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環太平洋地域の移動と人種

統治から管理へ、遭遇から連帯へ

田辺 明生・竹沢 泰子・成田 龍一 編

A5上製・428頁

ISBN: 9784814002481

発行年月: 2020/01

  • 本体: 3,600円(税込 3,960円
  • 在庫あり
 
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内容

西欧の帝国主義・国民国家は肌の色など身体的特徴を「人種」としてカテゴリー化した。しかし今やさらに先鋭化した人種化が席捲している。文化や生活習慣など見えない差異で線をひく厄介な人種化は、人が複雑に移動し交錯してきた「環太平洋型」といえる。本書は環太平洋型の人種化の史的起源と現状を示し、さらに芸術や対話の場を通してオルタナティブなグローバル化の道を探る。

書評

『図書新聞』2020年11月28日付、評者:飯島真里子氏
『アメリカ学会会報』No.205(2021年4月)、評者:菅(七戸)美弥氏

プロフィール

執筆者紹介(掲載順、★は編者)

平野克弥(ひらの かつや)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)歴史学部准教授。専門は、近世・近代思想史・文化史、歴史理論。シカゴ大学博士号。主な著作に、The Politics of Dialogic Imagination: Power and Popular Culture in Early Modern Japan. University of Chicago Press, 2013. 「「明治維新」を内破するヘテログロシア――アイヌの経験と言葉」(『現代思想 臨時増刊号 総特集 明治維新の光と影――150年目の問い』2018年)、「ヘーゲルの亡霊と民衆史のアポリア――安丸歴史学の認識論的前提の問題をめぐって」(『現代思想 臨時増刊号 総特集 安丸良夫――民衆思想とは何か』2016年)、などがある。

鬼丸武士(おにまる たけし)
九州大学大学院比較社会文化研究院准教授。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士(地域研究)。専門は、比較地域研究、アジア国際関係史。主な著作に、『上海「ヌーラン事件」の闇――戦間期アジアにおける地下活動のネットワークとイギリス政治情報警察』(書籍工房早山、2014年)、「近代アジアにおける越境する革命家の「旅」と都市」(『国際政治』第191号、2018年)、「海峡植民地シンガポールの「海峡性」と植民地統治」(都市史学会編『都市史研究』第6号、2019年)、などがある。

関口寛(せきぐち ひろし)
四国大学経営情報学部准教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)。専門は、歴史社会学、日本近現代史。主な著作に、「「人間は尊敬するべきものだ」という思想――ゴーリキー『どん底』の受容と全国水平社の創立」(『初期社会主義研究』第28号、2019年)、「賀川豊彦と科学的人種主義」(坂野徹、竹沢泰子編『科学と社会の知:Knowledge』東京大学出版会、2016年)、「20世紀初頭におけるアカデミズムと部落問題認識――鳥居龍蔵の日本人種論と被差別部落民調査の検討から」(『社会科学』第91号、2011年)、などがある。

徳永悠(とくなが ゆう)
京都大学人文科学研究所助教。University of Southern California, Ph.D. (History)。専門は、移民史。主な著作に、「排日移民法と在メキシコ日本人――米墨国境地域における日本人移民社会圏の発展」(『移民研究年報』第24号、2018年)、“Japanese Internment as an Agricultural Labor Crisis: Wartime Debates over Food Security versus Military Necessity, "Southern California Quarterly, 101, no. 1, University of California Press, 2019. 「「メキシコ人問題」と移民メディア――1920年代ロサンゼルスにおける排外主義とメキシコ人移民の抵抗」(『アメリカ史研究』第42号、2019年)、などがある。

吉村智博(よしむら ともひろ)
大阪人権博物館非常勤嘱託学芸員。立命館大学文学部史学科卒業、大阪市立大学博士(創造都市)。専門は、近代都市下層社会史。主な著作に、『近代大阪の部落と寄せ場――都市の周縁社会史』(明石書店、2012年)、『かくれスポット大阪』(正・続)(解放出版社、2013・2015年)、「近代日本社会と被差別部落の表象」(斉藤綾子、竹沢泰子編『人種神話を解体する1 可視性と不可視性のはざまで(In)Visibility』東京大学出版会、2016年)、などがある。

内野クリスタル(うちの くりすたる)
関西大学非常勤講師。京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学博士課程修了、博士(人間・環境学)。専門は、日系アメリカ人の歴史。主な著作に、“The Case of Leslie Satoru Nakashima and His Breaking News Dispatch, "Hawaii Journal of History, Vol. 56, 2019. “Born Under the Shadow of the A-bomb: Atomic Bomb Memory and the Japanese/Asian American Radical Imagination."(「社会システム研究」Vol.22、2019年)、などがある。

土屋和代(つちや かずよ)
東京大学大学院総合文化研究科准教授。カリフォルニア大学サンディエゴ校歴史学研究科博士課程修了、博士(歴史学)。専門は、アメリカ史、人種・エスニシティ研究。主な著作に、Reinventing Citizenship: Black Los Angeles, Korean Kawasaki, and Community Participation, University of Minnesota Press, 2014. 「生存権・保証所得・ブラックフェミニズム――アメリカの福祉権運動と〈一九六八〉」(『思想』1129号、2018年)、「〈廃品〉からの創造――S・ロディアのワッツ・タワーとブラック・ロスアンジェルス」(熊谷謙介編『破壊のあとの都市空間――ポスト・カタストロフィーの記憶』青弓社、2017年)、などがある。

★成田龍一(なりた りゅういち)
日本女子大学人間社会学部教授。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。専門は、歴史学(近現代日本史)。主な著作に、『「戦争経験」の戦後史――語られた体験/証言/記憶』(岩波書店、2010年)、『近現代日本史と歴史学――書き替えられてきた過去』(中央公論新社、2012年)、『近現代日本史との対話【幕末・維新~戦前編】/【戦中・戦後~現在編】』(集英社、2019年)、などがある。

★田辺明生(たなべ あきお)
東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退、博士(学術)。専門は、人類学・南アジア地域研究。主な著作に、『カーストと平等性――インド社会の歴史人類学』(東京大学出版会、2010年)、『現代インド1――多様性社会の挑戦』(共編、東京大学出版会、2015年)、『歴史のなかの熱帯生存圏――温帯パラダイムを超えて』(共編、京都大学学術出版会、2012年)、などがある。

★竹沢泰子(たけざわ やすこ)
京都大学人文科学研究所教授。ワシントン大学大学院地域研究研究科博士課程修了、博士(文化人類学)。専門は、人類学・アメリカ研究。主な著作に、『人種神話を解体する』(全三冊、監修・共編著、東京大学出版会、2016年)、Trans-Pacific Japanese American Studies: Conversations on Race and Racializations, University of Hawai'i Press, 2016. 『新装版日系アメリカ人のエスニシティー強制収容と補償運動による変遷』(東京大学出版会、2017年)、などがある。

目次

 序論

Ⅰ 拡大する帝国・国民国家
第1章 遭遇としての植民地主義
    ――北海道開拓における人種化と労働力の問題をめぐって
    [平野克弥]
第2章 植民地統治と「カテゴリー」
    ――植民地期シンガポールでの治安秩序維持を事例として
    [鬼丸武士]

Ⅱ マイノリティたちの遭遇・共感・連帯
第3章 アメリカに渡った被差別部落民
    ――太平洋を巡る「人種化」と「つながり」の歴史経験
    [関口 寛]
第4章 排日から排墨へ
    ――一九二〇年代カリフォルニア州における人種化経験の連鎖
    [徳永 悠]

Ⅲ 政治実践としての記憶と表象
第5章 博物館におけるマイノリティ表象の可能性
    ――差別と人権の政治学 [吉村智博]
第6章 日系アメリカ人の原爆批評
    ――戦争の記憶と一九九五年のエノラ・ゲイ展
    [内野クリスタル]
第7章 一九九二年ロスアンジェルス蜂起をめぐる表象の政治
    ――『薄明かり――ロスアンジェルス、1992』と記憶の重層性
    [土屋和代]

Ⅳ グローバル化時代の管理と抵抗
第8章 巡礼する人種主義のためのノート [成田龍一]
第9章 ヴァーチャル化する「人種」
    ――現代インドにおけるデータガバナンスと人種化 [田辺明生]
第10章 「ほどく」「つなぐ」が生み出すマイナー・トランスナショナリズム
    ――井上葉子とジーン・シンの作品と語りから [竹沢泰子]

あとがき
索引
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