主義体制への移行と「過去清算」
 2 済州4・3事件とその後
 3 「過去清算」の法制化に向けて
   3.1 済州4・3委員会の構成と機能
   3.2 「正しい犠牲者」をめぐる葛藤と合意
 4 誰が「犠牲者」なのか―「犠牲者」の審議・決定プロセス
 5 「死者の犠牲者化」がもたらすもの
   5.1 「犠牲者」の選別と再構成
   5.2 「犠牲者」でもなく加害者でもなく
   5.3 「真相究明」と「名誉回復」との不一致
   5.4 錯綜する関係性
 6 「過去清算」が生み出す「未清算の過去」

第2章 記念施設をめぐる記憶のポリティクス
 1 「過去清算」の空間化
 2 記念施設「済州4・3平和公園」
   2.1 位牌奉安所,刻銘碑,行方不明者の標石
   2.2 済州4・3平和記念館,遺骸奉安館
 3 慰霊・追悼の領域から
   3.1 抹消される死者の記憶
   3.2 除外される「武装隊」
   3.3 モニュメントの間の不一致
   3.4 名前と遺骸とのダブルスタンダード
   3.5 「過去清算」が宣伝される場
 4 再現・表象の領域から
   4.1 展示と刻銘のずれ
   4.2 展示をめぐって競合する記憶
 5 記憶闘争の場

第3章 公的領域における「大量死」の意味づけ
 1 媒介としての申立て
 2 書き直される済州4・3事件以後
 3 虐殺の事実を「申告」する
   3.1 事件以後の「申告書」
   3.2 「良民虐殺真相糾明申告書」と「犠牲者申告書」
 4 再構成される死者の体験
   4.1 「虐殺者」を記す
   4.2 怒りの記憶
 5 捻じ曲げられる記述
   5.1 反共社会を生き抜く工夫
     5.1.1 受難史を浮き彫りする
     5.1.2 「レッド」と距離を置く
   5.2 空白として残された抗争の史実
 6 戦略としての二律背反性
 7 行間を読み解く

第4章 家系記録から読み直す虐殺以後
 1 国家権力に抗する民衆の経験知
 2 家族・親族集団の記録資料
 3 民間人の死の多重性と死後処理の複雑さ
   3.1 「不当で悲痛な死」
   3.2 異常で不穏な死
 4 家系記録に書かれた虐殺の記憶
   4.1 除籍謄本,族譜,墓碑
   4.2 B家の事例
   4.3 D家の事例
 5 ローカルな場における死の意味づけ
   5.1 虚偽の作法
   5.2 事実を銘記する
 6 経験知の生成と実践

第2部 沖縄戦と台湾2・28事件

第5章 沖縄戦の「戦後処理」と「戦死者の戦没者化」
 1 戦場体験を記述することの困難さ
 2 「一般住民」に対する援護法の拡大適用
 3 「運命共同体的な関係」への転換
 4 強いられる戦場体験の書き換え
 5 戦死の意味づけをめぐる工夫
   5.1 戦死者から「戦没者」へ
   5.2 翻弄される戦死の意味づけ
   5.3 国民国家イデオロギーと対峙する場の構築
 6 「戦没者化」をめぐるせめぎあい

第6章 台湾2・28事件を書き残す営み
 1 行方不明以後の家系記録
 2 台湾2・28事件と「過去清算」
 3 国境をまたいだ南西諸島出身者の移動
   3.1 沖縄と台湾をつなぐ生活圏
   3.2 台湾2・28事件に遭遇する
     3.2.1 Yの事例
     3.2.2 MとZの事例
 4 負の連鎖を乗り越えて
 5 家系記録に書き残された台湾2・28事件
   5.1 除籍謄本,位牌,厨子甕
   5.2 「2・28」という記号
     5.2.1 「非琉球人」の死後処理
     5.2.2 「台湾暴動事件」から「2月28日」へ
 6 継承される行方不明の記憶

終章 過去克服への取り組みとローカル・リアリティ
 1 再編される死者間の構図
 2 せめぎあう国家のナラティブと民衆の経験知

あとがき
初出一覧
引用文献
索引
欧文要旨
ハングル要旨
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