ホーム > 書籍詳細ページ

生物間相互作用と害虫管理

安田弘法・城所 隆・田中幸一 編

A5上製・330頁

ISBN: 9784876987726

発行年月: 2009/02

  • 本体: 3,400円(税込 3,740円
  • 在庫あり

※傷みのあるもののみ在庫しております。メールでお問合せください。

 
  • mixiチェック

内容

人類は、農耕生活を開始して以来、害虫の被害に悩まされ、その防除を目指してさまざまな手法が用いられてきた。しかし、「防除」の発想では、農業生態系を構成する生物群集の多様な機能を活かすことはできない。生態学の最近の研究成果に基づき、生物間に働く多様な相互作用を利用した害虫管理の基礎とその方向性を示す。

書評

『日本応用動物昆虫学会誌』第53巻第3号、120-121頁、評者:小山重郎氏
『昆蟲(ニューシリーズ)』第12巻第4号、125頁、評者:湯川淳一氏
『生物科学』Vol.61 no.3、184頁、評者:大崎直太氏

プロフィール

■編著者
安田 弘法(やすだ ひろのり)山形大学農学部教授
城所 隆(きどころ たかし)宮城県古川農業試験場場長
田中 幸一(たなか こういち)(独)農業環境技術研究所生物多様性領域上席研究員

■執筆者
梶田 幸江(かじた ゆきえ)University of Kentucky, Post Doctral Researcher
滝澤 匡(たきざわ ただし)Washington State University, Post Doctral Researcher
市岡 孝朗(いちおか たかお)京都大学大学院地球環境学堂准教授
松本 崇(まつもと たかし)京都大学大学院地球環境学堂研修員
金子 修治(かねこ しゅうじ)静岡県農林技術研究所果樹研究センター主任研究員
宮下 直(みやした ただし)東京大学大学院農学生命科学研究科准教授
前田 太郎(まえだ たろう)(独)農業生物資源研究所昆虫ー昆虫・植物間相互作用研究ユニット主任研究員
大野 和朗(おおの かずろう)宮崎大学農学部准教授
岡崎 一博(おかざき かずひろ)福島県農林水産部循環型農業課主査
荒川 昭弘(あらかわ あきひろ)福島県農業総合センター生産環境部専門研究員
小野 亨(おの とおる)宮城県古川農業試験場作物保護部研究員
桐谷 圭治(きりたに けいじ)日本応用動物昆虫学会名誉会員・アメリカ昆虫学会フェロー

目次

はじめに

序論 新たな害虫管理に向けて(安田弘法・城所 隆・田中幸一)
1.従来の害虫防除
2.新たな害虫管理に向けて
3.生物間相互作用と害虫管理:本書の概要

第1部 多様な種間相互作用を活かした害虫管理

第1章 捕食者-餌系の種間相互作用(安田弘法・梶田幸江・滝澤 匡)
1.はじめに
2.捕食者の特性
3.捕食者間のギルド内捕食
4.複数の捕食者の種間相互作用
5.多様な捕食者による種間相互作用と食物網動態
6.おわりに

第2章 捕食寄生者-寄主系の低密度安定化機構(市岡孝朗・松本 崇)
1.はじめに
2.個体群動態の基本モデル
3.捕食寄生者-寄主系を安定化させるしくみ
4.隠れ家(REFUGE)の効果
5.メタ個体群
6.寄生の空間的密度依存性
7.防除の成否と空間的密度依存寄生
8.カリフォルニアアカマルカイガラムシの例
9.多食者の問題
10.多種系の問題
11.捕食寄生者-寄主系における進化的な形質の変化
12.おわりに

第3章 甘露排出昆虫-アリ共生系を中心とした種間相互作用網(金子修治)
1.はじめに
2.アブラムシをめぐる随伴アリと天敵昆虫の相互関係
3.ミカン樹上のアブラムシ寄生蜂群集に及ぼす随伴アリの影響
4.ミカン園のアブラムシ防除における随伴アリとアリに適応した天敵の活用
5.おわりに

第4章 生食連鎖と腐食連鎖の結合した食物網と害虫管理(宮下 直)
1.はじめに
2.生食連鎖と腐食連鎖の連結
3.飛翔性昆虫と造網性クモ
4.農業生態系での腐食流入と害虫防除
5.まとめと展望

第5章 植物の誘導防御反応と天敵の利用(前田太郎)
1.はじめに
2.揮発性物質を利用した植物の防御
3.情報化学物質を利用した天敵の餌探索行動
4.植物-天敵間相互作用の害虫防除への利用
5.おわりに

第2部 総合的害虫管理の実際

第6章 土着天敵を利用した総合的害虫管理(大野和朗)
1.はじめに
2.総合的害虫管理
3.天敵利活用の意義と方策
4.わが国での土着天敵の活用例
5.施設栽培への土着天敵の導入
6.雑草を利用した土着天敵保護と接種的放飼
7.おわりに

第7章 土着天敵を利用したリンゴ園の総合的害虫管理(岡崎一博・荒川昭弘)
1.はじめに
2.土着天敵によるハダニ類抑制
3.複合交信攪乱剤を利用したIPM体系
4.IPM体系での各種害虫発生状況と土着天敵の保護
5.おわりに

第8章 生息場所管理による土着天敵の利用とダイズ害虫管理(小野 亨・城所 隆)
1.はじめに
2.ジャガイモヒゲナガアブラムシの多発
3.ジャガイモヒゲナガアブラムシと土着天敵の関係
4.土着天敵の生息場所としてのムギ類リビングマルチの利用
5.おわりに

第3部 害虫管理から総合的生物多様性管理へ

第9章 生物多様性と害虫管理(田中幸一)
1.はじめに
2.農耕地における天敵群集の景観スケールでの解析
3.天敵の初期密度
4.生息場所管理による天敵群集の保護・増強
5.代替餌-天敵に対する多様な餌の効果
6.おわりに-今後の課題と展望

第10章 総合的生物多様性管理(桐谷圭治)
1.自然生態系と農業生態系
2.生物多様性を脅かすもの
3.第1の危機-ツマグロヨコバイの誘導異常発生
4.第2の危機-カメムシ問題
5.第3の危機-松くい虫
6.第4の危機-地球温暖化の影響:ミナミアオカメムシの場合
7.捕食者とその役割の多様性
8.植物保護からIPMまで
9.IBMの提案
10.IBMの実行

用語説明
引用文献
索  引
このページの先頭へ