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学術選書 100

ベースボールと日本占領

谷川 建司

四六並製・330頁

ISBN: 9784814003723

発行年月: 2021/11

  • 本体: 2,000円(税込 2,200円
  • 在庫あり
 
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内容

占領期のアメリカ軍人たちは、戦前の日本人が実は日米野球でベーブ・ルースやルー・ゲーリッグに熱狂した野球愛好者であったことを知る。かつては「理解不能」な存在だった日本人を、米国的な価値観の下、いかに自陣営に組み込もうとしたのか。武道を禁止する一方で野球を普及するスポーツ統制によって、日本人の「心を掴む」戦いを進めた文化外交政策の実相に迫る。

受賞

第四回野球文化學會学会賞(研究部門)

書評

『週刊ポスト』2021年12月24日号、評者:川本三郎氏
『産経新聞』2022年1月16日付 読書面「聞きたい」

プロフィール

谷川 建司(たにかわ たけし)
早稲田大学政治経済学術院 客員教授
博士(社会学)。茨城大学人文学部コミュニケーション学科助教授、早稲田大学政治経済学術院客員助教授を経て現職。

主な著作
『「イージー・ライダー」伝説 ピーター・フォンダとデニス・ホッパー』(1996年、筑摩書房)、『レオナルド・ディカプリオへの旅』(1999年、マガジンハウス)、『アメリカ映画と占領政策』(2002年、京都大学学術出版会)、『アメリカの友人 東京デニス・ホッパー日記』(2011年、キネマ旬報社)、『戦後「忠臣蔵」映画の全貌』(2013年、集英社クリエイティブ)、『高麗屋三兄弟と映画』(2018年、雄山閣)、『イージー☆ライダー 敗け犬(ルーザー)たちの反逆―ハリウッドをぶっ壊したピーター・フォンダとデニス・ホッパー』(2020年、径書房)、Baseball in Occupied Japan: US Postwar Cultural Policy, Kyoto University Press, 2021(本書の英語版)、『近衛十四郎十番勝負』(2021年、雄山閣)、編著はCultural Politics around East Asian Cinema 1939-2018, Kyoto University Press, 2019、『映画産業史の転換点―経営・継承・メディア戦略』(2020年、森話社)等多数。その他翻訳書、論文が多数ある。

目次

序 論 マッカーサーのスポーツ奨励策
   占領軍=アメリカの国益を追求する為政者
   飴と鞭の二つの側面を併せ持つ占領政策
   3S政策による被占領国民の不満のガス抜き
   二大リーグ制度とコミッショナー制度の導入
   〝見るスポーツ〟と〝科学的トレーニング〟
   アメリカの対外文化外交政策とJ・ロビンソン

第1章 野球の復興と日米関係
 1 スポーツを通じての民主化
   ベーブ・ルースと日米大野球戦
   〝ストライク・ワン〟改め〝ヨシ一本〟
   スポーツと民主主義
   野球復興事業責任者=W・マーカット
 2 東西対抗戦の実施
   東西対抗戦で露呈した戦後の問題
 3 天皇とベースボール
   熱烈なプロ野球ファンとしての著名人
   現人神からスポーツ好きへの天皇の変身
   早慶戦へのマッカーサーの祝辞

第2章 占領下日本のスポーツ改革
 1 改革を迫られた武道
   戦後に異なる道を選択した柔道と剣道
   スポーツとしての柔道を目指した講道館
 2 大相撲の興行改革
   双葉山の宗教スキャンダルと相撲協会改革
   メモリアル・ホールと大相撲の露天興行
 3 プロ野球における二大リーグ制への模索
   短命に終わった国民野球リーグ
 4 科学的スポーツとしての拳闘
   拳闘から新時代の呼称としてのボクシングへ
   無謀だったピストン堀口のカムバック
   科学的トレーニングで頂点を掴んだ白井義男

第3章 武士道の延長としての剣道への弾圧
 1 スポーツにおける民主化促進阻害要素の排除
   占領期は〝剣道冬の時代〟という言説
 2 武士道の延長としての剣道
   〝チャンバラ禁止〟と剣道への弾圧
   王貞治の真剣での素振り
 3 占領期における武道政策の流れ
   撓競技への言い替え
 4 学校剣道の禁止と大日本武徳会への解散命令
   占領政策開始前の武道政策の検討
   大日本武徳会の解散・財産没収
 5 「道場剣道」と「警察剣道」への対応
   警察や道場での稽古の継続
   剣道・柔道を学ぶ占領軍スタッフ
 6 処分される剣道具の野球用具への転用
   面金のキャッチャー・マスクへの改造
 7 「剣道への厳しい弾圧」という幻想
   警察剣道の訓練中止
   占領期は本当に〝剣道冬の時代〟だったのか?
   新生剣道の強調による生き残りへの模索

第4章 CIE映画を通じてのスポーツ普及
 1 アメリカの対日映画政策のコンテンツとしてのスポーツ
   さまざまな映画フォーマットでのベースボールの利用
 2 CIE映画の概要
 3 CIE映画においてスポーツの占めていた位置
   占領期間中に公開されたCIE映画の本数
   ベースボール/スポーツを扱ったCIE映画
 4 一九五〇年における一都三県のCIE映画上映記録分析
   ベースボール/スポーツを扱ったCIE映画を見た人の数
   ベースボール関連CIE映画八作品の概要
   少年野球リーグの理想と目的
   スポーツ関連CIE映画五本の概要
   アダプテーション作業と公開月
   一都三県のCIE映画上映記録から何が読み取れるか
 5 福島県におけるCIE映画上映報告書
   福島県CIE映画上映報告書から読み取れるもの
   CIE映画を見た観客の感想
 6 アメリカの対外文化外交政策の中での情報・教育映画
   『ボールプレイヤーズ』
   『ベースボール・トゥデイ』

第5章 VOAラジオ番組におけるジャッキー・ロビンソンのイメージの利用
 1 背景としてのメジャーリーグ・ベースボールにおける人種の壁の打破
   稀有なアスリートとしてのジャッキー・ロビンソン
   愛国者としてのジャッキー・ロビンソン
 2 VOAの歴史と日本での展開
   戦時情報局の情報プログラムとしてのVOA
   VOAの日本向け放送の歴史
   VOAのキラー・コンテンツとしての野球放送
 3 VOAプレス・リリースにみるベースボール関連放送の具体例
   VOA放送プログラムにおけるスポーツの比重
   日本向けベースボール関連放送プログラム
   オールスター・ゲームとVOAスポーツ・エディター=ボブ・アリソン
   ボビー・シャンツと「アメリカから日本の人々へ」
   ジョー・ディマジオが日本のリスナーに語り掛けるインパクト
   日本での試合が現役最後の試合となったディマジオ
   ヤンキース名監督ケイシー・ステンゲル
 4 VOA「ジャッキー・ロビンソン:リーディング・ベースボール・スター」
   日本人向けのジャッキー・ロビンソン登場の番組
   近東向けのジャッキー・ロビンソン登場の番組
   南米向けのジャッキー・ロビンソン登場の番組
   フィリピン向けのジャッキー・ロビンソン登場の番組
   アメリカの文化外交政策としてのジャッキー・ロビンソンの利用

第6章 映画・雑誌・漫画におけるジャッキー・ロビンソンのイメージの利用
 1 伝記映画『ジャッキー・ロビンソン物語』
   本人主演による伝記映画
   日本で公開されなかった事情
   占領下日本では封印されたアメリカ国内の人種差別の描写
   USIAにおける黒人アスリートの利用
 2 活字メディアおよび漫画によるジャッキー・ロビンソンの物語の流布
   野球雑誌におけるロビンソンの物語の流布
   子ども向け漫画におけるロビンソンの物語の流布
   シリーズ化されたベースボール・ヒーロー物
   日米で同時出版されたロビンソンの漫画の相違点
 3 ロビンソンが受けた差別についての表象
   アメリカにおける黒人差別の表象
   メジャーリーガーとなったロビンソンの試練
   日本人にはなじみの深い艱難辛苦の末の栄光の物語
 4 ロビンソンらによって実践された道徳的にお手本となる行為・考え方の表象
   差別を克服するのに必要な、力のある白人のサポート
 5 英語版から日本語版に翻訳されるに当たって加えられた変更点
   恋愛の要素がカットされた日本版
   日本人読者にとって理解しやすくするための工夫
 6 日米二つのヴァージョンの漫画からわかること
   アメリカの強力なリーダーシップの許で努力すべき日本国
   映画よりも差別描写のチェックが緩かった漫画メディア
   ディマジオ同様に日本での試合が引退試合となったロビンソン

第7章 サンフランシスコ・シールズとコカ・コーラ
 1 野球復興の総仕上げとしての日米野球復活
   サンフランシスコ・シールズというチームの立ち位置
 2 日米野球ビジネスと親善目的の強調
   マーカットの横顔とベースボールへの情熱
   GHQが勧進元となるビジネスのための理論武装
   シールズ来日にかかわるコストの試算
 3 シールズ来日狂想曲
   日本の野球界と映画界の緊密な関係
   シールズ来日のインパクト
   オドール監督との握手写真があだとなった横綱前田山
   来日中のシールズの戦績
   〝オドール・デー〟開催の真相
 4 コカ・コーラ社とペプシコーラ社
   メインの広告主としての両コーラ・カンパニー
   コーラ・カンパニーの日本人向けビジネス
 5 シールズ来日とその副産物
   スポーツを通じての相互理解とシールズ帰国後の状況
   ウォーリー与那嶺の日本球界での活躍
   その後の日米野球の発展

終章 スポーツは民主主義促進の役に立ったのか
   GHQは日本文化を破壊したのか
   押し付けではなくアメリカから学ぼうとした日本人
   アメリカによる対外文化外交政策の中でのベースボール
   OWI、国務省、USIAと受け継がれたスポーツを用いた政策
   スポーツは民主主義促進の役に立ったのか

あとがき
参考文献表
索引(人名/事項)
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