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歴史は、いかに綿密に一次史料に依拠していようとも、書き記す人によって再編成された過去であり、その様相は政治権力の影響を強く受けざるをえない。歴史の語りとその暗黙の前提となる枠組みが形成される過程を読み解き、看過されてきた問題群に光をあて、東南アジア史研究から、歴史学一般、そして知と権力との関係をめぐる議論に問題提起する。
『東南アジア研究』58巻1号、126-129頁、評者:根本敬氏
著者一覧(50音順,*は編者)
伊藤 利勝 愛知大学文学部教授(歴史学)
片山須美子 立命館大学・桃山学院大学非常勤講師(ベトナム現代史)
*小泉 順子 京都大学東南アジア地域研究研究所教授(タイ現代史)
小林 寧子 南山大学外国語学部教授(インドネシア近現代史)
菅原 由美 大阪大学言語文化研究科准教授(インドネシア近代史)
左右田直規 東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授(東南アジア近現代史)
土佐 桂子 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授(人類学,地域研究(ミャンマー))
原田 正美 大阪大学外国語学部非常勤講師(仏教文化学)
伊藤 利勝 愛知大学文学部教授(歴史学)
片山須美子 立命館大学・桃山学院大学非常勤講師(ベトナム現代史)
*小泉 順子 京都大学東南アジア地域研究研究所教授(タイ現代史)
小林 寧子 南山大学外国語学部教授(インドネシア近現代史)
菅原 由美 大阪大学言語文化研究科准教授(インドネシア近代史)
左右田直規 東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授(東南アジア近現代史)
土佐 桂子 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授(人類学,地域研究(ミャンマー))
原田 正美 大阪大学外国語学部非常勤講師(仏教文化学)
序文 [小泉順子]
東南アジア史研究の成立と変容 ――背景
新たな視座の模索
叙述と沈黙
本書の構成
第1章 国家・英雄・ジェンダー
―カルティニ像の変遷 [小林寧子]
1 国家英雄の今昔
2 偶像化されたカルティニ
2―1 世紀転換期のジャワ
2―2 オランダの演出したカルティニ
2―3 戦前の日本で紹介されたカルティニ
3 独立インドネシアにおけるカルティニ
3―1 作家の語るカルティニ
3―2 国家の語るカルティニ
4 日本のインドネシア史研究におけるカルティニ
4―1 ナショナリズムへの関心
4―2 クロンチョン・カルティニ
4―3 カルティニの実像を求めて ――富永泰代論文
5 結びにかえて ――再評価されるカルティニ
第2章 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史
―抗米戦争期の歴史叙述 [片山須美子]
1 抗米戦争と歴史叙述
2 ナショナルヒストリーの生成
2―1 民族解放闘争史としての『ベトナム史』第1巻
2―2 雄王伝説の歴史化
2―3 ポストコロニアルの事業としての『ベトナム史』
3 ナショナルヒストリーとジェンダー
3―1 百卵伝説と雄王
3―2 兵士の詩
3―3 ハイバーチュンと雄王
3―4 『ベトナムの女性の伝統』
4 ベトナム女性史の完成
4―1 『各時代を通してのベトナムの女性』誕生の背景
4―2 「母権制」と「封建制」
4―3 植民地支配から抗米戦争へ
4―4 ベトナム女性史のその後
5 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史の残したもの
第3章 植民地史の換骨奪胎
―イブラヒム・ハジ・ヤーコブとマレー史の再構築 [左右田直規]
1 植民地的知とマレー民族意識の形成
1―1 マレー史の語り ――植民地的知の受容と再利用
1―2 マレー民族意識の形成をどう捉えるか
2 イブラヒム・ハジ・ヤーコブとその時代
2―1 生い立ち
2―2 教員養成カレッジ時代
2―3 青年マレー人連盟(KMM)の結成
2―4 日本占領期の活動
2―5 インドネシアでの日々
3 イブラヒムのマレー史叙述
3―1 マラヤのマレー人に関する現状認識 ――戦前の著作を中心に
3―2 植民地的知の伝達 ――学校教科書の中の「マレー世界」像
3―3 イブラヒムの「マレー世界」像 ――戦後の著作を中心に
4 マレー史の再構築とその帰結
第4章 「近代」をめぐるメタナラティブ
―ビルマにおける「民族医学」の確立をめぐって [土佐桂子]
1 「近代/伝統」議論の再考
2 民族医学の確立
2―1 公定の歴史としての『民族医学史』
2―2 英国植民地時代の民間医療報告書
2―3 民族医学の確立
2―4 「民族医学」確立に組み込まれない知と実践 ――「パヨーガ」とガイン
3 「合理」的言説の例 ――『法輪』
3―1 著者について
3―2 書物の構成と論旨
4 ガインの書の例 ――『パヨーガの病治療法百科』
4―1 著者について
4―2 書物の論旨
5 ナラティブにおける「近代」と「伝統」
5―1 語りの技法
5―2 認識の基盤としての西洋的知識,西洋人観
6 おわりに
第5章 古典「文学」というナラティブ
―ビルマ語仏教散文『ヤタワッダナウットゥ』が「文学」になるまで [原田正美]
1 近代ビルマを映す書物としてのビルマ語仏教散文
2 『ヤタワッダナウットゥ』の現在
2―1 書物としての『ヤタ』
2―2 文学としての『ヤタ』
3 近代期の『ヤタワッダナウットゥ』
3―1 『ヤタ』が書物になるまで
3―2 「文学」カテゴリーの創生
3―3 その後の『ヤタ』
4 再び成立当時の『ヤタワッダナウットゥ』へ
4―1 王師によって説かれた仏陀の教え『ヤタ』
4―2 『ヤタ』の誕生
4―3 近代期に起きた仏教の変化
5 近代化の中で聖と俗のはざまに揺れた仏教散文 ――むすびにかえて
第6章 出版とオランダ領東インドのイスラーム化
―インドネシア近代史叙述とイスラーム・アイデンティティ [菅原由美]
1 インドネシア近代史叙述とイスラーム
1―1 インドネシア・ナショナリズム研究
1―2 植民地体制下でのイスラーム化の様相
1―3 新資料が語るイスラームからの視点
2 19世紀後半のイスラーム化潮流
2―1 ハッジの増加
2―2 プサントレンの増加
3 東南アジア島嶼部におけるキターブの歴史
3―1 キターブの概要
3―2 キターブ出版の歴史
4 一般民衆向けキターブの誕生
4―1 ソレ・ダラットによるジャワ語キターブの執筆
4―2 一般ムスリム向けの手引き書
5 ジャワ宗教指導者が民衆に望んだ方向性 ―イスラーム純化と反オランダ
5―1 前イスラーム文化との折り合い
5―2 ムスリムとしての義務行為実践の徹底化
5―3 形式上のムスリムになることへの警告
5―4 オランダへの抵抗心
6 寄宿塾から社会へ ―キターブという媒介者
第7章 自由と不自由の境界
―シャムにおける「奴隷」と「奴隷」制度の廃止 [小泉順子]
1 タイ近代史研究における「奴隷」制度とその廃止
2 チャクリー改革期以前のタート
2―1 タート法の中のタート
2―2 公文書記録にみるタート
3 チャクリー改革期のタート
3―1 タートをめぐる新たなナラティブ
3―2 自由で自立した「雇い人」像
4 タートから雇い人へ
4―1 雇い人に対する暴力
4―2 雇い人と身分関係
4―3 雇い人契約法にみるタートと雇い人の境界
5 国際連盟と奴隷廃止
5―1 チュラーロンコーン王の偉業
5―2 国際連盟における奴隷禁止の動き
5―3 婦人及児童の売買禁止に関する国際条約と労働者
6 おわりに
第8章 前近代社会の「民族」
―エーヤーワディー流域コンバウン王国のカレン [伊東利勝]
1 民族はいつも歴史のアクターだったか?
2 シッターンにみるカレンの分布
3 地方における課税方法
4 特産物税とカレン
5 視線と自覚
6 「民主化」圧力と民族問題
あとがき
索 引
東南アジア史研究の成立と変容 ――背景
新たな視座の模索
叙述と沈黙
本書の構成
第1章 国家・英雄・ジェンダー
―カルティニ像の変遷 [小林寧子]
1 国家英雄の今昔
2 偶像化されたカルティニ
2―1 世紀転換期のジャワ
2―2 オランダの演出したカルティニ
2―3 戦前の日本で紹介されたカルティニ
3 独立インドネシアにおけるカルティニ
3―1 作家の語るカルティニ
3―2 国家の語るカルティニ
4 日本のインドネシア史研究におけるカルティニ
4―1 ナショナリズムへの関心
4―2 クロンチョン・カルティニ
4―3 カルティニの実像を求めて ――富永泰代論文
5 結びにかえて ――再評価されるカルティニ
第2章 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史
―抗米戦争期の歴史叙述 [片山須美子]
1 抗米戦争と歴史叙述
2 ナショナルヒストリーの生成
2―1 民族解放闘争史としての『ベトナム史』第1巻
2―2 雄王伝説の歴史化
2―3 ポストコロニアルの事業としての『ベトナム史』
3 ナショナルヒストリーとジェンダー
3―1 百卵伝説と雄王
3―2 兵士の詩
3―3 ハイバーチュンと雄王
3―4 『ベトナムの女性の伝統』
4 ベトナム女性史の完成
4―1 『各時代を通してのベトナムの女性』誕生の背景
4―2 「母権制」と「封建制」
4―3 植民地支配から抗米戦争へ
4―4 ベトナム女性史のその後
5 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史の残したもの
第3章 植民地史の換骨奪胎
―イブラヒム・ハジ・ヤーコブとマレー史の再構築 [左右田直規]
1 植民地的知とマレー民族意識の形成
1―1 マレー史の語り ――植民地的知の受容と再利用
1―2 マレー民族意識の形成をどう捉えるか
2 イブラヒム・ハジ・ヤーコブとその時代
2―1 生い立ち
2―2 教員養成カレッジ時代
2―3 青年マレー人連盟(KMM)の結成
2―4 日本占領期の活動
2―5 インドネシアでの日々
3 イブラヒムのマレー史叙述
3―1 マラヤのマレー人に関する現状認識 ――戦前の著作を中心に
3―2 植民地的知の伝達 ――学校教科書の中の「マレー世界」像
3―3 イブラヒムの「マレー世界」像 ――戦後の著作を中心に
4 マレー史の再構築とその帰結
第4章 「近代」をめぐるメタナラティブ
―ビルマにおける「民族医学」の確立をめぐって [土佐桂子]
1 「近代/伝統」議論の再考
2 民族医学の確立
2―1 公定の歴史としての『民族医学史』
2―2 英国植民地時代の民間医療報告書
2―3 民族医学の確立
2―4 「民族医学」確立に組み込まれない知と実践 ――「パヨーガ」とガイン
3 「合理」的言説の例 ――『法輪』
3―1 著者について
3―2 書物の構成と論旨
4 ガインの書の例 ――『パヨーガの病治療法百科』
4―1 著者について
4―2 書物の論旨
5 ナラティブにおける「近代」と「伝統」
5―1 語りの技法
5―2 認識の基盤としての西洋的知識,西洋人観
6 おわりに
第5章 古典「文学」というナラティブ
―ビルマ語仏教散文『ヤタワッダナウットゥ』が「文学」になるまで [原田正美]
1 近代ビルマを映す書物としてのビルマ語仏教散文
2 『ヤタワッダナウットゥ』の現在
2―1 書物としての『ヤタ』
2―2 文学としての『ヤタ』
3 近代期の『ヤタワッダナウットゥ』
3―1 『ヤタ』が書物になるまで
3―2 「文学」カテゴリーの創生
3―3 その後の『ヤタ』
4 再び成立当時の『ヤタワッダナウットゥ』へ
4―1 王師によって説かれた仏陀の教え『ヤタ』
4―2 『ヤタ』の誕生
4―3 近代期に起きた仏教の変化
5 近代化の中で聖と俗のはざまに揺れた仏教散文 ――むすびにかえて
第6章 出版とオランダ領東インドのイスラーム化
―インドネシア近代史叙述とイスラーム・アイデンティティ [菅原由美]
1 インドネシア近代史叙述とイスラーム
1―1 インドネシア・ナショナリズム研究
1―2 植民地体制下でのイスラーム化の様相
1―3 新資料が語るイスラームからの視点
2 19世紀後半のイスラーム化潮流
2―1 ハッジの増加
2―2 プサントレンの増加
3 東南アジア島嶼部におけるキターブの歴史
3―1 キターブの概要
3―2 キターブ出版の歴史
4 一般民衆向けキターブの誕生
4―1 ソレ・ダラットによるジャワ語キターブの執筆
4―2 一般ムスリム向けの手引き書
5 ジャワ宗教指導者が民衆に望んだ方向性 ―イスラーム純化と反オランダ
5―1 前イスラーム文化との折り合い
5―2 ムスリムとしての義務行為実践の徹底化
5―3 形式上のムスリムになることへの警告
5―4 オランダへの抵抗心
6 寄宿塾から社会へ ―キターブという媒介者
第7章 自由と不自由の境界
―シャムにおける「奴隷」と「奴隷」制度の廃止 [小泉順子]
1 タイ近代史研究における「奴隷」制度とその廃止
2 チャクリー改革期以前のタート
2―1 タート法の中のタート
2―2 公文書記録にみるタート
3 チャクリー改革期のタート
3―1 タートをめぐる新たなナラティブ
3―2 自由で自立した「雇い人」像
4 タートから雇い人へ
4―1 雇い人に対する暴力
4―2 雇い人と身分関係
4―3 雇い人契約法にみるタートと雇い人の境界
5 国際連盟と奴隷廃止
5―1 チュラーロンコーン王の偉業
5―2 国際連盟における奴隷禁止の動き
5―3 婦人及児童の売買禁止に関する国際条約と労働者
6 おわりに
第8章 前近代社会の「民族」
―エーヤーワディー流域コンバウン王国のカレン [伊東利勝]
1 民族はいつも歴史のアクターだったか?
2 シッターンにみるカレンの分布
3 地方における課税方法
4 特産物税とカレン
5 視線と自覚
6 「民主化」圧力と民族問題
あとがき
索 引