ホーム > 書籍詳細ページ

学術選書 122

なぜ人口が減っても水はきれいにならないのか?

武田 育郎

四六並製・260頁

ISBN: 9784814006182

発行年月: 2025/09

  • 本体: 2,200円(税込 2,420円

9月末発売予定

 
  • mixiチェック

内容

人口減少とともに農地や肥料が減っても、川の水がきれいにならないのはなぜだろう? 下水道や浄化槽などの生活排水の対策は着実に進んでいるのだから、窒素やリンは除去されているはずだ。山林や農地などの構造に変化があるのだろうか? あるいは私たちの意識や関心が変わってきたことに原因があるのだろうか? 30年以上にわたり川の表情を見てきた著者が、地圏・水圏・大気圏をめぐる水の循環と物質循環を軸に、さまざまな視点から考える。

プロフィール

武田 育郎(たけだ いくお)
島根大学生物資源科学部教授。水質水文学。
1961年岡山県生まれ。1986年京都大学農学部農業工学科卒業。大学院を経て、1990年島根大学農学部助手。講師、助教授を経て2003年より教授。博士(農学)、技術士(農業部門)、水質関係第1種公害防止管理者。

著書に『よくわかる水環境と水質(改訂2版)』(オーム社、2024年)、『地域環境水利学』(分担執筆、朝倉書店、2017年)、『フィールドで学ぶ 斐伊川百科』(分担執筆、今井書店、2015年)、『水と水質環境の基礎知識』(オーム社、2001年)など。

目次

巻頭口絵
はじめに

第1章 川や湖の水質はどのように考えられてきたか?
 そもそも水質とは何だろうか?
 有機物汚濁指標とはどんな水質だろう?
 BODとCODはどこが違うのか?
 富栄養化と水質汚濁はどこが違うのか?
 環境基準とはなんだろうか?
 窒素の水質にはどんな意味があるか?
 リンの水質にはどんな意味があるか?
 負荷量と原単位はどこが違うのか?
 水の文学はなぜ必要か?
 流出解析で何がわかるか?
 シミュレーションとは何か?
コラム01 シミュレーションは正しい結果を導くか?

第2章 人口が減っても水はきれいにならない?
 人口の減少は何を意味するか?
 斐伊川ではどこで水質を測ったか?
 流域は30 年でどんな変化をしたか?
 水質は30年でどんな変化をしたか?
 降水量と流量はどんな変化をしたか?
 統計的有意性とは何か?
 水質を平均すると何がわかったか?
 窒素が低下しないのはなぜか?
 リンが低下しないのはなぜか?
 2010年以降で中流のリンだけ低下したのはなぜか?
 CODが低下しないのはなぜか?
 30年間水を汲んで気づいたことは?
 支流などの水質はどうか?
コラム02 平成の大渇水に江戸時代の古文書がよみがえったのはなぜか?

第3章 山のせせらぎが表情を変えるのはいつか?
 日本の山林はどのような特徴があるか?
 間伐遅れの林はどうなる?
 どんな流域で調べたのか?
 間伐遅れはどうやって判別できるか?
 流量はどうやって測るのか?
 降水量はどうやって測るのか?
 雨の時の水質はどうやって測るか?
 雨の時の水質はどんな変化をしたか?
 年間の負荷量はシミュレーションで求まるか?
 流量変化にかかる重大事件とは何か?
 比例を用いて非線形をシミュレーションできるのはなぜか?
 モデルのパラメーターからどんなことがわかるか?
 年間の負荷量はどんな変化をしたか?
コラム03 ハイテク計測器はいつも便利か?

第4章 水田は水をきれいにするか?
 農業用水は我が国においてどんな位置づけか?
 農業の多面的機能とは何か?
 水田の水質浄化とは何を意味しているか?
 ほ場整備は水の流れに影響するか?
 斐伊川下流域の農業用水の特徴は何か?
 調査した水田にはどんな水がやって来るのか?
 水田の収入と支出とは何か?
 大気中に逃げる水はどうやって測るか?
 流量が測定できない時はどうするか?
 週1回の水質はどんな変化をしたか?
 負荷量は年によってどんな変化をしたか?
 水は流域の中でどのくらい留まっているか?
 雨の時の水質は測らなくてよいのか?
 原単位と比較すると何がわかるか?
コラム04 IPCCは因果関係の不確実性をどのようにランク付けしているか?

第5章 耕作放棄地は「はずれ者」になったのか?
 耕作放棄地とは何か?
 耕作放棄地では何が問題か?
 雨の時に耕作放棄地は増水しやすいか?
 これまでの水質調査とどこが違うのか?
 どんな場所で水質を測ったのか?
 どんな時に採水したのか?
 6地点で水質を比較すると何がわかったか?
 結果に土壌は影響しないのか?
 耕作放棄地が多いと水質は高くなるか?
 「耕作放棄地」は死語になったのか?
コラム05 トイレにも飲める水が必要か?―大教室ディベートから

第6章 水が循環するようにリンも循環するか?
 川下に行くほどリンがきれいになるのはなぜか?
 鉄バクテリアとは何か?
 リンの資源はどこにあるのか?
 リンは循環するのか?
 鉄バクテリアでリンが回収できるか?
 担体に使う材料は何がよいか?
 水路からリンは回収できたか?
 回収した担体は吸着材になるか?
 担体を繰り返し浸漬するとどうなるのか?
 リン回収には、ほかにはどんな技術があるか?
 リンのエントロピーは減少するか?
コラム06 すべての物質は鉄に向かうか?

第7章 それで、答えはわかったのか?
 人口減少なのに水質低下が現れないのはなぜか?
 間伐はどのくらいの山で行われているのか?
 広葉樹林は問題ないのか?
 宍道湖の水質が琵琶湖(南湖)よりも悪いのはなぜか?
 答えがわからないのはなぜか?
コラム07 昔話のおじいさんはなぜ毎日「山へしば刈りに」行くのか?

あとがき
引用文献
索引
このページの先頭へ