ホーム > 書籍詳細ページ
訴訟中毒といわれた古典期アテナイにおいて、法廷弁論で勝利を収めることは生きるための必須条件であった。前半では現存する私訴弁論を題材に、当時の市井の人々の生きざまを紹介する。後半では当時の有数の弁論家デモステネス、アイスキネスが、北より迫り来るマケドニアの脅威の前に反マケドニア・親マケドニアを代表し、弁論の火花を散らす。社会の縮図といわれた法廷での抗争と時代の推移とを、ときに軽妙な筆致で活写する。
『週刊読書人』2023年1月27日付,評者:中澤務氏
木曽 明子(きそ あきこ)
大阪大学名誉教授
1936年 満州生まれ
1967年 京都大学大学院文学研究科博士課程修了
大阪大学教授、北見工業大学教授を経て2002年退職
主な著訳書
“TYRO : SOPHOCLES’ LOST PLAY” in Studies in Honour of T. B. L. Webster, Vol. I (Bristol Classical Press,1986) ; “What Happened to Deus ex Machina after Euripides?”(AbleMedia Classics Technology Center, 2004) ;(翻訳)デモステネス『弁論集2』(京都大学学術出版会、2010年)
大阪大学名誉教授
1936年 満州生まれ
1967年 京都大学大学院文学研究科博士課程修了
大阪大学教授、北見工業大学教授を経て2002年退職
主な著訳書
“TYRO : SOPHOCLES’ LOST PLAY” in Studies in Honour of T. B. L. Webster, Vol. I (Bristol Classical Press,1986) ; “What Happened to Deus ex Machina after Euripides?”(AbleMedia Classics Technology Center, 2004) ;(翻訳)デモステネス『弁論集2』(京都大学学術出版会、2010年)
巻頭地図
はじめに
走れ、法廷へ!
序 章 アテナイの民主政
―成熟の時
1 不死鳥のごとく
民会(エックレーシアーあるいはデーモス)
民衆法廷(ディカステーリオン)
政務審議会(ブーレー)
アマチュア政治の思想
2 弁論の世紀
パレーシアー(言論の自由)
挫折を経て
戦火、海陸を問わず
第1章 「立替分を返せ!」(『ポリュクレスへの抗弁』)
―アテナイ海軍の台所は火の車
1 ヘレスポントス海域危うし
糧道を確保せよ
三段櫂船奉仕
船長アポロドロス
エーゲ海を往復
船員たち
穀物商船護送任務
2 交替役ポリュクレス
名門の御曹司
引継ぎ拒否?
事前取引
3 将軍ティモマコスの悪事
遠征将軍の役得
親戚の手紙
4 アポロドロスの将軍告発
将軍は戦場よりも法廷で命を落とす
5 立替金返還請求の訴訟―『ポリュクレスへの抗弁』
憂国の弁
十一番目の弁論家アポロドロス
アポロドロスの実像
6 ポリス魂はどこへ?
憎まれっ子世に憚る
パシオンの銀行
イソクラテスの弁論学校
植民地復権―ケロネソス半島とアンピポリス
ビュザンティオン、第二次海上軍事同盟から脱退
同盟市戦争そしてアンピポリス戦争
第2章 「言いくるめられてたまるか」(『ラクリトスへの抗弁』)
―甦る海上交易ネットワーク
1 海上交易再興は喫緊の課題
同盟市戦争に敗北
海上交易訴訟を非アテナイ人にも開放する
2 長兄ラクリトス、妨訴抗弁に立つ
弁論術教師が海上交易訴訟の被告に?
妨訴抗弁とは?
パセリス人店卸し
3 真正史料―海上貸付け契約文書
パセリス人二兄弟との海上貸付け契約文書
往路の契約違反
黒海交易事情
復路の契約違反
アテナイの穀物供給を守るには
4 弁論術教師ラクリトス
弁論術教師とは
ラクリトスの「詭弁」
告発の行方
作品年代
5 気がつけば北方に
後進未開の国?
マケドニア王ピリッポス二世
アテナイ再興
ピリッポス、テルモピュライに現われる
オリュントスを死守せよ
第3章 「出稼ぎに行ってる間に……」(『パンタイネトスへの抗弁』)
―国富の源泉、ラウレイオン銀山
1 ラウレイオン鉱脈
大鉱床発見
鉱山経営は請負制
「買戻し特約つき売却」―パンタイネトスの商法
金貸しニコブロス、黒海に……
厄介払いに如くはなし
2 パンタイネトス、訴訟を起こす
パンタイネトス、二タラントンをせしめる
次の標的は?
3 ニコブロス、妨訴抗弁に立つ
その告訴は法的に無効
「訴権放棄と免責」後の提訴は無効
アテナイにいなかったのに
シュコパンテス(告発屋)を許すな!
パンタイネトスの方が一枚上手?
判定はどちらに?
4 鉱山ビジネス
鉱山経営者たち
復興アテナイのあらたなライバル
5 マケドニア王国の鉱山事業
パンガイオン金山
オリュントス陥落
第4章 「なんで私が?」(『エウブリデスへの抗弁』)
―ポリス・アテナイの市民
1 三つの身分の共棲する社会―市民・居留外国人・奴隷
市民
居留外国人
奴隷
ポリス社会の閉鎖性
2 「市民」となるためには
誕生・プラトリア入籍
市民となる
区民名簿に名前があるかないか
3 市民資格一斉点検
エウクシテオス、市民権を否認される
議事を取り仕切ったのは区長エウブリデス
その日、区民集会で……
4 「なんで私が……」エウクシテオスの上訴弁論
父母ともに真正市民
エウブリデスの悪辣さは父親譲り
政治家エウブリデス
ハリムス区民エウクシテオス
5 エウクシテオスは市民? 非市民?
出生
貧困からの脱出
代作者デモステネス
他の区でも
6 「国勢調査」
区民名簿再確認の効用
「国勢調査」はポリス衰退への焦りか
ピリッポス王、第三次神聖戦争に参入
第5章 マケドニアとの和議
―「ピロクラテスの講和」
1 ピリッポス王の外交戦略
ピリッポス王の視線は?
戦争か平和か
デモステネス、表舞台に
第一回対マケドニア使節
アイスキネス登場
マケドニア王宮にて―国王謁見
類いまれな貴人
エラペボリオン月一八日と一九日の臨時民会
第二回対マケドニア使節
デモステネス、疑念を抱く
アイスキネスの民会報告
2 第三回対マケドニア使節
ピリッポス王からの出動要請
ポキス降伏
ポキス懲罰会議
アンピクテュオニア神聖同盟会議の二議席をピリッポス王に
3 「ピロクラテスの講和」成る
講和成って人々は
反マケドニア王国の烽火上がる
第6章 マケドニアの走狗を許すな
―法廷闘争、敗退、再開
1 デモステネス、アイスキネスを告発する
執務審査
逆襲「演説者資格欠如」
2 アイスキネス『ティマルコス弾劾』
男色売買禁止法
古代ギリシアの男性同性愛・少年愛
アテナイ市民と男色売買
アイスキネスの弁論術―身を乗り出して聴き入る裁判員たち
ティマルコスの不可思議―どうしてこれまで?
勝者アイスキネス
3 雪辱なるか?
反マケドニアの闘士デモステネス
いまいましい「ピロクラテスの講和」
呪うべきはピリッポス王の手先
君子豹変?
「ピロクラテスの講和」条約修正
時こそ来たれ!
4 デモステネス『使節職務不履行について』vsアイスキネス『使節職務不履行について』
同じ時に同じ場所で
竜虎相搏つ戦いやいかに
デモステネス、くじけず
アイスキネスに逆風
デモステネス、繁忙を極める
第7章 カイロネイアの戦い
―ギリシアの自由の終焉
1 「ピロクラテスの講和」破棄
最後通牒
戦時態勢へ突入
ピリッポス、ふたたび神聖戦争の指揮をとる
2 左翼にアテナイ、右翼にテバイ、ギリシア連合軍の奮戦は
マケドニア軍圧勝
勝者ピリッポスはアテナイに寛大であった
ピリッポス、「コリントス同盟」を設立、盟主となる
3 デモステネス、ポリス再興に献身
戦争責任
デモステネスへの冠授与提案は違法?
第8章 なお落日の余光きらめく
1 アイスキネス『クテシポン弾劾』vsデモステネス『冠について』
「冠裁判」
クテシポン提案の違法条項三点
民会決議案に嘘を書いてはならない
亡国の大罪、カイロネイア戦
2 デモステネス、畢生の大事業を再現
あの日、エラテイアに
デモステネス、テバイを動かす
「アテナイの使命に殉じた戦い」
勝負あり
終 章 ポリス・アテナイの過去・現在・未来
1 愛国者ふたり
政治家デモステネス
ギリシア第一のポリス
アテナイのほまれ
アイスキネスの政治思想
「コイネー・エイレーネー(共通平和)」
2 覇者ピリッポス
帝王の器
ピリッポス王の人間像
おわりに―弁論、その後
謝 辞
古代ギリシア史年表
図版出典一覧
略記一覧
用語解説
参考文献一覧
索引(人名・事項)
はじめに
走れ、法廷へ!
序 章 アテナイの民主政
―成熟の時
1 不死鳥のごとく
民会(エックレーシアーあるいはデーモス)
民衆法廷(ディカステーリオン)
政務審議会(ブーレー)
アマチュア政治の思想
2 弁論の世紀
パレーシアー(言論の自由)
挫折を経て
戦火、海陸を問わず
第1章 「立替分を返せ!」(『ポリュクレスへの抗弁』)
―アテナイ海軍の台所は火の車
1 ヘレスポントス海域危うし
糧道を確保せよ
三段櫂船奉仕
船長アポロドロス
エーゲ海を往復
船員たち
穀物商船護送任務
2 交替役ポリュクレス
名門の御曹司
引継ぎ拒否?
事前取引
3 将軍ティモマコスの悪事
遠征将軍の役得
親戚の手紙
4 アポロドロスの将軍告発
将軍は戦場よりも法廷で命を落とす
5 立替金返還請求の訴訟―『ポリュクレスへの抗弁』
憂国の弁
十一番目の弁論家アポロドロス
アポロドロスの実像
6 ポリス魂はどこへ?
憎まれっ子世に憚る
パシオンの銀行
イソクラテスの弁論学校
植民地復権―ケロネソス半島とアンピポリス
ビュザンティオン、第二次海上軍事同盟から脱退
同盟市戦争そしてアンピポリス戦争
第2章 「言いくるめられてたまるか」(『ラクリトスへの抗弁』)
―甦る海上交易ネットワーク
1 海上交易再興は喫緊の課題
同盟市戦争に敗北
海上交易訴訟を非アテナイ人にも開放する
2 長兄ラクリトス、妨訴抗弁に立つ
弁論術教師が海上交易訴訟の被告に?
妨訴抗弁とは?
パセリス人店卸し
3 真正史料―海上貸付け契約文書
パセリス人二兄弟との海上貸付け契約文書
往路の契約違反
黒海交易事情
復路の契約違反
アテナイの穀物供給を守るには
4 弁論術教師ラクリトス
弁論術教師とは
ラクリトスの「詭弁」
告発の行方
作品年代
5 気がつけば北方に
後進未開の国?
マケドニア王ピリッポス二世
アテナイ再興
ピリッポス、テルモピュライに現われる
オリュントスを死守せよ
第3章 「出稼ぎに行ってる間に……」(『パンタイネトスへの抗弁』)
―国富の源泉、ラウレイオン銀山
1 ラウレイオン鉱脈
大鉱床発見
鉱山経営は請負制
「買戻し特約つき売却」―パンタイネトスの商法
金貸しニコブロス、黒海に……
厄介払いに如くはなし
2 パンタイネトス、訴訟を起こす
パンタイネトス、二タラントンをせしめる
次の標的は?
3 ニコブロス、妨訴抗弁に立つ
その告訴は法的に無効
「訴権放棄と免責」後の提訴は無効
アテナイにいなかったのに
シュコパンテス(告発屋)を許すな!
パンタイネトスの方が一枚上手?
判定はどちらに?
4 鉱山ビジネス
鉱山経営者たち
復興アテナイのあらたなライバル
5 マケドニア王国の鉱山事業
パンガイオン金山
オリュントス陥落
第4章 「なんで私が?」(『エウブリデスへの抗弁』)
―ポリス・アテナイの市民
1 三つの身分の共棲する社会―市民・居留外国人・奴隷
市民
居留外国人
奴隷
ポリス社会の閉鎖性
2 「市民」となるためには
誕生・プラトリア入籍
市民となる
区民名簿に名前があるかないか
3 市民資格一斉点検
エウクシテオス、市民権を否認される
議事を取り仕切ったのは区長エウブリデス
その日、区民集会で……
4 「なんで私が……」エウクシテオスの上訴弁論
父母ともに真正市民
エウブリデスの悪辣さは父親譲り
政治家エウブリデス
ハリムス区民エウクシテオス
5 エウクシテオスは市民? 非市民?
出生
貧困からの脱出
代作者デモステネス
他の区でも
6 「国勢調査」
区民名簿再確認の効用
「国勢調査」はポリス衰退への焦りか
ピリッポス王、第三次神聖戦争に参入
第5章 マケドニアとの和議
―「ピロクラテスの講和」
1 ピリッポス王の外交戦略
ピリッポス王の視線は?
戦争か平和か
デモステネス、表舞台に
第一回対マケドニア使節
アイスキネス登場
マケドニア王宮にて―国王謁見
類いまれな貴人
エラペボリオン月一八日と一九日の臨時民会
第二回対マケドニア使節
デモステネス、疑念を抱く
アイスキネスの民会報告
2 第三回対マケドニア使節
ピリッポス王からの出動要請
ポキス降伏
ポキス懲罰会議
アンピクテュオニア神聖同盟会議の二議席をピリッポス王に
3 「ピロクラテスの講和」成る
講和成って人々は
反マケドニア王国の烽火上がる
第6章 マケドニアの走狗を許すな
―法廷闘争、敗退、再開
1 デモステネス、アイスキネスを告発する
執務審査
逆襲「演説者資格欠如」
2 アイスキネス『ティマルコス弾劾』
男色売買禁止法
古代ギリシアの男性同性愛・少年愛
アテナイ市民と男色売買
アイスキネスの弁論術―身を乗り出して聴き入る裁判員たち
ティマルコスの不可思議―どうしてこれまで?
勝者アイスキネス
3 雪辱なるか?
反マケドニアの闘士デモステネス
いまいましい「ピロクラテスの講和」
呪うべきはピリッポス王の手先
君子豹変?
「ピロクラテスの講和」条約修正
時こそ来たれ!
4 デモステネス『使節職務不履行について』vsアイスキネス『使節職務不履行について』
同じ時に同じ場所で
竜虎相搏つ戦いやいかに
デモステネス、くじけず
アイスキネスに逆風
デモステネス、繁忙を極める
第7章 カイロネイアの戦い
―ギリシアの自由の終焉
1 「ピロクラテスの講和」破棄
最後通牒
戦時態勢へ突入
ピリッポス、ふたたび神聖戦争の指揮をとる
2 左翼にアテナイ、右翼にテバイ、ギリシア連合軍の奮戦は
マケドニア軍圧勝
勝者ピリッポスはアテナイに寛大であった
ピリッポス、「コリントス同盟」を設立、盟主となる
3 デモステネス、ポリス再興に献身
戦争責任
デモステネスへの冠授与提案は違法?
第8章 なお落日の余光きらめく
1 アイスキネス『クテシポン弾劾』vsデモステネス『冠について』
「冠裁判」
クテシポン提案の違法条項三点
民会決議案に嘘を書いてはならない
亡国の大罪、カイロネイア戦
2 デモステネス、畢生の大事業を再現
あの日、エラテイアに
デモステネス、テバイを動かす
「アテナイの使命に殉じた戦い」
勝負あり
終 章 ポリス・アテナイの過去・現在・未来
1 愛国者ふたり
政治家デモステネス
ギリシア第一のポリス
アテナイのほまれ
アイスキネスの政治思想
「コイネー・エイレーネー(共通平和)」
2 覇者ピリッポス
帝王の器
ピリッポス王の人間像
おわりに―弁論、その後
謝 辞
古代ギリシア史年表
図版出典一覧
略記一覧
用語解説
参考文献一覧
索引(人名・事項)