ホーム > 書籍詳細ページ
アフリカには,人びとの共生を実現するための知恵や仕組みがある。自らの不完全性を認めつつ他者を拠り所にする社会認識,徹底した交渉,日常の生活世界に豊穣を見いだし,手元にある物や知識,技術をブリコラージュして活用する力。個の自律と公共的連帯をいかに両立させるかに苦悩する現代社会の問題を解く鍵がそこにある。
「アジア・アフリカ地域研究」2023年 第23-1号、126-129頁、評者:阿部利洋氏
フセイン・イヌサー
ケープ・コースト大学古典・哲学学科(ガーナ)・上級講師。アフリカ哲学,とりわけその認識論的再検討の研究を牽引。現在は特にアフリカのことわざ/格言に表出されている知識・洞察を題材として,アフリカの認識論的な脱植民地化に取り組んでいる。主たる著書に『Understanding and Applying Critical Thinking』(共著,2019年),「Corporate social responsibility: An old wine in a new gourd」(共著,2019年),「Putting African communitarian values to the test during a pandemic」(2022年)などがある。
太田至
京都大学名誉教授。ケニアのトゥルカナ,ナミビアのヒンバなど,アフリカの牧畜社会に関する人類学的研究に従事。主たる著書に『遊動民(ノマッド)―アフリカの原野に生きる』(共編著,2004年),『Displacement Risks in Africa: Refugees, Resettlers and Their Host Population』(共編著,2005年),『アフリカ潜在力第1~5巻』(総編集,2016年),『African Virtues in the Pursuit of Conviviality: Exploring Local Solutions in Light of Global Prescriptions』(共編著,2017年),『交渉に生を賭ける―東アフリカ牧畜民の生活世界』(2021年)などがある。
大山修一
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科およびアフリカ地域研究資料センター・教授。ザンビア,ウガンダ,ニジェール,ジブチにおいて地理学を中心とする多分野横断的な研究に従事。主たる著書に『西アフリカ・サヘルの砂漠化に挑む―ごみ活用による緑化と飢餓克服,紛争予防』(2015年),『開発と共生のはざまで:国家と市場の変動を生きる』(共編著,2016年),『Towards Shared Research: Participatory and Integrative Approaches in Researching African Environments』(共著,2020年),『ザンビアを知る55章』(共編著,2020年),『Development and Subsistence in Globalising Africa: Beyond the Dichotomy』(共編著,2021年)などがある。
ヤウ・オフォス=クシ
エネルギー・自然資源大学・人文社会科学院(ガーナ)・学院長/教授。アフリカ都市におけるインフォーマル経済およびストリートの子どもたちに関する社会学的研究に従事。主たる著書に『Children’s Agency and Development in African Societies』(編著,2017年),『The Challenge of African Potentials: Conviviality, Informality and Futurity』(共編著,2020年),『Childhood, Children and the Future: An African Perspective』(共編著,2020年)などがある。
エドワード・K・キルミラ
ステレンボッシュ先端科学研究所(南アフリカ)・所長およびステレンボッシュ大学社会学・社会人類学科・教授。HIV/AIDS,性と生殖に関する健康の問題,グローバル・ヘルスなどを対象として医療社会学的な研究に従事。主たる著書に『The Politics of AIDS: Globalization, the State and Civil Society』(共著,2008年),「“Obwavu”: The cultural concepts of poverty narrated among refugees in central Uganda」(共著,2020年)などがある。
栗本英世
大学共同利用機関法人・人間文化研究機構・理事および大阪大学名誉教授。アフリカのナイル系諸民族の民族誌的研究,内戦と民族紛争・難民・平和構築を対象とした文化人類学的研究に従事。主たる著書に『民族紛争を生きる人びと―現代アフリカの国家とマイノリティ』(1996年),『未開の戦争,現代の戦争』(1999年),『Conflict, Age and Power in North East Africa』(共編著,1998年),『Remapping Ethiopia』(共編著,2002年),『共生学宣言』(共著,2020年)などがある。
オーウェン・B・シチョネ
コッパーベルト大学ダグ・ハマーショルド紛争・平和研究所(ザンビア)・前所長。南部アフリカにおける都市化や人の移動,ゼノフォビア,社会の民主化に関する社会学・人類学的な研究に従事。また,ザンビアの総選挙に関する諮問委員などの重要な公職を務める。主たる著書に『Democracy in Zambia: Challenges for the Third Republic』(共編著,1996年),『State and Constitutionalism in Southern Africa』(編著,1999年),『Anthropology and the New Cosmopolitanism: Rooted, Feminist and Vernacular Perspectives』(共著,2008年),「Refractory frontier: Intra-party democracy in the Zambian polity」(共著,2018年)などがある。
フランシス・B・ニャムンジョ
ケープタウン大学社会人類学科・主任教授。アフリカの歴史,思想,文学への根源的洞察,シチズンシップ,民族問題などに関する人類学的研究に従事。主たる著書に『Africa’s Media, Democracy and the Politics of Belonging』(2005年),『Insiders and Outsiders: Citizenship and Xenophobia in Contemporary Southern Africa』(2006年),『#RhodesMustFall: Nibbling at Resilient Colonialism in South Africa』(2016年),『Drinking from the Cosmic Gourd: How Amos Tutuola Can Change Our Minds』(2017年,Fage & Oliver賞受賞)などがある。
マイケル・ネオコスモス
ローズ大学(南アフリカ)名誉教授。アフリカの政治システム,思想の脱植民地化研究を主導,とりわけ国家,紛争,民主化に関する社会学的・政治学的・歴史的研究に従事。主たる著書に『From Foreign Natives to Native Foreigners: Explaining Xenophobia in South Africa』(2006年),『Thinking Freedom in Africa: Toward a Theory of Emancipatory Politics』(2016年,フランツ・ファノン賞受賞),『The Thought and Practice of an Emancipatory Politics for Africa』(ワンバ・ディア・ワンバとの共著,2022年)などがある。
平野(野元)美佐
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科およびアフリカ地域研究資料センター・教授。アフリカ都市民のインフォーマル経済や相互扶助活動の文化人類学的研究に従事。主たる著書に『アフリカ都市の民族誌:カメルーンの「商人」バミレケのカネと故郷』(2005年),『紛争をおさめる文化:不完全性とブリコラージュの実践』(共編著,2016年),『People, Predicaments and Potentials in Africa』(共編著,2021年)などがある。
松田素二
総合地球環境学研究所・教授および京都大学名誉教授。ケニアの首都ナイロビおよび西ケニア地域における都市化や人の移動,紛争に関する文化人類学的研究に従事。主たる著書に『都市を飼い慣らす―アフリカの都市人類学』(1996年),『抵抗する都市―ナイロビ移民の世界から』(1999年),『呪医の末裔―東アフリカ・オデニョ一族の二十世紀』(2003年),『日常人類学宣言!―生活世界の深層へ/から』(2009年),『African Virtues in the Pursuit of Conviviality: Exploring Local Solutions in Light of Global Prescriptions』(共編著,2017年),『The Challenge of African Potentials: Conviviality, Informality and Futurity』(共編著,2020年)などがある。
ケネディ・ムクトゥ
アメリカ国際大学(ナイロビ)・国際関係学科・教授。紛争と暴力,治安維持と政策に関する社会学的な研究に従事。ボン大学,ケルン大学,ワーウィック大学などと共同研究を実施し,世界銀行のコンサルタントとしても活動する。主たる著書に『Guns and Governance in the Rift Valley: Pastoralist Conflict and Small Arms』(2008年),『Security Governance in East Africa: Pictures of Policing from the Ground』(共編著,2017年)などがある。
山田肖子
名古屋大学・教授。アフリカにおける教育政策や国際開発,および知識社会学などに関する研究に従事。主たる著書に『国際協力と学校―アフリカにおけるまなびの現場』(2009年),『ガーナを知るための47章』(共編著,2011年),『Post-Education-For-All and Sustainable Development Paradigm: Structural Change and Diversifying Actors and Norms』(2016年),『Dignity of Labour for African Leaders: The Formation of Education Policy in the British Colonial Office and Achimota School on the Gold Coast』(2018年),『知識論―情報クラウド時代における“知る”という営み』(2019年),『Knowledge, School, and Social Structure in Africa』(共編著,2021年)などがある。
エリザベス・ンドゥンダ
ボン大学・紛争研究所(ドイツ)の博士課程に在籍。コミュニティ開発,女性のエンパワーメント,紛争と平和構築に関する研究に従事。ケニアのポコットおよびトゥルカナ社会の調査を実施。主たる著書に『Contribution of Collective Action Groups on Socio-Economic Wellbeing of Agro-Pastoralists in Makindu Sub-County, Kenya』(2016年)がある。
ケープ・コースト大学古典・哲学学科(ガーナ)・上級講師。アフリカ哲学,とりわけその認識論的再検討の研究を牽引。現在は特にアフリカのことわざ/格言に表出されている知識・洞察を題材として,アフリカの認識論的な脱植民地化に取り組んでいる。主たる著書に『Understanding and Applying Critical Thinking』(共著,2019年),「Corporate social responsibility: An old wine in a new gourd」(共著,2019年),「Putting African communitarian values to the test during a pandemic」(2022年)などがある。
太田至
京都大学名誉教授。ケニアのトゥルカナ,ナミビアのヒンバなど,アフリカの牧畜社会に関する人類学的研究に従事。主たる著書に『遊動民(ノマッド)―アフリカの原野に生きる』(共編著,2004年),『Displacement Risks in Africa: Refugees, Resettlers and Their Host Population』(共編著,2005年),『アフリカ潜在力第1~5巻』(総編集,2016年),『African Virtues in the Pursuit of Conviviality: Exploring Local Solutions in Light of Global Prescriptions』(共編著,2017年),『交渉に生を賭ける―東アフリカ牧畜民の生活世界』(2021年)などがある。
大山修一
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科およびアフリカ地域研究資料センター・教授。ザンビア,ウガンダ,ニジェール,ジブチにおいて地理学を中心とする多分野横断的な研究に従事。主たる著書に『西アフリカ・サヘルの砂漠化に挑む―ごみ活用による緑化と飢餓克服,紛争予防』(2015年),『開発と共生のはざまで:国家と市場の変動を生きる』(共編著,2016年),『Towards Shared Research: Participatory and Integrative Approaches in Researching African Environments』(共著,2020年),『ザンビアを知る55章』(共編著,2020年),『Development and Subsistence in Globalising Africa: Beyond the Dichotomy』(共編著,2021年)などがある。
ヤウ・オフォス=クシ
エネルギー・自然資源大学・人文社会科学院(ガーナ)・学院長/教授。アフリカ都市におけるインフォーマル経済およびストリートの子どもたちに関する社会学的研究に従事。主たる著書に『Children’s Agency and Development in African Societies』(編著,2017年),『The Challenge of African Potentials: Conviviality, Informality and Futurity』(共編著,2020年),『Childhood, Children and the Future: An African Perspective』(共編著,2020年)などがある。
エドワード・K・キルミラ
ステレンボッシュ先端科学研究所(南アフリカ)・所長およびステレンボッシュ大学社会学・社会人類学科・教授。HIV/AIDS,性と生殖に関する健康の問題,グローバル・ヘルスなどを対象として医療社会学的な研究に従事。主たる著書に『The Politics of AIDS: Globalization, the State and Civil Society』(共著,2008年),「“Obwavu”: The cultural concepts of poverty narrated among refugees in central Uganda」(共著,2020年)などがある。
栗本英世
大学共同利用機関法人・人間文化研究機構・理事および大阪大学名誉教授。アフリカのナイル系諸民族の民族誌的研究,内戦と民族紛争・難民・平和構築を対象とした文化人類学的研究に従事。主たる著書に『民族紛争を生きる人びと―現代アフリカの国家とマイノリティ』(1996年),『未開の戦争,現代の戦争』(1999年),『Conflict, Age and Power in North East Africa』(共編著,1998年),『Remapping Ethiopia』(共編著,2002年),『共生学宣言』(共著,2020年)などがある。
オーウェン・B・シチョネ
コッパーベルト大学ダグ・ハマーショルド紛争・平和研究所(ザンビア)・前所長。南部アフリカにおける都市化や人の移動,ゼノフォビア,社会の民主化に関する社会学・人類学的な研究に従事。また,ザンビアの総選挙に関する諮問委員などの重要な公職を務める。主たる著書に『Democracy in Zambia: Challenges for the Third Republic』(共編著,1996年),『State and Constitutionalism in Southern Africa』(編著,1999年),『Anthropology and the New Cosmopolitanism: Rooted, Feminist and Vernacular Perspectives』(共著,2008年),「Refractory frontier: Intra-party democracy in the Zambian polity」(共著,2018年)などがある。
フランシス・B・ニャムンジョ
ケープタウン大学社会人類学科・主任教授。アフリカの歴史,思想,文学への根源的洞察,シチズンシップ,民族問題などに関する人類学的研究に従事。主たる著書に『Africa’s Media, Democracy and the Politics of Belonging』(2005年),『Insiders and Outsiders: Citizenship and Xenophobia in Contemporary Southern Africa』(2006年),『#RhodesMustFall: Nibbling at Resilient Colonialism in South Africa』(2016年),『Drinking from the Cosmic Gourd: How Amos Tutuola Can Change Our Minds』(2017年,Fage & Oliver賞受賞)などがある。
マイケル・ネオコスモス
ローズ大学(南アフリカ)名誉教授。アフリカの政治システム,思想の脱植民地化研究を主導,とりわけ国家,紛争,民主化に関する社会学的・政治学的・歴史的研究に従事。主たる著書に『From Foreign Natives to Native Foreigners: Explaining Xenophobia in South Africa』(2006年),『Thinking Freedom in Africa: Toward a Theory of Emancipatory Politics』(2016年,フランツ・ファノン賞受賞),『The Thought and Practice of an Emancipatory Politics for Africa』(ワンバ・ディア・ワンバとの共著,2022年)などがある。
平野(野元)美佐
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科およびアフリカ地域研究資料センター・教授。アフリカ都市民のインフォーマル経済や相互扶助活動の文化人類学的研究に従事。主たる著書に『アフリカ都市の民族誌:カメルーンの「商人」バミレケのカネと故郷』(2005年),『紛争をおさめる文化:不完全性とブリコラージュの実践』(共編著,2016年),『People, Predicaments and Potentials in Africa』(共編著,2021年)などがある。
松田素二
総合地球環境学研究所・教授および京都大学名誉教授。ケニアの首都ナイロビおよび西ケニア地域における都市化や人の移動,紛争に関する文化人類学的研究に従事。主たる著書に『都市を飼い慣らす―アフリカの都市人類学』(1996年),『抵抗する都市―ナイロビ移民の世界から』(1999年),『呪医の末裔―東アフリカ・オデニョ一族の二十世紀』(2003年),『日常人類学宣言!―生活世界の深層へ/から』(2009年),『African Virtues in the Pursuit of Conviviality: Exploring Local Solutions in Light of Global Prescriptions』(共編著,2017年),『The Challenge of African Potentials: Conviviality, Informality and Futurity』(共編著,2020年)などがある。
ケネディ・ムクトゥ
アメリカ国際大学(ナイロビ)・国際関係学科・教授。紛争と暴力,治安維持と政策に関する社会学的な研究に従事。ボン大学,ケルン大学,ワーウィック大学などと共同研究を実施し,世界銀行のコンサルタントとしても活動する。主たる著書に『Guns and Governance in the Rift Valley: Pastoralist Conflict and Small Arms』(2008年),『Security Governance in East Africa: Pictures of Policing from the Ground』(共編著,2017年)などがある。
山田肖子
名古屋大学・教授。アフリカにおける教育政策や国際開発,および知識社会学などに関する研究に従事。主たる著書に『国際協力と学校―アフリカにおけるまなびの現場』(2009年),『ガーナを知るための47章』(共編著,2011年),『Post-Education-For-All and Sustainable Development Paradigm: Structural Change and Diversifying Actors and Norms』(2016年),『Dignity of Labour for African Leaders: The Formation of Education Policy in the British Colonial Office and Achimota School on the Gold Coast』(2018年),『知識論―情報クラウド時代における“知る”という営み』(2019年),『Knowledge, School, and Social Structure in Africa』(共編著,2021年)などがある。
エリザベス・ンドゥンダ
ボン大学・紛争研究所(ドイツ)の博士課程に在籍。コミュニティ開発,女性のエンパワーメント,紛争と平和構築に関する研究に従事。ケニアのポコットおよびトゥルカナ社会の調査を実施。主たる著書に『Contribution of Collective Action Groups on Socio-Economic Wellbeing of Agro-Pastoralists in Makindu Sub-County, Kenya』(2016年)がある。
序 章 「アフリカ潜在力」とブリコラージュ・不完全性・生活世界[松田素二、フランシス・B・ニャムンジョ、太田至]
一 「アフリカ潜在力」プロジェクト(二〇一一年―二〇二〇年)
二 一〇年間の「アフリカ・フォーラム」の軌跡
三 「アフリカ潜在力」の基本的視座
四 再帰性と恒常性、あるいは個的自律と公共的連帯のアポリア
五 日常生活世界の創造力と抵抗力
六 ワンバ・ディア・ワンバと生活性(lifeness)
七 パラヴァー―もうひとつの民主主義の可能性
八 パラヴァーと日常生活世界の豊饒性
九 英文による全七巻シリーズAfrican Potentials: Convivial Perspectives for the Future of Humanityの出版
一〇 各章の位置づけ
第1部 アフリカ社会を脱植民地化し解放するための方策はなにか
第1章 認識論的相対主義を恐れること勿れ
―アフリカ哲学を「普遍主義」のわなから解放する[フセイン・イヌサー(松田素二 訳)]
一 アフリカ哲学の位置
二 アフリカ哲学、始まり、方法論的危機
三 アフリカ哲学から植民地的影響を取り除く―メタ方法論的危機
四 認識論的相対主義の恐怖に立ち向かう
五 普遍主義を脱中心化する
第2章 潜在的な文化的ポテンシャルを活性化し社会的問題の解決にとり組む
―アフリカの大衆文化がもつ開放的な政治思想の可能性[マイケル・ネオコスモス(太田至 訳)]
一 アフリカ解放の思想―二〇世紀と二一世紀の視点
二 アミルカル・カブラル―大衆文化と政治をとおして歴史を取り戻す
三 ワンバ・ディア・ワンバ―集合的な知識とことわざを駆使して問題の解決にとり組む
(一)問題―アフリカの危機
(二)解決策―ボンギとパラヴァー
四 「大衆」による解放への導き―過去の活性化
第3章 自由な移動と親族のホスピタリティ
―地球規模の課題に対処するために必要な連帯を生み出すアフリカ潜在力オーウェン・B・シチョネ(大山修一・太田至 訳)
一 人間の移動と「アフリカ潜在力」
二 ホスピタリティからホスピタリティ産業へ―大規模なアパルトヘイトとしてのグローバリゼーション―
三 アフリカ人の移動性とウブントゥ(ubuntu)の潜在力
四 人びとの移動性とアフリカ人の連帯の経験
第2部 アフリカ社会において人びとの争いはいかに解決されるか
第4章 パラヴァーとコンセンサス
―アフリカ社会において相克はいかに解決されるか[太田至]
一 相克の打開・合意形成・秩序の創出
二 コンセンサスを創出する民主主義
(一)クワシ・ウィレドゥの「コンセンサスによる民主主義」に関する議論
(二)民主主義に関するデヴィッド・グレーバーの議論
(三)ワンバ・ディア・ワンバのパラヴァー論
三 カメルーンのマカ社会におけるパラヴァー
四 トゥルカナ社会における交渉と合意形成
(一)家畜に関する権利をめぐる交渉
(二)婚資の交渉
五 〈あなた〉と〈わたし〉のコンヴィヴィアルな相互行為
第5章 ケニア北西部における地域住民によるローカルな平和構築の潜在力
―ウェスト・ポコットの事例より[エリザベス・ンドゥンダ、ケネディ・ムクトゥ(太田至 訳)]
一 民族間紛争を取り巻く現状
二 平和構築を考えるための視点
三 西ポコットの周縁化と紛争
四 地域の警備と和解の実現に向けた国家の取り組み
五 ポコットの文化と地域的な統治
六 ポコット人による平和構築の取り組み
(一)平和委員会(peace committees)
(二)地域を超えたピース・キャラバン
(三)レッドカード運動
(四)女性と平和構築
七 平和構築に求められる新たなメカニズム
第6章 貪欲で残忍な首長たち
―南スーダンの人びとは、なぜ最悪の指導者に対して寛容なのか[栗本英世]
一 失敗国家、南スーダン共和国
二 ある謎―支配エリートに対する人びとの態度
三 首長の民俗モデル
四 歴史的証拠
五 強欲で残忍な首長たちと「アフリカ潜在力」
第3部 現代世界を支配するシステムにどのように対峙するのか
第7章 共感と共有を通じた知識形成[山田肖子]
一 口承文化が現代社会にもたらすもの
二 積み上げ型とネットワーク型の知識生成
(一)知識組成のもととなる価値判断
(二)情報駆動社会で深化するネットワーク型知識生成
三 関係性の中で生まれる知識
(一)コミュニケーションの媒体としての言語
(二)集合的知性
四 口承文化と文字文化における知識生成と伝達の相違
(一)口承文化におけるコミュニケーション
(二)文字文化におけるコミュニケーション
(三)口承文化と文字文化の交差
五 アフリカ伝統社会での知識論と教育
(一)口述の物語と教育
(二)Representation(写実)とPresentation(発表)の認識論的相違
(三)口承文化におけるコンヴィヴィアリティと万物流転
六 口承文化から現代の情報駆動社会への示唆
第8章 サハラ以南アフリカにおける子どもと子ども性
―開発問題の視点からみるその実態と未来への提言[ヤウ・オフォス=クシ(松田素二 訳)]
一 アフリカの子どもたちの未来は明るいか
二 グローバルな文脈におけるアフリカの子ども性概念
三 アフリカにおける子ども性と子どもの実態
四 サハラ以南アフリカの開発問題と子ども性の再検討
五 教育が子どもたちを守り、そしてアフリカを救う
第9章 ねだりと贈与
―トゥルカナとアフリカ都市の「贈り物」に関する試論
[平野(野元)美佐]
一 ねだること、ねだられること
二 トゥルカナのねだり
三 クラのねだり
四 「贈り物」か「戦利品」か
五 最初の贈与を保証するもの
六 都市のねだりと負債
七 アフリカ社会における「ねだり」の意味
第10章 ごみの価値化と「アフリカ潜在力」
―大量消費社会において忘れられた物の「生命」とその生まれ変わり[大山修一]
一 ニジェールにおける都市の清掃と砂漠緑化の取り組み
二 日本におけるごみ問題の現状
三 人間の屎尿やごみを有効活用してきた日本の生活
四 ニジェール農村の女性と食器皿
五 ニジェールで回収され、生まれ変わる金属製品
六 モノに対する日本人の精神世界と「アフリカ潜在力」
七 「大加速」時代における人類と環境の調和
第4部 この世界を周縁から再構築することはどのように可能になるのか
第11章 「アフリカ潜在力」という観点から見た在来性およびアフリカの現実の新しい捉え方
[エドワード・K・キルミラ(太田至 訳)]
第12章 セシル・ジョン・ローズ
―帝国主義的統治における「完全な紳士」[フランシス・B・ニャムンジョ(平野(野元)美佐・松田素二 訳)]
一 不完全性とコンヴィヴィアリティ
二 チュツオーラが隠喩的に描いた「完全な紳士」
三 チュツオーラが描いた頭蓋骨から得られる存在と生成の教訓
四 ローズと完全性の幻想
五 負債と恩義によって不活性化されるローズ
六 ローズから学ぶ誤った教訓
七 不完全な社会を目指して
第13章 アフリカ潜在力の源泉としての日常性と生活世界[松田素二]
一 西ケニアの山村で起きた一九世紀の土地争奪戦
二 紛争解決の探求
三 アフリカ潜在力への注目
四 「アフリカ潜在力」研究プロジェクト
五 アフリカ潜在力と日本
六 日本社会のパラヴァー
七 周縁からの相対化と三角測量
八 可能性の源泉としての日常生活
九 「正しさ」「絶対性」「完全性」への懐疑の先に
跋―「アフリカ潜在力」とオルタナティブな未来の創造
[太田至、フランシス・B・ニャムンジョ、松田素二]
索引
一 「アフリカ潜在力」プロジェクト(二〇一一年―二〇二〇年)
二 一〇年間の「アフリカ・フォーラム」の軌跡
三 「アフリカ潜在力」の基本的視座
四 再帰性と恒常性、あるいは個的自律と公共的連帯のアポリア
五 日常生活世界の創造力と抵抗力
六 ワンバ・ディア・ワンバと生活性(lifeness)
七 パラヴァー―もうひとつの民主主義の可能性
八 パラヴァーと日常生活世界の豊饒性
九 英文による全七巻シリーズAfrican Potentials: Convivial Perspectives for the Future of Humanityの出版
一〇 各章の位置づけ
第1部 アフリカ社会を脱植民地化し解放するための方策はなにか
第1章 認識論的相対主義を恐れること勿れ
―アフリカ哲学を「普遍主義」のわなから解放する[フセイン・イヌサー(松田素二 訳)]
一 アフリカ哲学の位置
二 アフリカ哲学、始まり、方法論的危機
三 アフリカ哲学から植民地的影響を取り除く―メタ方法論的危機
四 認識論的相対主義の恐怖に立ち向かう
五 普遍主義を脱中心化する
第2章 潜在的な文化的ポテンシャルを活性化し社会的問題の解決にとり組む
―アフリカの大衆文化がもつ開放的な政治思想の可能性[マイケル・ネオコスモス(太田至 訳)]
一 アフリカ解放の思想―二〇世紀と二一世紀の視点
二 アミルカル・カブラル―大衆文化と政治をとおして歴史を取り戻す
三 ワンバ・ディア・ワンバ―集合的な知識とことわざを駆使して問題の解決にとり組む
(一)問題―アフリカの危機
(二)解決策―ボンギとパラヴァー
四 「大衆」による解放への導き―過去の活性化
第3章 自由な移動と親族のホスピタリティ
―地球規模の課題に対処するために必要な連帯を生み出すアフリカ潜在力オーウェン・B・シチョネ(大山修一・太田至 訳)
一 人間の移動と「アフリカ潜在力」
二 ホスピタリティからホスピタリティ産業へ―大規模なアパルトヘイトとしてのグローバリゼーション―
三 アフリカ人の移動性とウブントゥ(ubuntu)の潜在力
四 人びとの移動性とアフリカ人の連帯の経験
第2部 アフリカ社会において人びとの争いはいかに解決されるか
第4章 パラヴァーとコンセンサス
―アフリカ社会において相克はいかに解決されるか[太田至]
一 相克の打開・合意形成・秩序の創出
二 コンセンサスを創出する民主主義
(一)クワシ・ウィレドゥの「コンセンサスによる民主主義」に関する議論
(二)民主主義に関するデヴィッド・グレーバーの議論
(三)ワンバ・ディア・ワンバのパラヴァー論
三 カメルーンのマカ社会におけるパラヴァー
四 トゥルカナ社会における交渉と合意形成
(一)家畜に関する権利をめぐる交渉
(二)婚資の交渉
五 〈あなた〉と〈わたし〉のコンヴィヴィアルな相互行為
第5章 ケニア北西部における地域住民によるローカルな平和構築の潜在力
―ウェスト・ポコットの事例より[エリザベス・ンドゥンダ、ケネディ・ムクトゥ(太田至 訳)]
一 民族間紛争を取り巻く現状
二 平和構築を考えるための視点
三 西ポコットの周縁化と紛争
四 地域の警備と和解の実現に向けた国家の取り組み
五 ポコットの文化と地域的な統治
六 ポコット人による平和構築の取り組み
(一)平和委員会(peace committees)
(二)地域を超えたピース・キャラバン
(三)レッドカード運動
(四)女性と平和構築
七 平和構築に求められる新たなメカニズム
第6章 貪欲で残忍な首長たち
―南スーダンの人びとは、なぜ最悪の指導者に対して寛容なのか[栗本英世]
一 失敗国家、南スーダン共和国
二 ある謎―支配エリートに対する人びとの態度
三 首長の民俗モデル
四 歴史的証拠
五 強欲で残忍な首長たちと「アフリカ潜在力」
第3部 現代世界を支配するシステムにどのように対峙するのか
第7章 共感と共有を通じた知識形成[山田肖子]
一 口承文化が現代社会にもたらすもの
二 積み上げ型とネットワーク型の知識生成
(一)知識組成のもととなる価値判断
(二)情報駆動社会で深化するネットワーク型知識生成
三 関係性の中で生まれる知識
(一)コミュニケーションの媒体としての言語
(二)集合的知性
四 口承文化と文字文化における知識生成と伝達の相違
(一)口承文化におけるコミュニケーション
(二)文字文化におけるコミュニケーション
(三)口承文化と文字文化の交差
五 アフリカ伝統社会での知識論と教育
(一)口述の物語と教育
(二)Representation(写実)とPresentation(発表)の認識論的相違
(三)口承文化におけるコンヴィヴィアリティと万物流転
六 口承文化から現代の情報駆動社会への示唆
第8章 サハラ以南アフリカにおける子どもと子ども性
―開発問題の視点からみるその実態と未来への提言[ヤウ・オフォス=クシ(松田素二 訳)]
一 アフリカの子どもたちの未来は明るいか
二 グローバルな文脈におけるアフリカの子ども性概念
三 アフリカにおける子ども性と子どもの実態
四 サハラ以南アフリカの開発問題と子ども性の再検討
五 教育が子どもたちを守り、そしてアフリカを救う
第9章 ねだりと贈与
―トゥルカナとアフリカ都市の「贈り物」に関する試論
[平野(野元)美佐]
一 ねだること、ねだられること
二 トゥルカナのねだり
三 クラのねだり
四 「贈り物」か「戦利品」か
五 最初の贈与を保証するもの
六 都市のねだりと負債
七 アフリカ社会における「ねだり」の意味
第10章 ごみの価値化と「アフリカ潜在力」
―大量消費社会において忘れられた物の「生命」とその生まれ変わり[大山修一]
一 ニジェールにおける都市の清掃と砂漠緑化の取り組み
二 日本におけるごみ問題の現状
三 人間の屎尿やごみを有効活用してきた日本の生活
四 ニジェール農村の女性と食器皿
五 ニジェールで回収され、生まれ変わる金属製品
六 モノに対する日本人の精神世界と「アフリカ潜在力」
七 「大加速」時代における人類と環境の調和
第4部 この世界を周縁から再構築することはどのように可能になるのか
第11章 「アフリカ潜在力」という観点から見た在来性およびアフリカの現実の新しい捉え方
[エドワード・K・キルミラ(太田至 訳)]
第12章 セシル・ジョン・ローズ
―帝国主義的統治における「完全な紳士」[フランシス・B・ニャムンジョ(平野(野元)美佐・松田素二 訳)]
一 不完全性とコンヴィヴィアリティ
二 チュツオーラが隠喩的に描いた「完全な紳士」
三 チュツオーラが描いた頭蓋骨から得られる存在と生成の教訓
四 ローズと完全性の幻想
五 負債と恩義によって不活性化されるローズ
六 ローズから学ぶ誤った教訓
七 不完全な社会を目指して
第13章 アフリカ潜在力の源泉としての日常性と生活世界[松田素二]
一 西ケニアの山村で起きた一九世紀の土地争奪戦
二 紛争解決の探求
三 アフリカ潜在力への注目
四 「アフリカ潜在力」研究プロジェクト
五 アフリカ潜在力と日本
六 日本社会のパラヴァー
七 周縁からの相対化と三角測量
八 可能性の源泉としての日常生活
九 「正しさ」「絶対性」「完全性」への懐疑の先に
跋―「アフリカ潜在力」とオルタナティブな未来の創造
[太田至、フランシス・B・ニャムンジョ、松田素二]
索引