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「滅び」と生きる

宮崎県椎葉村の生態変化、生存戦略、種間関係の動態

合原 織部

A5上製・280頁

ISBN: 9784814005918

発行年月: 2025/05

  • 本体: 3,400円(税込 3,740円
  • 在庫あり
 
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内容

宮崎県椎葉村。かつて狩猟採集や焼畑を生業とした「秘境」にも、大きな変化が訪れている。国の植林政策が山を変え、養蜂が衰退する一方、シカ肉の商品化に乗りだす。環境破壊と生業変容は、滅びなのか、あるいは新たな種間関係を示す希望なのか? さまざまな種の交渉をミクロに見つめながら、この不安定な世界をたくましく生き抜く知恵と技をつむぎだす。

プロフィール

合原織部(ごうはら おりべ)
法政大学人間環境学部講師。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了,博士(文化人類学)。
主な著作に,「『先祖の田』の生成—宮崎県椎葉村における住民—景観間の動態に着目して」(『社会人類学年報』第47号,pp.83—114,2021年),「猟犬の死をめぐる考察—宮崎県椎葉村における猟師と猟犬の接触領域に着目して」(大石高典・近藤祉秋・池田光穂(編)『犬からみた人類史』pp.198—214,勉誠出版,2019年)などがある。

目次


1 山村の変容を捉える視座
  1 「滅びゆく山村」という言説
  2 「滅びゆく山村」に見え隠れする問題系
2 「荒廃した土地」に生成する複数種の交渉
  1 「アッセンブリッジ(寄りあつまり)」
  2 「伝統的な生態学的知識(TEK)」
3 本論の内容と構成
4 調査・調査地の概要
5 登場人物について

第Ⅰ部 変わりゆく山村,生業,人々と土地の関係性

第1章 椎葉村の生活世界
1 社会構成
2 複合的生業
3 社会変容と生業の変化
第2章 「先祖の田」の生成—限界集落における稲作の動態
1 「限界集落」における稲作
  1 今日の稲作と「先祖の田」
  2 稲作の実践
  3 獣害と被害対策
  4 「先祖の田」を耕し続ける人々
  5 「鬼の首ねじり」儀礼の復活
2 国家による椎葉村の田の開拓
3 小括

第Ⅱ部 獣害:野生動物と人々との関わり合いの諸相

第3章 「害獣」を仕留め山の神に捧げる
—イノシシ・シカの狩猟と有害鳥獣捕獲との関連について
1 はじめに
2 椎葉村における有害鳥獣捕獲の位置づけ
3 イノシシとシカを対象とした有害鳥獣捕獲
  1 駆除狩り
  2 ワナ猟
4 狩猟にまつわる言葉や名称
  1 狩猟領域:狩倉(カクラ)
  2 狩り場の名称
5 イノシシ・シカに対する認識と狩猟儀礼
  1 イノシシ・シカに対する猟師の認識
  2 狩猟儀礼
6 小括

第4章 猿害から生成される「サルの祟り」の多層性
1 はじめに
2 猿害の状況
3 猿害対策
  1 農家による田畑の管理
  2 猟師によるサルの駆除
4 サルの祟り
5 「サルの祟り」の重層的構成

第5章 大型囲いワナが椎葉村に設置されるとき
—サル捕獲機具の開発と利用をめぐる考察
1 はじめに
2 国や県によるサルの個体群管理と椎葉村におけるサルの捕獲
3 研究機関による大型囲いワナの開発
4 大型囲いワナの設置と利用
5 大型囲いワナが椎葉村に設置されるとき

第Ⅲ部 家畜化—複数種の協働をめぐる諸相

第6章 猟犬の「変身」—猟師と猟犬の接触領域に着目して
1 はじめに
2 里における猟犬の飼育
3 狩猟における猟師と猟犬
  1 狩猟の実際——獲物の探索
  2 獲物との格闘と捕獲
  3 猟中の猟犬の怪我と死
  4 神になる猟犬
4 「家畜」「パートナー」「神」となる猟犬

第7章 養蜂をめぐるハイブリッド・コミュニティの生成
—知覚を通じた複数種間の交渉に着目して
1 はじめに
2 「群れ」を単位とするミツバチ,その生態と感覚器官
3 養蜂を通じた複数種間の交渉
  1 巣箱づくりと設置(2〜3月頃)
  2 巣箱の掃除(2〜4月)
  3 ミツバチの分蜂と分蜂群の捕獲(4〜5月)
  4 花粉・花蜜を貯める時期(3〜6月,9月)
  5 採蜜(9月中旬〜11月中旬)
  6 越冬期(12〜3月)
  7 スズメバチとアカリンダニに対する対策
4 道具がミツバチと養蜂家の関係にもたらす影響
5 養蜂をめぐるハイブリッド・コミュニティの生成・消滅

第8章 ニホンミツバチの減少と養蜂の変容
1 地域の生態系の変容,蜜源植物の減少
2 ハチミツの商品化に伴う養蜂の変化
3 ミツバチの感染症や寄生虫の増加
4 養蜂をめぐる複数種の関係の動態

第Ⅳ部 シカ肉の商品化
—ジビエ事業の拡大とシカ—人関係の変容

第9章 シカ肉のジビエ利用をめぐる考察
—宮崎県の山間部におけるシカ肉生産の過程に着目して
1 はじめに
2 シカの食性・生態の変化と,シカ肉の商品化計画
3 シカ肉の生産過程(捕獲・搬入・解体・加工)
  1 ジビエ事業に取り組む地域のシカ肉生産
  2 椎葉村におけるシカ肉生産
4 なぜ椎葉村では食肉処理施設が建設されないのか

第10章 考察と結論
  1 山村のなかのアッセンブリッジ
  2 山村を生きる人々の技

初出論文
謝辞
参考文献
索引
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