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プリミエ・コレクション 60

武具が語る古代史

古墳時代社会の構造転換

川畑 純

A5上製・370頁

ISBN: 9784876986682

発行年月: 2015/03

  • 本体: 4,800円(税込 5,280円
  • 在庫あり
 
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内容

出土した武器と武具を手掛りに,古墳時代の社会構造を論じる。武器,武具の型式学的な解析により,生産体制の変遷と生産から副葬に至る流れを考究し,埋葬形態,集積状況の分析により,集団内,集団間の関係を考察する。軍事組織研究の手段としての軛から武器,武具を解放し,社会構造分析へと斬り込む「武器」として古代社会の特質を解明する。

プロフィール

川畑 純(かわはた じゅん)
独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 研究員
京都大学博士(文学)
1982年 北海道生まれ
2006年 京都大学文学部卒業
2008年 京都大学大学院文学研究科修士課程修了
2011年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学

主な業績
「前・中期古墳副葬鏃の変遷とその意義」『史林』第92巻2号史学研究会 2009年
「古墳副葬矢鏃の生産・流通・保有・副葬」『古代学研究』185号 古代学研究会 2010年
「衝角付冑の型式学的配列」『日本考古学』第32号 日本考古学協会 2011年

目次

図一覧/表一覧

序 章
 1.本書の目的と分析対象
 2.国家形成過程の研究における武器・武具研究の役割
 3.本書の視点

第1部 矢鏃の型式学的研究
第1章 古墳出土鏃の編年
 1.はじめに
 2.研究史と本章の視点
   ⑴研究史
   ⑵本章の視点
 3.鏃の分類
   ⑴部分名称と用語の設定
   ⑵分類の前提
   ⑶分類
 4.型式設定の検証と配列
   ⑴型式設定の検証
   ⑵配列と段階設定
   ⑶銅鏃生産の終焉について
 5.各期の様相と意義
   ⑴各期の様相
   ⑵鏃組成の変遷とその意義
 6.鏃の形の変化と組み合わせの変化の意義
第2章 矢の構造
 1.はじめに
 2.根挟みの装着手順と形態,機能について
   ⑴根挟みの分類と装着手順
    ⅰ 根挟みの分類/ ⅱ 装着先行型の根挟み/ ⅲ 加工先行型の根挟み/ ⅳ 装着手順と挟み部の形態
   ⑵根挟みの機能について
   ⑶分離式鏃の出土状況
    ⅰ 鏃の出土状況の研究略史/ ⅱ 中期の出土状況/ ⅲ 前期の出土状況/ ⅳ 後期の出土状況
 3.根挟みの材質転換について
   ⑴捩じりと頸部の成立
    ⅰ 根挟みの材質転換/ ⅱ 根挟みの材質転換と鏃形式の刷新
   ⑵分離式の諸方式
    ⅰ ホゾ孔式の分離式矢鏃/ ⅱ 中柄式の分離式矢鏃
   ⑶矢の流通形態について
 4.結語
   矢の流通の意義
第3章 矢鏃の生産・流通とその変遷
 1.はじめに
 2.矢柄の装着
   ⑴矢柄の装着手順
   ⑵矢柄先端の加工と形状について
   ⑶口巻きの手法とその変遷
 3.一括資料としての鏃群の検討
   ⑴Ⅰ期の様相
   ⑵Ⅱ期の様相
   ⑶Ⅲ期の様相
   ⑷Ⅳ期の様相
   ⑸Ⅴ期の様相
   ⑹口巻きを施す範囲について
   ⑺鏃形態と矢の生産の様相
 4.矢鏃生産・流通の展開

第2部 甲冑の型式学的研究
第4章 衝角付冑の型式学的配列
 1.はじめに
 2.研究史と本章の位置づけ
 3.衝角底板連接手法の再分類
   ⑴各要素の分類と相互関係
   ⑵各分類の関係
   ⑶各要素の組み合わせと型式設定
   ⑷型式相互の関係
    ⅰ 横接式と上接式/ ⅱ 上内接式と上下接式/ ⅲ 内接式の展開
    ⅳ 外接式と外接被覆式/ ⅴ 一連式・非連結式
 4.型式学的配列
   ⑴配列の要素と優先順位
   ⑵竪矧板A系統の検討
   ⑶三角板系統の検討
   ⑷小札系統の検討
   ⑸横矧板系統の検討
   ⑹竪矧板B系統の検討
   ⑺衝角付冑の型式学的配列
 5.衝角付冑の生産系譜の展開
   ⑴形式と型式の展開
   ⑵衝角付冑の型式と多系化の意義
 6.甲冑生産の系統に関する予察
第5章眉庇付冑の系統と変遷
 1.眉庇付冑研究の課題と本章の位置づけ
   ⑴眉庇付冑研究の意義
   ⑵眉庇付冑の研究史
   ⑶研究史上の課題と本章の視点
 2.眉庇付冑の構造と特質
   ⑴受鉢・伏鉢の連接技法
   ⑵伏板の環状配置鋲
   ⑶腰巻板の鋲列
   ⑷地板形式と連接構造
 3.庇部文様の検討
   ⑴庇部文様検討の前提
   ⑵葉文系の検討
   ⑶三角文系の検討
   ⑷レンズ文系の検討
   ⑸無透系の検討
   ⑹葉文系B類の検討
   ⑺小結
 4.眉庇付冑の編年
   ⑴配列の前提
   ⑵葉文系の配列
   ⑶三角文系の配列
   ⑷レンズ文系の配列
   ⑸無透系の配列
   ⑹小結
 5.眉庇付冑の系統と変遷
   ⑴系統認識の要素
   ⑵各系統の様相
   ⑶系統のまとまりと系統間の関係
   ⑷二つの系統 ――総鉄製と金銅装
   ⑸総鉄製と金銅装の前後関係
   ⑹眉庇付冑の変遷
 6.眉庇付冑の系統と生産
   ⑴眉庇付冑生産の展開
   ⑵眉庇付冑からみる甲冑生産体制の転換
第6章短甲の系統と甲冑セットの再検討
 1.短甲の研究史と本章の視点
   ⑴本章の目的
   ⑵短甲編年の研究史
   ⑶短甲編年の到達点と課題
   ⑷短甲の「系統」概念と編年について
 2.検討項目
   ⑴検討項目の概要
   ⑵地板裁断の有無とその意義
   ⑶地板裁断の分類
 3.短甲の系統と編年
   ⑴系統と変遷把握の前提
   ⑵長方形蝶番金具の三角板鋲留短甲
   ⑶長方形蝶番金具の横矧板鋲留短甲
   ⑷長方形蝶番金具系統の変遷
   ⑸方形3鋲蝶番金具の三角板鋲留短甲・横矧板鋲留短甲
   ⑹胴一連の三角板鋲留短甲・横矧板鋲留短甲
   ⑺方形4鋲蝶番金具の三角板鋲留短甲・横矧板鋲留短甲
   ⑻長釣壺形蝶番金具の三角板鋲留短甲・横矧板鋲留短甲
   ⑼釣壺形蝶番金具の三角板鋲留短甲・横矧板鋲留短甲
 4.短甲系統の変遷と冑・頸甲との組み合わせ
   ⑴系統の意義と系統変遷
   ⑵出現期の冑と頸甲について
   ⑶衝角付冑・眉庇付冑の画期と短甲の位置づけ
   ⑷短甲・頸甲の終焉
   ⑸甲冑生産の画期

第3部 武器・武具からみた古墳時代の社会構造
第7章 一括資料にみる武器・武具の入手と保有
 1.一括資料の分析 ――製作段階差について
   ⑴一括資料分析の意義
   ⑵衝角付冑・眉庇付冑・短甲の複数共伴例について
   ⑶複数甲冑の共伴例の傾向
   ⑷矢鏃と甲冑の共伴状況
   ⑸複数甲冑セットの構成
   ⑹金銅装の有無と製作順序
 2.武器・武具の入手と流通戦略の画期
   ⑴矢鏃の履歴と甲冑の履歴
   ⑵武器・武具の入手と流通戦略の画期
第8章武器・武具の入手と階層構造
 1.武器・武具の入手と帰属主体について
   ⑴本章の目的
   ⑵方法論
 2.同一古墳内複数埋葬の分析
   ⑴概要
   ⑵各古墳における具体的様相
   ⑶武器・武具の入手主体
   ⑷複数埋葬における特殊な様相  ――後出3号墳例について
 3.同一古墳群内における出土鏃の様相
   ⑴概要
   ⑵各古墳群における様相
   ⑶古墳群内における武器・武具の入手と所有
   ⑷武器・武具生産の画期と集団間関係
終章 武器・武具からみた古墳時代社会の構造転換
 1.武器・武具埋納量の変遷と展開
   ⑴武器・武具埋納量分析の意義
   ⑵Ⅰ期(前期前半)の様相
   ⑶Ⅱ期(前期後半)の様相
   ⑷Ⅲ期(中期前半)の様相
   ⑸Ⅳ期(中期後半)の様相
   ⑹武器・武具埋納の変遷
   ⑺武器・武具埋納の画期
 2.武器・武具の画期とその意義
   ⑴武器・武具生産の変遷と価値転換
   ⑵古墳時代全期間を通してみた中期中葉の画期
   ⑶武器・武具の量差と質差
   ⑷量差システムと質差システムの提唱
 3.量差システム・質差システムと古墳時代の社会構造
   ⑴前期から中期への展開
   ⑵量差システムと器物の更新
 4.量差システムから質差システムへの転換の歴史的意義
   ⑴量差システムと質差システムの交錯期
   ⑵倭の五王の朝貢と質差システム
   ⑶量差システム・質差システムと国家形成過程
 5.おわりに

図版出典
報告書
参考文献
あとがき
索引
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