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絶え間ない変化の中で、神霊の力に満たされた野生の領域とのつながりを創りだしてきた南カナラの人々。顕在と潜在の間を往来するその営みに焦点を当て、人々とその環世界の生成と変容の過程を描きだす。人間と野生の力との出逢いと交渉を、生物と生そのものとのパトス的な関係性としてとらえなおす、新しい「環世界の人類学」の誕生。
『図書新聞』2017.7.15付、4面、評者:川野美砂子氏
『文化人類学』vol.82-3 2017、400-403頁、評者:鈴木正崇氏
『文化人類学』vol.82-3 2017、400-403頁、評者:鈴木正崇氏
[著者略歴]
石井 美保(いしい みほ)
京都大学人文科学研究所准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。一橋大学大学院社会学研究科准教授を経て現職。主な著作に『精霊たちのフロンティア──ガーナ南部の開拓移民社会における〈超常現象〉の民族誌』(世界思想社,2007年),『宗教の人類学』(花渕馨也・吉田匡興と共編,春風社,2010年),“Playing with perspectives: spirit possession, mimesis, and permeability in the buuta ritual in South India” (Journal of the Royal Anthropological Institute, 2013),“Caring for divine infrastructures: nature and spirits in a special economic zone in India” (Ethnos: Journal of Anthropology, 2016)など。
石井 美保(いしい みほ)
京都大学人文科学研究所准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。一橋大学大学院社会学研究科准教授を経て現職。主な著作に『精霊たちのフロンティア──ガーナ南部の開拓移民社会における〈超常現象〉の民族誌』(世界思想社,2007年),『宗教の人類学』(花渕馨也・吉田匡興と共編,春風社,2010年),“Playing with perspectives: spirit possession, mimesis, and permeability in the buuta ritual in South India” (Journal of the Royal Anthropological Institute, 2013),“Caring for divine infrastructures: nature and spirits in a special economic zone in India” (Ethnos: Journal of Anthropology, 2016)など。
口 絵
地 図
凡 例
序章 環世界の人類学にむけて
1 「呪術・宗教実践と近代」という問題系
2 存在論的人類学と「他者の現実」
3 「存在すること」を問いなおす
4 存在的なものとパトス的なもの──環世界論の検討
5 人が相手と出逢いうる仕方を問う
6 本書の内容と構成
第一部 野生=神霊の力と人間
一章 水田と山野、神霊の土地
1 ムドゥ・ペラールとパドゥ・ペラール
2 ペラールの社会構成
3 土地、山野、神霊たち
二章 ペラールの大社と神霊たち
1 バンタカンバと村の大社
2 三人のブータと多義的な神霊ブランマ
3 祭祀を担う人々と家系
4 祭主と司祭──ガディパティナールとムッカールディ
5 パンバダの踊り手たち
三章 パールダナ──詠われる起源神話
1 バラワーンディ前史──ナードゥの生涯
2 神霊たちの王、ウッラークルの物語
3 野生のトラの神霊、ピリチャームンディの物語
4 神霊と領主一族の物語
四章 神霊の大祭
1 祭りの前夜
2 アラスとバラワーンディの儀礼
3 ピリチャームンディの儀礼と審判
4 神霊と人々の贈与交換関係──感謝と祝福、呪いと慰撫
五章 「やりとりのネットワーク」と野生の力の流通
1 「分割可能な人」とやりとりのネットワーク
2 ネットワークをいかに制限するか
3 野生=神霊の力の循環的な流通
4 神霊祭祀と馴化されない力
六章 憑依の経験とパースペクティヴの戯れ
1 憑依の経験と「透過的な人」
2 人間と非人間的存在とのパースペクティヴの交換
3 ブータの踊り手の技芸──ミメシスと恩寵
4 パースペクティヴとの戯れ
5 儀礼における交渉とパースペクティヴの生成変化
第二部 制度的変容と新たな環世界の生成
七章 大社をめぐる抗争と神霊のエイジェンシー
1 南インドのヒンドゥー寺院と寺社管理制度
2 やりとりのネットワークと「至高の人」としての神
3 大社の管財権をめぐる領主とブラーマン司祭の争議
4 「管理委員会」の設立と伝統的な祭主権の危機
5 大祭における事件と神霊の審判
6 人々の思惑の錯綜と抗争の変遷
7 近代法の力と神霊のエイジェンシーのはざまで
八章 南カナラにおける土地制度の変遷
1 前植民地期における南カナラの土地制度
2 植民地期における南カナラの土地政策──ライーヤトワーリー制の導入
3 二十世紀初頭のペラールにおける土地保有とパッタダール
4 独立後の土地改革
九章 母系制の近代法化と母系親族集団
1 植民地期におけるアリヤサンターナ制と近代法の出逢い
2 マドラス・アリヤサンターナ法と母系親族集団の再定義
3 近代法化によるクトゥマの変容──「分割可能な人」から「個人の財」へ?
十章 人々にとっての母系制
1 法の施行と修正の下で
2 近代法への対処と共同保有地の相続──「人口による分割」と「カバルによる分割」
3 母系親族集団における土地保有──「土地所有者」としての女性たち
4 クトゥマの共同保有地の分割相続案──ムッタヤ・シェティの計画
5 「祖父から来た土地」の分割相続案
十一章 「土地の主」としての神霊と土地改革
1 ペラールにおける小作と家内労働者
2 村落社会における土地改革──土地権申請の登録資料から
3 ムドゥ・ペラールにおける地主・小作・家内労働者の集団構成
4 バンタの地主層における土地保有と相続の特徴
5 カルナータカ土地改革(改正)法の施行と人々の実践
6 土地権の移譲をめぐる神霊の呪詛
十二章 大規模開発の中の神霊たち
1 マンガロール経済特区と神霊祭祀の新たな役割
2 農民たちの反開発運動──そのふたつの側面
3 神霊への服従と土地接収への抵抗──ある領主一族の苦悩
4 神霊祭祀をめぐる領主間の対立と土地収用のポリティクス
5 「新天地」における人々の軋轢と神霊祭祀の競合
6 領主一族による社の「私有化」と村人たちによる神霊の「奪還」
十三章 工業プラントにおける新たな環世界の生成
1 「神霊の通り道」における爆発事故
2 開発区域における土地・自然、神霊との関係の「回復」
3 不穏な工業プラント──野生の力とテクノロジーの接触
4 祭主になりかわる企業幹部
5 新たな環世界へ
終章 存在、パトス、環世界
1 理論的視座の再検討
2 潜在と顕在のあいだ
3 近代、野生、神霊祭祀
4 おわりに──神霊を待ちのぞむ
あとがき
参照文献
索 引
地 図
凡 例
序章 環世界の人類学にむけて
1 「呪術・宗教実践と近代」という問題系
2 存在論的人類学と「他者の現実」
3 「存在すること」を問いなおす
4 存在的なものとパトス的なもの──環世界論の検討
5 人が相手と出逢いうる仕方を問う
6 本書の内容と構成
第一部 野生=神霊の力と人間
一章 水田と山野、神霊の土地
1 ムドゥ・ペラールとパドゥ・ペラール
2 ペラールの社会構成
3 土地、山野、神霊たち
二章 ペラールの大社と神霊たち
1 バンタカンバと村の大社
2 三人のブータと多義的な神霊ブランマ
3 祭祀を担う人々と家系
4 祭主と司祭──ガディパティナールとムッカールディ
5 パンバダの踊り手たち
三章 パールダナ──詠われる起源神話
1 バラワーンディ前史──ナードゥの生涯
2 神霊たちの王、ウッラークルの物語
3 野生のトラの神霊、ピリチャームンディの物語
4 神霊と領主一族の物語
四章 神霊の大祭
1 祭りの前夜
2 アラスとバラワーンディの儀礼
3 ピリチャームンディの儀礼と審判
4 神霊と人々の贈与交換関係──感謝と祝福、呪いと慰撫
五章 「やりとりのネットワーク」と野生の力の流通
1 「分割可能な人」とやりとりのネットワーク
2 ネットワークをいかに制限するか
3 野生=神霊の力の循環的な流通
4 神霊祭祀と馴化されない力
六章 憑依の経験とパースペクティヴの戯れ
1 憑依の経験と「透過的な人」
2 人間と非人間的存在とのパースペクティヴの交換
3 ブータの踊り手の技芸──ミメシスと恩寵
4 パースペクティヴとの戯れ
5 儀礼における交渉とパースペクティヴの生成変化
第二部 制度的変容と新たな環世界の生成
七章 大社をめぐる抗争と神霊のエイジェンシー
1 南インドのヒンドゥー寺院と寺社管理制度
2 やりとりのネットワークと「至高の人」としての神
3 大社の管財権をめぐる領主とブラーマン司祭の争議
4 「管理委員会」の設立と伝統的な祭主権の危機
5 大祭における事件と神霊の審判
6 人々の思惑の錯綜と抗争の変遷
7 近代法の力と神霊のエイジェンシーのはざまで
八章 南カナラにおける土地制度の変遷
1 前植民地期における南カナラの土地制度
2 植民地期における南カナラの土地政策──ライーヤトワーリー制の導入
3 二十世紀初頭のペラールにおける土地保有とパッタダール
4 独立後の土地改革
九章 母系制の近代法化と母系親族集団
1 植民地期におけるアリヤサンターナ制と近代法の出逢い
2 マドラス・アリヤサンターナ法と母系親族集団の再定義
3 近代法化によるクトゥマの変容──「分割可能な人」から「個人の財」へ?
十章 人々にとっての母系制
1 法の施行と修正の下で
2 近代法への対処と共同保有地の相続──「人口による分割」と「カバルによる分割」
3 母系親族集団における土地保有──「土地所有者」としての女性たち
4 クトゥマの共同保有地の分割相続案──ムッタヤ・シェティの計画
5 「祖父から来た土地」の分割相続案
十一章 「土地の主」としての神霊と土地改革
1 ペラールにおける小作と家内労働者
2 村落社会における土地改革──土地権申請の登録資料から
3 ムドゥ・ペラールにおける地主・小作・家内労働者の集団構成
4 バンタの地主層における土地保有と相続の特徴
5 カルナータカ土地改革(改正)法の施行と人々の実践
6 土地権の移譲をめぐる神霊の呪詛
十二章 大規模開発の中の神霊たち
1 マンガロール経済特区と神霊祭祀の新たな役割
2 農民たちの反開発運動──そのふたつの側面
3 神霊への服従と土地接収への抵抗──ある領主一族の苦悩
4 神霊祭祀をめぐる領主間の対立と土地収用のポリティクス
5 「新天地」における人々の軋轢と神霊祭祀の競合
6 領主一族による社の「私有化」と村人たちによる神霊の「奪還」
十三章 工業プラントにおける新たな環世界の生成
1 「神霊の通り道」における爆発事故
2 開発区域における土地・自然、神霊との関係の「回復」
3 不穏な工業プラント──野生の力とテクノロジーの接触
4 祭主になりかわる企業幹部
5 新たな環世界へ
終章 存在、パトス、環世界
1 理論的視座の再検討
2 潜在と顕在のあいだ
3 近代、野生、神霊祭祀
4 おわりに──神霊を待ちのぞむ
あとがき
参照文献
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