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地域研究叢書 21

世界システムと地域社会

西ジャワが得たもの失ったもの1700-1830

大橋 厚子

菊上製・486頁

ISBN: 9784876989423

発行年月: 2010/07

  • 本体: 4,800円(税込 5,280円
  • 在庫あり
 
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内容

物質的な豊かさと引き替えに【生産と生活にかかわる決定力】を奪われる地域社会.18世紀初からの130年間,ジャワ島西部の自然・人為的環境と植民政庁下の「近代化」過程を精査し,普通の人々をグローバルヒストリーに定置する.

書評

『史學雜誌』第120編 第12号、80-87頁、評者:加納啓良氏

プロフィール

大橋 厚子(おおはし あつこ)
名古屋大学大学院国際開発研究科 教授
1956年 横浜市生まれ
1980年 東京大学文学部東洋史学専修課程卒業
1983年 同大学院人文科学研究科東洋史専門課程修士課程修了
2006年 同大学院人文社会系研究科より博士(文学)取得
名古屋大学大学院国際開発研究科助教授(1998年より)を経て,2005年より現職

主要論文
「東インド会社のジャワ島支配」.『東南アジア近世国家群の展開』.桜井由躬雄編(岩波講座東南アジア史4).岩波書店.2001年.
"History of West Java during the Age of 'ncorporation': Retold from the Perspective of Ordinary Housewives,"ACTA ASIATICA (東方学会),No. 92. 2007, pp. 69—87.
「ジャワ島における土地稀少化とインボリューション論」.『土地稀少化と勤勉革命の比較史—経済史上の近世』.大島真理夫編.ミネルヴァ書房.2009年.

目次

序 論 グローバルに考えローカルに研究する

第1編 「地域社会と世界」をどう捉えるか—研究の方法—

第1章 ジャワ島輸出農業に関する研究の成果と課題 —先行研究の検討—
1—世界システム論の提起したもの
2—ジャワ島経済史・社会経済史研究
3—「地域に埋め込まれる近代国家」:東南アジア国家と植民地国家論
第2章 歴史学は社会問題の形成メカニズムを明らかにできるか? —問題意識と分析枠組—
1—「途上国の前近代性」とは本来的なものなのか?:社会変化分析枠組みに関する問題意識
2—「普通の人々のグローバルヒストリー」は可能か?
3—「組み込み」の背景:グローバルな状況,そして重層的な3つの地域
第3章 社会変化の起点と管理運営機能分析の方法
1—本章の構成
2—「プリアンガン地方」という空間の形成
3—オランダ東インド会社の領土拡大と行政地区区分
4—パトロン—クライアント関係が前面に出る社会:社会変化の起点
5—第2編〜第5編における社会変化の分析方法

第2編 コーヒー生産管理の進展と現地人首長層の変質

第4章 コーヒー生産管理システムの形成 —18世紀初め—1811年—
1—生産管理の必要性
2—引渡量調節の試み
3—生産者管理の展開
4—おわりに
第5章 現地人首長(レヘント)の変質
1—はじめに
2—世襲終身制から「政庁」による任免へ:レヘント職の継承方式
3—財政における依存の深化
4—統治権限の削減
5—まとめ:コーヒー収奪効率化のための官吏的性格の付与
第6章 在地の首長から政庁官吏へ —下級首長の変質—
1—はじめに
2—オランダ政庁によるコーヒー生産システム再編と対下級首長政策
3—1810—20年代の下級首長達
4—下級首長の出自
5—オランダ政庁が提供した給与・手数料
6—おわりに:コーヒー生産に対する下級首長の協力
第7章 補   論 —プリアンガン地方における理事官制度の定着とその役割—
1—はじめに
2—17世紀半ばから19世紀初めに至るプリアンガン地方の統治制度
3—1819年の地方統治に関する法規
4—理事官による地方統治の開始(1819—1821年)
5—おわりに

第3編 オランダ植民地権力による利益・サービスの提供とその独占
—コーヒー輸送をめぐって—

第8章 17世紀末から18世紀初めの内陸交通
1—はじめに
2—輸出用産物輸送ルートと港市
3—内陸輸送ルートの復元
4—旅行の施設と形態
5—おわりに
第9章 コーヒー輸送の変遷 —1720年—1811年—
1—はじめに
2—レヘント主導のコーヒー輸送:1720年代初め—40年代初め
3—バタビア後背地開発の開始とコーヒー輸送:1740年代半ば—70年代半ば
4—レヘントの役割の縮小:1770年代末—1790年代末
5—東部地域におけるレヘントの役割の縮小:1800年—1810年代初め
6—おわりに
第10章 1820年代のコーヒー輸送システムと下級首長
1—はじめに
2—統治のための交通システムとコーヒー輸送
3—下級首長とコーヒー生産・輸送
4—ティンバンガンテン郡の下級首長
5—おわりに

第4編 オランダ植民地権力による利益・サービスの提供とその独占
—食糧生産と生活必需品—

第11章 灌漑田耕作の普及と夫役貢納システム
1—はじめに
2—1810年代までの水田開拓
3—1820年代の水田開拓
4—水田開拓の組織形態
5—水田の所有形態
6—夫役貢納制
7—水田耕作者と夫役労働
8—おわりに
第12章 農作業暦からみたコーヒー栽培と水田耕作
1—はじめに
2—1820年代プリアンガン地方のコーヒー栽培作業暦復元
3—稲作の作業暦
4—おわりに
第13章 男をお上に差し出す条件
1—はじめに
2—オランダ語文書から推測される世帯と夫役貢納単位
3—夫役労働の引出しと「女・子供」の労働
4—生活必需品・贅沢品と交易
5—おわりに

第5編 チアンジュール—レヘント統治地域の開拓
—面的数量的検討と地域差—

第14章 1820年代プリアンガン理事州の郡編成 —チアンジュールおよびバンドン—レヘント統治地域の統計から—
1—はじめに
2—チアンジュール—レヘント統治地域の郡編成:植民地支配拠点の周囲
3—バンドン—レヘント統治地域の郡編成:開拓が進行中の地域
4—むすびにかえて:近世的郡編成?
第15章 チアンジュール盆地8郡の開拓 —地域の多様性を組み込む夫役貢納システム—
1—はじめに
2—使用する史料および分析方法
3—コーヒー生産拠点8郡の開拓状況
4—考  察
5—おわりに
第16章 グデ山南麓4郡の開拓 —様々な農業開発の組み込み—
1—はじめに
2—グデ山南麓4郡の開発史
3—1820年代グデ山南麓4郡の概況
4—グヌンパラン郡
5—チマヒ郡
6—チフラン郡
7—チチュルク郡
8—おわりに
第17章 米穀生産と輸送を担う8郡の水田開拓
1—はじめに
2—米穀生産を期待される郡
3—輸送郡
4—おわりに

結論 「地方」は,なにゆえに地方になったか? —あるいは「普通の人々」のグローバルヒストリーのために—
1—「豊かさ」と引替えに決定権を失った地方社会
2—自律的な社会から従属した「地方」へ:歴史学的俯瞰
3—市場経済が未発達の社会が「組み込」まれた事例を分析する方法:本書の経験
4—普通の人々のグローバルヒストリー:現在の問題解決に資する歴史研究をめざして

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