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地域研究叢書 47

焼畑を活かす 土地利用の地理学

ラオス山村の70年

中辻 享

菊上製・352頁

ISBN: 9784814005734

発行年月: 2025/02

  • 本体: 4,000円(税込 4,400円

2月27日頃発売予定

 
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内容

「景観モザイク」のなかには優れた多様性がひそんでいる。一元的な制度を押しつける国家政策の影響や換金作物の導入に揺れ動きながらも柔軟に変化する農民らの生活を、微細な環境の差異に着目し、航空写真や衛星写真も利用しながら実証的に確認する。1940年代以降の70年の土地利用を見渡しながら、焼畑民の営みを明らかにした画期的成果。

プロフィール

中辻 享(なかつじ すすむ)
甲南大学文学部歴史文化学科教授。京都大学大学院文学研究科博士課程修了,博士(文学)。
主な著作に,Land Use and Land Cover Changes during the Second Indochina War and Their Long-Term Impact on a Hilly Area in Laos, Southeast Asian Studies 8(2), 2019などがある。

目次

まえがき

第1章 序論
第1節 焼畑の減退はなぜ問題か
 1.東南アジアにおける焼畑の減退
 2.焼畑減退の要因
 3.焼畑の減退がもたらした問題
第2節 ラオスの焼畑・焼畑民に対する国家政策
 1.ラオスの焼畑と焼畑民の概要
 2.焼畑・焼畑民に対する国家政策
第3節 家畜飼養をめぐる土地利用
第4節 土地利用・土地被覆の長期的変化の分析
 1.航空写真・米軍偵察衛星写真の利用
 2.既往研究とその問題点
第5節 本書の課題

第2章 対象地域の概況
第1節 対象地域の位置と人口
第2節 自然環境と土地利用

第1部 国家政策の影響とラオス焼畑民の対応

第3章 焼畑抑制政策の実施と換金作物の普及
第1節 調査方法
第2節 調査対象村の概況
第3節 ブーシップ村における土地森林分配事業の実施過程
 1.土地森林分配事業実施以前の概況
 2.土地森林分配事業の実施過程
第4節 ハトムギ栽培と焼畑稲作の共存
 1.2003年の土地利用
 2.共存状態の形成過程
第5節 焼畑稲作の実施状況
 1.従事世帯
 2.土地森林分配事業で定められた規則との関係
 3.事業実施後の焼畑耕作域の変化
 4.耕作・休閑のサイクル
 5.経済的階層と焼畑
第6節 ハトムギ栽培の実施状況
 1.ハトムギ栽培の普及
 2.集落近辺での栽培
 3.経済的階層とハトムギ栽培
第7節 カジノキ栽培の実施状況
 1.カジノキ栽培の普及
 2.カジノキ栽培の利点と問題点
 3.カジノキ栽培の土地利用
 4.経済的階層とカジノキ栽培
第8節 考察

第4章 生計活動の世帯差
第1節 調査方法
第2節 調査対象村の概況
第3節 コメの生産と分配に関する世帯差
 1.焼畑規模の検討
 2.コメ収支の検討
第4節 現金収入源に関する世帯差
 1.ブーシップ村世帯の現金収入源
 2.旧ナムジャン村世帯の現金収入源
第5節 生計活動の世帯差が生じる要因

第5章 低地偏重の農村開発政策
第1節 調査方法
第2節 調査対象村の概況
 1.人口動態と住民構成
 2.自然環境の差異
 3.土地森林分配事業の影響
第3節 コメの生産と収支の比較
第4節 稲作以外の生計活動
第5節 農村開発政策の問題点

第6章 焼畑実施の村落差
第1節 対象地域での土地森林分配事業と村境画定
 1.対象地域での土地森林分配事業
 2.集落移転にともなう村境再編
第2節 調査方法
第3節 焼畑実施の村落差
 1.村の領域と人口との関係
 2.他の仕事と比べての相対的重要性
 3.焼畑の将来
第4節 村境の画定と領域意識の強まり
 1.フアイカン村とフアイペーン村の越境耕作をめぐる争論
 2.焼畑地を求めてのパクトー村からフアイコーン村への移住
第5節 村境と焼畑

第2部 焼畑民による家畜飼養

第7章 出作り集落での家畜飼養
    ―ルアンパバーン県シェンヌン郡カン川周辺の事例―
第1節 調査方法
第2節 対象地域におけるサナムの分布と概況
第3節 フアイペーン村のサナム
 1.村の概況
 2.家畜とその飼養場所
 3.家畜伝染病への対応
 4.放し飼いへのこだわり
 5.トウモロコシ畑への近接
 6.放牧牛の見張り場
 7.狩猟の前線基地
 8.サナム設営の効果
 9.サナム設営の条件
第4節 サナムの3類型
 1.石灰岩地帯のサナム
 2.高地帯のサナム
 3.低地帯のサナム
第5節 サナムの役割と問題点

第8章 出作り集落での家畜飼養
    ―ルアンパバーン県ウィエンカム郡サムトン村の事例―
第1節 サムトン村の概況
 1.村の概況
 2.サナムの立地と景観的特徴
第2節 家畜飼養拠点としてのサナム
 1.サナム設営の目的
 2.飼料としてのキャッサバ
 3.サナムでの家畜の世話
第3節 焼畑拠点としてのサナム
第4節 サナムの役割と将来性

第9章 ウシ・スイギュウ飼養をめぐる土地利用
第1節 調査方法
第2節 放牧の場としての高地
第3節 移動する放牧地――フアイコーン村の事例
 1.家畜飼養の概況
 2.放牧地の設定
 3.ウシ飼養の抱える困難
第4節 固定的な放牧地――フアイペーン村の事例
 1.家畜飼養の概況
 2.放牧地の設定とウシ管理
 3.焼畑と放牧との関係
 4.放牧と土地利用権
第5節 考察
 1.ウシ・スイギュウ飼養と土地所有・土地利用
 2.ウシ・スイギュウ飼養の問題点

第3部 長期的な土地利用・土地被覆の変化

第10章 第2次インドシナ戦争の影響
第1節 第2次インドシナ戦争がラオスの森林に与えた影響
第2節 調査方法
第3節 対象地域の概況
第4節 結果
 1.人口と土地利用の変化
 2.モン族の土地利用
 3.植生への影響
第5節 戦中期の土地利用・土地被覆の変化の特徴

第11章 焼畑と森林の70年間の動態
第1節 調査方法
第2節 各時期における土地利用・土地被覆の変化の実態とその要因
 1.戦前期(1945~1959年)
 2.戦中期(1960~1975年)
 3.戦後期(1976~1995年)
 4.市場参入期(1996~2013年)
 5.場所ごとの土地利用頻度の差異
第3節 考察

第12章 焼畑を活かす土地利用
第1節 低地と高地双方の活用
第2節 セーフティーネットとしての高地
第3節 貧富の差の拡大要因
第4節 家畜飼養の発展策
第5節 第2次インドシナ戦争が土地利用・土地被覆に与えた影響
第6節 焼畑・焼畑民は森林破壊の原因か
第7節 1960年代以前の航空写真・衛星写真の活用

引用文献
初出一覧
あとがき
索  引
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