ホーム > 書籍詳細ページ

ヨーロッパ古代と夢

津田 謙治・河島 思朗・早瀬 篤・藤井 崇 編

四六上製・236頁

ISBN: 9784814005871

発行年月: 2025/07

  • 本体: 2,500円(税込 2,750円
  • 在庫あり
 
  • mixiチェック

内容

私たちは日常生活において様々な夢をみるが、夢は将来の出来事を予示するとか、あるいは心や身体のありかたと密接に結びつくものであるとか理解されることが多い。その点は昔の時代においても同様であった。2世紀初め~3世紀末に活躍したエペソスのアルテミドロスの手になる『夢判断の書』など、夢の予兆に関する類書が現存する。このよう書物が存在したのは、夢について知りたいという人々の願望があったからであろう。本書はヨーロッパ古代における夢概念について、西洋古典学を主軸に、文学、哲学、歴史、医学、宗教、美術など隣接する学問領域にわたって、相互に有機的な連関を保ちながら、統合的に分析した成果をまとめたものである。

プロフィール

津田 謙治(つだ けんじ) 【編者・まえがき・第4章・あとがき】
京都大学大学院文学研究科教授
主な著訳書に『神と場所――初期キリスト教における包括者概念』(知泉書館、2021年)、『マルキオン思想の多元論的構造』(一麦出版社、2013年)、アドルフ・フォン・ハルナック『マルキオン――異邦の神の福音』(教文館、2023年)、アンソニー・メレディス『カッパドキア教父――キリスト教とヘレニズムの遺産』(新教出版社、2011年)がある。

河島 思朗(かわしま しろう) 【編者・第1章・コラム3】
京都大学大学院文学研究科准教授
主な著書に『古代ローマ ごくふつうの50人の歴史――無名の人々の暮らしの物語』(さくら舎、2023年)、『基本から学ぶラテン語』(ナツメ社、2016年)、『西洋古典学のアプローチ』(編著、晃洋書房、2021年)、『はじめてのギリシャ神話解剖図鑑』(監修、エクスナレッジ、2023年)、『ホメロス『イリアス』への招待』(共著、川島重成他編、ピナケス出版、2019年)がある。

粉川 尚枝(こなかわ ひさえ) 【コラム1】
京都大学人と社会の未来研究院特定助教
主な著書に『心理療法過程で生じる夢の意味――夢の構造面についての分析から』(創元社、2020年)がある。

木原 志乃(きはら しの) 【第2章】
國學院大學文学部教授
主な著訳書に『流転のロゴス――ヘラクレイトスとギリシア医学』(昭和堂、2010年)、ガレノス『ヒッポクラテスとプラトンの学説1』(共訳、京都大学学術出版会、2005年)、『西洋哲学史Ⅰ』(共著、講談社選書メチエ、2011年)、「アリストテレス『気息について』」(『新版アリストテレス全集7』所収、岩波書店、2014年)、『『英雄伝』の挑戦』(編著、京都大学学術出版会、2019年)がある。

早瀬 篤(はやせ あつし) 【編者・第3章・コラム2】
京都大学大学院文学研究科准教授
主な翻訳として「アリストテレス『命題論』」(『新版アリストテレス全集1』所収、岩波書店、2013年)がある。主な論文として「『パイドン』における形相原因説」『哲學研究』608号、2022年、``Dialectic in the Phaedrus.'' Phronesis 61, 2016年がある。

渡邉 蘭子(わたなべ らんこ) 【第5章】
東北学院大学文学部総合人文学科専任講師
主な論文に、``Augustine's Perspectives on Practical Healing of Concupiscence", Markus Vinzent ed., Studia Patristica, Vol. CXIX, Vol. 16, 2021、「アウグスティヌスの身体観」、日本基督教学会編『日本の神学』57号、2018年がある。

藤井 崇(ふじい たかし) 【編者・第6章】
京都大学大学院文学研究科准教授
主な著訳書にImperial Cult and Imperial Representation in Roman Cyprus (Franz Steiner Verlag, 2013)、『論点・西洋史学』(共編著、ミネルヴァ書房、2020年)。翻訳として、クリストファー・ケリー『1冊でわかるローマ帝国』(岩波書店、2010年)、アンゲロス・ハニオティス『アレクサンドロス以後――長いヘレニズムとギリシア世界』(名古屋大学出版会、2024年)がある。

中村 るい(なかむら るい) 【第7章】
東海大学文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科教授
主な著書に『ギリシャ美術史入門』(三元社、2017年)、『ギリシャ美術史入門2――神々と英雄と人間』(三元社、2020年)、『古代地中海世界の歴史』(共著、ちくま学芸文庫、2012年)、『イメージとテキスト――美術史を学ぶための13章』(共著、ブリュッケ社、2007年)、『世界美術大全集3――エーゲ海とギリシア・アルカイック』(共著、小学館、1997年)がある。

目次

口絵 
関連地図
まえがき(津田謙治)

第1章 夢は外からやってくる――叙事詩における夢見の描写(河島思朗)
 はじめに
 1 ホメロスにおける夢見の描写
 2 訪問者の到来
 3 『変身物語』における夢見の描写
 4 偽りの夢
 おわりに
 コラム1 現代における夢――臨床心理学の視点から(粉川尚枝)

第2章 夢と癒し――ギリシア医学(木原志乃)
 はじめに
 1 アスクレピオス信仰における夢――参籠(インキュベーション)による癒し
 2 ヒッポクラテス派の医学文書における夢
 3 ガレノスにおける夢の癒し
 おわりに

第3章 プラトンは夢が未来を予言することを認めるか?(早瀬篤)
 はじめに
 1 夢をめぐる思索の系譜
 2 プラトンの位置づけの問題
 3 『ティマイオス』七〇d七―七二b五とプラトンの立場
 おわりに
 コラム2 アリストテレスの夢理解(早瀬篤)

第4章 古代ユダヤ教世界と夢――聖書とヘレニズム的ユダヤ教における寓意的解釈(津田謙治)
 はじめに
 1 聖書の歴史的背景
 2 顕現
 3 夢解釈
 4 参籠
 5 夢の価値判断
 6 ヘレニズム的ユダヤ教
 おわりに

第5章 キリスト教と夢――夢をめぐるアウグスティヌスの思索(渡邉蘭子)
 はじめに
 1 夢のメカニズム
 2 魂の想像物としての夢
 3 霊によって示される夢
 おわりに
 コラム3 キケロ『卜占について』(河島思朗)

第6章 ローマ帝国の夢と夢判断――アルテミドロス『夢判断の書』の内側と外側(藤井崇)
 はじめに
 1 アルテミドロスと『夢判断の書』
 2 『夢判断の書』における夢の定義と原因論
 3 『夢判断の書』に見る都市社会と神々
 4 『夢判断の書』の外の世界
 おわりに

第7章 夢の視覚化――ギリシア美術における夢と眠り(中村るい)
 はじめに
 1 ギリシア美術の中の「幻影」のイメージ
 2 ヨーロッパ中世の「夢」の表現
 3 医神アスクレピオスの治療の描写
 4 《アルキノスの奉納浮彫》
 5 夢と関連する「眠りの像」
 おわりに

あとがき(津田謙治)
参考文献一覧
図版掲載一覧
索引(人名/事項/出典)
このページの先頭へ