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済州島4・3事件―3万人もの島民が軍や右翼に虐殺され,反共体制下の韓国で語ることもタブーとされた事件に,ようやく国家が謝罪し,真相究明と補償がなされた。しかしそこで生じたのは,誰を慰霊するかを巡る新しい差別であった。沖縄戦や台湾での事件にも触れながら,国家による大量死の「犠牲者」が国家によって認定されるポリティクスに迫る。
『図書新聞』2017年7月22日付2017年上半期読書アンケート、選:川村邦光氏
『琉球新報』2017年9月10日付朝刊、評者:北村毅氏
『沖縄タイムス』2017年10月21日付朝刊 読書面、評者:納富香織氏
『ソシオロジ』第63巻1号(2018年6月)、104-105頁、評者:板垣竜太氏
『琉球新報』2017年9月10日付朝刊、評者:北村毅氏
『沖縄タイムス』2017年10月21日付朝刊 読書面、評者:納富香織氏
『ソシオロジ』第63巻1号(2018年6月)、104-105頁、評者:板垣竜太氏
高 誠晩(コ ソンマン)
立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。
1979年済州島生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学,博士(文学)。済州4・3研究所,大阪市立大学人権問題研究センター,立命館大学生存学研究センター等を経て,現職。専攻は歴史社会学,文化人類学,東アジア研究。
立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。
1979年済州島生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学,博士(文学)。済州4・3研究所,大阪市立大学人権問題研究センター,立命館大学生存学研究センター等を経て,現職。専攻は歴史社会学,文化人類学,東アジア研究。
はじめに「犠牲者」の創出と研究者の責務
序章「移行期正義」と「大量死」の意味づけ
1 「移行期正義」論を越えて
2 「死者の犠牲者化」をめぐる議論
3 本書の対象と方法
3.1 過去克服のダイナミズム
3.2 済州・沖縄・台湾における紛争以後
3.2.1 国家暴力と民間人の「大量死」
3.2.2 「犠牲」と「非犠牲」の境界線上で
3.2.3 調査の概要
3.3 本書の構成
第1部 済州4・3事件
第1章 死者から「犠牲者」へ
1 民主主義体制への移行と「過去清算」
2 済州4・3事件とその後
3 「過去清算」の法制化に向けて
3.1 済州4・3委員会の構成と機能
3.2 「正しい犠牲者」をめぐる葛藤と合意
4 誰が「犠牲者」なのか―「犠牲者」の審議・決定プロセス
5 「死者の犠牲者化」がもたらすもの
5.1 「犠牲者」の選別と再構成
5.2 「犠牲者」でもなく加害者でもなく
5.3 「真相究明」と「名誉回復」との不一致
5.4 錯綜する関係性
6 「過去清算」が生み出す「未清算の過去」
第2章 記念施設をめぐる記憶のポリティクス
1 「過去清算」の空間化
2 記念施設「済州4・3平和公園」
2.1 位牌奉安所,刻銘碑,行方不明者の標石
2.2 済州4・3平和記念館,遺骸奉安館
3 慰霊・追悼の領域から
3.1 抹消される死者の記憶
3.2 除外される「武装隊」
3.3 モニュメントの間の不一致
3.4 名前と遺骸とのダブルスタンダード
3.5 「過去清算」が宣伝される場
4 再現・表象の領域から
4.1 展示と刻銘のずれ
4.2 展示をめぐって競合する記憶
5 記憶闘争の場
第3章 公的領域における「大量死」の意味づけ
1 媒介としての申立て
2 書き直される済州4・3事件以後
3 虐殺の事実を「申告」する
3.1 事件以後の「申告書」
3.2 「良民虐殺真相糾明申告書」と「犠牲者申告書」
4 再構成される死者の体験
4.1 「虐殺者」を記す
4.2 怒りの記憶
5 捻じ曲げられる記述
5.1 反共社会を生き抜く工夫
5.1.1 受難史を浮き彫りする
5.1.2 「レッド」と距離を置く
5.2 空白として残された抗争の史実
6 戦略としての二律背反性
7 行間を読み解く
第4章 家系記録から読み直す虐殺以後
1 国家権力に抗する民衆の経験知
2 家族・親族集団の記録資料
3 民間人の死の多重性と死後処理の複雑さ
3.1 「不当で悲痛な死」
3.2 異常で不穏な死
4 家系記録に書かれた虐殺の記憶
4.1 除籍謄本,族譜,墓碑
4.2 B家の事例
4.3 D家の事例
5 ローカルな場における死の意味づけ
5.1 虚偽の作法
5.2 事実を銘記する
6 経験知の生成と実践
第2部 沖縄戦と台湾2・28事件
第5章 沖縄戦の「戦後処理」と「戦死者の戦没者化」
1 戦場体験を記述することの困難さ
2 「一般住民」に対する援護法の拡大適用
3 「運命共同体的な関係」への転換
4 強いられる戦場体験の書き換え
5 戦死の意味づけをめぐる工夫
5.1 戦死者から「戦没者」へ
5.2 翻弄される戦死の意味づけ
5.3 国民国家イデオロギーと対峙する場の構築
6 「戦没者化」をめぐるせめぎあい
第6章 台湾2・28事件を書き残す営み
1 行方不明以後の家系記録
2 台湾2・28事件と「過去清算」
3 国境をまたいだ南西諸島出身者の移動
3.1 沖縄と台湾をつなぐ生活圏
3.2 台湾2・28事件に遭遇する
3.2.1 Yの事例
3.2.2 MとZの事例
4 負の連鎖を乗り越えて
5 家系記録に書き残された台湾2・28事件
5.1 除籍謄本,位牌,厨子甕
5.2 「2・28」という記号
5.2.1 「非琉球人」の死後処理
5.2.2 「台湾暴動事件」から「2月28日」へ
6 継承される行方不明の記憶
終章 過去克服への取り組みとローカル・リアリティ
1 再編される死者間の構図
2 せめぎあう国家のナラティブと民衆の経験知
あとがき
初出一覧
引用文献
索引
欧文要旨
ハングル要旨
序章「移行期正義」と「大量死」の意味づけ
1 「移行期正義」論を越えて
2 「死者の犠牲者化」をめぐる議論
3 本書の対象と方法
3.1 過去克服のダイナミズム
3.2 済州・沖縄・台湾における紛争以後
3.2.1 国家暴力と民間人の「大量死」
3.2.2 「犠牲」と「非犠牲」の境界線上で
3.2.3 調査の概要
3.3 本書の構成
第1部 済州4・3事件
第1章 死者から「犠牲者」へ
1 民主主義体制への移行と「過去清算」
2 済州4・3事件とその後
3 「過去清算」の法制化に向けて
3.1 済州4・3委員会の構成と機能
3.2 「正しい犠牲者」をめぐる葛藤と合意
4 誰が「犠牲者」なのか―「犠牲者」の審議・決定プロセス
5 「死者の犠牲者化」がもたらすもの
5.1 「犠牲者」の選別と再構成
5.2 「犠牲者」でもなく加害者でもなく
5.3 「真相究明」と「名誉回復」との不一致
5.4 錯綜する関係性
6 「過去清算」が生み出す「未清算の過去」
第2章 記念施設をめぐる記憶のポリティクス
1 「過去清算」の空間化
2 記念施設「済州4・3平和公園」
2.1 位牌奉安所,刻銘碑,行方不明者の標石
2.2 済州4・3平和記念館,遺骸奉安館
3 慰霊・追悼の領域から
3.1 抹消される死者の記憶
3.2 除外される「武装隊」
3.3 モニュメントの間の不一致
3.4 名前と遺骸とのダブルスタンダード
3.5 「過去清算」が宣伝される場
4 再現・表象の領域から
4.1 展示と刻銘のずれ
4.2 展示をめぐって競合する記憶
5 記憶闘争の場
第3章 公的領域における「大量死」の意味づけ
1 媒介としての申立て
2 書き直される済州4・3事件以後
3 虐殺の事実を「申告」する
3.1 事件以後の「申告書」
3.2 「良民虐殺真相糾明申告書」と「犠牲者申告書」
4 再構成される死者の体験
4.1 「虐殺者」を記す
4.2 怒りの記憶
5 捻じ曲げられる記述
5.1 反共社会を生き抜く工夫
5.1.1 受難史を浮き彫りする
5.1.2 「レッド」と距離を置く
5.2 空白として残された抗争の史実
6 戦略としての二律背反性
7 行間を読み解く
第4章 家系記録から読み直す虐殺以後
1 国家権力に抗する民衆の経験知
2 家族・親族集団の記録資料
3 民間人の死の多重性と死後処理の複雑さ
3.1 「不当で悲痛な死」
3.2 異常で不穏な死
4 家系記録に書かれた虐殺の記憶
4.1 除籍謄本,族譜,墓碑
4.2 B家の事例
4.3 D家の事例
5 ローカルな場における死の意味づけ
5.1 虚偽の作法
5.2 事実を銘記する
6 経験知の生成と実践
第2部 沖縄戦と台湾2・28事件
第5章 沖縄戦の「戦後処理」と「戦死者の戦没者化」
1 戦場体験を記述することの困難さ
2 「一般住民」に対する援護法の拡大適用
3 「運命共同体的な関係」への転換
4 強いられる戦場体験の書き換え
5 戦死の意味づけをめぐる工夫
5.1 戦死者から「戦没者」へ
5.2 翻弄される戦死の意味づけ
5.3 国民国家イデオロギーと対峙する場の構築
6 「戦没者化」をめぐるせめぎあい
第6章 台湾2・28事件を書き残す営み
1 行方不明以後の家系記録
2 台湾2・28事件と「過去清算」
3 国境をまたいだ南西諸島出身者の移動
3.1 沖縄と台湾をつなぐ生活圏
3.2 台湾2・28事件に遭遇する
3.2.1 Yの事例
3.2.2 MとZの事例
4 負の連鎖を乗り越えて
5 家系記録に書き残された台湾2・28事件
5.1 除籍謄本,位牌,厨子甕
5.2 「2・28」という記号
5.2.1 「非琉球人」の死後処理
5.2.2 「台湾暴動事件」から「2月28日」へ
6 継承される行方不明の記憶
終章 過去克服への取り組みとローカル・リアリティ
1 再編される死者間の構図
2 せめぎあう国家のナラティブと民衆の経験知
あとがき
初出一覧
引用文献
索引
欧文要旨
ハングル要旨