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昆虫の休眠

デビッド・L・デンリンガー/沼田 英治・後藤 慎介 訳

菊上製・560頁

ISBN: 9784814005093

発行年月: 2024/03

  • 本体: 8,500円(税込 9,350円
  • 在庫あり
 
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内容

昆虫は休眠を生活史に組み入れることで,生存に不利な季節をやり過ごし,地球上のあらゆる大陸に進出することができた.昆虫は季節をどのように検知し,それをどう利用して休眠に入り,そしてそれを終了させるのか? 気候変動の影響はあるのか? 保全や害虫管理への応用の可能性は? 分子メカニズムから生態,進化まで,多彩な視点と絡め休眠を包括的に論じる渾身の大著.

書評

日本動物学会サイト、2024.4.24、評者:佐藤賢一氏 https://www.zoology.or.jp/news/book-review-240424

『日本応用動物昆虫学会誌』第68巻 第3号(2024年8月)、94頁、評者:新谷喜紀氏

プロフィール

【著者】
デビッド・L・デンリンガー(David L. Denlinger)
昆虫の休眠に関する世界的な研究者の1人である.アメリカ合衆国オハイオ州立大学の昆虫学の特別教授および名誉教授.アメリカ合衆国科学アカデミー会員,アメリカ合衆国昆虫学会フェロー,イギリス昆虫学会名誉フェロー.デンリンガー教授の現在の研究室では,主に昆虫の越冬に関わる分子機構を研究している.環境の信号を感知する時計遺伝子の利用から,休眠表現型の発現につながる内分泌・分子に関する事象まで,幅広い分野に関心を寄せている.これまでの研究により,チェコ科学アカデミーのグレゴール・メンデル・メダル(2006年),南極派遣記章(2006年),国際昆虫生理学・生態学センター(ICIPE)功労賞(2020年)など数々の賞を受賞している.

【訳者】
沼田英治(Hideharu Numata)
京都大学大学院理学研究科の大学院生として昆虫の季節適応の研究を始め,大阪市立大学と京都大学の理学研究科でその研究を発展させた.2021 年に京都大学を定年退職した.京都大学名誉教授.カメムシ,チョウ,カツオブシムシ,ハエなど幅広い昆虫を対象として,休眠に関わる光周性,概年リズム,内分泌機構などの研究を行ってきた.これまでの研究により,日本応用動物昆虫学会学会賞(2004年),日本動物学会賞(2012年),日本比較生理生化学会学会賞(2018年)などを受賞している.

後藤慎介(Shinsuke Goto)
本書の著者であるデンリンガー教授の研究室で,博士研究員としてニクバエ類の休眠と光周性の研究を行う.その後,大阪市立大学大学院理学研究科においてキンバエ,コオロギ,カメムシ,ダニなど多様な生物の光周性の研究を行い,現在は大阪公立大学大学院理学研究科教授.生物が環境に適応するしくみとその進化に興味を持って研究を行っている.日本昆虫学会若手奨励賞(2010年),南極派遣記章(2013年),日本応用動物昆虫学会学会賞(2022年)などを受賞している.

目次

序文
日本語版への序文

1章 厳しい季節環境に立ち向かう
 1.1 休眠とは
 1.2 休眠が起こる発育段階
 1.3 社会性昆虫のコロニーの休眠
 1.4 休眠の段階

2章 避けるべき季節
 2.1 冬休眠
 2.2 夏休眠
 2.3 熱帯休眠
 2.4 高緯度への適応

3章 休眠反応の変異
 3.1 個体群内および個体群間の変異
 3.2 繰り返し起こる休眠
 3.3 長期休眠

4章 休眠のコストと代替手段
 4.1 休眠のコスト
 4.2 コストなしの休眠
 4.3 休眠の代替手段

5章 休眠誘導のための季節情報
 5.1 光周期の重要な役割
 5.2 日長の変化に対する反応
 5.3 光周期情報の受容段階
 5.4 休眠プログラムのための光受容と情報蓄積における脳の中心的役割
 5.5 光受容色素
 5.6 概日時計の関与
 5.7 光周カウンター
 5.8 光周期情報の保存
 5.9 概年リズム
 5.10 温度の役割
 5.11 寄主の休眠への影響
 5.12 環境シグナルの解釈に見られる性差
 5.13 母親による決定
 5.14 赤道付近における季節の手がかり
 5.15 環境の変動性
 5.16 休眠プログラムの中止

6章 休眠の準備
 6.1 休眠前の段階の延長と短縮
 6.2 貯蔵エネルギーの獲得
 6.3 移動
 6.4 適切な休眠場所の選択
 6.5 越冬場所の補強
 6.6 集合の形成
 6.7 色彩の違い
 6.8 構造的な違い
 6.9 アブラムシの生殖様式の切り替え

7章 休眠の状態
 7.1 発育停止
 7.2 細胞周期の停止
 7.3 代謝の低下
 7.4 酸素消費の周期性
 7.5 不連続ガス交換
 7.6 心拍
 7.7 構造上の変化
 7.8 代謝の再構成
 7.9 タンパク質合成と翻訳後修飾
 7.10 貯蔵タンパク質
 7.11 休眠中の体重減少
 7.12 水分平衡
 7.13 ストレス反応の強化
 7.14 休眠中の時計
 7.15 マイクロバイオームの役割
 7.16 休眠のダイナミクス

8章 休眠の終了と発生の再開
 8.1 休眠の期間
 8.2 休眠終了後の休止なしでの発生再開
 8.3 休眠のタイミングの重要性
 8.4 種分化の原動力としての季節的なタイミング
 8.5 春の出現を同期させる方法
 8.6 休眠発育
 8.7 休眠終了後の休止と発生再開への移行を示す分子の特徴
 8.8 発生再開を誘導する条件

9章 休眠を制御する分子シグナル経路
 9.1 ホルモン制御系
 9.2 シグナル伝達経路間のクロストーク
 9.3 FoxOの波及効果
 9.4 脂質動員ホルモン
 9.5 Wntシグナル伝達
 9.6 TGF―βシグナル伝達とBMPシグナル伝達
 9.7 カウチポテト遺伝子
 9.8 その他のシグナル伝達経路
 9.9 器官間のクロストーク
 9.10 休眠に関与するエピジェネティックなメカニズム
 9.11 低分子ノンコーディングRNA

10章 休眠の遺伝的制御
 10.1 人為淘汰実験
 10.2 遺伝様式
 10.3 QTL解析の威力と落とし穴

11章 休眠の進化
 11.1 休眠の起源
 11.2 休眠反応の進化
 11.3 社会性の進化への一歩としての休眠

12章 休眠研究の応用
 12.1 個体群モデル
 12.2 害虫管理のための休眠特性の活用
 12.3 休眠の中断
 12.4 生物的防除資材とその寄主の季節サイクルの一致
 12.5 生物的防除資材の保存期間の延長
 12.6 家畜化された種と実験系統の管理
 12.7 光害問題
 12.8 昆虫の保全
 12.9 病気の感染における役割
 12.10 ヒトの健康のためのモデル
 12.11 薬理学的な探索

引用文献
事項索引
生物名索引(和名・学名)
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