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清代の衛生防疫システムとその近代的変容

余 新忠/姚 毅、福士 由紀、石野 一晴 訳

A5上製・508頁

ISBN: 9784814006229

発行年月: 2026/01

  • 本体: 7,200円(税込 7,920円

1月下旬発売予定

 
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内容

近代衛生の概念は、いつ、どのようにして中国社会に受け入れられたのか。清代の防疫体制の形成と変容を精緻にたどり、「衛生」という語が伝統から近代へと転生していく過程を明らかにする。西洋科学と東洋思想が交錯するその軌跡は、単なる制度史を超えて、近代化の精神史をも照らし出す。清代から近代まで続く「衛生」をめぐる思考の系譜を、歴史の深層から掘り起こす一疫病と人間、国家と社会、科学と文化の関係を問い直す、本格的衛生史研究。

プロフィール

[著  者]
余 新忠(よ しんちゅう/YU Xinzhong)
中国浙江省臨安出身、1969年6月生まれ。
南開大学歴史学院院長
著書
『追尋生命史』(北京師範大学出版社、2021年)、『清代衛生防疫機制及其近代演変』(北京師範大学出版社、2016年)、『清代江南的瘟疫与社会――一項医療社会史的研究』(改訂版、北京師範大学出版社、2014年)、『中国家庭史』第四巻『明清時期』(人民出版社、2013年)。
論文
「以新守旧 以中化西――近代天津名医丁国瑞的中西医滙通之道」(『近代史研究』、2022年第3期)、“From Avoiding Disease to Preventing Disease: The Evolving Concept of Disease Response in Late Qing Dynasty”, Chinese Studies in History, Vol. 47, No. 4, Summer 2014、「清代城市水環境問題探析――兼論相関史料的解読和運用」(『歴史研究』2013年、第6期)、「清末における「衛生」概念の展開」(『東洋史研究』第64巻第3号、2005年12月)、「中国疾病、医療史探索的過去、現実与可能性」(『歴史研究』2003年、第4期)、「清朝江南疫病救療事業探析――論清代国家和社会対瘟疫的反応」(『歴史研究』2001年、第6期)、ほか100篇を超える。

[訳  者]
姚 毅(よう き/YAO Yi)
大阪公立大学客員研究員(担当箇所:日本語版への序、序論、第二、三章、結語、付録一、参考文献)
著書
『中国と日本における農村ジェンダー研究』(共著)晃洋出版、2024年
『日中戦時下の中国語雑誌『女声』――フェミニスト田村俊子を中心に』(共著)春風社、2023年
『アジアの出産とテクノロジー』(共著)勉誠出版、2022年
『東アジアの家族とセクシュアリティ』(共著)京都大学学術出版会、2022年
『近代中国の出産と国家・社会――医師・助産士・接生婆』(単著)研文出版、2011年

福士由紀(ふくし ゆき)
東京都立大学人文社会学部教授(担当箇所:第六、七、八章、付録二)
著書
『公衆衛生と感染症を歴史的に考える』(共編著)山川出版社、2023年
『暮らしの中の健康と疾病――東アジア医療社会史』(共編著)東京大学出版会、2022年
『中国農村社会の歴史的展開――社会変動と新たな凝集力』(共著)御茶の水書房、2018年
『衛生と近代――ペスト流行にみる東アジアの統治・医療・社会』(共著)法政大学出版局、2017年
『近代上海と公衆衛生――防疫の都市社会史』(単著)御茶の水書房、2010年

石野一晴(いしの かずはる)
清泉女子大学総合文化学部准教授(担当箇所:第一、四、五章)
論文
「粤西の冼夫人信仰」『華南研究』第7号、2021年
「楊貴妃観音の源流」佐藤文子・原田正俊・堀裕編『仏教がつなぐアジア――王権・信仰・美術』勉誠出版、2014年
「17世紀における泰山巡礼と香社・香会――山東省霊巌寺大雄宝殿の碑刻を中心に」『東方学報』第86冊、2011年
「泰山娘娘の登場――碧霞元君信仰の源流と明代における展開」『史林』第93巻4号、2010年
「明代万暦年間における普陀山の復興――中国巡礼史研究序説」『東洋史研究』第64巻1号、2005年 ほか

目次

  日本語版への序
 
序 論
一 「衛生」の登場
二 中国百年来の衛生史研究
三 研究の趣旨
四 研究のアプローチと枠組み

第一章 近代における「衛生」概念の登場
一 はじめに
二 「衛生」の伝統的概念と近代的概念
  1.伝統的な「衛生」
  2.近代的衛生概念と伝統との区別
三 「衛生」概念の変動の始まり(一八七四 一八九四)
  1.近代日本における「衛生」の形成とその中国に対する初期の影響
  2.西洋衛生知識の流入と「衛生」概念のひそやかな変化
    (1)近代西洋衛生知識の流入と概念の表現
    (2)「衛生」概念のひそやかな変化
四 「衛生」概念の変動の進展(一八九四 一九〇五年)
  1.「衛生」概念の変動に対する日清戦争の影響
    (1)日本からの影響の強まり
    (2)積極化する中国社会の「衛生」への態度
  2.「衛生」という用語の広まりと言葉の内包の変化
五 近代的「衛生」概念の確立(一九〇五 一九一一年)
六 小結

第二章 清代における衛生観念の発展と変遷 疫病に対する観念
一 はじめに
二 疫病の予防(避疫)と治療(治疫) 前近代における疫病に対する観念
三 清末における衛生防疫の観念の変化
四 小結

第三章 清代における衛生規制とその近代的変化
一 はじめに
二 清代前期の相関規制
  1.環境の清潔と衛生
  2.河川(堀)の清掃
  3.遺体と棺の処理
三 清末における衛生行政の導入と設立
  1.清潔
  2.検疫
四 清末衛生行政の基本的特徴
五 小結

第四章 清代都市における水環境問題を探る
一 はじめに
二 類型と性質 主要史料概観
三 穢濁と清澄 史料が示す正反対の景観
四 抜粋を超えて 史料とその映し出す歴史景観の分析
五 小結

第五章 清代における汚物の処理とその近代における変遷
一 はじめに
二 前近代における中国の汚物処理
三 租界における汚物の処理 上海公共租界を例に
四 衛生問題の政治化と汚物処理方法の変化
五 余論 汚物の処理と近代公衆衛生概念の形成

第六章 清代の清潔観念と実践、およびその近代における変化
一 はじめに
二 伝統的認識における「清潔」と疾疫
三 衛生防疫という視角からの近代的「清潔」観念の形成
四 清潔行為の行政化
五 健康か自由か 身体の近代的選択
六 小結

第七章 清末検疫制度の導入およびその権力関係
一 はじめに
二 検疫実施の契機および各主体の心態と認識
  1.朝廷と官府
  2.士紳エリート
  3.一般民衆
三 検疫中の衝突、利益の絡み合いと権力関係
四 余論 近代衛生行政の要件としての検疫の成立

第八章 清末期における衛生防疫と近代的身体の形成
一 はじめに
二 清朝前期における衛生防疫と身体への束縛
三 清末の衛生防疫の身体に対する干渉
四 衛生防疫と近代的身体の形成
  1.士紳エリート
  2.一般民衆
五 小結5

結 語 「近代」の?緊箍児(きんこじ)?
 
付録一 嘉慶道光時期の疫病とその社会的影響
一 時間と空間の分布
  1.時間的分布
  2.空間的分布
二 重要な疫病
  1.コレラ(霍乱)
  2.疫喉 ジフテリア
  3.ペスト
三 基本的特徴と背景
四 社会への影響
五 小結

付録二 本音と建前 二〇世紀中国の疫病と公衆衛生の俯瞰
一 疫病概況
二 公衆衛生の俯瞰 防疫を中心として
  1.衛生行政の発端と衛生機構の沿革
  2.ペストと衛生防疫機構の創立
  3.清潔、防疫と衛生運動
  4.予防接種と天然痘の撲滅
  5.大衆動員型の住血吸虫症対策運動
  6.新形勢下の伝染病 エイズの予防制御
三 二〇世紀の疫病と公衆衛生

  訳者あとがき
  図版一覧
  参考文献
  索引(人名/事項)
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