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プリミエ・コレクション 124

カントの道徳的人間学

性格と社交の倫理学

高木 裕貴

A5上製・420頁

ISBN: 9784814004706

発行年月: 2023/03

  • 本体: 4,800円(税込 5,280円
  • 在庫あり
 
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内容

カント晩年の著作『人間学』をどのように評価するか。「なんじなすべし」という厳格な定言的命法に支えられたカントの道徳形而上学は、妥協を許さないような性格をもつが、一方には現実味のある人間学がある。本書は道徳的人間学を、道徳形而上学と人間学との邂逅点とする視点に立ち、カントの豊かな人間味あふれる社交の倫理学を描き出す。

受賞

日本倫理学会 令和5年度和辻賞

プロフィール

髙木裕貴(たかき ゆうき)

1990年兵庫県生まれ。2022年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、立命館大学非常勤講師。専門は、カント哲学、倫理学など。

主な論文
“The problem of moral enhancement according to Persson and Savulescu's theory"(Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine, No 16, 2022)、「カント社交論における遊びとしての談話と議論」(『アルケー:関西哲学会年報』第29号、2021年)、「「美と崇高の感情に関する考察」(1764年)における感情の位置づけ:カント前批判期の道徳哲学に関する一探求」(『実践哲学研究』第43号、2020年)、「誠実、社交、そして信頼:カントの性格形成論」(『倫理学研究』第50号、2020年)など。

目次

  凡 例

序論 問題設定

第1章 道徳的人間学への展望
 はじめに
 第1節 道徳形而上学としての道徳哲学
 第2節 カント道徳哲学への批判
 第3節 道徳的人間学としての道徳哲学
 第4節 著作としての『人間学』
 第5節 補論 ――『教育学』の問題
 おわりに

第2章 性格基礎論
 はじめに
 第1節 晩年期における性格概念を特徴づける
  1・1 格率とは何か
  1・2 性格とは何か
 第2節 性格と道徳
  2・1 非道徳的解釈
  2・2 道徳的解釈
  2・3 一見した矛盾を解決する
  2・4 矛盾の解決は意味をなすか
 第3節 性格と尊厳
  3・1 『基礎づけ』における尊厳論
  3・2 『人間学』における尊厳論
  3・3 二つの尊厳論を両立的に解釈する
 第4節 性格と徳
 第5節 補論 ――二元論的性格概念
  5・1 『純粋理性批判』における性格概念
  5・2 『宗教論』における性格概念
  5・3 『宗教論』における性格形成論
 おわりに

第3章 性格形成論
 はじめに
 第1節 性格と従順
 第2節 性格と誠実性
 第3節 自分で考えるとはどういうことか
 第4節 啓蒙と先入見
 第5節 自分で考えることと他者と共に考えること
 第6節 性格の三つの格率
 おわりに
コラム⑴ 社交家カント

第4章 社交論
 はじめに
 第1節 理性の公的使用論
 第2節 『普遍史の理念』における非社交的社交性論
 第3節 『宗教論』における非社交的社交性論
 第4節 『人間学』における社交論
 第5節 談話と議論の緊張関係
 第6節 遊びとしての議論
 おわりに
コラム⑵ 社交論の歴史 ――ドイツ編

第5章 礼儀作法論
 はじめに
 第1節 『人間学』における礼儀作法論
 第2節 『道徳形而上学』における礼儀作法論
 第3節 世間的怜悧としての礼儀作法
 第4節 許された道徳的仮象としての礼儀作法
 第5節 欺瞞と錯覚
 第6節 自己の道徳化
  6・1 二重の欺瞞の例
  6・2 二重の欺瞞としての礼儀作法
  6・3 『美と崇高論』における礼儀作法論
  6・4 『コリンズ道徳哲学』の問題
 第7節 他者の道徳化
  7・1 『純粋理性批判』における礼儀作法論
  7・2 錯覚しない人物(1)
  7・3 錯覚しない人物(2)
  7・4 美の仮象としての礼儀作法
  7・5 補論 ――『ヴィギランティウス道徳形而上学』より
 おわりに
コラム⑶ 社交論の歴史 ――イギリス編

第6章 信頼論
 はじめに
 第1節 カントの問題意識
 第2節 予備的考察
  2・1 飲酒によってもたらされる率直さ
  2・2 メンバーの厳選
 第3節 徳論における友情論
 第4節 徳の義務としての信頼
 第5節 道徳哲学講義における友情論
  5・1 『コリンズ道徳哲学』における友情論
  5・2 『ヴィギランティウス道徳形而上学』における友情論
 第6節 信頼論の三つのテキスト
  6・1 『「永遠平和論」準備原稿』における信頼論
  6・2 『永遠平和論』における信頼論
  6・3 『人間学』における信頼論
 第7節 感性的信頼の可能性
  7・1 愛の義務
  7・2 尊敬の義務
  7・3 感性的信頼の限界
 第8節 怜悧としての信頼
 第9節 信頼と信仰
 おわりに
コラム⑷ 社交嫌いの哲学者 ――ショーペンハウアー

結論 道徳的人間学の意義
 第1節 性格論と社交論
 第2節 性格論・社交論と道徳的人間学
 第3節 道徳的人間学と道徳形而上学
 第4節 本書の残された課題

  あとがき
  初出論文一覧
  参考文献表
  英文要約
  索 引
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