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プリミエ・コレクション 136

ドイツ古典哲学と「学」の精神史

カントからヘーゲルへ

久冨 峻介

A5上製・480頁

ISBN: 9784814005659

発行年月: 2025/03

  • 本体: 6,400円(税込 7,040円

3月上旬発売予定

 
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内容

ヘーゲルの『精神現象学』は徹頭徹尾時代の産物であり、先行者と同時代の人々との論争なくしては成立しなかった。カントの『純粋理性批判』の登場という衝撃によって生まれた様々な哲学論議、とりわけその中で醸成されたスピノザ主義を軸に検討し、時代のコンテクストをも踏まえながら、ヘーゲル哲学を「学」の構想のもとに位置づける。

プロフィール

久冨峻介(くどみ しゅんすけ)

1990年福岡県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、京都大学人文学連携研究者。哲学・思想史。

主な論文
「テュービンゲンの「ヘン・カイ・パン」:ヤコービとフラットの論争の影響から」(『ヘーゲル哲学研究』30号、2024年)、„Die Zeiten des Bunds unserer Geister“: Leben als Schlüsselbegriff der Frankfurt-Homburger Konstellation(Taiju Okochi(Hrsg.), Hegel über Leben und Natur, Königshausen & Neumann, 2024)、「「カオス」から「秩序」へ:「最終的な真理」の場としての『精神現象学』「宗教」章」(Scientia, vol. 3、2023)、Hegels Kunstbegriff in den Jenaer Jahren: Zur Differenzierung von Kunst und Religion(Tetsugaku, vol. 5, 2021)、「ヘーゲル『精神現象学』の承認論における言語の特性:イェーナ期体系構想との比較に基づく考察」(『ヘーゲル哲学研究』26号、2020年)など。

目次

序 文
「ドイツ観念論」から「ドイツ古典哲学」へ
本書で扱う当時のドイツの状況
本書の問題設定と構成

第1部 ドイツ古典哲学の問題圏――スピノザとカント

第1章 一八世紀ドイツにおけるスピノザをめぐる論争
第1節 スピノザ論争「前史」――ドイツ啓蒙主義におけるスピノザ像の変遷:「宿命論」「無神論」としてのスピノザ
第2節 スピノザの「再発見」――一七五五年から始まる新たなスピノザ主義の萌芽と「汎神論論争」(一七八〇 ―一七八九年)の争点

第2章 カント哲学の遺産――カントvs.ヤコービ、マイモン
第1節 「建築術」としての哲学
第2節 ヤコービによるカント批判――「物自体」問題と「因果性」の超越論的使用
第3節 懐疑論からの応戦――サロモン・マイモンの「超越論的哲学」
(1)カントvs.マイモンの「神的な知性」論――カントの『超越論哲学試論』評から
(2)マイモンのスピノザ主義――神の「制限」と「窓のシャッターを閉めろ」の逸話

第2部 哲学の「根本原理」とその理論的進展――「理性」と「感情」

第3章 テュービンゲン・シュティフトにおけるフラットの「形而上学」
第1節 シュティフトの学術的環境
(1)シュティフトの教授
(2)シュティフトの学生たちと補習教師
(3)反カント陣営と親カント陣営との論争
第2節 フラットのカント論の源泉――ウルリッヒの『教程』におけるカントの「拡張」
第3節 「形而上学者」フラットのカント論――シュティフトの「超越論的哲学」受容
(1)フラットによるカント関連の書評の要点
(2)ヤコービ書評におけるフラットのヤコービ批判
(3)『断章』(一七八八年)の「因果性」理論――作為的理性と自然的信
第4節 フラットの形而上学的思惟――形而上学講義(一七九〇年)から
(1)フラットの講義の概要
(2)フラットのカント講義の特色――「因果性」をめぐって
(3)フラットの「因果性」論がドイツ古典哲学に残した影響

第4章 フィヒテの「知識学」の受容
第1節 「知識学」の基本的な課題
第2節 「知識学」は「スピノザ主義」か
(1)「主観的スピノザ主義」としての「知識学」
(2)「転倒したスピノザ主義」としての「知識学」

第5章 フィヒテvs.「批判的懐疑主義」
第1節 一七九三年一〇月の「階段での哲学談義」から『エーネジデムス』へ
第2節 フィヒテとフラットの「友情関係」――フラット的「因果性」から「事行」へ
第3節 マイモンの「連合体系」の非体系性
(1)マイモンの基本的な立場(Ⅰ)スピノザ主義への批判
(2)マイモンの基本的な立場(Ⅱ)「無限な知性」・「物自体」と「事実問題」
(3)フィヒテによるマイモンとの対決

第6章 フィヒテ―シェリングの知的交流――「知的直観」をめぐって
第1節 問題の所在――「スピノザ主義者」シェリング?
第2節 フィヒテとシェリングの知的交流
第3節 若きシェリングの介入――当時の論争における「自我」論文の立ち位置
(1)「知的直観」をめぐって
(2)シェリングにとってのスピノザ哲学
第4節 「自我」論文における「知的直観」論
第5節 スピノザ主義とフィヒテ主義のあいだに立つシェリング

第7章 「私たちの精神の連盟の時代」――フランクフルト ―ホンブルク・コンステラツィオンのキーコンセプトとしての「生」
第1節 「精神の連盟」のコンテクスト――ヘルダーリンの哲学的思惟
第2節 シンクレーアに対抗するツヴィリンク――ヘーゲルの関係論的思惟の源泉
第3節 哲学への道

第3部 「学」の体系としての『精神現象学』

第8章 「学」の必然性とは何か
     ――「カオス」から「秩序」へ(1)
第1節 『差異論文』における「精神の連盟」からのモチーフの継承
第2節 「現象学」というプログラム――『精神現象学』前史
第3節 『精神現象学』の「論理」問題――「現象知」と「学のモメント」
(1)『精神現象学』の「欠陥」――ヘーゲルのシェリング宛書簡から
(2)「学」の方法論と「必然性」
(3)「現象学の論理」――「論理学的必然性」の消息
第4節 「必然性」の行方――「歴史的必然性」と「想起」論

第9章 「宗教」章冒頭部の課題とその統体化機能
     ――「カオス」から「秩序」へ(2)
第1節 『精神現象学』の「自著広告」(一八〇七年一一月)
第2節 「宗教」章の幾何学的図式論の意義――「進展」と「還行」
(1)「単一な統体性」とは何か  ――「直線」と「円環」
(2)KnotenとBund――「単一的統体化」論
(3)「統体化」の論理としての「三つの規定性」
(4)哲学の事後性と「始元」論

第10章 「絶対知」は成立したのか
     ――ヘーゲル青年期一九年の総決算
第1節 「絶対知」章の構成とその課題
第2節 「現象知」の概念的再編成としての「三つの頂点」論
(1)「観察する理性」/「理性」章――「無媒介な存在」
(2)「啓蒙」/「精神」章I――「相関関係」「対他存在と対自存在」
(3)「道徳的自己意識」「良心」/「精神」章II――「本質」「普遍的なもの」
(4)「三つの頂点」を集約する「良心」
第3節 「達成されるべきプログラム」としての「二重の宥和」
(1)「形式」と「内容」の一致はいかにして正当化されるのか
(2)「啓示宗教」の概念的モメントの「リズム」
第4節 ヘーゲルにとって「絶対知」とは何だったのか

総括 ヘーゲルはいかにして「哲学者」になったのか

  あとがき
  参考文献一覧
  英文要約
  索引(人名/事項/書名)
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