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学術選書 103

異端思想から近代的自由へ

大津 真作

四六並製・364頁

ISBN: 9784814004140

発行年月: 2022/04

  • 本体: 2,000円(税込 2,200円
  • 在庫あり
 
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内容

近代思想の萌芽はオッカムに始まると言ってよい。個を離れて普遍はない。教会のカトリシスムという普遍性から個を解放するなかで、近代的な自由が開花する。本書はデカルト、スピノザらいわゆる異端思想家たちが目指したものが、個としての人間の自由に結実し、やがて政治思想、経済思想へと発展する過程を、独自の史観のもとに描く。

プロフィール

大津 真作(おおつ しんさく)

1945年大阪府に生まれる。
甲南大学名誉教授。
専門はヨーロッパ社会思想史。

主な著訳書
『啓蒙主義の辺境への旅』(世界思想社、1986)、『倫理の大転換』(行路社、2012)、『思考の自由とはなにか』(晃洋書房、2012)、『異端思想の500年』(学術選書、京都大学学術出版会、2016)など。
ジャルダン『トクヴィル伝』(晶文社、1994)、フュレ『フランス革命を考える』(岩波書店、1989)、レーナル『両インド史 東インド篇』上下巻(法政大学出版局、2009, 2011)、レーナル『両インド史 西インド篇』上巻(法政大学出版局、2015)、ランゲ『市民法理論』、フリードリヒ二世『反マキアヴェッリ論』、トクヴィル『合衆国滞在記』、ネッケル『穀物立法と穀物取引について』(訳者代表)(以上、近代社会思想コレクション、京都大学学術出版会、2013, 2016, 2018, 2021)など。

目次

序 章 唯名論の現代性
   言葉と普遍性
   カトリックと普遍性
   言葉が世界を作った
   普遍と個別の矛盾
   神は三位一体か?
   ロスケリヌスの三神論
   普遍とは?
   普遍の個別化
   オッカムの剃刀
   オッカムの普遍論
   普遍を自由に操る
   認識活動の自由
   意志と想像力
   言葉の力は主体の知性の力

第1章 デカルトにおける精神の自由と合理主義
 1 デカルトの人生とその著作『宇宙論』、『方法序説』
   平和と寛容の子
   デカルトの幼少期
   財産処分
   イエズス会のコレージュ
   思想転回
   バラ十字会
   自己を見つめる
   『宇宙論』の執筆と出版の断念
   『方法序説』の執筆
   『方法序説』の概要
 2 デカルトへの哲学的批判
   『省察』について
   否定は欠如
   目的原因の否定
   意志は自由
   感覚論者の批判
 3 オランダにおけるデカルト攻撃
   プロテスタントによる攻撃
   人間の自由と神による救済決定
   デカルトは無神論者か?
 4 人間の自由意志と精神の永遠性
   自由意志の確立
   精神の不死性と身体の可死性
   エリーザベトからの批判
 5 デカルトのマキアヴェッリ論
   デカルト、『君主論』を読む
   財産重視
   嫉妬ないし羨望は悪徳
   デカルトの敵

第2章 スピノザにおける思想の自由
 1 自由思想家スピノザ
   亡命ユダヤ人の家系
   スペインのユダヤ人
   オランダのユダヤ人
   スピノザの青年時代
   父の死と遺産相続
   ユダヤ教からの破門
   最初の論文
   レインスブルフ時代
   『知性改善論』
 2 呪われた書、『神学・政治論』
   『神学・政治論』の執筆意図
   『神学・政治論』の構成と内容
   旧約聖書批判
   神学と哲学
   政治論または国家の基礎論
   『神学・政治論』の刊行とその反響

第3章 ルソーにおける自然状態と社会状態
 1 自然状態の人間
   自然状態のジレンマ
   楽園喪失とその意味
   自然状態での生産活動
   自然状態における人間の自由
   文明状態は病的状態
   「自然に帰れ」
   ルソーの三大告白文書
 2 自然状態から社会状態へ
   人間の霊性
   神に背く自由
   自己完成能力のパラドックス
   憐れみと同情
   スミスの反論
   未開人の性愛
   偶然が社会状態を招く
   観念と歴史
   私的所有と先占権
   私有観念の発生
   アリストテレスの形而上学的思考
   分業と交換
 3 ルソーの家族観
   力と権利の分離
   男女の愛と家族
   反社会性とルソー
   小所有者の代弁者
   家族愛のユートピア
 4 人間の不平等状態
   社会状態の時期区分
   不平等の最終段階

第4章 労働、禁欲、慈善の近代思想史
 1 マルクスの『資本論』における本源的蓄積
   労働者の誕生
   先行的か、本源的か
   交換、分業、蓄積
   自由な労働者の創出
   過去の大罪
   歴史としての資本の本源的蓄積
   国債と近代的租税
 2 カルヴィニズムにおける世俗内禁欲としての労働
   宗教改革の社会的影響
   神に向き合う個人
   魂の救済
   労働は禁欲
   汎「罪」論
 3 マンデヴィルの幸福な経済自然主義
   『蜂の寓話』の社会論理学
   慈善なき汎労働社会モデル

第5章 アダム・スミスの労働のユートピアとその崩壊
 1 人間の効用価値
   スミスへのマンデヴィルの影響
   労働の価値
   公平に収入が得られる社会
   善なる自由社会と悪なる強制社会
   労働の分割としての分業
   富があふれる豊かな社会
   国家も解放される
   商品交換社会の人間の条件
 2 慈善が強制されない社会
   慈善は忌むべき浪費
   他人の感情は不可知
   カタルシスは自己利益
   損得勘定の社会
 3 唯名論的自己利益社会
   商品社会の唯名論的特徴
   スミスにおける公共支出論
   軍事費の肥大化
   スミスの経済主義的軍事論
   戦争と公債
   スミスの財政再建策
   植民地の放棄
   『諸国民の富』の運命

第6章 マルクスによるスミス批判
   奴隷労働
   人類愛溢れるケース
   重農主義の影響
   スミスのドグマ
   スミスの「粗雑な」唯名論的方法論
   交換価値と使用価値
   資本蓄積と分業
   スミスはどのような時代にいるか?
   剰余労働の発見
   市民階級の失われた楽園
   生産資本と商業資本の区別
   生産的労働と不生産的労働
   どんな労働が生産的労働なのか?
   犯罪は生産的?
   勤労と分業と収入のディストピア

終 章 エンゲルスと未来社会
 1 ヘーゲルとエンゲルスの国家論
   国家とは
   ヘーゲルの人倫的国家観
   家族は人倫で国家を補完
   国家権力と議会
   自由と平等の未来社会
 2 私有財産、家族の未来
   女性が解放される未来社会
   婚姻制度の古代史
   婚姻制度の近代史
   『家族・私有財産・国家の起源』が描く未来

あとがき

文献解題
索引(人名・事項・出典)
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