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ものの人類学

床呂郁哉・河合香吏 編

菊上製・406頁

ISBN: 9784876989966

発行年月: 2011/03

  • 本体: 4,200円(税込 4,620円
  • 在庫なし


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内容

人を動かすのはモノである。だからこそ、いわゆる物質文化研究ではない、真に【モノを主人公にした】人間中心主義を 越えた人類社会論を構 築するのだ。熟練の逆説/ものの介入/記号的なものの物質性/アフォーダンス等々——音や会話といった事象をも対象に斬新な方法・ 視点と溌剌とした議論で、新しい人類学を拓く秀作。

プロフィール

【執筆者紹介】
今堀恵美(いまほり えみ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニアフェロー
東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得退学,博士(社会人類学)
主な著書に,「持参財を飾る刺繍,販売する刺繍:ウズベキスタン・ショーフィルコーン地区のカシュタ制作を事例に」(『国立民族学博物館調査報告78 ポスト社会主義・人類学の射程』),「市場経済におけるカシュタチ(刺繍屋)事業の誕生:ウズベキスタン・ショーフィルコーン地区の事例から」(『社会人類学年報』32)など.

岩谷彩子(いわたに あやこ)
広島大学大学院社会科学研究科准教授
1972年生まれ.京都大学大学院人間・環境学研究科修了,博士(人間・環境学).
主な著書に,『夢とミメーシスの人類学:インドを生き抜く商業移動民ヴァギリ』(明石書店),『映像と宗教』(せりか書房,共編著),『はじまりとしてのフィールドワーク:自分がひらく,世界が変わる』(昭和堂,共著)など.

印東道子(いんとう みちこ) 
国立民族学博物館教授(総合研究大学院大学教授兼任)
ニュージーランド国立オタゴ大学人類学科博士課程終了,Ph. D.
主な著書に,『オセアニア 暮らしの考古学』(朝日選書,朝日新聞社),『オセアニア学』(京都大学学術出版会,共編著),『イモとヒト:人間の生存を支えた根菜農耕』(平凡社,共編著)『環境と資源利用の人類学』(明石書店,編著),など.

内堀基光(うちぼり もとみつ)
放送大学教授
1948年生まれ.オーストラリア国立大学太平洋地域研究所博士研究課程修了,Ph. D.
主な著書に,『死の人類学』(講談社学術文庫,共著),『森の食べ方』(東京大学出版会),『論集 資源人類学』全9巻(弘文堂,総合編者)など.

金子守恵(かねこ もりえ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科助教(特任)
1974年生まれ.京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了,地域研究博士.
主な著書に,『土器つくりの民族誌』(昭和堂),『身体資源の共有』(弘文堂,共著),『土器の民族考古学』(同成社,共著)など.

河合香吏(かわい かおり)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『野の医療:牧畜民チャムスの身体世界』(東京大学出版会),『生きる場の人類学:土地と自然の認識・実践・表象過程』(京都大学学術出版会,編著),『集団:人類社会の進化』(京都大学学術出版会,編著)など.

窪田幸子(くぼたさちこ)
神戸大学大学院国際文化学研究科教授
1959年生まれ.甲南大学大学院博士課程後期課程単位取得退学,博士(社会学)
主な著書に,『アボリジニ社会のジェンダー人類学:先住民・女性・社会変化』(世界思想社),『「先住民」とはだれか』(世界思想社,編著),『多文化国家の先住民:オーストラリア・アボリジニの現在』(世界思想社,共編著),『社会変容と女性』(ナカニシヤ出版,共編著)など.

黒田末寿(くろだ すえひさ)
滋賀県立大学人間文化学部教授
1947年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『ピグミーチンパンジー:未知の類人猿』(筑摩書房・以文社),『人類進化再考:社会生成の考古学』(以文社),『自然学の未来:自然との共感』(弘文堂),『アフリカを歩く:フィールドノートの余白に』(以文社,共編著)など.

湖中真哉(こなか しんや)
静岡県立大学国際関係学部准教授
1965年生まれ.筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得退学,京都大学博士(地域研究).
主な著書に,『牧畜二重経済の人類学:ケニア・サンブルの民族誌的研究』(世界思想社),『食糧と人間の安全保障』(大阪大学GLOCOL,共著),『資源人類学 第4巻 小生産物の鼓動と躍動』(弘文堂,共著)など.

小松かおり(こまつ かおり)
静岡大学人文学部准教授
1966年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,京都大学博士(理学).
主な著書に,『沖縄の市場〈マチグヮー〉文化誌』(ボーダーインク),『森棲みの生態誌』(京都大学学術出版会,共著)など.

佐藤純子(さとう じゅんこ)
大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員
1968年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学,社会調査法修士
エジンバラ大学大学院社会政治研究科
主な著作に,"Workers' Conceptions of Decent Work: A Case of Female Workers' Identities and Better Conditions of Work's"(『日本財団APIフェローシップワーキングペーパー2005—2006』).

菅原和孝(すがわら かずよし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
1949年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『感情の猿=人』(弘文堂),『ブッシュマンとして生きる:原野で考えることばと身体』(中央公論新社),『ことばと身体:「言語の手前」の人類学』(講談社)など.

田中雅一(たなか まさかず)
京都大学人文科学研究所教授
1955年生まれ.ロンドン大学経済政治学院人類学博士課程,Ph.D.(Anthropology)
主な著書に,『供犠世界の変貌:南アジアの歴史人類学』(法藏館),『フェティシズム研究』(全3巻)(京都大学学術出版会,編著),『癒しとイヤラシ:エロスの文化人類学』(双書Zero,筑摩書房)など.

床呂郁哉(ところ いくや)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1965年生まれ.東京大学大学院博士課程中退,学術修士専攻:人類学.
主な著書・著作に『越境:スールー海域世界から』(岩波書店),「プライマリー・グローバリゼーション:もうひとつのグローバリゼーションに関する人類学的試論」(『文化人類学』75巻1号),『集団:人類社会の進化』(京都大学学術出版会,共著),『日常的実践のエスノグラフィー』(世界思想社,共著)など.

土佐桂子(とさ けいこ)
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授
総合研究大学院大学博士課程修了,博士(文学).
主な著作に『ビルマのウェイザー信仰』(勁草書房),"Burma: At the Turn of the 21st Century" (University of Hawai' i Press,共著),『社会空間の人類学:マテリアリティ・主体・モダニティ』(世界思想社,共著)など.

丹羽朋子(にわ ともこ)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍,学術修士
1974年生まれ.主な著作・著書に,「中国・黄土高原に咲く剪紙の花:願いを託すかたち,鋏で伝える心」(『季刊銀花』160号),『魯迅の言葉』(平凡社,共編訳)など.

伏木香織(ふしき かおり)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー
1971年生まれ.大正大学大学院文学研究科博士後期課程修了,博士(文学).
主な著作・著書に,『アジアのポピュラー音楽:グローバルとローカルの相克』(双書音楽文化の現在4)(勁草書房,共著),『バリ島デンパサール市における地域文化の創造,伝承,変容:地域における女性ガムラン・グループが示すもの』(板橋区教育委員会,歴史民俗研究—桜井賞受賞論集3),「バリ島の儀礼におけるグンデル・ワヤン:音の力と意味」(『東方学』104号)など.

宮坂 清(みやさか きよし)
慶應義塾大学,国士舘大学,立教大学ほかで兼任・非常勤講師
1971年生まれ,慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了,博士(社会学).
主な著作に,「精霊の入る口:ラダックの巫者儀礼にみる憑依と吸い出し」(『アジア遊学』84号),「ラダックにおけるルー信仰と病い」(『人間と社会の探究:慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要』64号)など.

村松彰子(むらまつ あきこ)
成城大学民俗学研究所研究員
1976年生まれ.成城大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学,修士(文学).
「近代以降の紅型と伝統:『沖縄の色合い』をめぐって」(『沖縄芸術の科学』18号,沖縄県立芸術大学附属研究所紀要)
「アクチュアリティの世界を生きる:当事者抜きの決定をめぐって」(『グローカリゼーションと共同性』成城大学民俗学研究所グローカル研究センター)など.

山本真鳥(やまもと まとり)
法政大学経済学部教授
1950年生まれ.東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学,文化人類学専攻.
主な著書に,『儀礼としての経済:サモア社会の贈与・権力・セクシュアリティ』(弘文堂,共著),『オセアニア史』(山川出版社,編著),『性と文化』(法政大学出版局,編著)など.

吉田ゆか子(よしだ ゆかこ)
筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科在籍・日本学術振興会特別研究員
1976年生まれ.筑波大学大学院地域研究研究科修了,修士(地域研究).
主な著作に,「バリ島仮面舞踊劇トペン・ワリと『観客』:シアターと儀礼の狭間で」(『東方学』117号),「バリ島仮面舞踊劇トペンの形式変化に関する一考察:儀礼と余興の間の連続と不連続」(『論叢 現代語・現代文化』2号),「バリ島仮面舞踊劇トペンとジェンダー:ルッ・ルウィの事例を中心に」(『文化交流研究』3号)など.

目次

プロローグ(口絵写真):ものをして語らせよ
序章:なぜ「もの」の人類学なのか? [床呂郁哉・河合香吏]

第Ⅰ部 「もの」の生成・消滅・持続
1章 かたち・言葉・物質性の間
   —陝北の剪紙が現れるとき [丹羽朋子]
   Key Words:陝北の剪紙,「もの」の現れ,感性的経験,記号的なものの物質性,反復と創造
2章 潜むもの,退くもの,表立つもの
   —会話におけるものと身体の関わり [菅原和孝]
   Key Words:対面相互行為,ものの介入,アフォーダンス,資源,直示

第Ⅱ部 「もの」と環境のネクサス
3章 「もの」の御し難さ
   —養殖真珠をめぐる新たな「ひと/もの」論 [床呂郁哉]
   Key Words:真珠,熟練の逆説,自然(環境)の御し難さ,「もの」との対話
4章 土器文化の「生態」分析
   —粘土から「もの」へ [印東道子]
   Key Words:土器技術,技術変化,生態環境,技術適応,知識の身体化

エッセイⅠ    現れる「もの」
1 名前がかたちを得る場:
  ものと経験を動員するジャワバティックの伝統文様 [佐藤純子]
2 カシュタが人を動かす:ウズベク刺繍がもつ「もの」の力 [今堀恵美]
3 ものと人の関係性の「遊び」:
  バナナと人間は依存しあっているか? [小松かおり]

第Ⅲ部 「もの」と身体のダイナミクス
5章 土器つくりを知っている
   —エチオピアの女性土器職人の「手」と技法の継承 [金子守恵]
   Key Words:エチオピア,土器,女性職人,身体技法,技法を獲得する過程
6章 男性身体と野生の技法
   —強精剤をめぐる自然・もの・身体 [田中雅一]
   Key Words:漢方,生命主義,広告,セックス,ゲテモノ

エッセイⅡ    妖(怪)しい「もの」
1 パゴダと仏像のフェティシズム [土佐桂子]
2 身体から吸い出される「もの」:
  ラダックのシャーマニズム儀礼より [宮坂 清]

第Ⅳ部 「もの」のエージェンシー
7章 仮面が芸能を育む
   —バリ島のトペン舞踊劇に注目して [吉田ゆか子]
   Key Words:仮面,物性,芸能,もの中心の記述,ものらしくないもの
8章 「生きる」楽器
   —スリンの音の変化をめぐって [伏木香織]
   Key Words:インドネシア,バリ・ガムラン,楽器,音の変化,音の「もの」性
9章 ものが見せる・ものに魅せられる
   —インドの占い師がもたらす偶然という「運命」 [岩谷彩子]
   Key Words:占い,偶然性,インデックス,ナイカン,チョーディ

エッセイⅢ    揺らぐ「もの」
1 グローバル化するアボリジニ絵画,ローカル化する「芸術」 [窪田幸子]
2 太平洋諸島移民アーティストの身体と芸術のかたち [山本真鳥]
3 ほんものであり続けること:
 「紅型」と「琉球びんがた」のあいだ [村松彰子]

第Ⅴ部 新たな「もの」論へ
10章 道具使用行動の起源と人類進化
   [山越 言]
   Key Words:チンパンジー,アフリカ,霊長類,二足歩行,採食技術
11章 霊長類世界における「モノ」とその社会性の誕生
   [黒田末寿]
   Key Words:霊長類,手,スガリ,モノの社会化,平等原則
12章 身体と環境のインターフェイスとしての家畜
   —ケニア中北部・サンブルの認識世界 [湖中真哉]
   Key Words:インターフェイス,身体の拡張,アフォーダンス,擬家畜化,隠喩的思考
13章 チャムスの蝉時雨
   —音・環境・身体 [河合香吏]
   Key Words:牧畜民チャムス,単独行動による放牧,音環境,ひとりであること,音の「もの」性

エピローグ:意志なき石のエージェント性
      —「もの」語りをめざして [内堀基光]

あとがき
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