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アフリカ潜在力 3

開発と共生のはざまで

国家と市場の変動を生きる

太田 至 シリーズ総編集/高橋基樹・大山修一 編

A5上製, 430 pages

ISBN: 9784814000074

pub. date: 03/16

  • Price : JPY 3,900 (with tax: JPY 4,290)
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推薦

【推薦】松本仁一氏(元朝日新聞編集委員)
貧困や混乱が続くアフリカ。一方で資源ブームと成長のイメージで語られるアフリカ。両極端の状況のなかで人びとはどのような暮らしを送っているのか。本書が生きいきと描き出しているのは,変化に直面するアフリカの人びとが開発の担い手となり,ときには格差の拡大をくいとめ,しなやかに共生を実現しようとする姿である。

内容

一次産品ブームによる成長や格差の拡大,開発の活発化……これらは自ずと,土地や資源を巡る対立に結びつく。ならば,アフリカは大小の紛争だらけなのか? いやほとんどの地域で,人々は時にぶつかり合いつつも共存している。日常的な対立や調整の現場から,アフリカの人々の交渉力・調整力の特徴を見い出し,紛争を回避する知恵を探る。

書評

『アフリカレポート』2017年 No.55、114頁、評者:津田みわ氏
『アジア・アフリカ地域研究』2017 No.17-1、125-128頁、評者:辻村英之氏

プロフィール

荒木美奈子(あらき みなこ)
お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系・准教授.
イースト・アングリア大学大学院開発研究研究科博士後期課程修了,Ph.D.(開発研究)。
主な著書に,『アフリカ地域研究と農村開発』(京都大学学術出版会,共著),『開発援助と人類学』(明石書店,共著),『グローバル文化学』(法律文化社,共著)など。

池野 旬(いけの じゅん)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
主な著書に,『ウカンバニ―東部ケニアの小農経営―』(アジア経済研究所),『アフリカの食糧問題』(アジア経済研究所,共著),『アフリカのインフォーマル・セクター再考』(アジア経済研究所,共編著),『アフリカ農村像の再検討』(アジア経済研究所,編著),『アフリカ農村と貧困削減―タンザニア 開発と遭遇する地域―』(京都大学学術出版会)。

上田 元(うえだ げん)
一橋大学大学院社会学研究科・教授
一橋大学大学院社会学研究科博士前期課程修了,ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン地理学部博士課程修了,博士(Ph.D)。
主な著作に,『山の民の地域システム―タンザニア農村における場所・世帯・共同性』(東北大学出版会),『資源と生業の地理学』(海青社,共著),『現代アフリカ農村と公共圏』(アジア経済研究所,共著)など。

大山修一(おおやま しゅういち)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了,博士(人間・環境学)。主な著書に,『西アフリカ・サヘルの砂漠化に挑む―ごみ活用による緑化と飢餓克服,紛争予防』(昭和堂)など。

小川さやか
立命館大学先端総合学術研究科・准教授。
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・指導認定退学,博士(地域研究)。
主な著作『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』世界思想社など。

高橋基樹(たかはし もとき)
神戸大学大学院国際協力研究科・教授
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院修了(国際関係論修士)
主な著書に,『開発と国家―アフリカ政治経済論序説―』(勁草書房,2010年,単著),『現代アフリカ経済論』(ミネルヴァ書房,2014年,共編著),『開発を問い直す―転換する世界と日本の国際協力―』(日本評論社,2011年,共編著)など。

西浦昭雄(にしうら あきお)
創価大学学士課程教育機構・教授
創価大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(経済学)。
主な著書に,『南アフリカ経済論―企業研究からの視座』(日本評論社),『アフリカから学ぶ』(有斐閣,共著),『貧困削減戦略再考』(岩波書店,共著)など。

長谷川将士(はせがわ まさし)
神戸大学大学院国際協力研究科修了(修士(国際学))。

福西隆弘(ふくにし たかひろ)
日本貿易振興機構・アジア経済研究所・地域研究センター・主任研究員
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院経済学研究科博士課程修了,Ph.D. (Economics)
主な著作に,Delivering Sustainable Growth in Africa: African Farmers and Firms in a Changing World, Palgrave Macmillan (2014年,編著),The Garment Industry in Low-Income Countries: An Entry Point of Industrialization, Palgrave Macmillan (2014年,共編著)。

八塚春名(やつか はるな)
日本大学国際関係学部・助教
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了,博士(地域研究)。主な著作に,『タンザニアのサンダウェ社会における環境利用に関する研究―狩猟採集社会の変容への一考察』(松香堂)。

山田肖子(やまだ しょうこ)
名古屋大学大学院国際開発研究科・教授
インディアナ大学教育学研究科博士課程修了(Ph.D.,教育学,アフリカ研究)
主な著書に,『国際協力と学校―アフリカにおけるまなびの現場』(創成社,2009年,単著),『ガーナを知るための47章』(明石書店,2011年,共編著),『アフリカのいまを知ろう』(岩波書店,2008年,単編著)など。

目次

序章 アフリカの変動、そして開発と共生に向けた潜在力 [高橋基樹・大山修一]
   1 アフリカの人びとの潜在力と三つの変化―資源の希少化・多様化、市場の浸透、国家の形成
   2 アフリカの変動と潜在力を捉える枠組み
   3 各章の概要

第1部 資源を生かす

第1章 ワークフェアと貧困・飢餓対策―サヘル農村における労働対価の援助プロジェクト [大山修一]
   1 ワークフェアとは何か?―経済格差の是正と貧困削減
   2 ニジェールの農業気象―国土の大部分を占める砂漠
   3 干ばつと飢餓、そしてボコ・ハラム―サヘル諸国の厳しい政治環境
   4 国際支援の重要性―ニジェールの不安定な食料生産
   5 ニジェールにおけるワークフェア―砂漠化対策と食料支援
   6 農村内の大きな経済格差と飢える人びと
   7 「ハルクキ」―ハウサ農村の生活論理
   8 ニジェール農村におけるワークフェアと住民生活
   9 ワークフェアの目標設定の重要性
   10 住民の力―厳しい現実を乗り越えるために
第2章 農村世帯の独立自営と協調行動―北部タンザニア都市近郊農村の水資源利用の軌跡から [池野 旬]
   1 変わりゆく農村景観
   2 調査地の概要
   3 乾季灌漑作の消長
   4 自主水道整備事業の盛衰
   5 対立を回避し共生するための転回
第3章 内発的な開発実践とコモンズの創出
    ―タンザニアにおける水資源利用をめぐる対立と協働に着目して [荒木美奈子]
   1 水資源のもつ二つの顔
   2 水資源を生かした開発実践とさまざまなアクター
    (一)マテンゴ高地の「在来性のポテンシャル」と水力製粉機建設
    (二)住民組織の形成
    (三)水力製粉機事業からマイクロ水力発電事業への展開
    (四)「共的領域」での電化の意味
   3 水資源の利用をめぐる対立と争いの火種
    (一)農村電化フェイズⅡへの取り組みと「潜在力」としての人的ネットワーク
    (二)「私的領域」での電化の課題
    (三)流域での水資源利用と環境保全をめぐる対立の火種
    (四)水資源をめぐる住民・行政間の齟齬
   4 水資源をめぐる「協治」に向けて
第4章 井戸待ち行列にみる村落自助集団の秩序
    ―ケニアにおける水セクター改革と受益者負担の持続性 [上田 元]
   1 生活用水をめぐる共生と「潜在力」
   2 文脈
    (一)水セクター改革と村落自助用水集団/(二)行列をめぐる既存の研究
   3 旧スバ県の事例井戸
    (一)地域概況/(二)掘り抜き井戸のローカル・ガバナンス
   4 語られた用水規則の変遷
   5 待ち時間の長さと規則変化
    (一)観察/(二)シミュレーション
   6 待ち行列における相互作用
   7 柔軟な用水秩序の今後

第2部 市場に生きる

第5章 企業と農民の信頼関係の「脆さ」を越えて
    ―ウガンダにおけるビール会社と小農との新しい社会的結合 [西浦昭雄]
   1 アフリカで生じている変化―企業と農家の新たな関係
   2 アフリカのビール産業と原料の現地調達化の進展
    (一)アフリカにおける契約栽培とその議論/(二)東アフリカにおけるビール産業
    (三)ウガンダ・ビール会社における原料の現地調達化
   3 ウガンダ東端地域におけるビール会社と大麦農家の事例
    (一)大麦の契約栽培化の促進(二〇〇五年~二〇一〇年)
    (二)契約栽培の危機と共生への模索(二〇一一年~二〇一四年)
   4 加工会社と生産者との間の「共生に向けた潜在力」を考える ―ウガンダ東端地域の事例から
第6章 グローバル化と都市労働者―マダガスカルにおけるインフォーマルセクターの役割 [福西隆弘]
   1 はじめに―都市労働者のリスク
   2 アンタナナリボの労働市場
    (一)労働市場の概要/(二)縫製産業における雇用
   3 政変後の離職とその後の就業状況
    (一)雇用の減少/(二)離職の実態
   4 インフォーマルセクターの有効性
    (一)インフォーマルセクターのモデル/(二)離職者の就業状況/(三)離職による所得変化
    (四)親族ネットワークによるリスクシェア
   5 おわりに―セーフティネットとしてのインフォーマルセクター
第7章 路上空間から情報コミュニケーション空間をめぐるコンフリクトへ
    ―タンザニアの路上商人を事例に [小川さやか]
   1 はじめに
   2 路上商人暴動と自主的な空間管理
    (一)路上商人暴動の変容/(二)路上空間の自主的な管理
   3 都市再開発と路上空間の変質
    (一)路上商売が可能な場所の狭隘化/(二)商店街のインフォーマル化
   4 携帯電話を通じた都市空間の変容
    (一)タンザニアにおける携帯の普及/(二)送金サービス―エム・ペサ
   5 商慣行の変容と郊外への移動
    (一)郊外の市場へ移動できない理由/(二)携帯による商慣行の変化
   6 情報コミュニケーション空間におけるコンフリクト
   7 おわりに

第3部 国家と生きる

第8章 外生の変容をかわす生業戦略の柔軟性―タンザニアの狩猟採集民と多民族国家 [八塚春名]
   1 観光や農耕に従事する狩猟採集民
   2 タンザニアにおけるハッツァとサンダウェの位置づけ
   3 ハッツァとサンダウェの外部社会との関係史
    (一)近隣民族との関係/(二)国家の干渉
   4 誇張されるハッツァと目立たないサンダウェ―生業変容とその結果
   5 主張を拡げるハッツァと主張しないサンダウェ―先住民運動への参加
   6 柔軟性を生かした「共生」へ向けて
第9章 教科書に見る民主主義と多文化共生―エチオピア連邦民主共和国における市民性教育 [山田肖子]
   1 序論―エチオピアにおける市民性教育と共生
   2 教育セクター開発計画(ESPD)と国際的影響
   3 「市民性及び道徳教育」のカリキュラムの変遷
    (一)三つのカリキュラム期の特徴と展開/(二)二〇一〇年教科書改訂プロセスでの議論
   4 教科書の内容分析から見るエチオピアの市民性教育の特徴
    (一)分析手法/(二)三つのカリキュラム期を通じた教科書で提示された価値観の変遷
    (三)個人や多文化共生への配慮/(四)学習者中心の教授法の導入
   5 市民性教育のエチオピア的特徴―定性的内容分析の結果
    (一)紛争をコントロールし、権力濫用を抑制するための民主主義の役割
    (二)国際的従属性
   6 結論―教科書が語る国民としての共生への潜在力
第10章 国民統合、政治暴力、そして生活世界―ケニア農村における紛争と共生 [高橋基樹・長谷川将士]
   1 はじめに―見果てぬ夢としての国家の建設?
   2 ケニアの歴史と民族―旧リフトバレー州を中心に
    (一)植民地支配とその民族と土地に与える影響/(二)マジンボ主義の封印とキクユ支配体制
    (三)モイ体制の成立とカレンジン
   3 リフトバレーにおける紛争
    (一)複数政党制移行後の紛争/(二)選挙後暴力の前夜の政治情勢と旧リフトバレー州
    (三)選挙後暴力の展開とウアシン・ギシュ/(四)選挙後暴力およびその後とカレンジンの人びと
   4 襲撃した村と襲撃された村
    (一)襲撃した村と襲撃された村―対象村と調査の概要
    (二)二つの村における人びとと暮らしのあり方
    (三)土地権利の保障に関する人びとの認識
    (四)政治家の責任と民族等との関係についての人びとの認識
    (五)他の民族への支援について
   5 人びとにとっての国家、民族、および紛争―暫定的考察
   6 結びにかえて―共生に向けた人びとの潜在力と現代ケニア
終章 開発と共生に向けたアフリカの潜在力とは―変化のしなやかな担い手としての人びと [高橋基樹・大山修一]
   1 グローバル化とアフリカの人びとの暮らし
   2 浸透しつつある市場経済とアフリカの人びと
   3 形成途上の国家との間の空隙と人びとの営み
   4 資源、市場、国家と人びとの潜在力―変化のしなやかな担い手として
   5 開発と共生に向けた潜在力のゆくえ

索引
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