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微生物生態学

ゲノム解析からエコシステムまで

デイビッド・L・カーチマン/永田 俊 訳

A5判上製, 648 pages

ISBN: 9784814000470

pub. date: 09/16

  • Price : JPY 5,300 (with tax: JPY 5,830)
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内容

全球一次生産の約半分を担い、生物圏の全呼吸量の半分以上を占めると言われる微生物。地球上で最も数が多く、多様性にあふれる彼らの世界を、微生物が関わる“プロセス”を軸に体系化。陸域および水域の、またウィルスから細菌、古細菌、原生生物、藻類、菌類まで主要な微生物グループを網羅し、環境中で重要な役割を果たす微生物代謝や群集動態、環境影響について丁寧に論じる。生物情報科学の発展による最先端の知見も紹介され、研究者や実務家の参考書としても必備の一冊。

プロフィール

著者略歴
デイビッド・L・カーチマン(David L. Kirchman)
デラウェア大学教授(School of Marine Science and Policy)
ハーバード大学大学院(環境工学)で Ph D を取得後、ジョージア大学研究員、シカ後大学研究員、デラウェア大学助教授、同准教授を経て 1992 年から現職。編著書に “Microbial Ecology of the Oceans” John Wiley and Sons, “Microbial Ecology of the Oceans, Second edition” Wiley-Liss。

訳者略歴
永田 俊(ながた とし)
東京大学教授(大気海洋研究所) 京都大学大学院(理学研究科)で理学博士の学位を取得後、デラウェア大学研究員、名古屋大学助手、 東京大学助教授、京都大学教授を経て 2008 年から現職。編著書に『流域環境評価と安定同位体 — 水循環から生態系まで』京都大学学術出版会、『温暖化の湖沼学』京都大学学術出版会。

目次

序言
日本語版のための序文
訳者はしがき

Chapter 1 イントロダクション

微生物とは何か?
なぜ微生物生態学を研究するのか
  微生物は人間を含めた大型生物の病気の原因になる
  私たちの食糧の多くは微生物に依存する
  微生物は汚染物質を分解し無毒化する
  微生物は生態学や進化学の一般原理を研究するうえでの有用なモデル・システムになりうる
  ある種の微生物は地球の初期に現れた生命や、もしかしたら地球以外の惑星の生命の姿を示している
  微生物は地球の気候に影響を及ぼす多くの生物地球化学的プロセスを媒介する
  微生物はどこにでもいて、ほとんどあらゆることをやっている
自然界の微生物をどのようにして研究するのか?
生命の 3ドメイン:細菌、古細菌、真核生物
微生物の機能群(functional group)
  独立栄養 vs 従属栄養
  光栄養 vs 化学栄養
関連する教科書の紹介

Chapter 2 元素、生化学物質、および微生物の構造

微生物の元素組成
生物地球化学研究における元素比
さまざまな微生物の C:N および C:P 比
細菌の生化学的組成
真核微生物の生化学的組成
元素比を説明する
微生物細胞の構造
  微生物の細胞膜と能動輸送
  原核生物と真核生物の細胞壁
バイオマーカーとしての微生物細胞の構成成分
細胞外の構造
  微生物の細胞外ポリマー
  鞭毛と繊毛

Chapter 3 物理化学環境と微生物


温度
  反応速度に対する温度の影響
pH
塩と浸透圧バランス
酸素と酸化還元ポテンシャル

圧力
「小さく在る」ことの帰結
自然水圏環境における微生物の暮らし
  運動性と走性
  水圏環境における Submicron および micron スケールでの不均一性
土壌での微生物の生活
  土壌の含水量
  土壌における温度と含水量の相互作用
バイオフィルム環境

Chapter 4 微生物の一次生産と光栄養

一次生産と光合成の基礎
  光と藻類の色素
  無機炭素の輸送
  二酸化炭素固定酵素
一次生産、総生産、純生産
陸上高等植物による一次生産と水圏微生物
春のブルームと植物プランクトンの増殖
ブルームを引き起こす主な植物プランクトン
  珪藻
  円石藻と生物ポンプ
  フェオシスティスと硫化ジメチル
  ジアゾ栄養糸状シアノバクテリアおよびその他の群体性シアノバクテリア
ブルームの後:ピコプランクトンとナノプランクトン
  制限栄養素をめぐる競争
球状シアノバクテリアによる一次生産
海洋における光従属栄養
  藻類による有機物の取り込み
  好気的酸素非発生型光合成細菌
  光従属栄養細菌におけるロドプシン
  光従属栄養の生態学的および生物地球化学的なインパクト

Chapter 5 有機物の分解

さまざまな生態系における有機物の無機化
地球上の呼吸の大部分はだれによってなされているのか?
  炭素循環における速い経路と遅い経路
デトリタス有機物の化学的特性
  溶存有機物
デトリタス食物網
DOM と微生物ループ
高分子有機化合物の加水分解
  リグニンの分解
低分子有機化合物の取り込み:回転とリザーバーの大きさ
化学組成と有機物分解
無機栄養物質の放出とその制御
有機物の光酸化
難分解性有機物

Chapter 6 微生物の増殖、現存量、生産、および、それらの支配要因

細菌は生きているのか死んでいるのか?
  土壌や堆積物における細菌の活性状態
  土壌菌類の活性状態
微生物の増殖と生産
  実験室内での純粋培養の増殖:回分培養
  実験室内での純粋培養の増殖:連続培養
自然界での増殖と生産の測定
水圏環境中での細菌の生産速度
  水圏環境における細菌の増殖速度
土壌における細菌と菌類の増殖
自然環境中において微生物の生産と増殖を決めるものは何か?
  増殖と炭素循環に対する温度の影響
  土壌の菌類と細菌に対する温度の効果
  有機炭素による制限
 無機栄養物による制限
  共制限と支配要因間の相互作用
生物間の競争と化学コミュニケーション

Chapter 7 摂餌と原生生物

水圏環境における細菌食と植食
土壌や堆積物中での細菌や菌類の摂餌者
原生生物の摂餌メカニズム
摂餌に影響を及ぼす要因
  餌の数と摂餌者—餌サイクル
  摂餌者と餌のサイズの関係
  化学的認識と組成
摂餌に対する防衛
摂餌が餌生物の増殖に及ぼす影響
繊毛虫と渦鞭毛藻の摂餌
  水圏生態系の植食者としての繊毛虫
  土壌や堆積物中の繊毛虫
  従属栄養渦鞭毛藻
微生物食物網から高次栄養段階へのフラックス
混合栄養原生生物と内部共生
  食作用、細胞内共生、藻類の進化

Chapter 8 ウィルスの生態学

ウィルスとは何か
ウィルスの複製
自然環境中の溶原性ウィルス
分子スケールにおける宿主とウィルスの接触
自然環境中におけるウィルス数
  プラーク法によるウィルス計数
  顕微鏡によるウィルスの計数
  自然環境中でのウィルス数の変動
ウィルスによる細菌の死亡
  感染頻度
  ウィルス減少法
細菌死亡率に対するウィルスと摂餌者の寄与
ウィルス生産速度と回転時間
ウィルスの不活化と消失
植物プランクトンのウィルス
ウィルスと摂餌者の生態学的な役割の違い
  ウィルス分流と DOM 生産
  ウィルスとその宿主の個体群動態
ウィルスが媒介する遺伝的交換

Chapter 9 自然環境中における微生物の群集構造

分類学と遺伝子による系統学
  16S rRNA に基づく方法の紹介
種の問題
細菌群集の多様性
プランクトンのパラドックス
培養された微生物と培養されていない微生物の違い
土壌、淡水および海洋における細菌の種類
非極限環境の古細菌
Everything is everywhere?(すべてのものが、どこにでも?)
何が多様性のレべルと細菌群集構造を支配するか
  温度、塩分、pH
  湿度と土壌微生物群集
  有機物と一次生産
  摂餌とウィルスによる溶菌
16S rRNAを分類および系統遺伝的なツールとして用いることの問題点
原生生物やその他の真核生物の群集構造
  自然環境中における原生生物とその他の真核微生物の種類
プロセスの理解と群集構造の関連

Chapter 10 微生物とウィルスのゲノムおよびメタゲノム

ゲノム解析あるいは環境ゲノム解析とは何か
ゲノムの塩基配列をゲノム情報に変える
培養された微生物からの教訓
  rRNA 遺伝子の類似性・ゲノムの非類似性
  ゲノムサイズ
  真核生物と原核生物のゲノム構成
  増殖速度とゲノム解析
  染色体、プラスミド、レプリコン
  遺伝子水平伝播
培養されていない微生物のゲノム情報:メタゲノム解析
  メタゲノム解析法
  プロテオロドプシン物語その他
酸性鉱山廃水中の単純な群集のメタゲノム解析
メタゲノム解析と活性スクリーニングから得られる有用化合物
メタ RNA 発現解析とメタプロテオミクス
  プロテオミクスとメタプロテオミクス
ウィルスのメタゲノム解析
  RNA ウィルス

Chapter 11 嫌気的環境におけるプロセス

嫌気呼吸とは
電子受容体の順番
さまざまな電子受容体による有機炭素の酸化
 濃度と供給による制約
  化学形態の影響
嫌気食物連鎖
  発酵
  種間水素伝達と栄養共生
硫酸還元
  硫酸還元の電子供与体
硫黄酸化とそれ以外の硫黄循環
  非光栄養硫黄酸化
  酸素非発生型光合成による硫化物の酸化
  硫黄酸化細菌の炭素源
メタンとメタン生成
メタン栄養細菌
  好気的メタン分解
  嫌気的メタン酸化
嫌気性真核生物

Chapter 12 窒素循環

窒素固定
  ニトロゲナーゼ・窒素固定のための酵素
  酸素問題の解決
  自然環境中での窒素固定
  窒素固定の制限要因
アンモニウムの同化、再生およびフラックス
  嫌気環境中でのアンモニウムの排出
  アンモニウムの取り込み、排出、不動化および可動化
アンモニア酸化、硝酸イオンの生成、および硝化
  細菌による好気的アンモニア酸化
  古細菌によるアンモニア酸化
  好気的アンモニア酸化の支配要因
硝化の第二段階としての亜硝酸酸化
嫌気的アンモニア酸化
異化的硝酸還元と脱窒
  異化的硝酸還元によるアンモニウム生成
脱窒対アナモックス
一酸化二窒素の発生源と吸収源
N 損失と窒素固定のバランス

Chapter 13 地球微生物学への招待

細胞表面電荷、金属吸着および微生物付着
  金属吸着
  シデロフォアやその他の金属リガンドに媒介された鉄の取り込み
表面への微生物の付着
微生物によるバイオミネラリゼーション
  炭酸塩鉱物
  リン鉱物
  酵素が関与しないプロセスを介しての鉄鉱物の生成
  磁鉄鉱と走磁性細菌
マンガン酸化細菌および鉄酸化細菌
  鉄酸化
  マンガン酸化細菌
微生物による風化と鉱物の溶出
  酸および塩基の生成による溶解
  低分子および高分子リガンドによる溶解
化石燃料の地球微生物学

Chapter 14 共生と微生物

脊椎動物を住処とする微生物
微生物と昆虫の共生
  シロアリの微生物共生者
  アブラムシとブフネラの共生
  アリと菌類の共生関係
海洋の無脊椎動物に見られる共生微生物
  ガラパゴスハオリムシの内部共生者とその他の硫黄酸化共生微生物
  海洋における生物発光共生微生物
微生物—植物共生
  ジアゾ栄養細菌と植物の共生
  菌類と植物の共生
結語

参考文献
索引(事項・生物名)
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