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社会化される生態資源

エチオピア 絶え間なき再生

福井 勝義 編著

A5上製・380頁

ISBN: 9784876986521

発行年月: 2005/03

  • 本体: 4,200円(税込 4,620円
  • 在庫あり
 
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内容

エチオピア西南部には,変化に富んだ自然環境のもと,多様な暮らしがいまも展開されている.自然との長い相互関係から育まれた独自の文化と社会が,近代化と国家の政治的影響にさらされながらしたたかに適応し,その多様性を保つ様を,「生態資源の社会化」を鍵概念に分析する.エチオピアの民族誌としても貴重な秀作.

プロフィール

■ 編著者

福井 勝義(ふくい かつよし)

[現 職]京都大学大学院人間・環境学研究科教授、農学博士。
[主 著]
 『認識と文化:色と模様の民族誌』(認知科学選書21)東京大学出版会、1991
 『民族とは何か』岩波書店、1988(共編著)
 Ethnicity and Conflict in the Horn of Africa, London: James Currey, 1994(共編著)
 Redefining Nature: Ecology, Culture and Nature, Ocford: Berg, 1996(共編著)
 その他,学術雑誌『エコソフィア』(昭和堂)編集代表

■著 者(50音順)

石原美奈子(いしはら みなこ) 南山大学人文学部講師
佐藤 廉也(さとう れんや)  九州大学大学院比較社会文化研究院助教授
田川  玄(たがわ げん)   広島市立大学国際学部助教授
藤本  武(ふじもと たけし) 人間環境大学人間環境学部助教授
増田  研(ますだ けん)   長崎大学環境科学部助教授
松田  凡(まつだ ひろし)  京都文教大学人間学部文化人類学科助教授
松村圭一郎(まつむら けいいちろう)日本学術振興会特別研究員(京都大学大学院人間・環境学研究科)
宮脇 幸生(みやわき ゆきお) 大阪府立大学人間社会学部助教授

目次

はじめに――社会化される生態資源            福井勝義

「地方」の誕生と近代国家エチオピアの形成  宮脇幸生・石原美奈子
  I  エチオピアへの視点
  II 生態環境と民族の多様性
  III 帝国の「中心」と「周縁」
  IV 社会主義による近代化と挫折
  V 「地方」に突きつけられた新たな課題

第1部 生存の多様化選択

第1章 氾濫原をめぐる文化抵抗             宮脇幸生
     ――国家支配下におけるクシ系農牧民ホールの栽培戦略――
  I 牧畜社会を支える氾濫原
  II 氾濫原の環境利用
  III 耕作者たちの栽培戦術
  IV 聖域としての氾濫原
  V 帝国支配と「徴税」システムの構築
  VI 氾濫原をめぐる文化抵抗

第2章 青いモロコシの秘密               松田 凡
     ――余剰なきムグジの生存戦略――
  I 余剰を蓄えない生き方
  II オモ川下流平原とムグジ
  III モロコシの生産と消費
  IV 近代化と「辺境」
  V おわりに

第3章 多様な作物資源をめぐる営み           藤本 武
     ――山地農耕民マロにおけるムギ類の栽培利用――
  I エチオピアにおけるムギの多様性
  II ムギ類はいかに栽培されるか
  III ムギ類はいかに利用されるか
  IV 変動しつつある多様なムギ類をめぐる営み

第2部 野生動物と人間の共存戦略

第4章 「野生の宝庫」の行く末             増田 研
  I 「有害」な人間活動
  II 周辺民族バンナとエチオピア国家
  III バンナにとっての狩猟
  IV 涸渇する野生資源
  V まとめ

第5章 コーヒーの森とシャネルの5番         石原美奈子
     ――ジャコウネコ飼育をめぐる動物愛護の主張とその影響――
  I  ジャコウネコとの出会い
  II 調査地域の自然と歴史
  III ジャコウネコ飼育の歴史
  IV 伝統的なジャコウネコ捕捉・飼育方法
  V 国家とジャコウネコ飼育――許可制の導入と「近代的」飼育法の開発
  VI 世界動物保護協会(WSPA)による批判
  VII ジャコウネコ飼育は「残酷」か?

第3部 変化する森と人びとの持続戦略

第6章 社会空間としての「コーヒーの森」       松村圭一郎
     ――ゴンマ地方における植林地の拡大過程から――
  I 「森林破壊」の語られ方
  II ゴンマ地方北部の人と自然
  III コーヒー栽培をめぐる歴史と森林域の変化
  IV 「コーヒーの森」の生成過程
  V 「コーヒーの森」の所有と利用
  VI 大樹がつなぐ精霊空間
  VII 社会空間としての「コーヒーの森」

第7章 森棲みの戦術                  佐藤廉也
     ――二〇世紀マジャンの歴史にみる変化と持続――
  I  変化する政治・社会状況と持続する森の戦術
  II  人びとの移住の履歴をたどる
  III 移動パターンの制約としての戦いと呪い
  IV  移住から定住へ
  V  あらたな状況と森への執着
  VI  森棲みの戦術はいかに獲得されるのか
  VII 変化のなかで持続する「森棲みの戦術」

第4部 社会変動と空間の再編成

第8章 民俗の時間から近代国家の空間へ         田川 玄
     ――オロモ系ボラナ社会におけるガダ体系の時間と空間の変容――
  I  年齢体系と空間の秩序
  II  出自体系と領域
  III ガダ体系の時間秩序
  IV  ガダ体系の空間秩序
  V  アビシニア帝国による征服と支配
  VI  近代国家とガダ体系
  VII 結びに

第9章 繰り返される戦いと空間の社会化         福井勝義
     ――スルマ系諸社会における統合と排他性の文化装置――
  I  繰り返される戦い
  II  変革期における大襲撃
  III 戦いによって社会化されるテリトリー

エチオピア近・現代史年表
引用文献
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