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学問で平和はつくれるか?

京都大学大学院人間・環境学研究科 編

A5並製・336頁

ISBN: 9784814005208

発行年月: 2024/06

  • 本体: 2,800円(税込 3,080円
  • 在庫あり
 
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内容

緊迫する世界情勢。世界はこういうものだと語りたがる〈わけ知り顔のリアリズム〉のただなかで、新しい平和学を、宇宙物理学から微生物学までに至るあらゆる学問を下地とするものと構想する。共生知をもとめて越境するアカデミックの最前線からのメッセージ。

プロフィール

(掲載順)

細見 和之(ほそみ・かずゆき) [編者] 序章、ColumnIV、座談会への追記
京都大学大学院人間・環境学研究科 人間・社会・思想講座教授。専門はドイツ思想、比較文学。主著に『フランクフルト学派』(中公新書、2014年)。

阪上 雅昭(さかがみ・まさあき) 第1章
京都大学大学院人間・環境学研究科 名誉教授。専門は物理学。主著に「変分オートエンコーダーを用いた乳幼児期の語彙発達過程の探索」(萩原広道、水谷天智、山本寛樹、阪上雅昭[共著])『認知科学』30巻4号、2023年。

小木曽 哲(こぎそ・てつ) 第2章
京都大学大学院人間・環境学研究科 地球・生命環境講座 教授。専門は岩石学・地球化学。主著に“Detecting micrometer-scale platinum-group minerals in mantle peridotite with microbeam synchrotron radiation X-ray fluorescence analysis” (Geochemistry, Geophysics, Geosystems vol.9, 2008)。

石川 尚人(いしかわ・なおと) 第3章
富山大学都市デザイン学部 地球システム科学科 教授。専門は古地磁気学。主著に “Differential rotations of north Kyushu Island related to middle Miocene CW rotation of SW Japan” (Journal of Geophysical Research, vol. 102, 1997)。

篠原 資明(しのはら・もとあき) 第4章
京都大学大学院人間・環境学研究科 名誉教授。専門はあいだ哲学。主著に『あいだ哲学者は語る—どんな問いにも交通論』(晃洋書房、2018年)。

森成 隆夫(もりなり・たかお) ColumnI
京都大学大学院人間・環境学研究科 物質科学講座 教授。専門は物性物理学。主著に『熱・統計力学講義ノート』(サイエンス社、2017年)。

加藤 眞(かとう・まこと) 第5章
京都大学大学院人間・環境学研究科 名誉教授。専門は生態学。主著に『日本の渚』(岩波新書、1999年)。

西川 完途(にしかわ・かんと) 第6章
京都大学大学院人間・環境学研究科 地球・生命環境講座 教授。専門は動物系統分類学。主著に主著に『学研の図鑑LIVE 爬虫類・両生類』(森哲・西川完途・鈴木大監修、学研、2016年)。

佐藤 博俊(さとう・ひろとし) 第7章
京都大学大学院人間・環境学研究科 地球・生命環境講座 助教。専門は菌類系統分類学。主著に“The evolution of ectomycorrhizal symbiosis in the Late Cretaceous is a key driver of explosive diversification in Agaricomycetes”(New Phytologist 241, 2024)。

宮下 英明(みやした・ひであき) 第8章
京都大学大学院人間・環境学研究科 地球・生命環境 教授。専門は藻類学。主著に“Chlorophyll d as a major pigment”(Hideaki Miyashita et al., Nature 383, 1996)。

神川 龍馬(かみかわ・りょうま) 第9章
京都大学大学院農学研究科 応用生物科学専攻海洋微生物学講座 准教授。専門は水圏微生物学。主著に『京大式 へんな生き物の授業』(朝日新書、2021年)。

木下 千花(きのした・ちか) 第10章
京都大学大学院人間・環境学研究科 芸術文化講座 教授。専門は日本映画史、表象文化論。主著に『溝口健二論—映画の美学と政治学』(法政大学出版局、2016年)。

阪口 翔太(さかぐち・しょうた) ColumnII
京都大学大学院人間・環境学研究科 地球・生命環境講座 助教。専門は植物系統進化学。主著に『日本における森林樹木の遺伝的多様性と地理的遺伝構造』(戸丸信弘・内山憲太郎・玉木一郎・阪口翔太編、ミドリ出版、2022年)。

小村 豊(こむら・ゆたか) 第11章
京都大学大学院人間・環境学研究科 認知・行動・健康科学講座 教授。専門はシステム脳科学、生命知能学。主著に「予測する脳が生み出す知覚世界」(共著、『臨床精神医学』48(12)、2019)。

林 達也(はやし・たつや) 第12章
京都大学大学院人間・環境学研究科 認知・行動・健康科学講座 教授。専門は健康科学・内科学(糖尿病・内分泌代謝学)・骨格筋代謝とその制御機構・生活習慣病の運動療法など。主著に“Evidence for 5’AMP-activated protein kinase mediation of the effect of muscle contraction on glucose transport”(Diabetes 47(8), 1998)。

藤田 耕司(ふじた・こうじ) 第13章
京都大学大学院人間・環境学研究科 名誉教授。専門は進化言語学・生物言語学。主著にAdvances in Biolinguistics: The Human Language Faculty and Its Biological Basis (co-editor, with C. Boeckx, Routledge, 2016)。

青山 拓央(あおやま・たくお) 第14章
京都大学大学院人間・環境学研究科 人間・社会・思想講座 教授。専門は哲学。主著に『時間と自由意志—自由は存在するか』(筑摩書房、2016)。

小倉 紀蔵(おぐら・きぞう) 第15章
京都大学大学院人間・環境学研究科 東アジア文明講座 教授。専門は東アジア哲学。主著に『朱子学化する日本近代』(藤原書店、2012年)。

船曵 康子(ふなびき・やすこ) ColumnIII
京都大学大学院人間・環境学研究科 認知・行動・健康科学講座 教授。専門は児童精神医学。主著に“Development of a multi-dimensional scale for PDD and ADHD”(Funabiki Y, Kawagishi H, Uwatoko T, Yoshimura S, Murai T., Research in Developmental Disabilities 32(3), 2011)。

鵜飼 大介(うかい・だいすけ) 第16章
京都大学大学院人間・環境学研究科 共生世界講座 助教。専門は社会学、メディア史。主著に『文字の比較社会学』(人文書院、近刊)。

合田 昌史(ごうだ・まさふみ) 第17章
京都大学大学院人間・環境学研究科 名誉教授。専門は近世ポルトガル史。主著に『大航海時代の群像—エンリケ・ガマ・マゼラン』(山川出版社、2021年)。

武田 宙也(たけだ・ひろなり) 第18章
京都大学大学院人間・環境学研究科 芸術文化講座 准教授。専門は美学・芸術学。主著に『フーコーの美学—生と芸術のあいだで』(人文書院、2014年)。

戸田 剛文(とだ・たけふみ) 第19章
京都大学大学院人間・環境学研究科 人間・社会・思想講座 教授。専門は哲学。主著にトマス・リード著『人間の知的能力に関する試論』(翻訳、上・下、岩波文庫、2022-2023年)。

中嶋 節子(なかじま・せつこ) 第20章
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化・地域環境講座 教授。専門は都市史・建築史。主著に『近代日本の歴史都市』(共著、思文閣、2013年)。

安部 浩(あべ・ひろし) 第21章
京都大学大学院人間・環境学研究科 人間・社会・思想講座 教授。専門は哲学。主著にEnvironmental Philosophy and East Asia. Nature, Time, Responsibility (co-editor, with M. Fritsch and M. Wenning, Routledge, 2022)。

岡 真理(おか・まり) 第22章
早稲田大学文学学術院 教授。専門は現代アラブ文学。主著に『ガザに地下鉄が走る日』(みすず書房、2018年)。

髙木 紀明(たかぎ・のりあき) 第23章
京都大学大学院人間・環境学研究科 物質科学講座 教授。専門は表面科学。主著に“Single Molecule Quantum Dot as a Kondo Simulator”(R. Hiraoka, E. Minamitani, R. Arafune, N. Tsukahara, M. Kawai, N. Takagi, Nature Communications 8, 2017)。

萩生 翔大(はぎお・しょうた) 第24章
京都大学大学院人間・環境学研究科 認知・行動・健康科学講座 准教授。専門は運動制御学。主著に“Muscle synergies of multidirectional postural control in astronauts on Earth after a longterm stay in space”(Hagio S et al., Journal of Neurophysiology 127(5), 2022).

石村 豊穂(いしむら・とよほ) 第25章
京都大学大学院人間・環境学研究科 地球・生命環境講座 教授。専門は微古生物学・地球化学。主著に「極微量炭酸塩の高精度安定同位体比分析の実現—ナノグラム領域の新たな環境解析」(『地球化学』55巻3号、2021年)。

浅野 耕太(あさの・こうた) Column V
京都大学大学院人間・環境学研究科 共生世界講座 教授。専門は環境経済学。主著に『政策研究のための統計分析』(ミネルヴァ書房、2012年)。

目次

カラー口絵

序 章 新しい平和学のために——「わけ知り顔のリアリズム」を超えて
[細見和之]
 はじめに
 1 新しい平和学をもとめて
 2 カントが考えた「永遠平和」
 3 ホロコーストと原爆
 4 わけ知り顔のリアリズムを超えて

PART I 非日常のものさしを得る——宇宙のなかの地球
Introduction
第1章 ビッグバンに至る道——20世紀宇宙観の変遷
[阪上雅昭]
 1 宇宙の拡がりを実感しよう
 2 遠くの銀河、遠ざかる銀河
 3 膨張宇宙の発見
 4 ビッグバン宇宙
 5 ハッブル・ルメートルの法則
 6 視点の行き来を目指して
第2章 地球が地球になるまで——私たちが存在できる理由
[小木曽哲]
 1 海を持つ惑星の誕生
 2 陸の存在意義
 3 初期の生命とプレートテクトニクス
 4 生命進化と大陸
 5 海水量の謎
 6 私たちが存在できる理由
第3章 地球の営み——南極から眺める現在と過去
[石川尚人]
 1 南極はどれほど寒いか
 2 南極大陸
 3 南極氷床
 4 南極氷床から得られる氷期−間氷期変動の情報
第4章 宇宙と人の〈あいだ〉——交通論で考える
[篠原資明]
 はじめに 交通とは
 1 四つの交通様態
 2 宇宙旅行の場合
 3 空海の場合
 4 西行と月
 5 地中海の空
 6 足穂と彗星
ColumnⅠ アインシュタインの相対性理論とエネルギー公式
[森成隆夫]
研究の原点(1)

PART II 地球のなかの生命
Introduction
第5章 住み込み共生が育む海の生物多様性
[加藤 眞]
 1 陸上生態系で進行した植物と昆虫の多様化
 2 プランクトンとその濾過食者が卓越する海の生態系
 3 住み込み共生
 4 カイメンの共生者
 5 ナマコの消化管に住む二枚貝
 6 スツボサンゴをめぐる住み込み共生
 7 内湾のサンゴ礁生態系
第6章 両生類から環境を測る
[西川完途]
 1 「中庸的」な動物、両生類
 2 両生類の代表カエル
 3 両生類の祖先の体型をしたサンショウウオ・イモリ
 4 頭と胴だけのアシナシイモリ
 5 環境の指標生物としての両生類
第7章 菌類研究はなぜ難しいのか
[佐藤博俊]
 1 ユニークな生物、菌類
 2 菌類の数を把握するのは難しい
 3 注目される菌類の多様化
 4 菌類の多様化のメカニズムを探る
 5 困難に立ち向かう
第8章 藻類
[宮下英明]
 1 お刺身1切れ=藻類〇kg?
 2 たった一度の偶然で
 3 藻類から未来を考える
第9章 生物多様性はどう認識されてきたか
 ——微生物から見る生物進化の認識における変遷
[神川龍馬]
 1 博物学から五界説まで
 2 モネラと原生生物の崩壊
 3 ミトコンドリアの多様性
第10章 スターチャイルド考
[木下千花]
 1 はじめに
 2 「誕生以前の生命のドラマ」
 3 日本における受容
Column Ⅱ ゲノミクス時代におけるダーウィン進化論
[阪口翔太]
研究の原点②

PART III 生命としての人類
Introduction
第11章 不確かな世界に生きる迷い方
 ——自然知能に学ぶ、意思決定の在り様
[小村 豊]
 1 意思決定と迷い
 2 霊長類の意思決定を測る
 3 意思決定と確信度のシミュレーション
 4 確信度の脳内表現
 5 自然・生命・知性の連なり
第12章 実験ネズミが食べ過ぎてしまう話
[林 達也]
 1 分かっちゃいるけどやめられねぇ
 2 飼養箱でネズミは食べ過ぎになる
 3 飼養箱でネズミを運動させると
 4 長寿のためには運動は要らない?
 5 飼養箱に似てきた先進社会
 6 実験動物を通じて人間を知る
 7 動物実験の限界と人間の現実
 8 だからみんなでホンダラダホイホイ
第13章 言語進化の謎に挑む
[藤田 耕司]
 1 生成文法・生物言語学の視点
 2 人間言語の構造依存性
 3 併合の運動制御起源仮説
 4 認知考古学的考察
 5 組み合わせる知性—進化的観点と平和学
第14章 意図的に子どもを作り出せる生物としての人間
 ——TNR、反出生主義、『消滅世界』
[青山拓央]
 1 子どもを作り出すという〈行為〉
 2 猫のTNRとの比較
 3 不確定性と非行為性
 4 反出生主義を論じる前に
第15章 〈思考停止平和戦争国家〉でどう生きるか
[小倉紀蔵]
 1 「戦争メタファー」の韓国
 2 「戦争メタファー」を嫌悪する日本
 3 われわれは〈戦争〉をしている
 4 ソフト・パワーからソフト・ウォーへ
 5 日本型〈戦争〉の時代
 6 思考停止する〈戦争〉国家
 7 生の日本的苦しさ
 8 バイオフリーダム(生自由)へ
Column Ⅲ 健康の未来
[船曵康子]
研究の原点(3)

PART IV 自明性を疑う 文明の歴史
Introduction
第16章 文字から文明社会を見る
 ——読み書きの現在と〈文字圏の衝突〉
[鵜飼大介]
 1 読み書きという基礎的技能
 2 読み書きの習熟はそれほど容易ではない
 3 帝国的な社会と文字
 4 宗教と文字の多様なつながり
 5 近代世界における識字化・ラテン文字化と〈文字圏の衝突〉
第17章 大航海時代は文明史上どのような意味を持つのか
[合田昌史]
 1 大航海時代とはなにか
 2 グローバル化の第一波
 3 コロンブスの交換
 4 近代世界システム
 5 長篠合戦の世界史
 6 「財政=軍事国家」論
 7 宇宙大航海時代
 8 「ステイタス」を求めて
 9 「世界分割」と「世界布教」
第18章 グローバリゼーション時代の芸術作品
[武田宙也]
 1 グローバリゼーション
 2 根をめぐって
 3 クレオール化と暴力
 4 ラテンアメリカ、アフリカ、日本の事例から
 5 グローバルな美術史記述へ
第19章 文明と科学あるいは技術
[戸田剛文]
 1 概念の曖昧さ
 2 科学と真理、科学と科学技術
 3 現代における表現
 4 人の善さ
 5 文明の進歩と平和
 6 傷の舐め合い
第20章 風景と文明0空間・時間・記憶の構造を見出す
[中嶋節子]
 1 はじめに
 2 風景の発見
 3 風景の客体化・装置化
 4 媒体としての風景 土地と人間とをつなぐ
 5 風景の喪失と回復/奪還
 6 重層する風景とその不連続性
 7 おわりに 見えない風景/実態のない風景の未来
Column Ⅳ ホロコーストを問いなおす
[細見和之]
研究の原点(4)

PART V 未来からふり返る 地球と人類の未来
Introduction
第21章 世代間正義の哲学0〈近代の内破〉という課題
[安部 浩]
 1 世代間正義という難題
 2 新しい社会契約とロールズの『正義論』の難点
 3 仮想将来世代の制度と『正義論』との関係
 4 仮想将来世代の制度化の過程
 5 DP(格差の原理)の説明の一解釈
 6 〈LP→FEO→DP〉なる順位の所以とロールズへの批判
 7 近代の内破—自己責任概念の極大化による世代間責任の可能性
 8 結語に代えて
第22章 《ガザ》から展望する世界と文明の未来
[岡 真理]
 1 過ちは繰り返されなかったか
 2 繰り返される悲劇
 3 信仰の人種化
 4 ダーバン宣言
 5 これが人間か
 6 私には夢がある
第23章 10億分の1の世界から見る人類の未来
[髙木紀明]
 1 新しい研究分野
 2 ナノテクノロジー・ナノサイエンスとは?
 3 ナノテクノロジーの成果
 4 現代文明のレベル評価
 5 現代文明の発展と未来
第24章 身体運動から紐解く共生の未来0人類と地球、そして宇宙へ
[萩生翔大]
 1 膨大の数の筋が織りなすチームワーク
 2 歩くためのカギは重力を知ること
 3 宇宙で過ごすと歩けなくなる?
 4 重力への適応から考える人類が共生し続ける未来
第25章 過去を振り返って未来を感じてしまった人類
[石村豊穂]
 はじめに
 1 未来を描くために過去を知る
 2 環境変動の要因—リズム・イベント・ゆらぎ
 3 時間スケールと「未来」の定義
 4 人類が感じる未来への期待と不安
 5 地球の現状把握と2030年〜2100年の可視化
 6 21世紀—世界の協働と混沌
 7 未来の広がり
 8 おわりに
Column Ⅴ 地球環境の未来
[浅野耕太]
研究の原点(5)

座談会 新しい「平和学」をもとめて (2023年10月2日収録)
補 稿 座談会への追記 [細見和之]

あとがき [細見和之]

索  引
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